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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
830/875

不知の太刀



■title:交国首都<白元>にて

■from:ヴァイオレット


「――――!!」


 タマちゃんの名前を叫んだものの、叫びは爆音にかき消された。


 爆発の振動で立ってられない。


 タマちゃんが助けてくれた。


 タマちゃんのおかげで爆発に巻き込まれなかった。


 多分、タマちゃんが権能を使ったんだ。


 光速移動して、爆弾を遠くに運んだんだ。


 私達を庇って、タマちゃんは――。


「タマちゃん……! なんでっ……!!」


「いや、そのぅ……他に手がないと思って……」


「あれっ?!! タマちゃん!!?」


 タマちゃんが戻って来た。


 全身義体の人に首根っこを掴まれ、戻って来た。


 気まずそうにしているけど、怪我をしている様子はない。


 駆け寄って無事を喜び――おそらくタマちゃんを助けてくれたであろう――全身義体の人にお礼を言う。方法はわからないけど、この人が助けてくれたんだろう。


 お礼を言うと、全身義体の人は「気にするな」と言うように軽く手を上げた後――石守素子さんに向け、頭を下げた。


 全身義体(からだ)から僅かに機械の駆動音が聞こえる。


 交国の人みたいだけど、交国計画の支配下に組み込まれていないって事は……義体化部分が多いから、支配されずに済んでるって事?


 でも、この人……誰?


 味方みたいだけど……。




■title:交国首都<白元>にて

■from:影兵


「ありがとうございますっ! タマちゃん、助けていただいて……!」


 ヴァイオレットに対し、「気にするな」と言う代わりに軽く手を上げる。


 危ういところだった。


 ようやく護衛対象を見つけたというのに、戈影衆の生き残り(ヒスイ)が爆弾を抱えて逃げ始めたので手間取った。全員無事だったから良かったが――。


『救援が遅くなり、申し訳ありません。素子様』


「おぬしが謝る必要はない。……苦労ばかりかける」


『貴女を守るのが私の役目です。お気になさらず――』


 そう言った瞬間、素子様の背後に爆弾が現れた。


 敵は先程と同じものを、懲りずに再生成してきたのだろう。


 このままだと全員死ぬが――。


『――――』


 素子様の背後に回り、爆弾に触れ、権能を使用する。


 遠所に仕掛けた血標(マーカー)に爆弾だけ移動させ、破滅を回避する。


「えっ、いま、何したんですか? 何したんですか!?」


『そんな事より逃げるぞ。……素子様、足下にお気をつけください』


「うむ」


「というかその人、どなたですか!?」


 説明する必要はない。


 生者(おまえ)達が、死者(わたし)を記憶する必要はない。




■title:交国首都<白元>にて

■from:真白の魔神・メフィストフェレス ver.17.1.0


「しくじった? 二度も……?」


 ヴァイオレットを殺せていない。今度は偽者を掴まされたわけじゃない。


 交国計画を使って爆弾を送り込んだのに、ヴァイオレットを巻き込めなかった。


 私と違って交国計画の演算支援のないヴァイオレットでは防げない爆発だったはず。けど、何らかの方法で対応された。


『真白の魔神!!』


「キミもしつこいな……!」


 2回も殺し損ねているうちに、やや面倒な位置に押し込まれた。


 殺すべき相手が――ヴァイオレットが潜伏している場所の地上部に追い込まれた。ここだと私とフェルグス・マクロイヒを巻き込みかねないから、交国計画による区画爆破は使えない。チマチマと殺しにかかる事しか出来ない。


 無尽蔵の戦力がある以上、押し負ける事はない。


 それに、ここまで押し込まれるのは予定通り――。


「――――」


 北辰隊からの射撃を流体装甲の壁で弾く。


 こっちの防御権能(カノン)がなくなった事で、彼らの攻撃も私に通りかねない。少しの油断が破滅に繋がりかねない。


「不確定要素は、なるべく潰しとこう……!」


 邪魔者は一気に消しにかかる。


 フェルグス・マクロイヒの機兵をバフォメットで押さえつつ、交国計画で造り上げた防壁で北辰隊を分断する。


 フェルグス・マクロイヒを巻き込まない形で爆撃を行い、北辰隊の機兵を確実に仕留めていく。巫術師共を退場させていく。


 これで北辰隊の機兵は残り1機。


 フェルグス・マクロイヒの機兵と合わせて残り2機。


 どっちも戦闘のダメージが蓄積し、戦闘能力は低下している。確実に追い詰めることが出来ている。そして、位置取り(・・・・)も悪くない。




■title:交国首都<白元>にて

■from:<北辰隊>副長のオズワルド・ラート


『すみません、副長……!』


「大丈夫だ! 後は俺達に任せて離脱しろ!」


 俺とフェルグス以外の機兵が、全部やられた。


 俺の機兵もフェルグスの機兵も満身創痍。交国計画による攻撃を何とか凌ぎつつ、フェルグスと合流して命を繋ぐ。


「フェルグス、スマンがまだ付き合ってもらうぞ!」


『わかってる。けど、機体が……』


 まだ戦えはするものの、機体の状態が良くない。


 流体装甲で破損箇所を整えて直しているが、巫術無しではとっくに戦闘不能になっている。……巫術有りでも戦闘能力が低下している。


 真白の魔神の戦闘能力も低下している。防御権能を失った事で確実に弱くなっているが……鉄壁の防御を削ってもなお、圧倒的な物量が厄介だ。


 何とかヴィオラがいる場所の地上部まで追い込み、ヴィオラ達をフェルグスの権限で守っているが――。


『罪人よ、音に聞け』


「――――」


 機兵化したバフォメットが、再び大太刀を構えた。


 交国計画から独立しているバフォメットなら、フェルグスにも攻撃できる。


 あの雷撃はマズい。


 直撃したら、俺達は一瞬で屠られ――。


「フェルグス、逃げ――」


『駄目だ! 射線上にヴィオラ姉がいる!!』


「――――」


 回避は不可能じゃない。


 だが、ヴィオラ達は無理だ。


 俺達がヴィオラを守れる位置に移動したんじゃない。


 真白の魔神が、ヴィオラごと俺達を狩れる位置に誘導してきたんだ。


 繊三号基地でバフォメットが船を狙った時のように。


 なら、ここは――――。


「フェルグス!」


『…………!!』


 フェルグスの操る機兵が、俺に向けて手を伸ばしてきた。


 大太刀が振り下ろされる中、俺と同じ意図で機兵を合体させた(・・・・・)




■title:交国首都<白元>にて

■from:真白の魔神・メフィストフェレス ver.17.1.0


『――――』


 振りかぶった剣に流体(エネルギー)を流し込む。


 敵は逃げない。回避しない。


 踏みとどまり、2機の機兵を合体させてきた。


 お互いの機兵から無事な部品を瞬時に見繕い、ニコイチ機兵を造り上げてきた。


 その機兵で、大剣を構えてきた。


 だからどうした。


『我は神鳴(かみなり)――燼器解放ッ!!』


 キミ達に、この一撃を止める方法は存在しない。


 私が知る限り(・・・・・・)、存在しない……!!




■title:交国首都<白元>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


「『受けて滅せよ』」


 機兵の制御をラートに任せる。


 流体の制御は僕が担う。


 この状況。


 その(わざ)


 どちらも初見じゃない。


 落ち着いて、剣を振るえばいい。


 繊三号(まえ)と同じように――――。


『「――溝式煌剣(カレトヴルッフ)」』





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