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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
833/875

当たり前のこと やりたかったこと 守りたかったもの



■title:交国首都<白元>にて

■from:ヴァイオレット


「ふぇ、フェルグス君、大丈夫なの……!?」


 全身を流体甲冑で包んだフェルグス君に助け起こされる。


 頷いたフェルグス君が私を背に庇い、剣に手をかけた。


「――――」


 機兵が――いや、バフォメットさんがこちらに這い寄ってくる。


 真白の魔神は倒した。フェルグス君が倒してくれた。……バフォメットさんが真白の魔神に逆らってくれなかったら、勝てなかったかもしれない。


 私を庇ってくれているフェルグス君の腕を押さえ、「大丈夫」と言う代わりに頷く。多分、バフォメットさんは私達の敵じゃない。


 お礼を言うために歩み寄ると――。


『す…………スミ、レ……』


「…………」


 バフォメットさんが私に対し、そう言って来た。


 バフォメットさんはもう敵じゃない。


 けど、錯乱している様子だった。




■title:交国首都<白元>にて

■from:ただの父親


『スミレ……』


 自分の内側にいた「悪しき者」は倒した。


 悪しき者の魂(メフィストフェレス)は、消えた。


 甲冑の戦士が、悪しき者を倒してくれたようだった。


 その戦士が「スミレ」を守るように立っている。


 お前、まさか、ヴィンスキーか?


 そうか。やはり、お前は見込みがあると、思って――。


 ああ、今はそれより……。


『スミ、れ……。無事、だった……カ……?』


「――――」


 私の、大事な子。


 大事な娘。


 …………なぜ、大事だった?


 なぜ、守った?


 わからない。


 思い出せない。


 思い出せないが……重要ではない。


 きっと、娘だからだ。


 私の、大事な……大事な一人娘。


 親が我が子を守るのに、理由など、いらん。




■title:交国首都<白元>にて

■from:ヴァイオレット


『スミ、れ……。無事、だった……カ……?』


「――――」


 バフォメットさんは錯乱している。


 私を、自分の娘だと勘違いして――。




■title:交国首都<白元>にて

■from:ただの父親


「――大丈夫だよ。私は、全然……大丈夫」


『ソう、か』


 そうか。


 良かった。


「貴方が…………お父さんが、守ってくれたから……大丈夫だよ」


『…………そうか』


「ありがとう。お父さん」


 礼を言われる事ではない。


 当たり前の事をしただけだ。


 良かった。


 今度こそ、守れて良かった。




■title:交国首都<白元>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


『…………』


 半壊した機兵を何とか動かし、ヴィオラ姉さんのところへ向かう。


 静かだ。


 ついさっきまで激しい戦闘の音が鳴り響いていたのに、何の音も聞こえない。


 辺りは、しんと静まり返っている。


 交国計画の兵器群は完全に動きを止めている。


 真白の魔神の魂も、エレインの一刀で消えた。


 その傍にいた魂がまた1つ、消えていくのが観えた。


 お礼を言う暇もなかったけど――。


『……後で言えるか』


 死後の世界があれば、また会えるだろう。


 僕も、同じ場所に行くんだから。











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