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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
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剣術VS拳術



■title:<砂巳>の陸港にて

■from:<武司天>ミカエル


「よく頑張った!! オファニエル!! シシンは強かっただろ!!?」


『も……申し訳ありません。ミカエル様っ……!』


 畏まっているオファニエルの頭をワシワシと撫でつつ、「後は俺がやっておくから、仲間を連れて界外に出ておけ」と命じる。


 オファニエルは震えながら「まだ戦えます」と食い下がってきた。シシンを倒せなかった事を失態と思っているのか? そんなこと考えなくていいんだが……。


「嫌な言い方になるが、お前達がシシンに勝てるとは思っていなかった」


『う…………』


「良い経験になるだろうと考え、戦わせただけだ。実際、学ぶところはあっただろう?」


『あと10……いえ、5分いただければ、必ず勝利してみせます!』


「出来もしない事を『必ず』と宣言するな」


 少しだけ声を低くして告げる。


 上役(おれ)の前だから、ついつい強い言葉を使ってしまったんだろうが……そんな事する必要はない。俺は現状を分析できていない方が失望する。


 シシンがフラフラしているのを見つけたから、「おっ、部下達を鍛える良い機会だ!」と思ってけしかけただけで、勝利は求めていない。


 丘崎獅真(コイツ)は強い。もっと精進しなければ勝てないな――と自分の立ち位置を見直す物差しにしてほしかっただけだ。


 頑張ったご褒美にケーキも焼いておいたから、界外で皆とケーキを摘まみつつ、どうやれば勝てたとかあーだこーだと議論して来い。今日の敗北で多次元世界(せかい)が滅ぶわけじゃないんだから、そんなに深刻に考えなくて良い。


 オファニエルが界内にいると、シシンが全力を出せないから仲間と一緒に界外に行くよう促す。オファニエルは少し泣きそうになっていたが、大人しくこの場から退いてくれた。


 それを見送った後――。


「よう、シシン!! 久しぶりだな、ウチの若えのが世話になったな!!?」


 心底嫌そうな顔でこっちを見ていたシシンに声をかける。


 嫌そうにしているが、不意打ちなどせずにこっちの話が終わるまで待ってくれてありがとな――と伝える。


「ふざけんな。アンタの差し金か。俺を教材にしやがったな?」


「悪い悪い! 見所ある若い奴には経験を積ませてやりたいんだよ! お前に勝てる奴なんてプレーローマにそういないし、良い経験になっただろうなぁ」


 世の中にはシシンのようにブッ飛んだ人間もいる。それを実戦で知れたのは、オファニエル達にとって財産となるだろう。


 死者も出たが、死んだ奴らは癒司天(ラフィ)の権能で復活する。


「最悪だ。何で<三大天>のアンタが、こんなとこほっつき歩いてんだ」


「とある魔神の対処で、偶然…………そう、偶然、近くにいたんだよ」


 魔神と言っても<真白の魔神>とは別の魔神だが、そこについてはわざわざ説明する必要もないだろう。


「…………」


「露骨に嫌そうな顔するなよ……! 傷つくだろ!!? 俺が徘徊してるのはいつもの事だろうが!! あッ!! 徘徊と言っても遊んでるわけじゃないからな!!?」


「ウソつけ!! じゃあ、その手にある菓子屋の紙袋は何だよ!? 仕事中に買い食いしてんじゃねえよ!!」


「そっ…………それぐらい、別にいいだろう!!?」


 ついさっき買ったご当地スイーツの入った紙袋をそそくさと背中に隠す。


 別にいいじゃねえか!!! 仕事の合間に買い食いしてもいいだろ!!? この店、前から気になってたんだよ!! 天使が人間の店で買い食いしちゃダメって法律があるって言うのか!!? あるとこにはあるけどよ!!!


「部下を俺にけしかけて、菓子食いながら高みの見物は良い御身分だな!?」


「ま、まだ食ってないし……! 後進の育成のためにお前使っただけだし……」


「ああ、そうかい! その育成も終わったから、もう俺は用無しだろ!? こっちは忙しいからこれで失礼するわ! じゃあな、ミカエルの旦那!!」


「まあ、待て待て待て……。次は俺と()り合おうぜ、シシン」


 久しぶりに会ったんだから、久しぶりに殺し合おうや。


 そう誘うと、シシンは「勘弁してくれ……」と呻いた。


「マジでいま、それどころじゃないんだ」


「おいおい、俺はお前の真白の魔神(あるじ)の仇だろ?」


「マジでいま、仇討ち(それ)どころじゃないんだ」


「大人になったなぁ。昔は吸血女に首根っこ掴まれて泣きわめきながらやっと逃げたのに……仇よりも別件を優先するなんて」


「アンタはガキみたいになったな。昔とはまるで別人だ」


「そうかもな。だが、俺は遊びに来たわけじゃない。お前を殺しに来たんだ」


 ゆるりと拳を構え、宣言する。


「俺を殺さなきゃ逃がしてやらねえぞ」


「マジでアンタ、空気読んでくれッ!!」


 シシンが抜刀し、光の如き斬撃を放ってきた。


 狙いは俺の首。一撃必殺狙い。悪くねえが――。


「ハハッ――――!!」


 抜拳し、シシンの顔面を殴り飛ばす。


 シシンの剣先が俺の薄皮を割いた瞬間、殴り飛ばしてやった。


 シシンの身体が遠くへ吹っ飛んでいく。飛んで飛んで……遠くの高層建築に当たり、いくつか貫いた先で止まったようだ。手応えはあった。殺した。


「さて……この程度で死ぬなよ。まだまだやろうぜ」




■title:<砂巳>の市街地にて

■from:砂巳で暮らす一般人


「だ……大丈夫ですか!?」


 ビルの外壁を破り、何かが飛んできた。


 飛行機か砲弾かと思ったが、違った。人間だった。


 壁を貫き、事務机を薙ぎ倒しながら人間が突っ込んできた。


 突然の事態に驚いた職場の仲間達が悲鳴をあげて逃げ惑う中、突っ込んできた人に声をかける。……やめた方がいいのに声をかけてしまった。


「あっ……」


 さすがに死んでる。


 頭が原形を留めないほどグチャグチャになっている。


 頭以外も酷い状態だ。何でこんな死に方をしたのかわからないけど、とりあえず写真撮ってSNSにあげてバズっとくか――と思い、携帯端末を手に取った。


「く――――クソったれが!!」


「う、うわぁ……?!」


 死体が喋った!


 頭グチャグチャのくせに、血痰を吐いて喋った!!


 そのうえ、肌が蠢いている。


 原形を留めないほど壊れた肉体が蠢き、再生を始めてる……!




■title:<砂巳>の市街地にて

■from:使徒・丘崎獅真


 悲鳴をあげながら携帯端末を構え、俺を撮ってるアホ一般人を「見世物じゃねえぞ!」と文句を言いながら押しのけ、自分が入ってきた外壁の穴に向かう。


 まさかここで武司天に遭遇する事になるとは……。あの筋肉ダルマ、ガチでここでやり合うつもりのようだ。まあ、やり合わねえ理由もねえもんな。


 俺達は敵同士。目と目が合ったら殺し合う運命みたいなもんだ。


 今から逃げても逃げ切れないだろうな――と思いつつ、町に潜んで再度不意打ち狙いをしようと思ったが……。


「元気かシシン!? 元気だよなぁ、蠱毒計画の唯一の生き残りだもんなぁ」


「…………」


 武司天(バケモノ)が笑顔でやってきた。


 俺を殴り飛ばして作った壁の穴からやってきた。居酒屋の敷居をまたぐように、気安い様子で追いついて来やがった。


 未だに俺を撮ってるアホ一般人に「さっさと逃げろ」と促す。悲鳴をあげながら携帯端末を向け続けているので、携帯端末を真っ二つにしてやって逃げるように促しておく。


真白の魔神(メフィストフェレス)の蠱毒計画は参加者全員を殺し合わせ、最後の1人に皆の命を束ねる実験だった。それによって、何度死んでも蘇る再生超人(リジェネレーター)の作成に成功した」


「…………」


「だが、何度でも蘇るわけじゃない。限度がある。蠱毒計画の参加者と同じだろ?」


「……多分な」


 俺も限度は知らん。


 ただ、俺は蠱毒計画の参加者の命を束ねて造られた存在だ。束ねられた命を使い果たせば蘇れないだろう。


 俺の残機(いのち)は無数にあったが、もう何度も消費している。


 一番削ってきたのが、目の前にいる筋肉ダルマだ。


「お前は俺に、何度殺されたっけか?」


「覚えてねえ」


「50億回ぐらいだ。さて、お前の生まれた世界の人口は?」


「…………50億ちょっとってとこかね」


「今回の殺し合いが最後になるな」




■title:<砂巳>の市街地にて

■from:<武司天>ミカエル


 シシンはプレーローマ(おれたち)の敵だが、雑魚時代から可愛がってきてやった敵だから殺すのは惜しく感じる。


 だが、何度勧誘しても人類側につき続けているんだから仕方ない。そもそも今回は(・・・)絶対に逃がすわけにはいかない。


 お前にも色々と事情あるんだろうが、こっちの事情もあるんだよ。


「――――」


 シシンが再び一刀を放ってきた。


 弾丸を遙かに凌ぐ速度ながらも、空気さえ揺らさない透明な一閃。


 それを指で挟んで止めつつ、ひねる。


 刀を奪われまいと動いたシシンが飛ぶ。その勢いも利用しながら投げる。


 宙を舞ったシシンが壁を足場に飛び込んでくるより早く、駆け寄って拳撃を見舞う。シシンは防御したが、その身から骨が折れる嫌な音が静寂を破った。


 次いで、壁が砕け散る音も響いた。


 俺の拳に耐えかね弾けた壁と共に、シシンが再び吹っ飛んでいった。光翼を使ってそれを追い、シシンが着地した屋上に俺も降り立つ。


「ぐ…………!」


「さっさと神器を抜け。それなら確実に俺の力を削げるぞ。……オファニエルも界外に出た頃合いだ。遠慮無く使え」


 何を封じるか選ばせてやると宣言し、神器を抜く時間を作ってやる。


 シシンは俺を睨みつつも、大人しく神器を抜いた。


「神器解放・権能法度……!」


 世界の決まりを塗り替え、権能を封じてきた。


 これで俺の権能(ちから)は使えない。元々使ってないが――。


「権能でいいのか? 本当にいいのか? 本当に勝てるのか?」


「分が悪いのはわかってる。だが、こうするしかねえ」


 シシンは鼻に詰まった血肉を吹き出しつつ、剣をゆるりと構えた。


「剣術で勝って見せるさ」


「上等」


 笑いつつ胸を張り、可愛い好敵手と相対する。


「丘崎獅真。天使の敵。……悪いが、今日ここで死んでくれ」


「ほざけ、筋肉ダルマ……!!」




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