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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
番外編:カヴン今昔
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新暦212~280年頃



ロミオ「もう終わりだ! オレには無理だ、兄貴!!」


デカローグ首領「元気を出してくれ、ロミオ。キミがやらなきゃ誰がやるんだい?」


ロミオ「兄貴がいるだろ!! オレは……オレは!! うぅッ……!!」


 新派の大勝利で終わった<大粛清>の後、ロミオはとても落ち込んでいました。


 彼も新派側の人間として戦闘に参加し、大活躍。これからのカヴンを背負う中心的な人材の1人として英雄視されつつあったのですが――。


ロミオ「オヤジ……! なんで、なんで旧派のザコ共なんかに……!」


デカローグ首領「敵もそれだけ必死だったんだ。命懸けの相手は恐ろしい」


 ロミオが慕っていたロレンス首領が大粛清の最中、死亡したのです。


 ロミオはいつの間にか死んでいた首領の死を嘆き、首領から離れて守れなかった自分を責めました。彼は自分を責めて落ち込みました。


 デカローグ首領は弟分をなだめ、「これからはお前がロレンスの首領だ」と言いました。首領が死んだ以上、誰かが継ぐ必要がありました。元々実力者だったうえに大粛清でも大いに活躍したロミオはロレンスの新首領になる資格を十分持っていました。


 同じく大粛清の英雄たるデカローグ首領がロミオを新首領に押した事もあり、ロミオがロレンス首領を継ぐのはほぼ確定していました。「オヤジを守れなかった」と落ち込んでいる本人にはその気はありませんでしたが――。


ロミオ「オレは首領なんかできねえ! バカだしっ!」


ロミオ「ロレンスは兄貴に任せた! オレはオヤジや兄貴みたいになれねえ!!」


デカローグ首領「仮にウチでロレンスを吸収した場合、キミはどうする?」


ロミオ「兄貴の護衛する!!」


デカローグ首領「キミを護衛として雇うほど、ウチは人材不足じゃないよ」


ロミオ「じゃ、じゃあ……一番下っ端でいい! 一番最初に切り込む鉄砲玉でいい!」


ロミオ「もうやだっ! 自分で考えて動きたくない!! 兄貴に全部任せる」


 デカローグ首領はぐずる弟分をなだめ、「ロレンスはキミが継ぐべきだ」と言いました。


デカローグ首領「キミは僕の部下で終わるべき人間ではない」


デカローグ首領「僕の下で働き続ければ、キミの成長は『デカローグ首領の部下』で終わってしまう。だが、ロレンスの首領なら僕という枠に縛られずに済む」


デカローグ首領「我々は別組織の長として、別の可能性を模索するべきだ」


デカローグ首領「そうすればどちらか倒れてしまっても、もう片方が残る。オヤジさんの遺志を継ぐためにも、我々は可能性の模索という戦いを続ける必要がある」


デカローグ首領「戦え。ロミオ・ロレンス」


 ロミオは気乗りしないものの、ロレンスの4代目首領に就任。


 デカローグ首領に後見してもらいつつ、組織を率い始めました。


 慣れない組織運営に苦労しつつも、兄貴分に導かれたロミオは先代以上に組織を大きくしていきました。大粛清の後も活躍が認められ、<大首領直参幹部>の地位も手に入れました。


 大首領は――夢葬の魔神はカヴンにとってお飾りの長ですが、それに次ぐ大首領直参幹部の地位は簡単に手に入るものではありません。


 大粛清以降、新派が実権を握った事でカヴンは「犯罪組織」として強い影響力を持つようになり、ロミオ・ロレンスの名は良くも悪くも広まっていきました。


 ただ、彼が手に入れたのは大首領直参幹部の地位だけではなく――。


ロミオ「根の国との交渉窓口を、ロレンス(ウチ)に任せる!?」


ロミオ「正気かよ兄貴! ウチにそんな難しい話、務まるわけねえだろ」


 彼は根の国との取引を――守要の魔神との取引を任される事になりました。


 多くの流民を抱えるカヴンにとって、海獣という重要物資を用意してくれる根の国はとても重要な取引相手でした。組織にとって生命線と言っても過言ではない相手です。


 それを任される事に関し、ロミオは及び腰でしたが、デカローグ首領は「キミ達なら務まるさ」と言って笑顔を向けました。


デカローグ首領「根の国との取引は、航行が難しい<深海圏>を避けて通れない」


デカローグ首領「ロレンスは海賊稼業をする中で、数多の海を渡ってきた。カヴン内でも指折りの航海技術を持つ集団だ。そんなキミ達だからこそ、この仕事を任せたいんだ」


ロミオ「うーん……。まあ、兄貴がそこまで言うなら頑張ってみるよ」


デカローグ首領「期待しているよ」


 根の国は流民の支援を続けてくれており、海獣以外にも様々な物資を送ってくれていました。


 ただ、根の国が存在する深海圏は荒れやすく、根の国から送り出された物資がカヴンに引き渡される前に行方不明になる事故が多発していました。


 根の国の統治者である守要の魔神が「荒れやすい海だから仕方ない」「無人で送ってんだから、数打ちゃ半分は届くだろう」と海難事故を半ば諦めていました。


 実際は単なる海難事故では済まないのですが――。


海獣「ここどこンゴ! 迷子ンゴ!」


海獣「しゃーない。適当に生きていく」


~数百年後~


海獣「オウッ! オウッ! オウッ!」


流民「めっちゃオラついてる海獣がいる~!」


流民「や、野生化して凶暴になった個体だ~~~~!」


 なんて問題にも繋がっていくのですが、問題が表面化するまで時間がかかったので守要の魔神もあまり深く考えていませんでした。


 ただ、カヴン側にとっては「海難事故で海獣や物資が失われるのは勿体ない!」という事で、問題解決のためにロレンスに白羽の矢が立ったのです。


 ロミオは時には自ら深海圏に足を運び、根の国との安定した取引経路確立のために骨を砕きました。また、深海圏の治安維持活動も行いました。


 深海圏は海が荒れやすいものの、多次元世界中の物資が流れ着きやすい事からサルベージを生業とする流民達が集まっていました。彼らは縄張り争いのため、流民同士でちょくちょく抗争を繰り返していましたが――。


ロミオ「流民同士で争ってんじゃねえ。仲良くやれ」


 ロミオは深海圏の争いを調停して回りました。


 そして深海圏を主な縄張りにしている7つの流民組織を束ね、新しい連合組織を設立。ロレンスの下部組織として組み込みました。


ロミオ「今まで争っていた恨みつらみは、簡単には消えないだろう」


ロミオ「でもだからといって争い続ければ、ずっと苦しいままだ。お前らの子や孫、組織の仲間達がずっと苦しいままにならないよう、争いはオレらの代で終わらせようや」


 新しい連合組織はロレンスの武力に脅されて成立した側面もありますが、深海圏の流民達が縄張り争いで疲弊していたのも事実でした。


 まとまった7つの流民組織の長達は、ロミオ・ロレンス達に対する畏敬から新組織を<八舟連合>という名にしました。自分達だけではなく、ロレンスがあってこその連合組織という事でそのような名にしたのです。


ロミオ「揉め事があれば、連合内の協議もしくはロレンスの調停で終わらせる」


流民「ロレンスへの上納は……」


ロミオ「納めてもらう。その代わり、ロレンスが八舟連合の後ろ盾になる」


 多次元世界屈指の海賊組織として成長するロレンスと混沌の海でやり合う事は、先進国にとってすら大変な事でした。大抵の国にとって、辺境の深海圏に手を出してあらゆる海路でロレンスに報復される事は割に合わない事でした。


ロミオ「それと、こっちの仕事を手伝ってほしい。報酬は用意する」


 ロミオは八舟連合にも根の国との取引を手伝わせました。


 深海圏の流民達は縄張り争いで消耗する事がなくなり、新たな仕事を得た事で豊かになっていきました。暗く荒れやすい混沌の海の暮らしなので、けっして楽とは言えなかったものの、生活にゆとりが生まれていきました。


 八舟連合の存在は根の国との取引を安定させただけではなく、交国との取引にも――交国から依頼された「真白の遺産探し」にも好影響を及ぼしていきました。





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