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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
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死の行進



■title:交国本土<帆布>にて

■from:復讐者・レオナール


「アッハハ!! 弱い弱い弱いッ! この程度かよ、交国軍!!」


 馬鹿傀儡(バフォメット)に<白瑛>を操縦させ、交国軍を蹴散らしていく。


 機兵も方舟も相手にならない! バフォメットがちょっと睨むだけで、敵が自爆していく! まったく! 全然っ! 相手にならない!!


「これが<叡智神>様より賜った力!! これがあればお前らなんて――」


 白瑛に何か衝突した。衝撃で舌を噛んでしまい、悲鳴がこぼれる。


 爆発音もした。敵の攻撃? いや、でも、機兵も方舟も後退していって――。


「ッ~…………!! 誘導弾(ミサイル)か!?」


 何かが高速で突っ込んでくる。四方八方から激突してくる。


 白瑛がその爆発に押される。ボクの身体がビキビキと悲鳴を上げるほどの速度で飛んでいた白瑛が速度を落とし、落下していく。


 バフォメットに「何とかしろ!!」と命令したものの、馬鹿傀儡は言うことを聞かなかった。誘導弾が次々と命中し、白瑛が海中に落ちていった。


「くそッ!! 役立たず!! お前の所為で負けちゃうだろ!!?」


『落ち着きなさい、レオナール君。神はあなたを見放していませんよ』


 神様が遣わしてくれた使徒が――占星術師が通信で声をかけてきた。


 敵の攻撃が次々と白瑛に命中しているのに、落ち着いてられるか……!


 こ、このままじゃ、ボク、死んじゃ――――。


『白瑛には何のダメージも入っていません。その機兵は「無敵の盾」に守られているのです。誘導弾程度、大きな脅威ではありません』


「そっ、そうなんですか!?」


『……出撃前に説明してやっただろ』


 よくわかんないけど、白瑛は無事……みたいだ。


 でも、バフォメットが誘導弾に対応しないんです。


 コイツ、方舟や機兵は睨むだけで乗っ取れるのにと訴えると、「敵が対策しているんですよ」という答えが返ってきた。


『おそらく、先程の誘導弾には敵方の巫術師が憑依しています。誘導弾に憑依することで、バフォメットの遠隔憑依をはね除けているのでしょう』


「じゃあ、どうすれば……!」


『何のダメージも入らないのです。気にせず進みなさい』


 ちょっと心配だけど、占星術師の言葉を信じる。


 バフォメットの頭を引っぱたき、「さっさと飛べ!」と命じる。白瑛が海中から飛び出し、再び首都に向かって飛行を開始する。


 敵の攻撃が飛んでくる。けど、機兵は無事だ。白瑛は無敵だ!


 白瑛()無敵、だけど――。


「ぐ――――ぎッ…………!!」


 白瑛の加速に、ボクの身体が悲鳴を上げている。


 き、機兵に乗るのって、こんなキツいのか……! キチンと操縦服を着ているのに、身体の内側を強く押される感触がある。気を抜くと気絶しそうだ……。


『その調子ですよ! しかし、そこまで加速する必要はありません。どっしりと構えて、交国軍を適度に蹴散らしながら進んでいるだけで良いのです。あなたが気絶してしまったらバフォメットはろくに抵抗しなくなりますからね』


「け、けど……! 急がないと、玉帝に逃げられて――」


『あなたは混乱を起こすだけでいいのです。玉帝はこちらにお任せを』


 ボクはバフォメットを使って、交国軍を蹴散らす。


 そうすることで大きな混乱を生む。


 その隙に占星術師が首都に忍び込み、玉帝を誘拐する。誘拐した玉帝の命は、ボクが好きにしていいと言われている。出来れば機兵で乗り込んで豪快に玉帝をブッ潰してやりたいけど――。


『あなた達なら交国軍に勝てます。しかし、敵を追い詰めすぎると方舟を使って混沌の海に逃げられる可能性が高い。玉帝はこちらに任せてください』


「わかった。絶対に逃がすなよ!?」


 とりあえず、言われた通りに交国軍と戦う。


 首都に向かいつつ、交国軍を蹴散らして――。


「うっ……!! ま、また攻撃かっ……!?」


 誘導弾とは別の攻撃が白瑛に命中した。


 これも効いてない。ダメージは受けてない。


 けど、鬱陶しい! どこだ! どこから攻撃してきた!?




■title:交国本土<帆布>にて

■from:【占星術師】


『どこから攻撃されてるのかわからないっ! これじゃ蹴散らせないっ!!』


「……世話のかかる」


 バフォメットに命令するしか能のないガキが喚いている。


 あの素人に任せて放っておいてもそうそうやられないだろうが、ある程度は導いてやらないと囮の役目すら果たしてもらえない。


 玉帝のところに密かに向かいつつ、首都を挟んで反対側にいるガキの様子を確認してやると……どうやら砲撃を受けているようだ。今度は誘導弾ではない。


「……首都郊外の森に砲撃部隊が隠れていますね。そこからの砲撃です」


 いま、白瑛には「通常兵器対策」を取らせている。


 あの程度の攻撃なら何千発食らったところで問題ない。首都に入り込んでしまえば、砲撃もそうそう飛んで来なくなるから、放置しても良いのだが――。


『森か!! よし、蹴散らせバフォメット! 燼器解放ッ!!』


「あっ、バカ……!!」


 素人ガキは、温存するべき切り札をサクッと使い始めた。




■title:交国本土<帆布>にて

■from:交国軍兵士


「くそっ……。丈夫すぎる……」


 何発撃っても白瑛には一切ダメージが通っていないようだ。


 白い装甲には傷どころか、煤1つ付いていない。


 犬塚特佐が乗っている時は、軍神の如く頼りがいのある存在だったが、敵に回るとここまで厄介なのか。それでも撃ち続けるしかないが――。


「――なんだ?」


 砲撃を受けている白瑛が、黒い雷光のようなものを纏っている。


 本部から「退避しろ!」という命令が飛んでき――。




■title:交国本土<帆布>にて

■from:【占星術師】


「あぁ~っ……!!」


 バフォメットが神器の残りかすの力を――燼器を使用した。


 残りかすの力とはいえ、通常兵器を圧倒する力だ。それが放たれた首都郊外の森は、<星の涙(スターマイン)>を受けたように吹っ飛んだ。


 敵砲撃部隊も吹っ飛んだが、あの程度の敵相手にわざわざ燼器を使うな……!


「その力は連発できないのですから、温存してくださいね……!?」


『でもっ!! アイツら、ボクを撃ってきた!! 殺そうとしてきたんだ!!』


「だからっ……! 白瑛ならあの程度の攻撃、屁でもねえんだよッ……!!」


 コイツと話していると苛々する。仕方なかったとはいえ、完全に人選ミスだ。


 ケラケラ笑っているメフィストフェレスを握りしめて黙らせつつ、「砲撃部隊にはこちらで対処します」と告げる。


『こちらでって……。アンタは玉帝のところに向かうんだろ!?』


「ええ、ですから、友軍を派遣します」


 白瑛とバフォメットだけで勝てるとは思ってない。


 この程度の混乱では足りない。


 だから、高い金を出して奴らを雇ったのだ。


「ドーラ。行けるな?」


『ほいほい、観測情報共有(データリンク)も完了した。バフォメット君の巫術観測のおかげで、敵の位置も把握できた。いつでも仕掛けられるよん』


 別行動中の泥縄商事社長(ドーラ)に通信し、行動を促す。


 直ぐに雑魚に対処しろと命じたが――。


『でもちょっと待ってね。宣伝用に配信するとこだから』


「宣伝? 何の話だ?」


 このバカ。また何か勝手にやるつもりか?


 余計なことはするなと言ったが、バカは止まらなかった。




■title:交国首都<白元>にて

■from:交国軍・首都警備隊・隊長


『どもども~! 泥縄商事で~す』


「<ビフロスト>に配信を止めさせろ!」


 泥縄商事が龍脈通信を使い、交国首都の様子を全世界に配信し始めた。


 龍脈通信はビフロストが管理しているものだ。だが、特定の通信だけを直ぐに止めるのは困難だろう。それでも出来るだけ急いで止めてもらわないと、余計なものが発信される恐れがある。


 配信を止める方法はもう1つある。


 発信源にいる泥縄商事の社長を殺せば、無理矢理配信を止める事が出来る。


 <エデン>には泥縄商事も関わっているため、今回の騒動にも泥縄商事が首を突っ込んでくる可能性は考えていた。色々と対策は用意してきた。


 泥縄商事の<夜行(ナイトシフト)>は確かに厄介な存在だが、奴らだけなら対応は難しくない。対策も固めている以上、泥縄商事まで参入してきたところで大きな脅威にはならん。


 だが、それでも奴らは首を突っ込んでくるらしい。


 泥縄の社長はニヤケ面を全世界に発信しつつ、宣言してきた。


『我々、泥縄商事は交国首都に攻撃を仕掛けま~す。でも直ぐに陥落させるのは無理かな? さすが交国軍! しっかり戸締まりしてるみたい! 無尽機(わたし)への対策は抜かりないみたいだね!』


「配信場所特定できました。首都郊外の森です」


「対応部隊、急行中です」


『あたしのこと初見って人もいるだろうから、あたしの能力説明しておこうかな』


 泥縄の社長を直接潰すための部隊が動く中、奴はペラペラと自分の異能について説明し始めた。


 泥縄商事の社長こと「パンドラ」は、真白の魔神(メフィストフェレス)の人体実験により、何度殺されても蘇る<無尽機>となった。


 不死身なのは社長本人だけではない。


 無尽機の親機たる社長と、その配下に置かれた全員が不死身の化け物と化している。何度死んでも24時間以内に復活することが可能となっている。


『子機たる社員達は、親機(あたし)中心に数キロメートル以内の密室に、あたしが命じたタイミングで復活させられるんだ』


 その異能により、泥縄の社長は奇襲攻撃を得意としている。


 不死身の軍団を敵地の中心部に召喚し、奇襲する事を得意としている。どれだけ殺しても復活する以上、非常に厄介な存在だ。


 だが、対策は出来る。


 密室を作らなければ対策可能だ。


 締め切った部屋でも、監視カメラをつけておけば密室とは判定されんらしい。7年前にテロリスト(カトー)を逃がされた反省もあって、泥縄商事対策は首都でも行われている。


 要所を奇襲されないよう、重要な場所は監視を行き届かせている。


 奴らが付けいる隙など、ほぼ存在しない。


 奇襲という得意分野を潰してしまえば、泥縄商事は脅威ではない。


 夜行も、「ただの少数精鋭部隊」になる。一般兵の機兵で簡単に蹴散らせる。


『交国首都にいる交国軍は軍全体の一部に過ぎないとはいえ、ウチの精鋭部隊である<夜行>だけじゃ勝てない。隙がなくて困っちゃ~~~~う』


 対策している。


 だが、それでも、泥縄の社長は笑顔を浮かべ続けている。


『だからさぁ、こっちも力押し(・・・)で行かせてもらうね』




■title:交国首都<白元>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


『――――』


 泥縄商事の社長さんが交国首都近郊にいる。


 その話を聞き、索敵を手伝いに行くために移動している最中。


 巫術の観測範囲内に、爆発的に魂が増えるのを感じた。


 10とか、100とか、そんなものじゃない。


 数千以上(・・・・)の魂が、一気に――。


『周囲に敵がいます! 警戒を!!』


 味方に建物から離れるよう促す。


 けど、遅かった。


 そこら中の高層建築から、爆弾を抱えた数千の人間が降ってきた。




■title:交国首都<白元>にて

■from:逆賊・石守素子


「一体、なにが――」


 首都のあちこちで爆発が起きている。


 爆撃でもされているような被害があちこちから報告されてきた。


 じゃが、爆撃機などおらん。星の涙が降ってきたわけでもない。


「泥縄商事による自爆特攻のようです。市街地の密室から現れた泥縄の人間が、さらに密室を作りつつ……爆弾を抱えて特攻してきています」


「夜行をいきなり使い捨ててきたのか?」


「いえ、これはおそらく……泥縄の一般社員です!」




■title:交国本土<帆布>にて

■from:<無尽機>パンドラ


「不死身は親機(あたし)と夜行の専売特許じゃないよん」


 泥縄商事の社員の殆どが、あたしの支配下に置かれている。


 彼らも不死身だ。あたしがその気になって命令したら、彼らは――自分達の意志など関係無く――暴れ回ってくれる。


 戦闘経験のない平社員だろうと、交国首都の密室に爆弾と一緒に呼び出せば、自爆特攻ぐらいはさせられる。


 復活時に作り出されるのは肉体だけじゃない。衣服だけではなく、銃火器ごと作り出すことで奇襲用の武器を持たせることが出来る。


 爆弾だって持たせることが出来る! 大した爆弾は作れないけど、それでも歩兵や装甲車程度なら打撃を与えられる自爆特行兵は用意できるのだ。


「1つ1つは弱いけど、皆一気に自爆させたらちょっとした絨毯爆撃に出来る」


 今回の首都襲撃に備え、大半の社員を自殺させておいた。


 業務に支障が出るから、あんまりやりたくないんだけどね~。


 でも、【占星術師】君に相応の大金をもらってるから喜んでやりますとも! これでしばらくプレーローマの靴を舐めずにやっていける!


 宣伝も出来る。


 人類文明指折りの巨大軍事国家である交国相手に、ここまでの奇襲攻撃が出来ますよ~ってのは良い宣伝になるっ! これメンドクサイからあんまりやりたくないんだけどね!!


「弾となる社員はまだまだいるよ~!」


 交国側は泥縄商事対策に密室を作らないようにしてきたけど、対策にも限界がある。重要施設以外には密室が確かに存在するし、呼び出した社員達に密室を作らせていけば召喚場所はいくらでも用意できる。


 敵の中枢に一気に兵を送り込む事は出来ないけど、そこは地道に攻略していけばいい。一度中枢に辿り着けば、大軍を一気に送り込むことが出来る。


「ざっと100万人(・・・・・)用意した。100万発の人間爆弾を特攻(デリバリー)するよ! 赤字覚悟の出血大サービスっ!!」


 単なる爆弾ではない。彼らは100万の軍勢にもなる。


 大半が素人だけど、あたしの命令1つで死兵と化してくれる。


「さあ行こうか。交国首都を、更地にする勢いでね」


 これで数の差はひっくり返った。


 交国側も一般人動員したら数は揃えられるけど、無理だよね?


 ぬくぬく暮らしていた本土の交国人共は、ウチみたいに戦えないよねぇ?










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