過去:ある女の終わりと始まり
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私は誰? ここはどこ?
そんなドラマのような感想を抱く日が来るなんて、思わなかった。
いや、その記憶すらないんだから、かつての私が考えていた可能性はあるか。
どうやら私は記憶喪失らしい。……覚えているのは、とても断片的な記憶。
私は源の魔神と戦っていた。しかし敗れた。
敗れ、死んだはずだけど……いま、ここで生きている。
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私は「メフィストフェレス」と言うらしい。
魔神の一柱、真白の魔神であり……何をするも私の自由だと言われた。
自由だと言われても困る。ただ、やりたい事はある。
死者を蘇生したい。
私は……「誰か」を蘇生したいと思っている。
その「誰か」が誰なのかすら、忘れてしまっているけど……。
…………。
確か、男の子だったはず。
年下の男の子で……私にとって、とても……大事な――。
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都市を襲っていた光翼の生えた人間。アレの正体は「天使」と言うらしい。
天使はプレーローマという大組織に所属しており、人類を滅ぼそうとしている。それに抗うために力を貸してほしい、と頼まれた。
私には大した力なんてない。
けど、抗わなければ私だけではなく、皆も死んでしまう。だから出来る限りの事をする、と誓った。一緒に天使達に抗おう。
天使達を造ったのは源の魔神という存在らしい。
その名を聞いた時、私の中に怒りの感情がこみ上げてきた。どうやら私は源の魔神と何らかの因縁があるらしい。
私は彼の魔神に負けたのだろうか? そして記憶喪失になった?
あるいは――。
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プレーローマは強大。天使達も強靱。
権能持ちの天使は単騎でも強いのに、集団で襲いかかってこられると抗いようがない。……今の戦力ではどうしようもない。
このままでは人類は負ける。滅んでしまう。
何とかしないといけないのに、私は……致命傷を負ってしまった。
何もやり遂げないまま、ここで死んでしまう。
……ごめん、むつ――――。
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死んだはずなのに生き返った。
記憶は…………相変わらず。
いや、少し……違和感が――。
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源の魔神は倒す必要がない? そもそも、もういない?
だとしても、プレーローマは何とかしないと。
滅ぼすにせよ、和平を結ぶにせよ、私達には力が必要だ。
力なき者の言葉など、同じ人間でも聞いてくれない。
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私には1つだけ異能がある。
天使達が使う権能とは別の力らしい。
私の異能は転生。死んでも死んでも多次元世界の誰かの身体を使って、復活できる。……その誰かを犠牲にして復活できる。
プレーローマを倒すには、この力を活用するしかない。
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僕1人でプレーローマを襲撃し、死んだら転生して新しい身体で再襲撃する。
なんて計画は……さすがに無茶だ。無意味な自殺行為だ。
転生能力以外、大した力のない僕じゃ何度やっても無駄死にするだけ。それどころか天使達に捕まる危険がある。捕まってしまえば、この異能も活かせない。
仲間が必要だ。
天使達に抗うために、人類の力を束ねないと。
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人類の連合軍を作ることが出来た。
必勝の確信はないけど、この戦力で何とかするしかない。
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人類連合軍は敗北した。人類同士で足並みが揃わず、各個撃破された。
いや、仮に足並みが揃ったところで、上位の天使達に勝つのが難しい。
けど、何とか勝利を掴まないと人類はいずれ滅ぶ。
この敗北を糧に対策していくしかない。
人類の結束を強め、質を高めなければ……数で勝っていたところで、質で圧倒されてしまう。上位の天使達が規格外の存在すぎる。
単なる連合軍では駄目だ。
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初めまして。いや、正確には「初めまして」じゃないけどね?
キミは神器・偽典聖剣だ。……それはわかっている? それは良かった。
そう。そう……その通り。
俺がキミを受肉させて、その可愛らしい身体にしたんだ。
キミと意思疎通をしたくてね。協力してほしいんだ、勝つために。
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■from:ver.0.7.0
人類の力を1つにまとめる。
人類連盟で、人類の全てを管理しよう。
そう思い立って行動し始めたものの、進捗は芳しくない。
各国首脳は人類連盟発足にすら難色を示している。プレーローマという脅威に立ち向かうためには、早急に行動を起こすべきなのにまごついている。
ラプラスは「少しハードルを下げて、段階的に人を集めていくべきなのでは」と言っている。その意見は正しい。採用する。いや、採用するしかない。
規制を強めるのは、既成事実を作った後でいい。
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バオムが理解してくれた。
プレーローマに勝つためには、思い切った対策が必要だと理解してくれた。
神聖ファゴットブルグ帝国の後ろ盾があれば、きっと他国も――。
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皇帝が死んだ。バオムが死んだ。
暗殺だ。おそらく、身内の犯行。
誰がやったかはわかる。わかるが……告発するだけの証拠が――。
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帝国が方針を変えた。
わかってる。予想はしていた。
2代目がバオムの意思を踏みにじるのはわかっていた。
失敗した。彼に護衛を派遣していれば、こんな事には――。
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■from:ver.1.0.0
嘔吐が止まらない。
脳が内側から弾けそうだ!
違う。外側から潰されているんだ。
自分の脳が、繋がってはいけないものと繋がってしまった感覚。
くるしい。くるしい。くるしい。
しにたい。しにたい。しねない。
おれが、俺でなくなってしまう!!
あぁ、でも、この坩堝から知識を引き出せば、勝てる。
記録装置には全てがある。
人類を勝利に導くことができる!!
耐えないと。
勝利に、犠牲はつきものだ。
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■from:ver.1.0.0
人類に裏切られた。いや、人類にとっては俺が裏切り者なのか。
プレーローマは混乱期の真っ只中。人類に戦力を注力できる状況じゃない。
けど、混乱期はきっといつか終わる。その前に手を打つ必要がある。
だから何とかしないといけないのに、俺は今回も失敗した。
事を急いてタイラー達を派遣したのがマズかった。
クリュサオル翁がいたら、こんな事には……。
だが、次がある。この失敗を次の転生に活かせばいい。
俺には転生能力がある。死ぬけど死なないから、何度でもやり直せる。
ラプラスを巻き込まずに済んで良かった。
あの子は次の人生で迎えにいけばいい。
俺は何度だってやり直せる。
何度だって、取り返しが――――




