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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
番外編:交国計画を振り返って
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新暦1225~1250年頃



 【占星術師】がせっせと暗躍する中、彼から離れた【詐欺師】も暗躍していました。


 メフィストフェレスの死の報酬として得た予言の書を握って以降、非道ばかり重ねている【占星術師】を止めるため、【詐欺師】は兄を殺そうとしました。


 暗殺に失敗したため、彼は放浪の末に「夢葬の魔神」に頼る事にしました。


 2代目・夢葬の魔神は基本的に現の事には無干渉ですが、プレイヤーは積極的に狩っているので【占星術師】も狩ってくれます。


 ただ、【詐欺師】もプレイヤーの1人です。兄の計画に従って非道も働いていた以上、「改心した」と言ったところで見逃してもらうのは難しい状況でした。


【詐欺師】「最終的には彼の魔神に頼らないと……」


【詐欺師】「けど、頼るタイミングを間違うと僕は何も出来なくなる。せめて、僕の代わりに信頼できる人に兄さんを止める計画を託したい」


 交国計画は多次元世界のパワーバランスをひっくり返す発明でした。


 力を欲する人に頼った場合、その人が手に入れてしまう危険性がある。そのため【詐欺師】は慎重に協力相手を選ぶ必要がありました。


 そこで選ばれたのが、ネウロンにいた真白の魔神の使徒でした。【詐欺師】は「ロイ」という人間のフリをしつつ、交国に逆らって逃げざるを得なくなったステー・ミラー(レオナールの父親)達に交じってネウロンに辿り着きました。


使徒・エーディン「私に協力しろと?」


使徒・エーディン「スミレの命を間接的に奪ったあなたの、尻拭いを手伝えと!!?」


 ネウロンで隠れて暮らしていた真白の魔神の使徒・エーディンでした。


 彼女はネウロンで起きた蜂起事件の黒幕が【占星術師】と【詐欺師】だったと教えられ、激怒しました。憤怒に背を押され、【詐欺師】を殺そうとしました。


 しかし最終的に目先の復讐を堪え、【詐欺師】に協力して【占星術師】を止める事を決めました。かつて仕えた主である真白の魔神の尻拭いのためにも、協力を決めました。


 彼らは表向きは「ロイ・マクロイヒ」と「マウ・マクロイヒ」という夫婦のフリをしつつ、交国計画を頓挫させるための準備を進めていきました。


 ネウロンにある器を破壊したところで、交国計画を破壊できるわけではない。【占星術師】や玉帝は別の器を求めてさらなる犠牲者が出るだけ。別の器を狙われると敵の行動が読みづらくなるので、彼らはネウロンにある器を――スミレの遺体を破壊するのは避けました。


【詐欺師】「兄さんは夢葬の魔神に仕留めてもらう。けど、それだけじゃ駄目だ」


エーディン「夢葬の魔神は、玉帝と交国計画にはノータッチでしょうからね……」


【詐欺師】「何とか丘崎獅真さんを見つけ出して、彼にも協力を要請しよう」


 彼らは丘崎獅真の捜索をしつつ、他の準備も進めていきました。


 もし、交国計画が真の力を発揮しても対抗できる人材の「作成」を開始しました。


 その結果、誕生したのが「フェルグス」と「スアルタウ」でした。


 【詐欺師】とエーディンは子供達に3つの力を授けました。


①真白の魔神の安全装置を利用する

②エレイン(偽名)の力を借りる

③【詐欺師】の認識阻害を利用する


 何度も裏切られ、人類に落胆してきた真白の魔神は仲間にも兵器にも安全装置を仕掛けるのが習慣化していました。


 その安全装置を利用するため、マクロイヒ兄弟は真白の魔神の須臾学習媒体(バックアップデータ)から作られました。彼らは真白の魔神とは別人ですが、魂は「真白の魔神と同一」と判定される状態になっていました。


 これで安全装置をマクロイヒ兄弟も利用できる状態となりました。100%安全とは言い切れないので、バフォメットが操ったラートの機兵が――バフォメットが操作を手放した途端――スアルタウを潰しかけるというトラブルもありましたが、それは機兵に潰された経験のあるエレイン(偽名)が咄嗟に叫んだ事で回避されました。


 【詐欺師】は予言の書を使って並行多次元世界に存在した英雄のコピーを呼び出しました。エレインと名乗り始めた彼はマクロイヒ兄弟を見守り、自身の技を授けました。


 【詐欺師】はマクロイヒ兄弟は「大した脅威ではない」と認識させるため、得意の認識操作も仕掛けました。広範囲に機能し、長期間持続させ、日常生活に支障が出ないように最小限のものだけ仕掛けておきました。


【詐欺師】「あとは大きなトラブルがなければいいんだけど……」


エーディン「あってもおかしくないでしょ。だからこそシシンを早く見つけたいんだけど~……」


 残念ながら今代の真白の魔神が魔物事件を起こすというトラブルに見舞われ、【詐欺師】達の計画はメチャクチャになりました。


 タルタリカが暴れ回る中、何とかフェルグスとヴァイオレットの確保には成功したため、2人を連れて界外に逃げて立て直す方法もありました。


 ただ、彼らはスアルタウを見捨てる事など出来ず、命を落とす事になりました。それでもタダでは死なず、【詐欺師】は意図的に府月に行き、自分の命を交渉材料として夢葬の魔神から「2回分の蘇生権」と「【占星術師】への対応」という協力を取り付けました。


エーディン「いや、でも、これはもうマズいでしょ!!」


【詐欺師】「大分マズいね。僕ら両方倒れちゃったし……」


エーディン「交国計画を悪用しようとする勢力にバレかねないの覚悟で、もっと誰かに頼っていれば……! せめてシシンを見つけられていれば……」


 交国計画を破綻させようとする【詐欺師】とエーディンがいなくなった事で、計画を止められるかはかなりの大博打になってしまいました。スアルタウも死ぬ事となりました。 


 それでもフェルグスと彼の仲間達が奮闘した事で、何とか玉帝達の計画を挫く事となりました。多次元世界の問題は交国計画だけに限らないので、その後も様々な大事件が起こる事になりますが――。


【詐欺師】「あの子達なら大丈夫さ」


エーディン「楽観的すぎる! 私達も根の国に行って復活して、あの子達の手助けするのよ!」


【詐欺師】「そうしたいけど、プレイヤー(ぼく)はそっちには行けない」


エーディン「あぁ、もう……。頼りない旦那様だこと」


 一方、【占星術師】は自分の計画が破綻するところを目の前で見届けた後、府月に連れていかれて殺される事となりました。


 計画そのものは「最初から破綻していた」とも言いますが――。


【占星術師】「俺は、どこでしくじったんだろう……?」


【詐欺師】「僕がいなければ、兄さんはこんな事にはならなかったと思う」


【詐欺師】「弱い僕の所為で、兄さんは苦しんだ。力を欲してしまった」


【占星術師】「馬鹿! 自分がいなければとか、そんなさびしいこと言うな」


【占星術師】「俺が強くなりたかったのは、俺自身のためだ」


【占星術師】「俺は俺だから失敗して、お前はお前だから俺に勝ったんだろうよ」





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