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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
811/875

人、交じりて国となる



■title:交国首都<白元>にて

■from:使徒・丘崎獅真


「バフォメット……!?」


 方舟の装甲がこじ開けられ、そこからバフォメットが落ちてきた。


 生気を感じないが、かつての戦友が――バフォメットが目の前にいる。


「バフォメット、俺だ! 獅真だ!」


「無駄だよ。この木偶の坊は……もう何も覚えていない。他者に判断を委ねた結果、ただの道具になっちゃったんだよ」


「テメエの仕業か!」


 小娘は肩をすくめ、「何もかも私の所為にしないでよ」と言い、黙ったまま突っ立っているバフォメットの身体を撫でた。


 そして、バフォメットが抱えている坊主の顔を撫でた。


「バフォメットの記憶と自我を消したのは、この子……レオナール君だよ。この子が今のバフォメットの契約者なんだよ」


 小娘がバフォメットに促すと、バフォメットは抱えていた坊主をこちらに投げてきた。契約者とは思えないほどぞんざいに投げてきた。


 バフォメットは明らかに小娘に従っている。


 ネウロンで別れた時、バフォメットは自分の意志を放棄したがっていた。真白に懇願し、統制戒言を使った命令権限を追加させた。


 それによって、自分を起こした「契約者」に何もかも従う仕組みを構築した。


 ただ、バフォメットが従うのは契約者だけじゃない。


 もう1人、存在する。


「まあ、レオナール君も【占星術師】に色々と吹き込まれただけなんだけどね。私の都合良く動いてくれるよう、脳もちょっぴりイジらせてもらったし」


「お前は、誰だ」


キミ達は(・・・・)、もうわかるでしょ?」


 小娘が――小娘らしからぬ――妖艶な笑みを浮かべ、くすくすと笑った。


 その笑い声が響く中、俺の手中にいる奴が口を開いた。


「キミが、本物の<真白の魔神(メフィストフェレス)>なんだね」




■title:交国首都<白元>にて

■from:メフィストフェレス・C


「あはは。何を言っているの小人さん。あなたこそが真白の魔神でしょう?」


「違うよチクショウ……! ボクは、アンタが作ったコピーなんだろ!?」


 丘崎獅真の手中から、「本物」に向けて叫ぶ。


 いま、ようやく気づいた。


 ボクは真白の魔神じゃない。


 自分を「真白の魔神だと思い込んでいた複製体(コピー)」だったんだ!


「キミは【占星術師】と共謀して、丘崎獅真を<武司天>にブツけた!」


 ここまでは【占星術師】の計画通り。


 彼もキミも丘崎獅真が邪魔だと考えていた。だから真白の魔神自身が囮となり、丘崎獅真を誘導。武司天に丘崎獅真を始末させようとした。


「囮になったキミは死亡後、【占星術師】に預けた<毒林檎>を使って『この身体』に転生してくるはずだった」


 【占星術師】視点だと、そこまで成功したはずだった。


 矮小な器に閉じ込められた真白の魔神は御役御免。目の届かないところで悪さをしないよう、拘束して【占星術師】の手元で管理されるはずだった。


 実際はそうならなかった。


 真白の魔神は【占星術師】を疑っていた。当然。彼のことなど信用していなかった。だから、自分の魂を預けるのは危険だと思っていた。


 だから――。


「キミが【占星術師】に渡したのは<毒林檎>じゃない。元々、この小人の身体に入っていた意識を――ボクを目覚めさせるための覚醒薬だったんでしょ?」


「ふふ……。正解。キミのおかげで彼の死角に逃れる事が出来た」


「そのうえ、交国政府の中枢に近づく事に成功した」


「全て予定通りとはいかなかったけどね。レオナール君がしくじったから」


 【占星術師】は自分の手元に真白の魔神がいると勘違いした。


 結果、真白の魔神の現在位置を知る者はいなくなった。その隙に「本物の真白の魔神」は一気に交国政府の中枢に近づく事に成功した。


 全てを掻っ攫うために――。


「ボクを……ボクを囮に使ったなぁ!? ちくしょうっ!! なんかおかしいなぁとは思ってたんだよ!! 何のアイデアも湧いてこないから……!!」


「あはは、ごめんね? コピー(キミ)のおかげで好き勝手できたよ。でも、こっちはこっちで苦労したんだよ? 危ない橋を渡ってきたんだから」


 真の真白の魔神は朗らかに笑い、ボクを指さしてきた。


「ともかく、ご褒美をあげないとね」




■title:交国首都<白元>にて

■from:ver.17.1.0


救済執行(オーダー)。自害しなさい、我が複製体(コピー)


 用済みになった囮に対し、命令を放つ。


 事前に仕掛けておいた統制戒言が起動し、小人の器が「ぷくり」と膨れ、風船のように弾けていった。血肉が弾け、死んだ。


 あの子はこれで終わり。転生もしない。


 私の複製体といっても、【占星術師】の目を誤魔化すために作った囮に過ぎないから、異能は一切持っていない。私の記憶を一部受け継がせただけ。


 丘崎獅真は自分の手中で死んでいった小人に対し、少しだけ顔をしかめたものの、直ぐに私を睨み付けてきた。


「真白。何でテメエがここにいる」


「花は咲く場所を選べず、人は親を選べない。……けど、私は魔神(カミ)だから俗世の理に縛られない。どこで咲いてもいいし、何をしてもいいの」


「お前、小学校から人生やり直せ。質問の回答としてはクソだぞ。俺が教師なら答案にバツするどころか、親を呼んで話し合うぐらいだぞ」


「相変わらず塩対応だなぁ、キミは……!」


 苦労してここまで辿り着いただから、もうちょっとカッコつけさせてよ!


「わかった、結論を言おう。私は<交国計画>を掌握したいの」


「そのために自分の死を計画に織り込んだ。いつものように」


「そう。で、今回の犠牲者はこの子……石守桃華」


「お前、そんな子供の身体を……意図的に奪ったのか」


「いや、これは事故なんだよ! ホントはそこの石守素子の身体を頂戴する予定だったんだけど、レオナール君がトチったみたいでさぁ……! 石守素子じゃなくて、この子が<毒林檎>の犠牲者になったわけ!」


 命令(オーダー)で縛り、黙らせている石守素子の表情が変わる。


 娘のことが心配なんだろうけど、今は黙っててね。


 先代の私――明智光の身体に転生した私は、ネウロンで魔物事件を起こした後に<ゲットー>に渡った。


 そこでレオナール君と接触し、彼の頭をちょこっとイジりつつ、恩を売った。交国軍に殺されないように逃がしてあげた。


 その恩を足がかりに「石守素子を毒殺しよう」と誘導した。そのための「毒薬」と偽った<毒林檎>を渡しておいた。


 ただ、レオナール君は一度しくじったようだ。


 <エデン>による黒水襲撃の時に一度、毒林檎を使ったみたいだけど……その時は失敗したらしい。その後、成功したと思ったら私が転生したのは「石守桃華」の身体だった。


 レオナール君は私の企みなど知らないから、下手したら「石守桃華になった私」は彼に殴り殺されていただろう。彼女はもう死んでいるけど、彼女の肉体は私のモノになっているからね!


 けど、彼が助けてくれた。


 スアルタウ君が助けてくれた。


 本当に助かったよ。


 メイヴという巫術師のフリをして、【占星術師】の情報を少し渡しただけで【占星術師】まで倒してくれるとは思わなかった!


 私が全てを掌握しきる前にやってきた天使(ラフマ)達もスアルタウ君が見つけ、制止してくれた。あれもいい時間稼ぎになったよ!


「全て計画通りにはいかなかったけど、賭けには勝った。これで総取りだ」


「転生で自分の記憶を無くす可能性は考えなかったのか?」


「考えたさ。そこも含めて『賭け』だったんだよ」


 今代(いま)真白の魔神(わたし)が全て忘れる可能性もあった。


 そしたらもう<交国計画>の掌握どころではない。先代の私が考えた計画も全てパァになっていただろう。けど、私は賭けに勝ったのさ。


 記憶に多少の欠落はあるけど、大きな問題はない。


 石守桃華のフリをして大人しくしておき、一連の騒動に乗じて玉帝への接触に成功した。全て掻っ攫う事に成功した。


「成功したとはいえ、かなり綱渡りの計画ではあったんだよ。……石守素子の身体ならここまで苦労せず、玉帝に会えたんだけどねぇ」


 石守素子なら玉帝の傍にすんなり行けたはずだ。


 石守桃華は石守素子にとても大事にされている。ただ、「玉帝に会いた~い」と言いだしても面会は出来なかっただろう。玉帝と石守素子の関係は冷え切っているからねぇ……。


 ただ、一連の騒動で一番安全な場所に――玉帝の傍に移動させてもらう事が出来た。危うかったけど、宗像特佐長官達にも殺されずに済んだ!


「何故、リンゴに――玉帝に会う必要があった」


「<交国計画>掌握のためには、この子を足がかりにする必要があったんだよ」


 交国計画(システム)への足がかり(アクセス)に、この子が必要だったんだ。


 チラリと、足下の玉帝を見る。


 この子は私の正体に気づきそうだから気絶させておいたけど、ついに目覚めたみたいだ。呻く玉帝を足蹴にしつつ、続きを話してあげる。


「玉帝がヴァイオレットちゃんを使って、交国を作った頃の真白の魔神を……<太母>を復活させようとしていた。その隙に私の方でも必要なものを手に入れさせてもらったワケ」


 ヴァイオレットちゃんへの上書き作業(オーバーライド)に時間がかかったのは、私が横槍を入れた影響もあったのさ。


 <太母>なんてカビの生えた存在は復活しないでいいけど、彼女の持っていた知識は欲しいからね。玉帝が上書き作業に集中している隙に、ちょちょいと必要な情報も奪わせてもらったのさ。


 今代の真白の魔神(わたし)は交国計画の使い方を知らないからね。


 私は交国計画の詳細も、作り方も忘れてしまっていた。


 けど、<太母>のバックアップデータから学ばせてもらったよ。


「そこまでして欲しかったのか、交国計画とやらが」


「悪い? これは元々、真白の魔神(わたし)のものだよ?」


「違う!! 交国計画は貴様のものではない! 太母のものだ!!」


 私に足蹴にされた玉帝が叫んだ。


 うるさいので足に力を込めつつ、言葉を紡ぐ。


「私は真白の魔神であり、<叡智神>であり、<太母>であり、<メフィストフェレス>だ。真白の魔神(わたし)の遺産は、全て私のものなんだよ」


「お前は<太母>の記憶など、何1つ覚えていないでしょう!?」


「いいや、ついさっき手に入れたよ。<太母>のバックアップデータから必要になる記憶(もの)は全て奪わせてもらった」


 必要ないものも、ちょっとサルベージしちゃったけどね。


「だから太母の考えもわかる。玉帝、太母はねぇ……キミの前任者達の失敗から学び、キミの脳もイジっていたんだよ。何があっても太母(じぶん)を盲信するよう、キミを『都合の良い道具』として設計していたんだよ」


「デタラメを言うな!! 貴様は……太母ではない!! 私の、お母様ではない!! 虚言を吐くな、穢れた魔神め!!」


制作物(むすめ)に暴言を吐かれるって、悲しいねぇ」


 そう言いつつ、制作物(むすこ)に視線を移して同意を求める。


 返ってきたのは殺意の籠もった視線だった。どっちも反抗期かな~?


「何にせよ、交国計画は私のものになった」


 <太母>が「人類救済」とやらに使おうとしていたシステムを手に入れた。


 指を鳴らし、空間投影ディスプレイを表示する。


 鳴らしたつもりだったけど、石守桃華ちゃんの指では上手く鳴らなかったけど、指を鳴らした効果音を鳴らしたからバレてないバレてない……!


 表示したディスプレイには、多次元世界各所の映像が流れている。交国領に限らず、他国領やプレーローマ領の映像も流れている。


 各地で「戦闘」と「生産」、そして「演算」が行われている。


 交国計画の一部に組み込まれていた人々が一斉蜂起し、敵に向かっていく。近くに敵がいない者達は演算作業を代行し、世界越しに後方支援を行わせていく。


 人類に限らず、一部の天使達も操っていく。


 誰も彼も、顔に恐怖を張り付けている。何が起きているかわからないもんねぇ。自分達の意志に反して身体と脳が動いているもんねぇ。


「交国計画ってのは、人間や天使を駒として操る兵器か?」


「それは機能の一部でしかない」


 重要な機能だけど、それが全てではない。


 交国計画はそこまでちゃち(・・・)なモノじゃない。


「知的生命体の操作は<統制機関ドミナント・プロセッサー>という機構が司っている。コレのことは、キミも知ってるよねぇ?」


「統制機関は……完成しなかったはずだ!」


 過去を思い出しているのか、丘崎獅真は表情を歪めている。


 自分の弱さから、主である真白の魔神を武司天に討たれた時の事を思い出しているんだろう。私は覚えていないけど、表情から察するに苦い記憶なんだろうね。


「アレが完成する前に、真白は死んだ」


「ところがどっこい、<太母>は完成させていたんだよ」


「馬鹿な……! そんなはずは――」


「不可能ではないでしょ」


 <叡智神>も<太母>も真白の魔神(メフィストフェレス)だ。


 記憶は違えど、持っている異能は同じ。同じく発明に長けた存在なら同じ答えに辿り着いてもおかしくない。用途は異なるだろうけどね。


「ネウロンにあった試作型は私が壊しちゃったけど、交国の統制戒言はアレの比ではないほど強化されている」


 再び指を鳴らすと、周囲の交国人が一斉に動いた。


 一糸乱れぬ動きで左手を上げた。玉帝も飛び起き、左手を上げた。


 画面の向こう側にいる者達も一斉に同じ動作をした。


「このように、私の一存で支配下にいる者達全員を傀儡に出来るんだよ」


 ネウロンにあった試作品は、思想を緩く誘導する事しか出来なかった。


 交国の完成品は、一挙手一投足まで操作できる。


 <蟲兵>のような事が出来る。ただ、蟲兵と違って規模が段違いだけどね。そもそもアレは統制機関の失敗作のようなものだ。


 蟲兵には、「大事なもの」が無いからね。


 蟲兵は「感情」を失ってしまう。


 混沌は感情から生じ、混沌機関は混沌によって動く。大事なエネルギーを生産出来なくなった蟲兵より、生産できる者達の方が優れている。


 <太母>は厳しい強制能力と感情の存続を両立させてみせたんだ。<叡智神>もいずれそこに至れたかもしれないけど、甘っちょろい彼女の場合は至れても悪用しない道を選んだかもだけどね。


「待て。何で玉帝(リンゴ)も従えてる。そいつの|統制戒言《ドミナント・レージング統》は破壊したはず……」


「ああ、確かに壊れていたみたいだねぇ」


 太母の記憶には残っていないけど、太母が死んだ後に壊されたんだろうね。


「けど、愚かな玉帝は壊れた統制戒言を修復したみたいだよ? 完全に修復できたわけではないけどね。まあどっちにしろ、今は交国計画の統制機関ドミナント・プロセッサー経由でも操れるけどね~?」


 本当に愚かな子だ。


 自分で絞首台の縄(くびわ)に首を通すなんて。


「話を戻そうか。単に傀儡に出来るだけじゃないよ? 統制機関を介して知的生命体の脳を繋げ、並列処理させることで演算代行装置としても使えるんだ」


 彼らは私の意志で様々な情報を処理する。


 戦場や戦闘でどう動くべきかの処理を、数多の人間の脳で計算させる。1人1人は猿並みの思考能力しか持っていなくても、私の指揮で束ねれば多次元世界最高峰の演算能力を持つ事が出来る。


「人間を数珠つなぎにして、コンピュータにしてるって言えばわかる?」


「馬鹿にするな。だが、それと死兵程度で何が――」


こういう(・・・・)事ができる(・・・・・)


 念じ、一斉に「生産」を開始させる。


 多次元世界のあちこちで機兵や方舟を創造する。


 何もない空間に混沌機関を作り出し、流体装甲によって戦闘に必要な部品を全て代用する。一瞬で億単位の兵器が生まれる光景を見せてあげる。


「敵地のド真ん中で、兵器を製造してんのか……!?」


「その通り。この技術も、キミは知ってるんじゃないかなぁ?」


「泥縄商事の<無尽機>か!!」


「その通り。彼らの発展形だよ。……部分的には劣っているけどね」


 人類連盟を作った<メフィストフェレス>が作った無尽の軍団。


 彼らは条件さえ揃えば、何もない空間に泥人形と装備を生成できる。生成できるものには限りがあるけど、歩兵用の火器程度なら即時調達できる。


「これは無尽機と違って、密室など必要ない。方舟も作成できる。混沌は必要だけど、戦場に生まれる恐怖の感情さえあればほぼ無尽蔵に兵器を作成できる」


 無尽機のようにサーバーに保存された兵士達を生成する事は出来ない。


 その点では劣っているけど、兵器生産能力では圧倒している。


 足りない兵士なんて、統制機関の支配下に置いた者達で補えばいい。兵士が減ったら統制戒言で操って作らせればいい。


「交国計画によって創造された兵器群も、私の支配下に置かれる。兵器だけけしかけて、人間達は後方で遠隔操作用の演算を担わせるって戦い方も出来る」


 演算と混沌生産を担わせる知的生命体を無駄に死なせる事もない。


 兵器としては、無尽機が玩具に見えるような上位互換だ。無尽機の方が勝っている箇所に関しても、無尽機を取り込んでしまえばいい。


 アレも真白(わたし)の遺産だ。


 交国計画の一翼(パーツ)として組み込む事が出来る。


 組み込んでしまえば、知的生命体の損耗も無くす事が出来る。「復活」する者達は原典(オリジナル)と異なる泥人形だけど、性能が同じなら些細な話だ。


「ちなみに爆弾も作れる」


 交国計画の影響範囲内にあるプレーローマの市街地に爆弾を創造する。


 創造後、即爆破。交国計画(ネットワーク)の支配下にある者達も数人巻き込まれたけど、その数百倍の天使を葬り去る事が出来た。


 無尽機の場合、生成できるのは基本的に歩兵だけ。


 こちらは私の頭の中にあるものなら、何でも作れる。


 命令(オーダー)1つで異世界の戦場に兵器群を投下(デリバリー)可能。兵器の移送にかかるコストもほぼ踏み倒す事が出来る。


交国計画(わたしたち)は多次元世界のあちこちに大兵力を展開できる」


「…………」


「<統制機関>も<無尽機>も過去の技術だ。でも、組み合わせ次第で現代でも十分に通用する。私なら、それが出来る」


 多次元世界各所から情報が洪水の如く、私の頭に流れ込んでくる。


 情報は分散処理しているけど、どうしても私の方で処理しなければならない情報もある。常人なら那由他(なゆた)の数字の海で溺れ、発狂するだろう。


 けど、私には耐性がある。


 この程度の情報洪水、<原典聖剣>から流れ込んでくる数多の多次元世界の情報に比べたらマシだ。自分の意志でコントロール出来るだけ随分とマシだ。


「交国計画は人々に『創造』の術式を付与する素晴らしいものなんだ。彼らは私のおかげで、<魔術師>になったんだよ」


 彼らは進化したんだ――と言うと、丘崎獅真は「何が進化だ。お前の部品にしただけだろ」と吐き捨てた。


「人間を部品にして、巨大な兵器を作っただけだろ」


「あはは。まあね。でも仕方ないでしょ。本当はもっと本物の魔術師を作りたかったんだけど、彼女に拒否されたからさぁ」


 けど将来的には、そこに至れるかもしれない。


 彼女も部品に組み込んでしまえばいいんだ。現状の交国計画で勝てるか怪しい存在だけど、プレーローマと魔神達を飲み込んでいけばあるいは――。


「ともかく交国計画の性能をざっくり説明すると、こんな感じ。何か質問ある?」


「素人質問で申し訳ないけど、少しいいかしら?」


 そう言い、私達の会話に割り込んできた女がいた。


 艦橋の外で聞き耳を立てていた女天使が、片手を上げつつ話しかけてきた。




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