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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
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ムテキのちから



■title:交国首都<白元>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


『レオナール……!』


 急降下してきた<白瑛>の突撃を飛び退いて回避する。


 回避しつつ射撃したものの、白瑛の装甲には傷1つつかない。権能によって「通常兵器の攻撃」を弾いているんだろう。


 生半可な攻撃は通用しないけど――。


『バフォメット! 僕だ! スアルタウだ!!』


 白瑛は、明らかにバフォメットの攻撃を使っている。


 おそらくレオナールとバフォメットが同乗しているんだろう。レオナールならともかく、バフォメットなら話が通じるはずと思ったけど――。


『無駄だよバーーーーカ!! コイツはもう、ただの人形だ!! 自我も記憶も全部失った操り人形なんだよ!!』


『なっ……。どっ、どういう事だ!?』


 バフォメットからの返事は一切ない。


 契約者であるレオナールが、命令権限を使ってバフォメットの記憶まで消したってことか? そんな事が……可能なのか?


 そこまでやるのか。


 バフォメットは、お前を助けるために動いていたのに――。


『くそっ……!』


 再び突撃してきた白瑛に対し、すれ違いざまに槍を叩き込む。


 まったく歯が立たず、槍の方がへし折れた。機兵の装備では歯が立たない。


 弾き飛ばされ、吹っ飛ばされる。


 まだまだ戦えるけど、攻撃を通す手段が――。


『エレイン。虹式煌剣(カラドボルグ)なら通るか?』


『どうだろうな。犬塚特佐相手には通用しなかったが、相手は彼ではない』


 いま、白瑛を操っているのはバフォメットだろう。


 犬塚特佐相手に虹式煌剣を放った時は、権能で弾かれるまでもなく回避された。あの人は権能の力を過信せず、保険程度に使っていた。


 犬塚特佐が乗っていた時と違い、今の白瑛は精彩を欠いている。直線的な動きが多く、攻撃自体はキチンと命中している。


 バフォメットが動かしているといっても――自我と記憶を消されたことで――柔軟な動きが出来なくなっているんだろう。


 それでも白瑛の権能によるゴリ押しで、交国軍は蹴散らされているけど――。


『虹式煌剣なら「通常兵器」の枠組みには入るまい。通用する可能性はある。ただ、巫術(イド)に関しては難しいだろうな』


『そこが犬塚特佐とは違うところだな……』


 いま戦っているのはバフォメットだ。


 巫術師として、バフォメットは僕よりずっと上の存在だ。


 巫術師の僕が巫術でやられる可能性すらある。その事は、攻撃だけではなく防御の面でもこちらを不利にしてくる。


『今の白瑛は、『対巫術防御』なんて一切気にしなくていい状態だ。虹式煌剣ならダメージは与えられるかもしれないけど――』


『一撃で倒せねば、虹式煌剣への耐性を用意するかもしれん』


 虹式煌剣を使うなら、必殺を期待出来る時だ。


 でも、いいのか?


 バフォメットはレオナールに操られているだけだ。


 レオナールに命令されていなければ、もう戦う理由もないんじゃ――。


『兄弟!』


『…………!』


 迷い、反応が遅れた。


 白瑛は宙に浮いたまま動いていない。


 けど、背後に転がっていた機兵の残骸(・・・・・)が急に動き出し、こちらに組み付いてきた。


 咄嗟に肘打ちして距離を取ったものの、エレインの警告が無ければやられていた。機兵の残骸に憑依したバフォメットに、こちらの機兵を取られていた。


『相手は視線だけで憑依してくる。残骸は地雷だと思え』


『了解……!』


 再度突撃してくる白瑛に対し、射撃で牽制しつつ機を窺う。


 虹式煌剣を使い、一撃で仕留めるしかない。


 認識阻害の影響もあり、相手の記憶に残らない虹式煌剣は白瑛の権能でも未対応のはず。


 一撃で倒しさえすれば――。


『いい加減、死ねよぉッ!!』


 レオナールの叫びの共に突撃してきた白瑛が、横に吹っ飛んだ(・・・・・)


 機兵の巨体が、横合いから突っ込んできた何かに吹っ飛ばされた。


 その何かは機兵ではなく、生身の人間だった。


『そこの機兵乗り、無事か!? 加勢が遅くなってスマン!』


『泥縄のゴキブリ共に邪魔されまして……』


『交国軍の神器使いさんですか!?』


 生身の人間なのに、流体甲冑を着込んでいるような動きをしている。


 いや、流体甲冑を遙かに凌いでいる。流体甲冑じゃ、機兵を一撃で殴り飛ばすなんて事はできない。かなり頼りになる戦力になりそうだ。


『まだ戦えますね? ほどほどに協力してもらえると助かります』


『戦えます。でも、あそこで倒れている人が――』


 さっき白瑛に握りつぶされ、地面に叩きつけられた人がいた。


 あの人も神器使いのはずだ。


 既に神器使いが1人やられているけど、どうするつもりか問おうとしたけど――倒れていたはずの神器使いが立ち上がっている。


 血まみれのままだけど、自分の足でしっかりと立っている。


『彼は丈夫なので大丈夫ですよ。……ジガバチ、まだ戦えますよね?』


『当たり前だ』


 全身の骨が砕け散っていてもおかしくないのに、地面に叩きつけられた人は――血まみれのまま――しっかり立っている。


 こちらまで歩いて来て、新手の神器使い2人と合流した。


『マーキングも済んだ。こっからが本番よ!』




■title:交国首都<白元>にて

■from:復讐者・レオナール


「群れないと戦えない雑魚共が……鬱陶しいんだよ!!」


 無駄に足掻く交国軍に言ってやる。


 ボクは無敵だ! 何の攻撃も効かない! 機兵も方舟も簡単に壊せるし、ついさっき神器使いもやっつけてやった!


 やっつけてやったはずの神器使いが――血まみれのまま――ケロリと立ち上がり、不敵な笑みを浮かべながら声をかけてきた。


『お前さんは群れる相手がいないのかい? 友達いねえんだなぁ、可哀想に!』


「口喧嘩なら勝てると思って――」


『はい、推進器(スラスター)もらった』


 血まみれの神器使いがそう言った瞬間、白瑛の姿勢が崩れた。


 飛行のために使っている部品が急に壊れたのか、姿勢がおかしくなった。そのまま建物に激突してしまい、一度地面に落ちた。


 攻撃された? いや、攻撃なんて白瑛が防いでくれるはずだ。


 バフォメットに「さっさと対応しろ!」と命じると、血まみれの神器使いは「もう権能で対応したか。ズルいねぇ」と言ってきた。


 どうも、アイツに機兵の一部を破壊されたみたいだ。


 けど、一体、どうやって――。


『俺は親切だから教えてやる。俺の神器は、血を媒介とした呪詛行使能力だ。一度マーキングした相手は、念じるだけでダメージを与えられる』


「マーキングって、まさか――」


 血まみれの神器使い(ジガバチ)は、さっき白瑛の手で握りつぶしてやった。


 生身で立ち向かってきたから捕まえて、潰させた。……その時に敵の体から拭きだした血が、まだ白瑛を汚している。


『白瑛ならこの攻撃も無効化できるが、常に無効化し続けないといけないぞ』


 つまり……このままだと、白瑛の防御能力が1種潰されるって事か。


 面倒だ。他の神器使いへの対応が疎かになる。


 けど、その「マーキング」が血で行ってるものなら――。


『今度は胴体かカメラを吹っ飛ばしてやろうかなぁ~?』


「馬鹿が! 要は血を洗い流せばいいんだろ!? ――バフォメット!!」


 白瑛を無理矢理飛ばし、近くの河に突っ込ませる。


 汚らわしい血を洗い流してやると、追ってきた神器使い達が「馬鹿正直に神器の性能を開示するから……!」と話しているのが聞こえた。


 これでマーキングとやらが外れたはずだ。


 権能でわざわざ防御する必要も無い!!




■title:交国首都<白元>にて

■from:虚口のジガバチ


「馬鹿正直に神器の性能を開示するから……!」


「悪い悪い」


 同僚にテキトーに謝りつつ、白瑛を追う。


 汚え河の水でさっぱりしたようだ。


「馬鹿相手だと手加減してやらなきゃ、可哀想だろ?」


「乗り手はバカでも、機体性能は舐めるべきではない」


「まあな。ただ……中身は馬鹿だったな」


 神器を構え、念じ、呪詛を飛ばす。


 河の水を被ってドヤってた白瑛(バカ)が弾けた。


 神器の力により、カメラの一部を破損させてやった。……出来れば混沌機関を潰したいところだったが、とりあえず目を削っておく。


『なっ、なんで!? 血なら洗い流して――』


「敵の言うこと信じてんじゃねえよ、バ~~~~カ」


 その程度で対応できる攻撃なら、わざわざ情報を開示するわけねえだろ。


 同僚共もそれはよくわかっているので、こっちの演技に乗ってそれっぽい言葉を吐いてくれた。おかげで馬鹿が引っかかった。


 馬鹿素直に水を被って、権能(ガード)下げやんの! と馬鹿にしてやる。


 敵の顔は見えねえが、気配だけでも顔真っ赤にしてんのがよくわかる。


「必死に防御しとけ。でも、お前の手札が1枚減ったな」


『っ~~~~……!! お前を殺せば問題ないッ!!』


「まあな。んじゃ、あとよろしく」


「あっ、ちょっと――」


 突っ込んでくる白瑛から逃げつつ、同僚の肩を叩いて応戦を頼む。


 権能で呪詛に対処される以上、そこまで役には立てない。けど、流体装甲で修復できない傷を負わせつつ防御1種封じただけ褒めてくれ!


 スタコラサッサと逃げると、馬鹿が「逃げるなぁ!!」と叫んでいたが、同僚に――神器使いに吹っ飛ばされていった。


 致命傷は与えられていないが、上手くやってもらうしかない。……俺達は大規模破壊を得意とする神器使いじゃないから、機兵相手は苦手分野なんだが――。


「何とかしてやりますかぁ~……!」




■title:交国首都<白元>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


『そこの機兵乗り~! 石守様から話は聞いてる! 戦力として頼りにさせてくれよ!? 戦え戦え!!』


『はっ、はいっ……!』


 血まみれの神器使い(ジガバチ)が――ブチギレている――レオナールからちょこちょこ逃げ回りつつ、声をかけてきた。


 逃げ回っているけど、この人のおかげで権能による防御を1種封じた。


 この人を守っていれば、かなり戦いやすく――。


『死ねええええええええええッ!!』


『あぁっ……!!?』


 白瑛の機関砲が火を噴き、血まみれの神器使いがさらに血まみれになった。


 肉という肉が弾丸に削られていったが――。


『おい、コラ! お前ら!! ちゃんと俺を守れよ~!』


 血まみれの神器使いはピンピンしている。


 常人ならとっくに死んでいる傷でも、そう簡単には死なないようだ。仲間の人も「その程度じゃ死なないでしょ」と言い、あまり心配していない。


 念じるだけで攻撃するだけではなく、肉体そのものが丈夫な神器使いらしい。とはいえ、どの程度の傷に耐えられるかはわからない。あんまり無理させるわけにはいかない。


『…………!』


 他の神器使いとやり合いつつ、飛び回っている白瑛に発砲する。


 機兵の火器ではダメージが通らないはずだけど――白瑛の装甲に傷がついた。ダメージが通っている。


 どうやら、対神器使い用に権能を2種を使っているようだ。今は通常兵器防御を下げざるを得なくなっているんだろう。


 射撃はレンズほど得意ではないから、そう簡単には致命傷を与えられそうにない。けど、味方の邪魔にならない程度に射撃してちょっかいを出していく。


 レオナールも白瑛がダメージを負い始めた事に焦っているのか、さらに声を荒らげ、こっちに突っ込んできたけど――。


『露と滅せよ――』


 直線的な動き。


 犬塚特佐の豪と柔を兼ね揃えた動きではない。


 本来のバフォメットなら絶対にしない軽率な動き。


『虹式煌剣ッ!』


『んなぁッ?!!』


 射撃しつつ回避し、後ろ手に隠しておいた剣を振るう。


 当てた。


 けど浅い。混沌機関を破壊するほどではない。


 それでも、胴体をかなり深く切り裂いた。


 体勢を崩した白瑛が地面を転がっていく。


『見事です、エデンの!』


『牽制を続けてくれ!』


『はいっ!』


 道路を跳ね、吹っ飛んでいく白瑛に2人の神器使いが追いすがっていく。


 2人を援護するために射撃していく。


『くそっ! くそッ!! くそぉッ!!』


 白瑛とバフォメットの力を併せ持っているとは思えないほど、みっともない姿でレオナールが逃げて行く。距離を取っていく。


 2つの力を併せ持つとはいえ、それを活かすための戦闘技能が欠けている。本来のバフォメットなら絶対に活かせていた。犬塚特佐よりもっと厄介な敵として僕らの前に立ちはだかっていた。


 けど、レオナールは出来ていない。


 彼は素人だ。バフォメットを操る事しか出来ない。それこそ――。


『キミは人形以下じゃないか、レオナール!』


『――――』


『キミは、バフォメットの足下にも及ばないほど弱いな!!』


『おま、えええええええええええええ――ッ!!』


 転げ回り、逃げ回っていた白瑛が踏みとどまった。


『群れてイキがってるだけの、雑魚がッ!!』


 <逆鱗>にはない推力により、圧倒的な速度で突進してくる。


 流体装甲によって作り上げた大型突撃槍(ランス)が、こちらを串刺しにしようとしてくる。だが、やはりそれも直線的な動きだった。


 僕を殺せるようなものじゃない。


 操縦席すら狙っていない。


 ただ、がむしゃらに突っ込んできているだけの単調な攻撃だ。


『受けて滅せよ――』


 突撃槍に対し、剣の腹を向ける。


 普通ならへし折られる。機兵ごと叩き割られる。


 けど、エレイン仕込みの逆撃(カウンター)なら……!!


溝式煌剣(カレトヴルッフ)!!』


 敵の攻撃を弾き返す魔剣。


 それによって突撃槍だけではなく、敵機の腕まで砕く。


 白瑛本体を粉々にする事は出来なかったものの、攻撃が通用している。


 仮に虹式煌剣が権能で対応されようが、逆撃の溝式煌剣がある。機兵の火器も使う事が出来るし……僕1人で戦っているわけじゃない。


 全員の力を合わせれば、このまま――。




■title:交国首都<白元>にて

■from:交国の神器使い


「良い位置です……!」


 <エデン>の機兵乗りが、白瑛を野球の球のように打ち返した。


 叩き甲斐のある場所に飛んできた白瑛(それ)を殴り飛ばす。


 もちろん、<エデン>の機兵乗りに向けて――。




■title:交国首都<白元>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


溝式煌剣(カレトヴルッフ)!!』


 交国の神器使いさんが打ち返してくれた白瑛を、再度叩き飛ばす。


 今度は胴体への直撃。庭球(テニス)のラリー染みた事をしたかったけど、僕の方がコントロールを誤った。白瑛を河の方に吹っ飛ばしてしまった。


『すみません! 同じ事やろうとしたんですが……!』


『問題ありません。確実にダメージを与えられているかと』


 交国首都まで交国軍を蹴散らしてきた白瑛も、神器使い3人がかりだとさすがにキツそうだ。明らかにレオナールの存在がバフォメットの足を引っ張っている。


『もう降参してくれ、レオナール……! 総長はキミを守ろうと――』




■title:交国首都<白元>にて

■from:復讐者・レオナール


「だまれぇッッッ!!」


 自分で機兵を操作し、銃を撃つ。


 撃ったけど、直ぐに銃が自爆した。弾が詰まって爆発した。


 こんなはずじゃ……。こんなはずじゃなかったのに……!!


「ボクが交国を滅ぼすんだ! ボクが……ボクが! 救世主になるんだぁっ!」


 まだやれる。


 ボクが絶対勝つ。


 ボクは、神様から無敵の力を貰ったんだ。


「――――」


 目障りなスアルタウが、量産機で突っ込んでくる。


 こっちは……白瑛だぞ!


 それに、こっちにはさらに別の力もあるんだぞ!?


「バフォメェット!! 燼器解放ッ!!」


 スアルタウは、あとでいたぶってやる。


 先に、神器使いの方を吹っ飛ばしてやるッ!!





■title:交国首都<白元>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


『――――』


 白瑛が大太刀を生成し、振り抜いてきた。


 黒い雷光が大橋を切り裂き、交国の神器使いの方に飛んでいく。


 あえて割り込む。


 敵の攻撃の線上に飛び込む。


 黒い雷光には、昔に見たような――繊三号で見たような圧はない。


『受けて滅せよ』


 これなら――――。


溝式煌剣(カレトヴルッフ)


 多少、無理な体勢からでも返せる。




■title:交国首都<白元>にて

■from:復讐者・レオナール


「あぁッ?! ひぃッ!!!!」


 何故か跳ね返ってきた燼器の一撃が、危うく白瑛に当たるところだった。


 なんで? なんでだっ!?


 いま、スアルタウに何かされたのか!?


 それは、交国軍の艦隊すら消し飛ばすような必殺技だぞ!!?


 お前が乗っているのは、フツーの量産機じゃないか。


 ボクが乗っているのは白瑛なんだぞ。特別なんだぞ!?


 ボク自身が、特別なんだぞっ……!!


「くそぉおおおおおおおおおおッ!!」


 一度、距離を取ろう。


 一度逃げ――いや、転進して、体勢を立て直そう。


 そう思って白瑛を飛ばしたけど、叩き落とされた。裏切り者のスアルタウが神器使いを投げ、その神器使いがボクを地面に叩き落とした。


「ぐ、ッ……!! ば、バフォメットォッ!! 何とかしろぉッ!!」


 お前……お前っ……! いちいち指示してやらないと、何も出来ないのか!?


 アイツらは雑魚だぞ!! 群れるしか能のない雑魚なんだぞっ!?


 アイツらぐらい、蹴散らしてくれよっ……!!


「だッ、誰かッ!! 誰でもいいっ!! 何とかしろっ!!」


『手がかかる子だなぁ~~~~っ!!』


 泥縄商事社員(にんげんばくだん)がワラワラとやってきたけど、神器使いとスアルタウがあっさり蹴散らしていった。役立たず!!


 白瑛の計器が悲鳴を上げ続けている。積み重なったダメージで、無敵の機兵が――無敵のはずの機兵が、壊れようとしている。


 流体装甲で破損箇所を補っても、計器の悲鳴が止まない。流体装甲だけじゃ何ともしきれないダメージを受け続けている。


「おかしいだろ!? バフォメットは最強の巫術師じゃないのか!? 白瑛は無敵の機兵だろ!!? 何でこんな雑魚共に…………!!」


 アイツは……アイツはどこに行った。


「ボクを…………ボクを助けろっ! 占星術師ィーーーーッ!!」




■title:交国首都<白元>にて

■from:【占星術師】


「さすがに、交国の神器使い3人だと分が悪いか……」


 バフォメットなら、白瑛があれば十分対応出来る相手だろう。


 だが、今のバフォメットは――自我も記憶も失った事で――大幅に弱体化している。巫術と燼器を使えるだけの人形になっている。


 主のガキ(レオナール)がもっとしっかりしていれば、ここまで好き放題やられたりはしないのだが……。


「ドーラ。援護は――」


『社員送り込んでるけど、む~~~~り! 送り込んだ端から蹴散らされてるっ! 機兵乗っ取ってる子らも、他の交国軍に足止めされてて救援に行けない!!』


 最初は派手に交国軍を蹴散らしていた白瑛も、本当の精鋭相手だと相手にならんようだ。……だが、俺が助けに行く暇はない。


 馬鹿(レオナール)共には、まだまだ囮の役割を果たしてもらう必要がある。


「仕方がない……。抜きなさい(・・・・・)、レオナール」




■title:交国首都<白元>にて

■from:復讐者・レオナール


『抜きなさい、レオナール』


「あっ……!! そ、そっか!!」


 僕には、まだコレがあった。


 いざという時は、コレを使うよう言われていたんだった!


「バフォメット、使え!! 鏖殺しろッ!! 神器解放(・・・・)ッ!!」





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