新暦795~1250年頃
ロミオ「新興国のアンタらに力を貸せと?」
石守回路「ああ。その代わり、特等席を用意するよ」
ロミオ「特等席……?」
石守回路「歴史が変わる瞬間。それを目撃できる特等席だ」
ロミオは交国と手を組みました。当時の交国は新興国であり、さらに人類文明圏を牛耳っている人類連盟の主要な国家相手に戦争を行っている状態でした。
それでもロミオは石守回路の誘いに乗り、密かに交国側につきました。そして交国の敵対者達を密かに闇討ちしていきました。ロレンスの活躍もあり、交国は人類連盟側を打ち負かし、腐敗していた人類連盟を変えていきました。
良い方向に変えたとは言いがたい状況でしたが、それでも人類勢力にとって交国の台頭は大きな変化となりました。
交国は打ち負かした人類連盟に加盟した後、ロレンスと敵対しました。ただそれは表向きの事で、交国とロレンスの密接な裏取引関係はしばらく続く事となりました。
交国との繋がりにより、ロレンスはさらに力を持つようになりました。ただ、ロミオが望むほどの状況は――全ての流民を救えるほどの状況には至っていませんでした。
ロミオはそれでも「焦らず地道にやっていくしかない」と思っていましたが、彼にとって交国と組む以上の転機が訪れました。
ロミオ「兄貴」
ロミオ「兄貴が、ロレンス先代首領を殺したって話は――」
デカローグ首領「事実だよ」
ロミオ「嘘だ」
組織同士が争う事はあっても、首領同士が争う事はなかった。
カヴンの両輪として、陸と海で組織を支えていたはずでした。
デカローグ首領「<大粛清>のどさくさに紛れて、暗殺させてもらった」
ロミオ「否定してくれよ。ありえねえ」
ロミオ「くだらねえ流言だって言ってくれよ!!」
ロミオ「兄貴がオヤジを殺す理由なんてねえだろ!? だって、あの人はオレ達の――」
デカローグ首領「邪魔だったんだ。あの人が」
デカローグの首領は淡々と語りました。
デカローグ首領「あの人は古い人間だった」
デカローグ首領「あの人の存在は、お前の成長を阻む」
デカローグ首領「事実、あの人が消えて以降、お前は立派に組織を――」
ロミオ「ふざけんな……」
ロミオ「ふざけんな!!」
ロミオ「誰が……誰がそんな事を頼んだ!!」
ロミオ「オレが、アンタやオヤジ達を、どれだけ……!」
ロミオ「皆を、家族を、どれだけ……!!」
2人の関係は破綻しました。
幸い、この破綻が直ぐ、巨大組織の大抗争に発展する事はありませんでした。ロミオは組織の長としての立場を優先し、「信頼していた兄貴分」を忘れるために仕事にのめり込みました。
一番大きな希望を失っても、それでも駆けているうちに交国との関係も破綻しました。
ロレンスの力はかつてないほど大きくなっていましたが、それでも彼の望みは叶っていませんでした。目的を達成できず、手段ばかりが膨れ上がっていました。
ロミオ「耐えて、地道にやっていればいつか状況が変わる」
ロミオ「その『いつか』は、いつになる」
ロミオ「オレ達は、あと何千年耐えればいいんだ」
彼は行動を起こす事にしました。大戦争を起こす事にしました。
ずっと苦しみ続けていた流民達がさらに血を流す事になろうとも、現状を変えるために大きな戦争を起こす事にしました。それに付き従う部下達は大勢いました。
デカローグ構成員「ロミオ・ロレンスが起こす戦争は、我々が築いた秩序を壊すものです」
デカローグ首領「そうかもしれないね」
デカローグの首領は、守り育ててきた弟分に脅かされる事となりました。
海で活躍するロレンスと違い、デカローグは陸の裏社会を支配していました。
大戦争が起こって陸の秩序が崩壊すると、デカローグが裏社会で築いてきた秩序も崩壊しかねない。「デカローグ」の首領としては看過してはならない事件でした。
デカローグ構成員「ロミオ・ロレンスを暗殺するべきです」
デカローグ首領「そんな事をしたら、戦争の矛先が我々に向くだけだ」
デカローグ構成員「首領、信じてください。必ず上手くやります」
デカローグ首領「許可できない」
デカローグ首領は「ロミオ・ロレンス暗殺」を許しませんでした。
ロミオを説得する事も出来ませんでした。
そうこうしているうちに交国が「ロミオ・ロレンス斬首計画」を始めました。交国に上手く動かされ、デカローグの傘下組織の一部がロミオ殺しに動いてしまいました。
デカローグ傘下組織によるロミオ殺しは失敗したものの、抗争と陰謀の中でロミオは命を落とす事となりました。デカローグ首領が懸念したロレンス構成員の怒りの矛先は、大半が交国に向かいました。
首領に無断で動いたデカローグ傘下組織の粛清は行われたものの、ロレンスが崩壊していった事で――ロレンスの支配地域に――デカローグが進出。ロレンスの残党の一部もデカローグに吸収され、最終的にデカローグは利益を手にしました。
デカローグ構成員「おめでとうございます、首領!」
デカローグ構成員「もはや、カヴンは貴方様のものです。貴方こそが真の大首領です」
事件以降、デカローグ首領の権力はさらに高まりました。
デカローグ・ファミリーは、勝利したのです。
デカローグ首領「…………」
デカローグ首領「ついに、僕1人だけになったか」
??「ふふっ。何を言ってるの? 兄さん」
??「私がいるじゃない」
デカローグ首領「あぁ」
デカローグ首領「そうだね。アリス」




