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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.3章:夢破れし者達
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その後のこと



■人類連盟関係施設が大打撃を受ける

 真白の魔神が<交国計画>を使い、人類連盟関係施設を遠隔で襲撃。施設内にいた人間も操って多数の死者を出す。


 真白の魔神が死に、交国計画が止まった後も――疑心暗鬼と過去の遺恨により――人間同士の争いはしばらく続いた。死者は出たものの人類連盟が壊滅したわけではない。



■プレーローマの交国大規模侵攻失敗

 真白の魔神が交国計画を使い、プレーローマを遠隔で襲撃。<癒司天>の軍団が最も大きな被害を受け、領地も一部陥落。交国に対する大規模侵攻も失敗した。


 プレーローマ領内は人類文明圏より交国計画による損害と混乱が大きくなり、立て直しにかなりの時間がかかると言われている。<武司天>が率いる<人類絶滅派>は騒動前より領地を増やしたが、それでも無傷とはいかなかった。



■根の国の騒乱が終結

 交国計画事変の裏で<根の国>でも1つの戦いが終わった。根の国を支配する<七光>に対して動いていた抵抗勢力の働きにより、<守要(しゅよう)の魔神>が復活し、裏切り者の<七光>を粛清。守要の魔神は<腫蝿(しゅよう)の魔神>と化し、根の国を再び統べ始めた。



■レオナール・ブレナンの後日談

 真白の魔神がレオナール・ブレナンを利用するうえで、「脳をイジった」という発言を聞いた石守素子はレオナールの身体検査を命じた。


 真白の魔神に利用されていた明確な痕跡と治療方法が見つかれば、「精神状態の回復が図れる」のではと考えられていた。


 しかし、回復どころか痕跡の発見すら出来なかった。それでも石守素子はレオナールの行動には「真白の魔神に限らず、他者の意思が介在していた」と弁護した。


 レオナール自身は――石守素子に弁護されていると聞いても――過激な言動を止めず、何度も脱走を図ろうとした。最終的に石守素子は周囲の説得によって折れ、あとの事は交国の司法に委ねることを決めた。



■宗像灰の最期

 敗北した宗像灰は何とか生き残ったが、三等権限で無理やり交国計画を動かした影響もあり、余命幾ばくも無い状態だった。


 玉帝も死んだ事で負けを認めた宗像灰は――これ以上の行動は人類の勝利を遠ざけるだけと考え――部下や協力者にも黒水守一派に対する負けを認め、「国家を割る事なく、交国の立て直しに注力してほしい」と頼んだ。


 石守素子らと交渉し、ヒスイを含む部下らの行動の責任を全て取ろうとした。それで全員の罪が許されたわけではないが、黒水守一派はこれ以上、事を荒立てないためにも宗像による部下らへの弁護を考慮すると約束した。


 衰弱していく宗像は<揺籃機構(クレイドル)>に繋がれ、そこにずっと前から再現されていたプレーローマに殺害された妻子の幻と最期を過ごす予定だった。


 だが、戦後処理に協力しているうちに余命が尽き、揺籃機構に繋がれる前に現世を去った。



■甘井汞の消息

 プレーローマ内に潜伏していたと宗像灰が証言しているが、消息不明。



■丘崎獅真の後日談

 真白の魔神の尻拭いのため、丘崎獅真はしばらく交国に協力する事を決めた。黒水守一派と連絡を取りつつ、真白の魔神捜索を続けた。


 その合間に家族のところに帰り、交国と交渉して手に入れたバフォメットの遺灰を納める墓を作った。ヴァイオレットに――スミレの遺灰代わりに――貰った髪も同じ墓に納め、その日は朝まで墓の前に座り、物思いにふけっていた。



■泥縄商事の後日談

 <交国計画事変>が起きる前の泥縄商事の行動を問いただすため、プレーローマで査問が行われる予定だった。


 泥縄商事社長はこれを無視し、主な支援者だった癒司天は激怒。泥縄商事はプレーローマからの支援を打ち切られた。


 泥縄商事の社長は【占星術師】から巻き上げた金を数えつつ、「どうせまた、彼らはあたし達に頼らざるを得なくなるよ」と言って笑った。


 その後、交国計画事変で動員された事に怒り狂った社員らが社長室に殺到。社長は集団リンチに遭った後、食堂の挽肉製造機に放り込まれた。



■ブロセリアンド解放軍の後日談

 ブロセリアンド解放軍は――実質的に解放軍を支配していた――<エデン>のカトーを失った事で一時、制御不能に陥った。


 解放軍は――カトーが当初予定していた通り――交国領侵攻を企てたが、その実行すら出来ないうちに瓦解した。


 泥縄商事がネウロンから完全に手を引いた事で補給のアテを失い、プレーローマが退いた事で交国軍側にも余裕が生まれ、解放軍はネウロンを占拠し続ける事すら難しい状態に陥った。


 カトーがプレーローマと通じていたと発表された事もあり、一部の解放軍兵士は「自分達は騙されていた」と言い、ネウロンにいるエデン構成員を殺そうとする者達も現れた。エデン構成員を手土産に交国軍に返り咲こうと企む者達も現れた。


 ただ、全ての解放軍兵士が虐殺に走ろうとしたわけではなく、解放軍兵士の中にも「これ以上、無益な争いはやめよう」と主張する者もそれなりにいた事もあり、何とか虐殺は阻止された。


 現在のブロセリアンド解放軍は武装解除の後、交国軍に降伏。沙汰を待つ身となっている。全員が極刑となるわけではないが、<丹国>建国の話は白紙に戻った。



■犬塚銀の汚名

 家族と直属の部下を毒殺したと言われていた犬塚銀の汚名は晴らされていき、「交国の英雄」としての立場を取り戻していった。


 同時に、そんな犬塚銀を死に追いやった者達の悪名は――エデンやブロセリアンド解放軍の悪名は交国内で高まっていった。



■エデンの後日談

 カトーの死とフェルグス・マクロイヒ達の説得を契機に、大半のエデン構成員は交国軍に降伏した。


 大半の構成員が――プレーローマと通じていた――カトーの行動に落胆し、カトーを「英雄」ではなく「扇動者」と定義し始めた。そして「全ての罪はカトーにある」と主張し始めた。


 その姿をフェルグスは何とも言いがたい表情で見守りつつ、交国政府にエデン構成員の助命を願った。身勝手な願いだと思いつつも、「弱者」達を保護するために奔走を続けた。


 ただ、大衆は――犬塚銀の死にエデンが関わっている事もあり――テロ組織(エデン)に対して厳しい処罰を求めた。交国軍に降伏せず、逃走と暴走を続ける一部エデン構成員の行動も世論に油を注いでいる。



■ブリトニー・スパナの後日談

 元・星屑隊の整備長であり、エデンの整備部代表を務めていたブリトニー・スパナは、カトーの死後、エデン総長として就任した。


 その後直ぐに交国政府に出頭し、エデンの汚名を可能な限り背負い始めた。そのために「ザクセンホート王国の元王女」の立場も活用し始めた。


 フェルグスはスパナを止めようとし、ヴァイオレットは「自分が総長になって戦後処理を担当します」と主張した。だがスパナは「こういうのは老人の役目さ」と言い、自分の判断を固持した。


 かくして「ザクセンホート王国の元王女が交国への復讐のためにテロ組織・エデンを動かしていた」という物語が作られる事となった。


 それでエデン構成員の罪がすすがれたわけではないが、大衆は物語に熱中していった。エデンの全員を叩くのではなく、エデンの代表たる総長を熱心に叩き、ついでにエデン構成員を叩き始めた。


 交国政府とスパナ総長が密かに共謀してエデンを解体していった事もあり、大衆の熱はやがて冷めていった。彼らは別の新しい物語に飛びついていった。


 ブリトニー・スパナは諸々の後始末が終わった後、久しぶりに家族の墓参りに行った。そして自分の代わりに墓の掃除をしてくれていた交国軍事委員会の憲兵らに礼を言い、彼らと昔話に花を咲かせた。



■ギルバート・パイプの後日談

 星屑隊の隊員であり、憲兵でもあったギルバート・パイプは寝鳥満那らによって<蟲兵>にされたまま死んでいった。


 星屑隊の生き残りであるオズワルド・ラートやダグラス・レンズはパイプの死を黒水守一派経由で知り、密かに彼と他の星屑隊隊員らの墓を作った。


 フェルグス達もパイプの死を知り、ラート達と共にパイプ達の墓参りをした。その死を惜しみつつ、交国は変わりつつある事を報告した。


 彼らがパイプ達の墓を後にした後、1人の人物が墓にやってきた。


 彼女は自分がギルバート・パイプやサイラス・ネジの教導者(メンター)役を務めていた事を明かした。教導者といっても直接教え導くのではなく、自分の監視業務を通じて反交国分子への対処や監視対象との接し方を学ばせる役目だったのだが、パイプは最期までその事に気づけなかった。



■立浪巽の後日談

 交国では「立浪巽」と名乗っている混沌竜は一連の後始末が終わった後、実家のある<竜国リンドルム>へと向かった。


 その旅の「同行者」の存在に関し、彼は文句たらたらだったが他ならぬ曾祖父の頼みなので仕方なく同行者を脇に抱えて実家に帰ってきた。


 帰ってきて早々、母親(メメ)と喧嘩する事件もあったが、彼はひぃひぃ言いながらなんとか曾祖父たるレンオアム王のところに辿り着いた。


 彼はレンオアム王に同行者を渡した。それはレンオアム王の願いで交国政府から受け取り、フェルグス達にも一言話して持って来たカトーの遺骨の一部だった。


 レンオアム王はそれを王家の土地の一角にあるニュクスやナルジス達の墓に納める事にした。立浪巽はその事に難色を示しつつも納骨に同行した。


 数日実家に滞在した立浪巽は老いた曾祖父の存在に後ろ髪を引かれつつも、曾祖父の言葉に背中を押され、交国にいる同志達のところへ戻っていった。



■ミェセの後日談

 故郷に帰らず黒水に残り、他の黒水住民らと一緒に黒水復興に尽力した。その傍ら、交国の学校に通い、自分の新しい可能性を模索し始めた。


 安否を案じていたアーロイことフェルグスとも再会し、2人で料理と食事をしながらこれまでの事と、これからの事を話した。



■石守素子の後日談

 交国計画事変後も交国の立て直し、黒水の復興等の政務をこなそうとしていたが、食欲不振や嘔吐などの体調不良に悩まされていた。


 本人はそれを隠して働こうとしていたが、幼い頃から見守っていた護衛や友人の炎寂操らに止められ、半ば強引に療養生活を送る事となった。



■メイヴの後日談

 玉帝が死んだ後も黒水守一派の1人として、働き続ける道を選ぶ。とはいえ交国計画事変で受けた傷も完全には癒えていないため、石守素子の護衛も兼ねて半ば療養生活を送っている。


 隙あらば働こうとしている素子を巫術の眼で見張っているが、「最近は巫術の眼だけでも素子様を見つけやすいから楽ちん」と言っている。



■アラシア・チェーンの後日談

 エデンの子供達に貰っていたお守りは壊れてしまったが、瀕死の重傷から何とか回復。戦後処理に奔走し始める。


 ただ、怪我人の自分が動くまでもなく、フェルグス達が上手くやっているのを見て、「自分の役目はもう終わった」と考える。


 ふらりと姿を消そうとしていたが、石守素子の護衛に捕まってフェルグス達に突き出される。見守っていたはずが、見守られる立場になった事を恥じつつ、「楽になる事」を諦めた。


 また、自分が親友を失った戦いで本当は何が起きていたか石守素子の護衛から聞かされ、アーミング第4特別行動隊の特別行動兵達の真意を聞き、何とか生き残りと連絡が取れないか足掻き始めた。



■ヴァイオレットの後日談

 エデンの実質的なナンバー2だった事から、エデンの後始末を自分で片付けようとしたが――<太母>の知識を一部受け継いでしまった事で表に出しづらくなったため――交国政府側がそれを拒んだ。


 交国計画の後処理にも欠かせない人材のため、交国政府によって半ば軟禁状態に置かれている。といっても交国の立て直しに必要な人材という事もあり、一応は保護されている状態。あまり好き勝手には出歩けなくなったが、望めば好きな相手と会える状態ではある。


 交国の保護下に窮屈さを感じていないわけではないが、カトーを止められなかった自分には必要な罰だと考えている。



■ヒスイの後日談

 交国政府に拘束され、大人しくしている。大人しくしているものの、ヴァイオレットやロッカ達との面会は断り続けている。


 ただ、最終的には折れて手紙のやりとりは行うようになった。



■ロッカの後日談

 交国計画の後始末で多忙なフェルグスやヴァイオレット達に代わり、グローニャと共に一度ネウロンに戻った


 護衛としてついてきてくれた<北辰隊>の力も借りつつ、現状に納得できていないエデン構成員やブロセリアンド解放軍の兵士らの説得を行っている。


 解放軍の兵士達に敵意をぶつけられても、より良い未来を模索するために話し合おうとしている。親友との後悔を胸に、歩き続けている。



■グローニャの後日談

 ロッカと共に一度ネウロンに戻り、不安で怯えているエデン構成員らをなだめ、落ち着かせるために奮闘している。


 全ての罪をカトーに押しつけている者達にやんわりと説得を続けているが、それに関してはあまり上手くいっていない。「カトーもお前も裏切り者だ」となじられる事も多いが、それでもエデン構成員らに寄り添い続けている。


 また、殺処分の話が進んでいたタルタリカの保護活動も積極的に行っている。


 バフォメットが配下に置き、繁殖させていたタルタリカの生き残り達はバフォメットの指示無しでも人を襲わない傾向となっていた。しかし世界(ネウロン)人口の大半を消した脅威だけあって、多方から「殺処分すべき」という声があがっている。


 しかしグローニャは殺処分に反対し、交国の支援も受けてネウロンの片隅でタルタリカ達を何とか守ろうとしている。



■ダグラス・レンズの後日談

 北辰隊の部下達を率い、ロッカとグローニャの護衛としてネウロンに戻ってきた。大きな争いは起きていないものの、争いの火種がくすぶり続けているネウロンにグローニャ達が戻るのに難色を示していたが、見守る事を決める。


 ただ、2人に「たまには気晴らしに行こう」とピクニックに誘い、そこで蜂蜜苺入りのジャムと紅茶を振る舞った。


 お茶の準備になれていないレンズはかなり苦戦した。バタバタと大慌てでお茶を淹れるレンズの姿を見て、グローニャは久しぶりに笑い、久しぶりに泣いた。



■ラプラスとエノクの後日談

 プレーローマに滞在したのも束の間、<雪の眼>としての業務を続けるために別の世界に向かった。


 癒司天はあの手この手で弟を引き留めようとし、実力行使にも出たが、史書官の護衛は史書官を乗せた自転車で爆走し、癒司天が派遣した兵士を振り切って別の世界に旅立っていった。


 1人は真白の魔神、もう1体は源の魔神を探し認め、再び旅立っていった。



■オズワルド・ラートの後日談

 諸々の後始末を片付けつつ、会いたくてたまらなかった相手と会えなかった時間を埋めていく。再会できたら言おうとしていた言葉は恥ずかしくてなかなか伝えられなかった。


 ただ、ラートともう1人の様子をよく見守っていたフェルグス・マクロイヒは、何度も好機を逃し続けているラートの背を叩き、彼の告白を促した。ラートはフェルグスの言葉に勇気をもらい、想い続けていた相手に告白した。



■フェルグス・マクロイヒの後日談

 様々な想いを託されたフェルグス・マクロイヒは、その想いに押しつぶされそうになりながらも奔走を続けた。


 奔走し、時に苦しむ彼が背負う荷物を一緒に背負ってくれる頼りになる存在は大勢いた。彼は皆に感謝しつつ、奔走の日々を続けた。


 弟の名も借り続け、弟の存在を心の支えとして戦い続けた。


 時には立ち止まり、大事な友人と姉(自称)の結婚式に出席する事もあった。ささやかながら賑やかな式で、彼は久しぶりに羽目を外して楽しんだ。


 ブーケ代わりに放られたぬいぐるみを制作者がうっかり掴んでしまったのを見て笑い、そのぬいぐるみが赤い花型の植毛を持つ女の子に渡されるのを見て、囃し立てるなんて事もした。


 ひとしきり楽しんだ後、彼は新しい日常へ戻っていった。それは平和で穏やかなものではなかった。多次元世界は争いの火に焼かれ続けた。


 それでも彼は、平和で穏やかな日々を取り戻すために走り続けた。




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