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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第5.5章:砂の王冠【新暦1239-1250年】
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過去:明らめる



■title:新暦1250年

■from:復讐者・カトー


「カトー君。つらそうだねぇ」


「…………」


 クスリを打っていると、アイツが来た。


 泥人形が来た。


「何でそんなつらいかわかる?」


「……お前みたいな鬱陶しい奴が話しかけてくるからだ」


「違うよ。つらいのは、キミがまだ希望(・・)を持っているからだよ」


 希望?


 希望だと?


 姉貴も仲間も神器も失い、もう長くないオレが……希望を持っている?


 あまりにも馬鹿らしい話に反論すると、泥人形はニンマリと笑いながら「キミにはまだ希望が残されているじゃないか」と言ってきた。


「神器は交国に奪われた。その結果、キミは不死性を失った。……けど、神器を取り戻せば死を遠ざけられる可能性がある。全盛期の力を取り戻すのは不可能でも、交国の特佐になった頃の力は取り戻せるかもしれない」


「…………」


「他にも希望がある。キミにはフェルグス・マクロイヒという後継者候補がいる。自分が死んでしまっても生きた証を残せるかもしれない――という希望がある」


「…………」


「さらに、復讐という希望がある。殺された姪っ子や姉のために仇討ちできるかもしれないという希望がある。キミは絶望の只中にいるようで、実際は希望を抱いているんだよ。それがホタルの如き儚いものでもね」


 だからなんだ。


 何が言いたい。


「キミは『死なずに済むかもしれない』『想いを託せる後継者候補がいる』『復讐できるかもしれない』という希望を持っている。だから(・・・)つらいんだよ! ちんけな希望を手放せずにいるから、ず~~~~っとつらいままなんだよ」


 だから、どうした。


 つらいからどうした。


 もうやめろって言うのか? ふざけるな。


 オレにはもう、この道しか――。


「キミはあと、どれだけ失えば救われるんだろうね。あるいは……何を与えられれば救われるんだろうねぇ? いっそのこと……結核にでもなってみる?」


 うるさい……。


「あるいは記憶喪失? キミの選択で交国に下った事でエデン残党は――」


 黙れ!!


 消えろ。


 オレの目の前から、消えろ!!


「あはは。消える消える。お望みなら死んであげるよ。……でも、親切心で助言しているんだから真面目に受け止めてほしいな。キミが苦しんでいるのは『ない』からではなく、『ある』からなんだよ。きっとね」





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