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私の神!私の宗教!

 他人とつるまなくても生きていける。だって私には「神」がいる。


 帰りの電車に乗ったらイヤホンを取り出して神の歌声を聴く。自分自身をつまらない現実から切り離す。世間では私にとっての「神」みたいな存在を「推し」と認識し、「神」にとっての私を「ファン」呼ぶことが一般的とされているが、大間違いだ。だって彼はいまの生活の全てであり、唯一の救いだから。というわけで、私はかの人を神と呼ぶ。


 私の神!私の宗教!


 泪は彼の信徒になって三年弱になる。別に、公式がこの世界観を作っているわけでは無く、この素晴らしい三年と少しの間に自分の中にこういう価値観が生まれたのだ。なので私の信仰しているのは怪しい宗教チックなグループではなく、れっきとしたアイドルである。ちなみに、箱推しではなくメンバーの一人を応援している。神は白く輝くスッとした鼻梁びりょうを持ち、野に咲く花のような淡い色の唇をほころばせ、全てを見通すかのように濡羽色ぬればいろの瞳を見開いて画面越しに私を見ている。


 応援するだけでいい、むしろ単なる一信徒である私が邪な心を抱くことは神に対する冒瀆だ。あの幽かで美しいさざ波のような声で「ナミダチャン」などと呼んでほしいわけではまったくない。信徒は神を常に尊敬し、敬虔な感情をもって神を愛し、神は偉大なその偶像を永遠に信徒に信じさせなければならない。大きな使命感に脳髄がヒリヒリする。他の信徒がどんな価値観で神を崇拝しているのかは知らないが、そんなことは構わない。最後の一人になるまで神の作っている世界を守り抜く。


 そんなことを考えているうちに現実世界の泪は改札を降り、家の前まで辿り着いていた。


 今日は約一人を除き誰も家にいないはずだ。神のライブ映像を観よう。そう思い玄関の扉を開くと、軽やかな足音とともに、

「あれー、バカもも帰ってきたのー?」

という癪に障る声が聞こえる。

「お姉さまって呼べ!このクソ女っ

 それよりなんでこんな時間に家にいるんだよっ」

「そっちこそこんな時間に帰って来てんじゃん」

続けて、

「なんかぁ、始業式ってめんどくさいわりに超絶無意味じゃん?クラス替えはガッコ行った子が教えてくれたしぃ。だから皆でサボっちゃえってなって」

「そんな理由で学校休んだのかよ!悪ぶっててイタいだけだろ」

同じことを思っていたことは隠して姉としての体裁を保った。

「はっ、友だちもいない陰キャが文句言うなよ」

言うなり、私の横をすり抜けて

「あ、これからカラオケー」

と馬鹿にするように玄関を出ていった。あんたなんか誘ってもらえないでしょ、とでも言いたげだ。

エピソード2にして急激にドルオタを発露した、泪ちゃん。

ところで、登場人物が増えました。この子に関しては、待て次号です。

泪ちゃんの、いや、バカももちゃんの名前も、追い追い。


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