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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第1.0章:奴隷の輪
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TIPS:狭間の地に住まう者達



【TIPS:狭間の地に住まう者達】

■ビフロストについて

 ビフロストとは多次元世界の中心にある<大龍脈>を広範囲に渡って支配している中立組織である。


 戦乱の絶えない多次元世界において中立を保つのは困難だが、ビフロストは新暦以前からそのポジションに立ち続けている。


 ビフロストの技術力や<大龍脈>という「多次元世界の要所」を支配している事は、どの勢力からも魅力的。長年に渡ってビフロストは他勢力から狙われ続けてきた。それでもなお中立と独立を守り続けている。



■ビフロストとプレーローマの争い

 ビフロストは可能な限り中立を守ってきた。


 しかし、他勢力は「ウチに味方しろ」「我が国の支配下に入れ」とビフロストに要求し続けてきた。誰にも加担しないと言いはったところで、戦続きの多次元世界で中立を守るのは容易くない。


 人類の敵・プレーローマもビフロストを殲滅、あるいは支配下に置く事を望んでいた過去があった。特に源の魔神が存命の時は、幾度もなくビフロストはプレーローマに襲撃され、多数の犠牲者が出た。


 それでもなおビフロストは独立を守り続け、「多次元世界最強の神」と言われた源の魔神が直接侵攻してきた時すら、何とか退けた。


 プレーローマによる「大龍脈侵攻作戦」は長年に渡って続いたが、ビフロストは何とか耐え抜いた。


 最終的に源の魔神が死に、混乱期に入ったプレーローマは「今はビフロストと争っている場合ではない」とし、不可侵条約を締結。それ以降、プレーローマとビフロストは大きな争いを起こす事がなくなった。


 全盛期のプレーローマを退け続けたことは、他に例がないほどの快挙である。プレーローマとの戦いがビフロストに残した爪痕は大きいが、それでも不可侵条約締結まで独立を守った事で、今のビフロストがある。


 この快挙によってビフロストが脅かされる事は無くなった。


 ――という事は無かった。


 その後もビフロストの戦いは続いた。



■ビフロストと人類勢力の争い

 プレーローマの侵攻を耐えきったビフロストだったが、今度は人類勢力に「我々についてプレーローマと戦え」と求められた。


 ビフロストは中立を保つために人類勢力の要求を突っぱねた。


 ビフロストの構成員には人類が多いため、組織内でも「中立を守るか否か」の議論は紛糾した。それでも最終的には中立を優先した。


 人類勢力はビフロストの決定を大いに批判し、軍を差し向けて武力でビフロストを支配しようとした。


 だが、プレーローマの侵攻すら耐えたビフロストにとって、人類の軍勢など容易い相手だった。武力によるビフロスト支配は早々に頓挫した。


 そこで人類勢力は作戦を変えた。


 自分達に与しないなら、お前達には何も与えてやらない――とばかりに兵糧攻めを開始した。大龍脈を可能な限り封鎖し、いかなる勢力もビフロストとの貿易を行わないように圧力をかけていった。


 防衛戦では無類の強さを誇るビフロストだったが、打って出るだけの力はないため、この兵糧攻めは非常に効果的だった。


 大龍脈は多次元世界の要所だが、人類が生きていくために必要な物資が手に入りづらい場所。経済・物資事情ではプレーローマ戦以上に困窮する事となった。


 しかし、ビフロストはこの状況を凌いだ。


 人類側ではなくプレーローマ側に援助を求め、構成員達を食いつながせた。


 プレーローマ側もビフロストの力は認めている。だからこそ不可侵条約を締結したのであり、この機会にプレーローマ側に引き込んでやろうと考えた。


 人類側もビフロストの力を認めているため、これには大いに慌てた。ビフロストがプレーローマ側につくより、中立のままでいてくれた方が「まだマシな状況」と考え、直ぐにビフロストと平和的交渉を再開した。


 ビフロストは人類とプレーローマの間を反復横とびしつつ、現在も中立と独立を守っている。「防衛戦に限ればプレーローマ相手にも勝つ」「大龍脈という要所を支配している」という優位を活かし、立ち回り続けている。


 現在はビフロスト相手に喧嘩を売る勢力も殆どいなくなり、ビフロストが統治する大龍脈は「多次元世界で最も安全な場所」と言われている。



■ビフロストの武力

 度重なる他勢力からの圧力に耐え、ビフロストが存続しているのは、防衛戦に限ればプレーローマとさえやり合える「武力」の存在が大きい。


 ビフロストの武を担っているのが、<虚の魔神>という魔神である。


 虚の魔神は、プレーローマと何度も矛を交えてきたが、何度も撤退に追い込んでいる。あの源の魔神ですら、虚の魔神を殺し切ることは出来なかった。


 ビフロストの防衛体制は虚の魔神に依存しているが、その虚の魔神を倒すのは「不可能」と言われている。それだけ強力な魔神がいる事で、ビフロストは大龍脈という要所を領有し続けている。


 この虚の魔神はビフロスト構成員らに「虚王様」と呼ばれ、頼りにされている。虚の魔神は現在も変わらず大龍脈とビフロスト構成員らを守護し続けている。


 ビフロスト内部にはプレーローマや大国の都合に左右される状態を不満に思い、「虚王様の力を持って打って出るべき」と主張する者も多くいた。


 ただ、虚の魔神はあくまで防衛にしか力を貸してくれないため、虚の魔神に頼り切りのビフロストは大龍脈以外になかなか領地を広げられずにいる。


 独立は守れているが、それはプレーローマと人類勢力の戦いによって生まれる「狭間」あっての独立。


 どちらかが倒れると――人類勢力に兵糧攻めをされた時のように――大龍脈に閉じ込められて弱っていく可能性もある。


 この事からビフロスト内部には「プレーローマと人類の均衡状態を永遠に続けさせよう」と考える者もいる。そのために両陣営に適度な干渉をする事もあるため、真の意味で「中立」と言っていいのか怪しい状態である。


 虚の魔神自身は組織内外の政治に無関心。「ビフロストの長」と言っても力と名義を貸しているだけなのが現状だ。ただ、他の魔神よりは付き合いやすい相手なので、広義の意味では人類の味方と言っていいだろう。



■ビフロストの商業

 ここまでの話だと、ビフロストが「虚の魔神に依存した組織」に見えるだろう。


 その認識は間違い――とは言い切れない。ビフロストが存続しているのは、虚の魔神の後ろ盾あっての事なので、依存しているのは確かだ。


 ただ、ビフロスト構成員達は長年、足掻き続けている。


 例えば「通行税」を得ることで、組織の力を強化・維持している。


 ビフロストは多次元世界の中心部にある<大龍脈>を広範囲に渡って支配している。この大龍脈は「多次元世界の交通の要所」であり、多次元世界で広く活動するには「大龍脈経由ルート」を無視するのが難しい。


 大龍脈を経由せずに目的地に向かう場合、数倍の日程が必要になる事もある。時間がかかるという事は、それだけ経費がかかるという事だ。


 ビフロストの商業部門は多次元世界の経済活動を監視し、「大龍脈経由ルートの方が得」と考えてもらえるような通行税を設定し、利用者から徴収している。


 通行税に不満を抱く者は多くいるが、「大龍脈経由の方が早い」となればしぶしぶ支払わざるを得ない。


 また、大龍脈経由ルートは「大龍脈の守護者・虚の魔神」の存在によって安全が保証されている。人類とプレーローマの軍勢が顔を合わせても、大龍脈近辺での戦闘は固く禁じられている。この安全性も無視できない魅力となっている。


 通行税によって莫大な富を得たビフロストは、自分達でも商業活動を開始。自分達の方舟を所有し、自分達で様々な世界に商品を買いに行き、大龍脈の市場等で人類・天使・魔神問わずに売りつけ、さらなる財を築いている。


 虚の魔神はあくまで「大龍脈の防衛」をやっているため、大龍脈外で航行しているビフロストの船を常に守ってくれるわけではない。


 大龍脈外を航行中のビフロストの方舟は、一見、狙い目の獲物だ。


 ただ、ビフロストの方舟を襲ったとバレると、「大龍脈通行禁止」という強力な外交カードを突きつけられる。これはどの勢力にとっても避けたい罰則だ。


 ゆえにビフロストの方舟はプレーローマも人類文明の軍も容易に手出しできない存在となっている。ビフロストはこれを活かし、多次元世界のあちこちに商売の手を伸ばす事に成功している。


 小規模な海賊は「ビフロストだぁ? 知ったこっちゃねえ!」と襲いかかってくるが、それに関しては各国・各勢力を護衛として雇い、対応している。


 どの勢力もビフロストが経済面で一人勝ちするのは望まないので、関税等で対応している。だが「大龍脈という要所」を握っている事実は強力なカードであり、ビフロストは経済界でも無視できない存在になっている。



■インフラの提供:龍脈灯台

 ビフロストは商業以外にもインフラの提供を行っている。


 それが<龍脈灯台>と<龍脈通信>である。


 多次元世界で複数の世界に股をかけて活動する場合、世界と世界の間にある<混沌の海>を航行しなくてはならない。


 混沌の海は数メートル先すら見えないほど視界が悪く、備えなく混沌の海に漕ぎ出すと、簡単に遭難してしまう。


 ビフロストは混沌の海各所に<龍脈灯台>という設備を整備し、灯台の位置がわかる<羅針計>という計器を販売している。


 これらを使うことで、暗い混沌の海の中でも遭難しづらくなる。龍脈灯台はビフロストの設備のため、どこの勢力も手出ししづらい安全性も保証してくれる。


 混沌の海での航海に欠かせない存在となっており、人類勢力だけではなく、プレーローマもビフロストの龍脈灯台に頼っている。


 羅針計はビフロストへの伝手があればタダ同然で手に入る。ただ、これはビフロストが単純な善意でやっている活動ではない。


 羅針計は厳重な使用者登録が行われており、各羅針計の位置もビフロストが掴んでいる。羅針計に頼っている以上は航路データをビフロストに握られているため、仮にビフロスト所有の輸送船を襲おうとした場合、羅針計から位置と存在を掴まれ、犯人とバレてしまう。


 龍脈灯台という「安定したインフラの提供」という外交カードを作り、羅針計という「位置把握」によって自組織の商業保護をするのがビフロストの狙いだ。


 どの勢力もビフロストに依存したインフラを好ましく思っていないが、混沌の海を安全に航行するには龍脈灯台と羅針計に頼るのが一番のため、なかなか切り離せないでいる。


 ビフロストそのものを掌握してしまえば、逆にインフラを乗っ取れるのだが、それには虚の魔神を倒す必要がある。ビフロスト構成員らは虚の魔神という後ろ盾を最大限活かし、何とか生き残りを模索している。



■インフラの提供:龍脈通信

 ビフロストの提供しているインフラは龍脈灯台だけではなく、前述の龍脈通信もある。こちらも非常に大きな影響を持っている。


 龍脈通信は<龍脈>というものを使って「世界間通信網」を構築しており、この龍脈通信を使うことで異世界にいる相手とも安定した通信が可能となっている。


 龍脈通信に頼らず、有線で通信網を構築することも不可能ではないが、龍脈通信より維持管理が難しく、破壊等の妨害に弱い。


 龍脈通信はビフロストにすら傍受困難で秘匿性が守られているが、龍脈通信経由で通常の通信に切り替わった部分の秘匿性は、その通信に依存する。



■ビフロストの外交カード

 ビフロストは国家ですらない組織で、規模もそこまで巨大ではない。


 それでも「虚の魔神の後ろ盾」によって「大龍脈を広範囲領有」「インフラの提供」という強力な外交カードを作る事に成功した。


 中立組織の「ビフロストごとき」がこれだけ重要なものを握っている現状を面白く思っていない者は多い。


 だが、中立組織が管理しているからこそ、争いの絶えない多次元世界でこれだけのインフラを維持できている――と言えるのかもしれない。


 強力な外交カードを持っているとはいえ、ビフロストは「多次元世界最強の集団」などではない。戦の狭間に出来た限られた空間で足掻き、生存戦争に身を投じている集団の1つに過ぎない。



■雪の眼

 そんなビフロストの下部組織として存在するのが<雪の眼>である。


 雪の眼は「真実の歴史保存」という目的を掲げ、<史書官>達を多次元世界各地に派遣し、多次元世界の歴史を蒐集し続けている。


 この雪の眼はビフロスト上層部にとって、「厄介な悩みのタネ」として疎んじられている。それでも存続を許してしまっている。


 ビフロストの大半の者達にとって「真実の歴史」なんてものはどうでもいい。歴史蒐集のために様々な勢力の「突かれたくない過去や真実」を探ることで、外交関係が悪化するのを恐れている。


 せっかく苦労して作った外交カードを雪の眼が利用し、他の勢力に睨まれる現状を苦々しく思っている。ビフロスト上層部では「雪の眼の解体もしくは追放」が何度も検討されたが、実現には至っていない。


 鼻つまみ者の史書官達が「ヒャッハ~~~~!」「文化は保護だぁ~~~~!」と暴れ回っているのを泣く泣く見守り、時に尻拭いせざるを得なくなっている。


 特に「自称天才美少女」のラプラスは問題児として警戒されている。


 ラプラスは強力な護衛を連れ、各国の中枢に突撃していく。上層部は悲鳴を上げながらそれを注視している。


 また、ラプラスは大龍脈内で子供達を引き連れ、三輪車珍走団を結成してキコキコと暴走し、各国の要人達と「おっぱいソムリエサミット」を開催したりなどの問題行動を起こしている。


 後者は外交関係の構築に役立つ事もあるが、ラプラスに振り回される外交部門の人間は宴会の席で「アイツ……クズなんだ! いっつも私に奢らせるし!!」と愚痴を言った翌朝、大龍脈の花壇に首から下が埋められている状態で見つかった。


 被疑者のラプラス氏は「秘書がやりました」と語ったが、被害者本人に「アイツがやった!」と言われ、逃亡。


 取り押さえられそうになると「うおおおお! エノク~! 強行突破~!」と叫び、護衛のエノク氏に肩車されながら大龍脈から逃げ出した。


 本人不在で査問会が行われ、1000件を超える余罪が発覚しているが、ラプラス本人は逃亡先で容疑を否認し続けている。



■<雪の眼>の名前の由来

 雪の眼の名前は「『雪』の名を冠する存在の眼として、真実を保存していく」という意図でつけられたものである。


 その存在については、雪の眼本部のロビーの天井画として描かれている。




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