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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
787/875

過去:プレイヤーと使徒 5/6



■title:魔物が跋扈する<ネウロン>にて

■from:遊者:【詐欺師】


 怪物(タルタリカ)がネウロンに溢れた事で、計画が大きく狂った。


 ここまでの惨事は想定していなかった。


 だが、何とか希望を残せたようだ。


「スアルタウは――」


「逃げてくれたはずよ。あの子なら、きっと」


 はぐれていたスアルタウを見つけ、逃がす事は出来た。


 交国軍と怪物達と交戦する事になってしまったが、僕らの希望は――スアルタウとフェルグスは、まだ生きている。


 スアルタウを無事、逃げ延びさせるためにも交国軍の兵士を殺していく。


 下手したらこの戦闘で僕らの存在を兄さんに気づかれるかもしれないけど、怪物が死体を食い荒らし、証拠隠滅してくれるのを祈るしかない。


「……まだ生きてる?」


 撃たれた肩を押さえつつやってきたマウに、「一応ね」と答える。


「でもごめん。僕は、ここまでだ」


 僕はもう、助かる見込みがない。……内臓をやられてる。


 昔からずっと、兄さんの影に隠れていた弊害だな。後方支援という事で、難しい戦闘はずっと兄さんに任せていた報いだ。


 可能な限り足止めするから、キミはアルを追ってくれ。


 そう頼んだが、マウは逃げてくれなかった。難しい表情を浮かべたまま、僕を手当しようとしてきた。


「責任を放棄しないで。親としても、元凶の1人としても」


「例の薬を打ってくれ。そしたら、キミも、スミレさんの仇を……」


父親(アンタ)がいなくなったら、あの子達が悲しむでしょうが……!」


「キミがいなきゃ、誰があの子達を導くんだ」


 マウは、どう考えても助からない僕を連れて行こうとしている。


 2人共助かるのは無理なのに。「予備計画に切り替える。頼むから僕を置いていってくれ」と頼んだが、マウはなかなか聞き入れてくれなかった。


 僕が足手まといになった事で、彼女は彼女らしくない判断をして――。


「マウ……!」


「っ…………!」


 撃たれた。


 それも、僕を庇って撃たれた。


 彼女が庇ってくれている隙に、発砲する。交国軍の兵士を射殺する。


「マウ! なんで……!」


 全身を使って僕を庇ってくれたマウが、血だまりを作りながら倒れた。


 もう助からない。使徒・エーディンは超人の類いではない。


 これだけの傷を負って生き残るのは不可能だ。


「らしくないぞ。ここは、キミだけでも生き残るべきだろ……!」


「……うるさい」


 マウの瞳から、光が失われていく。


 身体中から生気が失われていく。


「いま、アンタに死なれたら……予備計画すら、破綻する」


「マウ……」


「責任を、果たしなさい」


 彼女はそう言い、注射器を渡してきた。


 最後の力を振り絞ったのだろう。それきり、動かなくなった。


「――――」


 怪物の乱入により、交国軍は混乱している。一時撤退しようとしているようだ。


 だが、怪物は誰彼構わず襲っている。僕らも襲われる。


 逃げ切るのは不可能。息子達とは、もう会えない。


「――ありがとう、マウ」


 まだ終わりじゃない。


 僕らはもう助からないが、マウのおかげでまだ生きている。


「っ――――」


 カチカチと鳴る歯を噛みしめ、注射器を使う。


 僕らの希望はまだ生きている。


 でも、彼らだけだと危うい。


 あの子達はまだ幼い。そして、僕らの計画を理解していない。


 彼が見守ってくれるはずだが、さらなる保険が必要だ。


 そのためには――――。






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