信仰を守れっ
泪ちゃんの一人称視点に戻りました。凛華目線、これからも時々使うかもしれないです。
朝、目が覚めると、隣の布団に凛華はいなかった。いつも私より遅く起きるのに____。
あ、昨日の最低な記憶が蘇る。
気を利かせて鉢合わせしないようにしたらしい。単に私に会いたくないだけかもしれないけど。
(リビングには出られない…)
バツが悪すぎる。というか会いたくない。部屋に置いてあった栄養補給用のゼリー飲料を朝食の代わりにした。
歯磨きをしに恐る恐る洗面所に言ったら、母と鉢合わせた。思わずぎょっとした。
「あ…おはよう」
母はぎこちなかった。努めて高い声を出したのは、こちらの動揺が伝わったのか、朝っぱらからトラブルが発生することを危惧したのか、おそらく両方だろう。私は何も返さない。コップを手に取る。洗濯かごを引っ掴んで母はどこかに行く。
それからは何事もなく家を出る支度を進める。左の頬を少し腫らした凛華が玄関を出るより前に、駅に向かった。
学校は昨日と変わりなかった。猿っぽい馬鹿やケバい醜女が低俗な話題を口にして笑っている。私はイヤホンで神の曲を聴いている。イヤホンって素晴らしいな。外の世界と、神の世界を切り離してくれて。外の世界がなければ、世界には神の御声と私だけ。時々イヤホンの外音遮断機能を持ってしても防げないでっけえ声も聞こえるけど。なんであんな声量で話す必要があるんだろ。
_____いきなり、イヤホンジャックが耳から抜ける。びっくりして振り向く。
「なーに聴いてんのー」
ケバい醜女の女子が数人いる。混乱する。彼女らは構わず私の手の中のスマートフォンを見る。その中の一人が神の名前を読む。
「あっ、このコ、ドルオタじゃん」
他の一人が言う。
「えー、キモーイ」
「ひっどおーいwあんただって推しいるじゃない」
「や、畑違うからw」
私を置いてきぼりにして人を侮蔑した会話をする女子たち。声が出ない、何も言えない。
(ふざけるな、何か言え、神の名誉を穢されて良いのか)
「ああ。ごめんねえ、この人、なんでも思ったこと言っちゃうのお」
一人が言う。
顔がかっと熱くなる。やっとのことで口を開く。
「あ…、あなたがたは他人の信仰に口を出して良いと思っているのですか、理解できないのならば、何も言わないでくださいっ」
一息で言った。
全員が静かになる。そして、
「だーかーらー、謝ってんじゃん、この人なんでも思ったこと言っちゃうって」
声音がいらいらしている。
「……………」
「もういいよ、行こ」
リーダー格らしい一番ケバい女子がプイッと顔をそむけて私の机から離れる。仲間もそれに続く。醜女の群れから、あの、残酷な生き物特有の刺すようなクスクス笑いが漏れる。
私は呆然として、それから大切な何かを守るかのようにまたイヤホンを耳に入れた。
作者は、耳にギュっとする感覚が得意じゃないので、イヤホンはしません。
※少しの間投稿頻度が落ちると言った直後に投稿するのもナンですが、できる限り投稿も、現実の試験も努力します。