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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第6.0章:交国計画
741/875

過去:プレイヤーと使徒 1/6



■title:マクファルド・ヴィンスキーの屋敷にて

■from:遊者(プレイヤー):【詐欺師】


「……そろそろかな?」


 交国からネウロンに逃れてきて、シオン教団のマクファルド・ヴィンスキー氏と交渉し、匿ってもらう事には成功した。


 ステー達はマクファルド氏を説得しようとしている。交国の脅威やネウロンの軍備を整える事を勧め続けている。


 さすがのマクファルド氏も少し辟易している様子だけど、我々が異世界からやってきた存在のため、情報を引き出すために我慢してくれているようだ。


 向こうは特別、干渉する必要はないだろう。ステー達に任せればいい。


 僕の方は船酔いで体調が優れないと言い訳し、部屋で休ませてもらう。休みつつ、自作の<虹の勇者>をボンヤリと読んでいると――。


「……どうぞ」


「失礼します」


 扉がノックされ、屋敷の使用人さんが入ってきた。


 体調が優れない僕の様子を見に来てくれたらしいけど――。


「昨日までの人と違うね?」


「はい。彼女は体調不良で……。今日から身の回りの事は私にお任せください」


 微笑んでいる使用人さんに微笑みを返す。


「ありがとうございます。エーディンさん」


 そう言うと、向こうは笑顔のまま小首を傾げ、「どなたかとお間違いでは?」と言ってきた。自然体で誤魔化そうとしてきた。


「私は、えーでん? という名前では……」


「いいえ。貴女は真白の魔神の使徒・エーディンだ」


 ネウロン人にもわかりやすいよう、叡智神の使徒と言うべきなんですかね――と言いつつ、言葉を続ける。


「983年前。貴女は真白の魔神にネウロンを任され、シオン教を興し、試作型統制(ドミナント)機関(プロセッサー)でネウロン人を統制した」


「あの、何の話……?」


「現在は適時名前と姿を変え、ネウロン各所に出没し、ネウロン人を見守っている。真白の魔神や<エデン>の仲間達と連絡が取れなくなった後もずっと、貴女はネウロンの人々に尽くしてきた」


「違う。適当な事を言わないで」


 微笑んでいた使徒・エーディンの表情が、スッと冷たいものになった。


「私はネウロン人に尽くしてきたわけではない」


「では、スミレさんの弔いですか?」


 使徒・エーディンは「スミレ」という名に表情を動かした後、僕を軽く睨みながら「それだけじゃない」と言ってきた。


「色々知っているようね。……スミレの事だけじゃない。私は真白の魔神(マスター)に逆らえない」


 真白の魔神に「ネウロンを頼む」と言われた以上、それに従わざるを得ないだけだ――と言って来た。


 真白の魔神が仲間の裏切り防止のためにつけた統制(ドミナント)戒言(レージング)の影響で逆らえない、と言いたいのだろう。


「私は、嫌々、ネウロンの管理を続けているだけ。可愛い妹分(スミレ)が愛したネウロンを……仕方なく見守っているだけ」


「統制戒言に縛られているだけ、というわけではないでしょう。使徒・バフォメットの眠りも守ってあげているんじゃないのかな……?」


「知ったような口を利くな」


 ヴィンスキー家の使用人に扮している使徒・エーディンの表情が、笑顔からほど遠いものに変わっていく。……少し突っ込んだ事を言い過ぎただろうか?


「で、あなたは何者? 何故、私達の事を知っているの? 余所者でしょう?」


「僕は【詐欺師】という遊者(プレイヤー)です」


 貴女が使徒・エーディンである事は、<予言の書(カンニングペーパー)>によって知っていた。今日ここにいれば貴女が来る「可能性」があると知っていた。


 予言の書に書かれているのは未来ではない。


 あくまで過去の出来事。こことは別の多次元世界で起きたことが書かれているだけ。だから、予言の書に書かれている事が絶対に起きるわけではない。


 ここに使徒・エーディンが現れるかは半ば賭けだったけど……|異世界からやってきた者達ぼくたちを警戒し、様子を見に来る可能性が高いとわかっていた。


 使徒・エーディンは「遊者」と言ってもわかっていない様子だった。歴史の裏で暗躍し、世界に寄生する僕達の事はさすがに把握していないようだ。


 細かい事は後々説明していくとして――。


「なかなか信用できないと思います。では、未来に起こることの『予知』してみせますから、その結果を見て判断してもらえませんか?」


「私がそこまでする必要、あるのかしら?」


「貴女がスカートの中に忍ばせている消音器付きの白い拳銃を使って口封じしますか? やめた方がいい。あるいはここから1キロ離れた場所にある貴女の隠れ家に僕を連れて行って拷問でもしますか? やめた方がいい。もしくは屋敷の倉庫の入って左側に6歩歩いた床下に隠してある真白の魔神が造った毒薬を使いますか? やめた方がいい」


「――――」


 息を飲んだ使徒・エーディンに対し、これから1週間以内に起きる出来事を伝える。全てが当たるかは賭けだが、これぐらいは突破してみせないと。


 この先の賭けと比べたら、お遊びのようなものだ。


 予知した事が当たり始めると、使徒・エーディンは僕を信じ始める――なんて事はなく、一層、疑いの目を向けてきた。警戒を深めているようだ。


 だが、僕は適当を言っているわけではない。それは理解してくれたようだ。


 それを理解してもらったうえで、過去の話をする事にした。


「<エデン>がネウロンを離れる事になった蜂起事件があったでしょう?」


「ええ。それが何?」


「アレを扇動したのは僕です」






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