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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第5.0章:その正義に、大義はあるのか
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玉帝の敵



■title:港湾都市<黒水>の黒水守の屋敷にて

■from:死にたがりのスアルタウ


「交国だけじゃない。人類全体が変わらなければならない。今までのやり方が通用しなくなっているからね。私はまず交国を変えるために交国に来たんだ」


「…………」


「交国はとても強い影響力を持っている。だから、その交国が変われば人類全体がもっとまともになるはずなんだ。……人類の結束が強まれば、プレーローマにだって抗えるはずだ」


 黒水守は元は流民だった。


 けど、神器使いとしての実力と、犯罪組織(ロレンス)の長を殺した実績によって交国に迎え入れられた。その実績で交国に取り入った。


 そして、交国を内部から変えようとしているって事か。


「でも……一からまともな組織を作った方がいいのでは? 交国は……あくまで交国でしょう……? 交国を変えるより別の組織なり国家を作った方が――」


「一から作っていたら、交国や他の強国に叩き潰される可能性がある。それなら既に強いところを変えた方が、『まだ成功確率が高い』と考えたんだ」


「…………」


「今の人類は駄目だ。プレーローマの侵攻をギリギリのところで食い止められているが……かなり危うい状態なんだ。このままじゃいつか負ける」


 負ける前に、今の人類文明を変える。


 人類連盟を牛耳っている強国を変えていくことで、人類文明全体を変えていく


 黒水守はそう言った。


 言っていることは、まともに聞こえるけど――。


「その理屈は……ある程度、理解できます。納得できます。貴方の口から出てこられると、懐疑的になってしまいますが……」


 僕がそう言うと、黒水守はふにゃりと笑って「つれないなぁ」と言った。


 けど、巽さんと奥方様が「自業自得だろ」「お前がアーロイを挑発しすぎるのが悪い」と言ってくれた。


 交国が変わるのは……真っ当な国家になるのは、とても良いことだ。


 けど、黒水守達がどれだけ頑張ったところで、それが実現するとは思えない。


「妾も睦月の考えに賛同し、交国人として協力しておる。交国は変わるべきじゃ」


「奥方様は<玉帝の子>でしょう? 交国の支配者である玉帝の身内じゃないですか。それなのに、なんで……」


「身内だからこそ、玉帝の蛮行を間近で見てきたのでな」


 奥方様はため息をつき、「妾は睦月ほど壮大な考えは持っていないが、交国は変わるべきだと思っておる」と言った。


「妾が交国の支配に疑問を持ち始めた事件は、お前達にも関係がある」


「僕らにも……?」


「サイラス・ネジ中尉を覚えておるか? 星屑隊の隊長じゃ」


 もちろん覚えている。


 実は玉帝の近衛兵を務めていた経歴の持ち主で、それでも玉帝と戦った隊長。……僕らを逃がすために命懸けで戦ってくれた恩人だ。


「サイラス・ネジ中尉も、妾達の同志じゃった。彼は元々……アダム・ボルトという名前で、玉帝の近衛兵をやっておってな」


 ネジ隊長もとい、「アダム・ボルト」は玉帝の近衛兵だった。


 そして、奥方様の護衛の任務も与えられていたらしい。


 奥方様はその縁で隊長と親しくなった。


「妾にとって、アダム・ボルトは……ボルト一家は、家族同然の存在じゃった。……しかし、玉帝はボルト一家を消耗品扱いした」


 20年前、玉帝暗殺未遂事件が起きた――という発表があった。


 事件は当時の近衛兵隊によるもので、暗殺そのものは失敗したと発表された。


 けど、その事件そのものが偽りだったらしい。


「暗殺事件など、最初から存在しない。玉帝はカトー特佐の時と同じく、冤罪で近衛兵達を葬ったんじゃ」


「何故、そんなことを……」


「実はその時、重要な情報が流出したようでな。それに近衛兵の1人が関与してしまったらしく……玉帝はその機密情報を守るために近衛兵どころか、その家族に関しても抹殺したんじゃ」


「機密情報って……?」


「お前達も知っておるものよ。『交国オークの真実』じゃ」


 7年前、公になった交国のオークの真実。


 交国のオークが軍事利用されているという、交国の土台を揺るがす情報。


 それはそもそも、20年前に流出した情報らしい。


「20年前、プレーローマの工作員が近衛兵の1人を通じて『オークの真実』を盗み出した。それを止めるために玉帝は近衛兵達を捕まえて処刑を行った」


 工作員に協力していたのが1人とは限らない。


 だから、玉帝は全員まとめて口封じしようとした。


 それどころか、関係者も――家族も、まとめて殺そうとした。


「玉帝は『近衛兵など、いくらでも補充できる』と考え、彼らの処刑を正当化するために冤罪で殺したんじゃ」


「そんな無茶苦茶な……」


「お前も、玉帝が無茶苦茶な為政者という事は知っておろう? ……奴が目的のためなら手段を選ばない非情な輩じゃと、知っておろう」


「…………」


「まあ結局、情報流出は防げなかった」


 機密情報流出に関与していた近衛兵は処刑。


 しかし、情報自体は既に工作員によって持ち出されてしまっていた。


「その後、流出した情報は<ブロセリアンド解放軍>に渡されることになった。……プレーローマは奴らを使って交国の土台を揺るがし、騒乱を起こそうとした。それに関しては半ば失敗したがな」


 奥方様は「その件はさておき――」と言い、話を20年前に戻した。


「アダム・ボルトも、玉帝に処刑されるとこじゃった。……じゃが、妾はアダムが悪事を働くなど信じられなかった」


「…………」


「じゃから妾は、アダムを逃がすことにした」


 玉帝は説得できない。玉帝は、アダム・ボルトの事も疑っていた。


 シロ寄りだとわかっていても、近衛兵内に「腐った林檎(うらぎりもの)」がいたことで不信感を抱き、当時の近衛兵を皆殺しにすることにした。


「……逃がす事を決めた時にはもう、ほぼ手遅れじゃった。アダムの息子も、妻も……その腹におった子も……皆、玉帝の指図で殺された後じゃった」


「…………」


「それでも妾は、『せめてアダムだけでも』と思って逃がしたんじゃ」


「それに協力したのが、私がお世話になっていた組織(ロレンス)でね。私もアダムの交国国外逃亡を手伝って……その縁で彼と知り合ったんだ」


 当時は一介の流民犯罪者に過ぎなかった加藤睦月も、アダム・ボルトの逃亡を手伝った。奥方様に――石守素子に依頼され、手伝った。


 奥方様が逃亡幇助を依頼した先の組織は、奥方様の兄が関わっていた犯罪組織だったらしい。そのお兄さんは故人らしいけど、奥方様はその組織への連絡手段を見つけ、藁にも縋る想いで「交国から人を逃がすのに協力してほしい」と頼んだ。


 依頼先の組織は相手が交国(あいて)だけに難色を示したものの、最終的に協力を約束。神器使いの加藤睦月も動いた事でアダム・ボルトの国外逃亡を成功させた。


「妾は近衛兵(アダム)を国外に逃がしたことを咎められ、長らく幽閉されておった。……幽閉されながら、玉帝への恨みを募らせておった」


 それだけ、ボルト一家が大事な存在だったらしい。


 玉帝に自分の大事な存在を――家族同然の存在を奪われた。


 それは、石守素子の目を覚ますのに十分な事件となった。


 幽閉生活を送る中、奥方様は面従腹背の生活を送っていた。表向きは反省しているフリをしつつ、本心ではボルト一家を奪った玉帝への復讐心を募らせていた。


「誰が敵で、誰が味方かほぼわからん状況じゃったから……妾は1人で玉帝に復讐するつもりじゃった。じゃが、妾1人で出来る事は限られておった」


 玉帝の手のひらから抜け出すことすら難しい状況。


 それでも奥方様は裏で交国に貢献し、幽閉生活から抜け出せるように努力しつつ、力を蓄えていた。……自分の無力に打ちひしがれながら、それでも反抗の機会を窺っていた。


「そんな折り、1人の流民上がりの男が妾を訪ねてきた」


「それが黒水守ですか」


「当時は領主ではなかったけどね。自分の親同然だった人(ロミオ・ロレンス)の首を持って玉帝に取り入った卑劣な神器使いだった」


 加藤睦月はアダム・ボルトの国外逃亡を手伝った縁で、協力関係を結んだ。


「アダムも玉帝への復讐心を持っていた。玉帝への復讐の機会があるなら何でもやると言った。故国である交国も売ってやる、と言った」


「…………」


「私は玉帝に対して、そこまで思うところはないけど……人類文明は変わるべきだと考えていた。人類同士でいつまでも争っている暇があるなら、人類同士で手を取り合う方が効率的と考えていた」


 そこで加藤睦月は、アダム・ボルトから得た情報を元にある計画を立てた。


 巨大軍事国家・交国を変える。


 革命を起こす計画を立てた。


「革命といっても、そんな大々的なものじゃない。交国が変わってくれればそれでいい。……その過程で玉帝消すのもアリだと考えていた」


「なかなか……物騒な考えですね」


「今でこそ領主をやっているけど、私は所詮、犯罪者だからねぇ。暴力的な手段は何度も頼ってきた。目的のために何人も殺してきた悪党(クズ)だよ」


 悪党だけど、人類の破滅を願っているわけではない。


 人類の一員として人類の未来を憂いている。憂いているからこそ、加藤睦月は「まず交国を変えよう」と考えた。


 真っ当になった交国で人類文明に働きかけ、世界を変えていきたい。


 そんな考えを抱いていた。


 そして、アダム・ボルトと石守素子は玉帝への復讐を考えていた。


「アダムは玉帝への復讐のため、睦月と手を組んだ。……妾もアダムとの縁で睦月と手を組むことを決めたのじゃ」


「じゃあ、実質……貴方達は『交国の敵』ってことですか」


「うむ。正確には『玉帝の敵』と言うべきかもしれんな。交国そのものは改革して存続させたいと考えておるゆえに」


 アダム・ボルトは――サイラス・ネジ中尉は、この場にはいない。


 しかし、黒水守と石守素子の同志だった。3人は表向きは玉帝に傅きつつも、玉帝の支配体制を覆そうとしていたということか。


 あまりにも話が大きすぎるうえに……予想していなかった話だから、正直困惑する。直ぐ信じるのも難しそうだ。


 けど、こんな重要な話をここでするってことは――。


「巽さんも、黒水守達の同志なんですね?」


「ああ。俺は睦月が交国に来る前からの共犯者(つきあい)だよ」


 書斎の壁に背中を預けて黙っていた巽さんはそう言い、さらに言葉を続けた。


「俺は俺で目的があってな。睦月達を手伝った方がいいと考えて、コイツらの遠大な計画を手伝ってやってんのよ」


「巽さんは、玉帝への復讐心は――」


「復讐心と呼べるほどのものはねえよ。ただ、交国は俺の故郷(・・・・)にクソ迷惑なことやらかした奴らでなぁ……交国を滅ぼすなり、変えるなりしないと故郷が滅びかねないから睦月達の計画に乗ったのさ」


「故郷って……プレーローマではなく……?」


 巽さんが権能みたいな力を使っていたことを思い出しつつ、そう問いかける。


 巽さんは渋面を浮かべつつ、「俺は天使じゃないっつーの」と言った。


「一応、人類文明の1つだよ。お前の故郷(ネウロン)みたいに交国に侵攻されたんだ。ウチの場合は何とか交国を退けたが……交国に比べたら小国で、ずっと退け続けるのはほぼ不可能な状況だったんだ」


「巽さんの異能(ちから)は、何なんですか。ホントに権能じゃないんですか?」


「権能ではない。まあ、雑に説明すると『影を操る力』かね? 一族に伝わる秘伝の力というか……俺個人の特殊能力だと思っとけ」


 巽さんは「俺の話なんて後回しでいいだろ」と言いながら手を軽く振り、僕らに元の話に戻るように促してきた。


 この人達は「人類文明を変えたい」「玉帝への復讐をしたい」「故郷を守りたい」という各々の目的を持っていた。目的は違う人もいるけど、利害が一致したから協力している。


 全員の目的を叶えるとなると――。


「皆さんは……玉帝暗殺のために、準備を進めているんですか」


「違う」


「惜しいが違う」


「いまそれやってもねぇ……。私の目的が達成困難になっちゃうから……」


「どういう、ことですか……?」


 巽さんと黒水守はともかく、奥方様達は玉帝が憎い。復讐を考えている。


 黒水守も「玉帝を殺すのはアリ」とか言っていたのに――。


「最終的に殺す可能性もあるけどね。仮に暗殺成功したら、どうなると思う?」


「交国が……大きく変わる」


「変わるなんてものじゃない。下手したら滅ぶ(・・)よ」


 交国はずっと横暴を働いてきた。


 力で弱者を虐げてきた。


 交国の所為で総長は冤罪で捕まり、ネウロンもメチャクチャになった。オーク達は軍事利用されていた。それ以外にも沢山の不幸が交国によって生まれてきた。


「交国は確かに悪い。悪いけど、プレーローマの人類文明圏への侵攻をかろうじて止められているのは、交国の力も大きいんだよ」


「…………」


「仮に交国が滅びた場合、人類の防衛線に大きな穴が開く。するとプレーローマは『対交国』に使っていた戦力を他所へ回せるようになる」


「そうなると……ドミノ倒しで人類文明が滅んでいく……?」


「その可能性が高い」


 黒水守はそう言い、さらに言葉を続けてきた。


「交国が滅んだ場合、一番喜ぶのはプレーローマだ。だから奴らは交国から『オークの秘密』を暴く機密を盗み出し……ブロセリアンド解放軍を焚きつけた」


 7年前、解放軍が動いた裏にはプレーローマがいたらしい。


 プレーローマが解放軍を裏で支援し、蜂起させることで交国領内で大きな混乱を起こす。それに乗じてプレーローマの大軍が交国を攻め、滅ぼす計画があったそうだ。幸いというべきか、プレーローマの企みは失敗したようだけど――。


「玉帝を殺せば、玉帝に恨みを持つ人達の溜飲は下がるかもしれない。けど、絶対的な権力を持った統治者が死ねば、交国は瓦解する可能性がある」


 交国の権力は玉帝に集中している。


 7年前の事件のガス抜きとして、玉帝の権力の分散も行われたけど……肝心な権限は玉帝の手中にある。交国は、変わらず玉帝に支配されている。


 だからこそ、玉帝が死ねば交国は滅びかねない。


 玉帝への復讐をしたい奥方様はともかく、「交国を変えて人類文明も変えたい」と考えている黒水守にとって、それは都合が悪い。


 交国が瓦解してしまった場合、目的達成が困難になる。交国どころか人類全体が詰みかねない事態になる。


「私達はひとまず玉帝を殺さず、交国を変えようとしているんだ」


「それは……無理でしょう。玉帝が心変わりするなんて思えません」


「睦月は『本質を変えることは出来ないにしても、説得は出来るかもしれない』と言いだしたんだ」


 巽さんはそう言い、さらに詳しく説明してくれた。


 玉帝は私欲ではなく、「人類の勝利」という目的で動いている。


 玉帝が強硬な政策ではなく、もっと穏便な政策に切り替えてくれれば「交国を変えられるかもしれない」という考えを黒水守は持っていたらしい。


 玉帝を恨んでいる奥方様も、その理屈を「一理ある」と認めてくれたらしい。自分の復讐心に関しては脇に置くとしても、利害次第では玉帝が方針を転換し、交国を「真っ当な国家」に変える可能性もあると考えていたようだ。


「ただ、玉帝を真っ当に説得する方法は見つからなかった。奴は『オークの秘密』が公となり、オーク達を従来通りに軍事利用できなくなってもなお、裏では強硬な手段を使い続けていたような輩じゃからな」


「じゃあ……どうするんですか?」


 玉帝の説得は無理。


 玉帝を殺せば交国が滅び、その影響は他の人類国家にも波及しかねない。


 黒水守はイタズラっぽい笑みを浮かべ、「どうすればいいと思う」と言ってきた。僕を試すような目つきで見つめてきた。


「……あくまで真っ当な手段に頼るなら……玉帝を権力の座から引きずり下ろす。例えば……玉帝を廃位に追い込んで、<玉帝の子>の1人である奥方様に即位してもらうとか……」


「素晴らしい。良い方法だね!」


「けど、それも簡単にできるとは思えません」


 玉帝は寿命で死ぬ様子がない。下手したら不老不死かもしれない。


 死ぬのを待って、その後継者に名乗りを上げるのすら難しい可能性がある。


 だからといって、生きているうちに権力の座から引きずり下ろそうとしたら……権力を握っている玉帝に潰されるだろう。


 相手は「交国最高指導者」の権力を乱用し、色んな人を冤罪で捕まえてきた暴君だ。冤罪で捕まえる以上のあくどいこともやってきた輩だ。


「交国を変える方法なんて……無いじゃないですか」


「そんなことはない。その事は、キミも(・・・)よく知っている」


「えっ……?」


「私は玉帝を説得するのが一番穏便だと思って、交国にやってきた。神器を使って交国に貢献し、玉帝に近づき……彼女を説得するのが一番穏便だと考えていた」


 しかし、それは出来なかった(・・・・・・)


 玉帝は頑なだった。


 ただ、黒水守達は「第二の手段」を用意していたらしい。




■title:港湾都市<黒水>の黒水守の屋敷にて

■from:黒水守・石守睦月


 俺達は第二の手段(それ)を、ロミオ・ロレンス(おやっさん)のお陰で知る事が出来た。


 かつてのロレンスは交国と裏取引を行っていた。交国に様々な便宜を図ってもらう代わりに、交国の「裏の戦力」として動いていた。


 ただ、ロレンスは海賊行為(せんとう)以外の仕事も交国から請け負っていた。


 その1つがサルベージ。……玉帝や石守回路は古の<エデン>の情報(データ)を求めていた。サルベージによって、真白の魔神が率いていた頃のエデンの情報を見つけ出そうとしていた。


 ロレンスは交国の要請に応え、サルベージの仕事も行っていた。その結果、混沌の海に沈んでいたエデンの方舟を数隻見つけることに成功した。


 そこから得た情報の大半は交国に報告した。


 交国はそれから――かつてのエデンの航路情報から<ネウロン>の場所を特定し、ネウロンに侵攻した。ネウロンで「何か」を手に入れようとしていた。


 私達は、おやっさんから古の<エデン>の情報を得ていた。おやっさんは交国に全てを報告せず、自分達(ロレンス)の切り札を確保しようとしていた。


 おやっさんが遺してくれた情報を元に、私達はネウロンにある「とある遺産」を手に入れることを決めた。


 それを第二の手段として確保し……交国の「改革」に挑み始めた。


「我々は、その第二の手段を使って交国を変えようとしている」


「その方法というのは……」


「詳しいことはまだ言えない。ただ、キミはもう知っているものだよ」


 手を伸ばし、フェルグス君を指さす。


 答えはキミの中にある。……よく考えれば察しがつくはずだ。


 ロミオ・ロレンスは、交国に不信感を抱いていた。


 だから、全ての情報を交国に渡したわけではない。いざという時の切り札にするために、一部の情報は自分と俺達だけに共有するだけに留めていた。


 おかげで、俺達は「第二の手段」を手に入れることが出来た。


「その方法、玉帝に通用するんですか?」


「通用したよ(・・・)。そうですよね、玉帝(・・)


 通信機に向け、呼びかける。


 レンズさんとも話すために北辰隊に繋いでいた通信機が、交国首都にも繋がった。正確にはさっきからずっと繋げていた。


 私達の会話を、玉帝に聞かせるために――。





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