表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/32

同族嫌悪?

 女子たちはどこかに行った。私は一人になった。

(ああ~終わったあ)

 ほっとする。


「はーい、席ついてー」

 教室に入るなり教師が言った。若そうだけど、髪の生え際に少しだけ老いの足音が忍び寄っている。昨日の自己紹介では新婚だと言っていた。名前は覚えていない。

「えー、今日はオリエンテーションの予定なので、委員会を決める。終わったら、席替えして、自己紹介をしてもらいます。」

「市川先生は高校のときー、何委員でしたかー?」

 はしゃいだ奴が質問した。イチカワか。そういえば昨日、そんな名前を名乗っていた気がする。

「僕は、選挙管理委員だった。仕事無いから。」

「うわ地味ー」

「おいっ誰だ、地味とか言ったの」

 結構な人数ががどっと笑う。どうでもいいよ。


 委員会は、何も希望しなかったら園芸委員になった。当番制で学校の植物の世話をするらしい。市川先生からみんな、枯らさないように頑張りましょう、というお言葉をいただいた。


 席替えがあった。というよりもともと座席表が用意されていた。後ろの席には、昨日の姫カットがいた。ほら、あのクネクネしていた女子生徒。今日もクネクネするだけだと思っていたが、休み時間におずおずと机の前まできて話しかけてきた。


「ねえ、尾崎さん」

「どうして名前を知っているんですか」

「何でって、座席表に書いてあったわ」

 わざとらしい喋り方をするなあ。

「私はあなたの名前、知りません」

 素っ気なく言ったら、

「千代。大貫千代っていうの。よろしくね」

「そうですか」

「あたしたち、仲良くなれる気がしない?」

「えっ、なんで?」

 つい本音が出た。大貫が夢見るように言う。

「だってあなた、今朝頭の悪そうな女の子たちに一人で太刀打ちして、追い払ったじゃない。しかも一言で!」

 

 こういう感じかあ。すごいアホだなあ…。

「要するに、多数派に屈しないというポーズをとるために私みたいな奴とつるみたいということですか」

 大貫はあははははっと大きく笑って

「その歯に衣着せぬ物言い、好きよ」

 と言い、自分の席に引っ込んだ。


 話す前はあんなにびくびくしていたのに、いざ話すときは性格が変わったようだ。イタい。


 始業のチャイムが鳴る。

「これからの時間はみんなに自己紹介をしてもらいます。話し終わったら拍手するように」


 名前順の自己紹介が始まった。ちなみに、この学校はマンモス校だから、いまはクラスが変わって、知らない人の中に顔見知りがぽつぽついる、という状況にある。

「出席番号1番の✕✕です。部活はバスケ部で、趣味はゲームです……

「2番の✕△です。軽音部でキーボードやってます。推しは三柴理です……

「3番の✕◯でーす!彼女募集中で、好みはいい匂いがする子っ。モテてえ〜!……


 こんな具合に自己紹介が進む。だいたい名前と一言で持ち時間は短いと十秒と少しくらいで進む。ギャグに走る奴もいる。私は絶対やらないけど。


 不意に後ろの席の大貫に背中をつつかれる。

「尾崎さん、次だよ。ほら、立って」

 大貫が小声で囁く。


大貫千代おおぬきちよです。やっと名前が出ました。「やっと」と言っても泪ちゃんたちの世界では一日しか経ってないんですけどね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ