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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.3章:夢破れし者達
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過去:遊星



■title:人類連盟支部にて

■from:遊者(プレイヤー):【船長】


「【後援者】はどこだ!? 手引きしたのはどうせ奴だろう……!?」


 苦労して造り上げた新たな秩序の神が……<メフィストフェレス>が死んだ。


 人類連盟を造り上げ、着々と人類文明を支配していた秩序の神が死んだ。


 死んだとはいえ、奴は転生する。転生するが……こちらの手中から逃れ、どこかに行ってしまった。捜索を続けているが未だに奴は見つかっていない。


 何者かが愚かな新人類(にんげん)を手引きした事で、メフィストフェレスは自殺した。おそらく敵対者の手に落ちるぐらいなら死んでやろうと安易に死を選んだのだろう。


 我らが奴を作るためにどれだけ苦労したかも知らずに……!


 愚者達を手引きした何者かの正体は【後援者】だろう。奴は<観測肯定派われら>の同志でありながら、メフィストフェレスを使う事に否定的だった。


 だから、愚者達を手引きして妨害してきたのだろうと思ったが……奴にはアリバイがあった。今回の事件に奴は関与していなかった。


「では、一体誰が!?」


「<観測否定派>の連中……例えば、【絵師】ではないか?」


 有り得る話だ。


 奴らは我らと同じ遊者(プレイヤー)でありながら、<予言の書>を紙切れに変えようとしている。あの御方より賜った予言の書(ギフト)を貶めようとする狂人共だ。


 奴らは先代の秩序の神たる<アイオーン>の存在も疎んじていた。


 アイオーンという強力な神を使う事で、観測肯定派が世界の舵を握っている状況を疎ましいと感じていた。我らの敵だった。


 アイオーンに関しては……あまりにも力が強すぎた結果、観測肯定派(われわれ)ですら舵を操るのが難しくなったため、止むなく観測否定派と一時手を組んでも処分する事になったが……奴らと和解したわけではない。


 今度こそ観測否定派を消し去るためにも――アイオーンより舵取りが容易な――新たな秩序の神を造り上げた。それがメフィストフェレスだった。


 偽典聖剣(ラプラス)を使ってメフィストと原典聖剣(ヴォーパルソード)の接続を確立し、奴に神の力を与えてやった。それによって奴らは人類文明に強力な技術(ひかり)をもたらし、新たな秩序を造り上げるはずだった。


 秩序の神という光が作る影の中、我々の新たな王国を作るはずだった。


 それを中断せざるを得なくなった。メフィストフェレスの死で……。


「【占星術師】と【詐欺師】は何をやっている! 人連の警備は奴らに任せていただろう!? いったい、どこで油を売って――」


「手引きしたのは、あの兄弟では……?」


「あの馬鹿共に、こんな計画が思いつくはずがないっ!!」


 【占星術師】も【詐欺師】も我らの走狗。


 ろくな予言の書を持っていないがゆえに、我らの残飯で生きている犬共だ。


 犬としては役に立つが、人としては役に立たん奴らにこんな事が出来るはずがない。やってしまえば自分達の首も絞めてしまうから、余計に――。


「だが事件以降、奴らが姿を消しているのはおかしい」


「【絵師】に引き抜かれたのではないか?」


「……いや、そんな……馬鹿な話が……」


「とにかく、メフィストフェレスを連れ戻さねば。奴を再調整して――」


「待て、誰か来て――」


 同志の眼球に矢が突き立った。


 その矢から刺々しい葉と赤い実が生え、絶叫する同志を食い殺していった。


 敵襲。だが、恐れることはない。


 ここにいるのは遊者。戦闘に長けた者達もいる。


 多次元世界の真の支配者である我々が、新人類如きに負けるはずがない。


「応戦するぞ! 身の程をわきまえさせてやって――」


「相手は遊者狩り(プレイヤーキラー)……<夢葬の魔神>の使徒だ!!」


「なっ……!? な、何故、奴の使徒がここに――」


 それは聞いていない。人外の相手など、していられるか。


 闇雲に戦おうとする馬鹿共が、次々と飛来する矢に射殺されていく。馬鹿を盾にしつつ、地下に向かう。念のため用意しておいた脱出路を使えばいい。


 脱出路の暗闇に逃れる。このまま全力で逃げれば、生き残れる。


 前向きに考えよう。


 夢葬の魔神の使徒の襲撃で痛手を受けたが、邪魔な同志(ライバル)が消えたと思えばいい! この機会に観測肯定派内での地位をさらに向上させれば――。


「――――」


 暗闇の中に誰かがいる。


 長い耳を持つ幽鬼の如き存在が、こちらを見て――。


「まさか、双子の吸血鬼……!!」


 最悪だ。よりにもよって、貴様らが来ていたのか。


 恐怖で心臓が縮む中、(なにか)を踏んだ。


 それが、こちらの全身を貫いて――――。




■title:人類連盟支部の地下にて

■from:<夢葬の魔神>の使徒


「兄上、【船長】の捕獲に成功した」


 弓矢を使い、面倒なプレイヤーの追い込みを行ってくれた兄に感謝する。


 地上部にいたプレイヤーも兄上が壊滅に追いやってくれた。


 ひとまず、この場のプレイヤーは片付けた。だが、これが全てではない。今回は観測肯定派の下っ端を処分しただけだ。蛆虫はまだ大勢、どこかに巣くっている。


 戦いは終わらない。


 根を断たない限りは――。


「…………。マーリン、回収を頼む」


『はいは~い。お任せお任せ~』











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