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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
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中央政庁の戦い

■title:交国首都<白元>にて

■from:整備士兼機兵乗りのバレット


「バレット君、忘れ物!」


「悪いっ! 投げてくれ!」


 アラシア隊の仲間から拳銃を受け取り、機兵を発進させる。


「アル! こっちだ!!」


 交国軍に捕まるかひやひやしてたものの――事前の約束通り――攻撃も逮捕もされず、アルと合流できた。


 準備しておいた<ウィッカーマン>を出し、1機をアルに渡す。交国軍の逆鱗も使い慣れているだろうけど、<ウィッカーマン>の方がいいだろう。


 オレのウィッカーマンも出撃させ、このままアルと一緒に交国首都での戦いに参戦。状況をキチンと把握出来てるわけじゃないが、アルはわかってるっぽいから諸々の判断はアルに任せばいいだろ!


『ちょっと待て。オレも出る』


『隊長はアラシア隊(みんな)と界外に退避する手筈だろ!?』


『使える逆鱗があるなら話は別だ! 10秒待て』


 アルが使っていた逆鱗にアラシア隊長が乗り込んでいった。


 隊長は皆と混沌の海に戻る予定だったけど、オレらを心配してついてきてくれるらしい。ちょい心配だけど、まあ頼りにはなるよな。


 アラシア隊の皆と別れ、アルの先導で交国首都の中心部に向かう。何故か<白瑛>が暴れているが、向こうは交国が何とかするらしい。


『何で皆がここにいるんだ!?』


『雑に説明すると、お前らを迎えに来たんだよ!』


 ヴィオラ姉が総長に連れて行かれたし、アルとレンズを迎えに行くためにもアラシア隊(おれたち)は交国本土近海までやってきたんだ。


 けど、交国本土で総長達が無差別テロやった関係で、アルどころか総長との合流も難しくなった。


 どうしたもんかと交国近海でウロウロしている時に、混沌の海で遭難している人間を見つけたんだ。で、立浪巽(そいつ)との戦闘になった。


 大怪我を負っていたから助けてやろうとしたのに、オレ達を襲ってきたんだ。オレ達がエデンの人間だから、ブッ潰そうとしてきたらしい。


『船内で大格闘の末に、何とか話し合いで解決したんだよ。その立浪巽とかいうクソ乱暴なオッサンと』


『巽さんとやり合って無事だったのか……!』


『おっ、おうっ……! 引き分けだった!!』


 実際は一方的にボコボコにされた。


 向こうは大怪我を負っていて、こっちは流体甲冑まで使ったのに皆と一緒に仲良く制圧された。腕っ節強いうえに妙な力使うから仕方なかったんだ……。


 制圧された後に話をして、やっとオレらが総長とは別の考えで動いていると理解してもらえた。


 さすがに信頼はしてもらえなかったが、瀕死のオッサンの手当しつつ交国本土に向かう以外の選択肢はないので大人しく従っていた。


 そのおかげもあって、何とかアルと再会できたから良しとしよう。このまま戦闘に巻き込まれるのは「勘弁してくれ!」とは思うけど――。


『とりあえず、交国を助けるのを手伝ってくれ! 中央政庁に迫っている敵の群れを――泥縄商事を食い止めないとマズいんだ!!』


『交国の味方しろって、マジで言ってんのか?』


『ああ。納得しづらいと思うけど――』


『お前の判断だ。従うよ。手伝ってやらぁ』


 アルが「交国を守る」と考えたなら、それが正しいんだろう。


 交国に対して色々と思うところはあるけど、それはアルも同じはずだ。そんなアルが「守る」と判断したなら、それを手伝ってやるべきだろう。


 隊長もそれでいいよな――と聞くと、「異論はねえよ」という答えが返ってきた。


『異論はねえが、ヴァイオレット達は? どこにいるか知らないか?』


『ヴィオラ姉さんは交国の特佐長官に捕まった! タマは……特佐長官が差し向けた工作員だったみたいだ』


『ハァ!? どういう事だ!?』


 交国も一枚岩ではないらしい。


 アルが協力を決めた交国の人間は、交国の特佐長官と敵対している。その特佐長官が総長による黒水襲撃の手引きもやっていたらしい。


 話がフクザツで良くわからんが、タマが工作員だったとか余計に意味がわからん!! アイツが「実は敵でした」って冗談だろ?


 アイツはヴィオラ姉の事をしっかり守っていたし、頼れる仲間だった。ネウロンで襲撃された時にオレを守ってくれた事もあったし――。


『タマも交国の人造人間……<玉帝の子>の1人だったんだ! 素性を隠してエデンに潜入して、ヴィオラ姉さんを宗像特佐長官に引き渡したみたいなんだ』


『ウソだろ……』


『とにかく、いまは交国の味方をする。ただし特佐長官達は敵って事だな。タマに関しても一応は敵ってわけだ』


『でも、隊長……!』


『色々わからん事だらけだが、そのうちわかるさ。タマに関しても捕まえてから話を聞けばいい。アイツにも……色々事情があるんだろ』


 事情ってなんだよ、という言葉を飲み込む。


 隊長に聞いたところで答えはわからん。隊長の言う通り、タマをとっ捕まえて聞くしかない。アイツが裏切ったなんて信じたくねえけど、それも聞けばわかる。




■title:交国首都<白元>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


『――――』


 レオナールと巽さんが戦闘している方向を見る。


 激しい戦闘の音が聞こえてくる。何か巨大なものが激しくぶつかる音が聞こえてくる。巽さんは……本当に大丈夫なんだろうか?


 交国軍もあの人を信頼し、最低限の戦力だけ残して別の場所に向かった以上、今は信じるしかない。こっちはこっちで奥方様達を助けに行くとして――。


『おいおい……! 中央政庁ってあそこだろ!? 砲撃されてんぞ!!』


『急ごう!』


 神器使いの人達が先行したはずだけど、中央政庁は数万の泥縄商事の人達に包囲されているらしい。しかも、砲撃までされている。


 奥方様達が危うい。


 桃華お嬢様も、今はあそこにいるはず。


 守らないと。


 今度も、ちゃんと――。




■title:交国首都<白元>にて

■from:<無尽機>パンドラ


「コンチワー! 死の押し売りでぇ~~~~すっ!!」


 白瑛が暴れている隙に中央政庁に攻め入る。


 人海戦術で玉帝の執務室に押し入ったものの、さすがにいない! 中央政庁内の交国軍も無尽機(あたしたち)を止めきるのは不可能だと理解しているのか、そこまで無理せず対応してきている。根性ないねぇ!!


 でも、こっちは社員磨り潰しているだけで成果らしい成果を得られてないから向こうの対応が正しいのかもね。ムカつく~~~~!


「社長。白瑛を抑えられるほどの戦力が……混沌竜がやってきたようです。フリーになった神器使い共がこっちに来ますよ」


「うげッ! さすがに分が悪いよ!?」


 いま交国本土にいる交国の神器使いは――黒水守と比べたらずっと弱いけど――それでもウチの戦力で対応するのは難しい相手だ。


 数をブツけて時間稼ぎは出来るだろうけど、殺すのは難しいだろう。……やっぱ素人のガキ(レオナール)は頼りにならないな~。


「とにかく玉帝を探して! あとヴァイオレットちゃんも探して! 彼女も特佐長官に引きずられて、この辺りに来ているはずだから……!」


『玉帝を発見! あの女、方舟でいつでも逃げられるように――』


 玉帝を見つけたという部隊からの連絡が途絶える。


 位置は大体わかる。その辺りに増援を送りつけようとしたけど、直ぐ近くに密室がないようだ。……標的の1人の位置が大体わかっただけでも収穫はあったけど、このままじゃ逃げられそ~。


 あたし達対策として密室を一切作っていない方舟に逃げられるのが、一番面倒なんだよな~。白瑛が制圧されたら、お空に浮かんだ方舟には手出しが出来なくなる。混沌の海に逃げられても面倒だ。


 とりあえず玉帝のところに向かおうとしていると、雇用主が連絡してきた。


『ドブ女。貴様、いまどこにいる』


「え~っと、中央政庁だよん。玉帝確保しようと走ってま~~~~す」


 【占星術師】にはまだ、こっちが裏切る気満々なのは知られたくない。


 向こうは最悪、ポケットに入れた真白の魔神(メッフィー)であたしを従える事が出来る。まだキチンと仕事してるフリをしないと――。


『余計な事はしなくていい。玉帝は3分以内に確保できる』


「ありゃ、いまキミが向かってるってこと?」


『宗像が玉帝と接触する。向こうは任せておけばいい』


「えー、でも、彼がトチる可能性もあるんじゃ――」


『何も問題ない。全て<予言の書>に書かれている通りだ』


 【占星術師】はこっちの提案を突っぱね、「それより、お前に追加の仕事がある」と言ってきた。


『お前が奴を殺してこい。中央政庁に迫りつつあると聞いたぞ』


「主語はハッキリドーゾ」


『あの巫術師だ! ネウロンの巫術師、フェルグスを殺してこい!!』


「え~……? あー、ハイハイ。殺ってきますよっ!」


 もう貯金使い果たしているくせに、追加の仕事とかよく言うよ。


 どこから見張っているかもわからないから、とりあえずフェルグス君の対応に向かおう。……玉帝の確保は社員達に任せる。


 宗像特佐長官が玉帝に接触しそうってことは、ヴァイオレットちゃんも直ぐ傍にいるはず。玉帝とヴァイオレットちゃん、2人まとめて確保してやる。


「何もかも、予言の書通りにはいかないよん」


 予言の書に逆らおうとしているあたしがここにいるもんね。


 つーかそもそも、宗像君が玉帝奪還するのは難しいと思うけどね。


 彼は戦闘屋じゃない。


 <玉帝の子>の1人としてそれなりに優秀だけど、犬塚銀のような英雄でもない。優秀な工作員を抱えているけど、いま動かせる戦力はとても限られている。


 たった今、彼らが到着したっぽいし……宗像君じゃ玉帝奪還は無理だ。


 相当な反則技(・・・)でもなければ――。




■title:交国首都<白元>にて

■from:憂国の士・宗像


「長官。この先は――」


「問題ない。お前達はここで待機していろ」


 事前に用意していた経路を使い、中央政庁の地下に辿り着く。


 テロリスト共が騒ぎを起こしてくれたおかげで、忍び込みやすかった。だが、ここから先はさすがに見つかる。


 部下(ヒスイ)達を待機させ、1人で地下港に足を踏み入れる。地下港に用意された方舟の傍まで歩みを進めていく。


「…………」


 玉帝の姿が見える。その「護衛」のフリをして取り囲んでいる反逆者達の姿も見える。反逆者共にとっては、私こそが目障りな敵だろうが――。


「止まれ!!」


 反逆者共が私に銃を向け、止まるように促してきた。


「……宗像長官」


「久しいな、ジガバチ。よくも交国を裏切ってくれたな?」


 中には重用していた元部下(ジガバチ)の姿もあった。


 混沌竜(タツミ)に白瑛を任せ、玉帝の護衛のために戻ってきたようだ。


 表情を強張らせた元部下は「投降してください」と言ってきた。






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