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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
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【貴女は無敵ゆえに孤独である】



■title:交国首都<白元>にて

■from:プレーローマ工作部隊<犬除>隊長・ラフマ


「やっぱ敵かよ!!」


 拳銃を構え、引き金に指をかけた泥縄商事の社長にヨモギが突進する。


 撃たれたところでスアルタウ君にトドメを刺すだけ。でも、とりあえず制圧させておく。泥縄商事に期待したのが間違っていた。


「そうか! そういう事かぁ!! わかった!!」


「ヨモギ、そのまま首をへし折って」


「言われるまでも――!」


「待った!! 待った待った待った!! 裏切ったわけじゃないからぁ!!」


 泥縄の社長は必死にヨモギの腕を叩き、命乞いをしてきた。


 先程の行動は裏切りではないと言い張り、その理由を説明してきた。


 聞くだけ聞いてあげたけど――。


「…………なにそれ。何でそんな事に(・・・・・)なってんの……?」


「そこまでは知らないよ!! でも実際、そういう事なんだよ! いやぁ~、1つ疑問が解けたよ。この子に勝てないわけだよ」


 意味不明だ。


 いや、理屈は説明してもらったけど、それでもなお「意味不明」と言いたい。


 なにそれ。そんなのアリ?


「泥縄の社長の見立ては、おそらく正しい」


 そう保証したのはサリエル閣下だった。


 意識を取り戻さず、確実に死に向かっているスアルタウ君への処置を続けつつ、泥縄社長の「トンデモ話」を保証してきた。




■title:交国首都<白元>にて

■from:史書官ラプラスの護衛


「フェルグス・マクロイヒは、普通の人間ではない」


 おそらく、仕込んだのはロイだろう。


 奴は最初からマクロイヒ兄弟に切り札を託していたのだ。


「そもそも、この子は7年前に死んでいたはずだ。ネウロンで弟と共に――」


「でも、この子は生きています! アル君が命懸けで助けたから……!」


「それもおかしい(・・・・)んだ」


 マクロイヒ兄弟は7年前、ラート軍曹と共に死んでいたはずだった。


 しかし、死んだのは1人だけ。死んだのは弟だけだった。


「フェルグス・マクロイヒは、オズワルド・ラートと共に生き残った。その時点でおかしかったのだ。アレは輸血だけで何とかなるものではなかった」


「エノクが治療に手を貸したから、何とかなったのでは?」


「違う。ワタシが手を貸さずとも、生き残っていたはずだ」


 ワタシが処置する前に、フェルグス・マクロイヒは助かっていた。


 何者かが彼らを救ったのだ。


 その何者かは、おそらくスアルタウ・マクロイヒだけではない。


 そう断言すると、ラプラスが少しムッとした様子でワタシを咎めてきた。


「おかしいと気づいていたなら、私に報告してくださいよ」


「聞かれなかったからな」


「ンモ~……! 指示待ち天使!!」


「ともかく、フェルグス・マクロイヒは普通の人間ではない。7年前に死なずに済んだのとは別に(・・)、明らかな『異常』が存在している」


 泥縄の社長は、異常(それ)に気づいた。証明した。


 先程の戦闘で気づくきっかけがあったのだろう。


 だが、奴は気づけなかった。


 バフォメットは、それに気づけなかった。


 だから奴は負けたのだ(・・・・・・・・・・)


 その事を簡潔に説明すると、工作員(ラフマ)達も一応納得した様子だった。納得し難い話だろうが、事実としてフェルグス・マクロイヒは生き残ってきたのだ。


「この男は<交国計画>の天敵だ。しかし……もう直ぐ死ぬ」


 これはもう助からん。


 ヴァイオレットの処置は的確だったが、環境が悪すぎる。


 真白の魔神から与えられた銃創は、命にまで達している。


 あと数分の命だ。


 7年前にこの命を救った者が、再び助けてくれるなら状況は変わるが――。




■title:交国首都<白元>にて

■from:使徒・マーリン


「……悪いけど、今回は(・・・)手を貸せないよ」


 マクロイヒ兄弟は残機を使い切っている。


 彼らは2回まで(・・・・)死をチャラにする事が出来た。


 けど、その権利はもう使い切っている。


 7年前に使い切っている以上、こっちは……手を貸せない。




■title:交国首都<白元>にて

■from:ヨモギ


「…………」


 泥縄の社長の話は理解しがたい。与太話だ。


 だが、死司天までその与太話を支持している以上、事実なんだろう。


「……交国計画の天敵、か」


 真白の魔神を倒さなければ、プレーローマは滅びるかもしれない。


 武司天まで倒せるかはともかく、武司天が生き残っても他が持たないだろう。プレーローマ領は交国計画に蹂躙され、組織も滅びるだろう。


 組織は滅びてもいい。


 プレーローマなんて、最初から存在しなくて良かったんだ。


 けど、プレーローマが滅びると、アイツが――。


「…………。隊長、俺に考えがあります」


「駄目よ」


 隊長は俺の考えを直ぐ察したらしい。


 有り難い。説明する手間が省ける。


「真白の魔神に勝つには、もうスアルタウに賭けるしかない」


「…………」


 隊長もわかってくれている。


 その証拠に、視線を逸らした。もう止めて来なかった。


 俺は大した戦力にならん。


 だが――。


「権能起動」


 まだ、出来ることはある。






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