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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第5.0章:その正義に、大義はあるのか
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致命的な失敗



■title:運送会社の輸送船にて

■from:エデン実働部隊<ラフマ隊>副長のヨモギ


「…………」


 交国軍の誘導に従い、方舟を動かす。


 だが、この先には奴らの部隊が展開しているはずだ。


 情報部の話だと、交国軍はこの方舟にエデン構成員が乗っているのに気づいている。それ以上の事に気づいているかはわからんが、知っているからこそ誘導している。俺達を叩きやすい場所に誘導している。


 誘導されるがままに方舟を移動させ、指示通りに方舟から下りたが最後、一斉射撃を受けて殺される。先に「投降しろ」と言ってくるかもしれんが、どちらにせよこのまま誘導に従い続けていたらマズい……!


 マズいものの誘導に従わずに動いたら、どっちにしろ攻撃される。


 空域内に一般の方舟も多くいるから、ド派手にブッ放してくることは無いと思うが…………いや、相手は交国軍だから何やってくるかわかんねえ。


「今は誘導に従いつつ、地上近くまで下りたら仕掛けましょう」


 ラフマ隊長はこの状況でも、いつも通りの平静を保っている。


 とりあえず相手の指示に従って方舟を動かしつつ、仕掛けるための準備を進めさせている。


 ただ、交国軍とやり合うだけの武装はない。


 隊長の「力」で隠し持っていた装備があるが、どれも歩兵用のものだ。相手が機兵を出してきたら通用しないし、相手の数を考えたらどっちにしろ心許ない。


 俺らがいま使っている方舟も、非武装の輸送船だから戦闘には使えない。流体装甲も備わっていないから砲撃を食らったら簡単にフッ飛ばされる。


 ほぼ詰んでいるが…………。


「アル君。キミが頼りよ。巫術で敵の兵器を奪って混乱を作って」


 隊長は地上近くでアルを突貫させ、アルが起こした混乱に乗じて離脱するなんて言いだした。それはさすがに無茶だ。


「隊長。アルの負担がデカすぎますよ。死にますって……!」


「他に手がある?」


「そ、それなら俺が――」


「アンタはアル君より雑魚でしょ。流体甲冑を装備したこの子に勝てるヤツ、この方舟にいる?」


 そりゃあいるだろう。例えばアンタとか――。


 けど、ラフマ隊長の正体はまだアルに明かせない。


 こんなところで力を使うことも、出来ない。


 いま、玉帝にこっちの正体を掴ませるわけには――。


「悪いけど、アル君に頼る以外、この状況を突破する方法はない」


「いや、しかし……!」


『大丈夫です、ヨモギさん! 僕に任せてください!』


 アルは隠していた流体甲冑を纏い、戦闘態勢を整えている。


 この子に任せていいのか?


 実質、だまくらかして連れてきたこの子に、無理させていいのか?




■title:運送会社の輸送船にて

■from:死にたがりのスアルタウ


「まず、煙幕を展開する。そしたら飛び出て敵の機兵か方舟を奪って」


『りょ、了解です……!』


 敵が待ち構えている以上、何とか切り抜けるしかない。


 この状況で対機兵戦闘が出来るのは僕だけ。


 僕が囮になって、その隙にラフマ隊の皆さんに逃げてもらう。出来れば交国軍の方舟を奪って、出来るだけ大暴れしないと――。


『兄弟、落ち着け。敵はまだこちらが気づいた事に気づいていない様子だ。先手を取れる以上、勝機はある。だが絶対に焦るな』


『わかってる……。大丈夫、なんとかする……!』


 エレインに言葉を返しつつ、震える手を押さえる。


 自分でも大丈夫じゃない自覚はある。


 ここを切り抜けたところで、その先はどうする?


 でも、とりあえず、何とかしないと……!


 ラフマ隊長の合図を聞き、煙幕の中に飛び出す。


 誘導地点の周囲にいた魂の群れが――隠れていた交国軍人が一斉に動くのが見えた。こちらに向け、弾丸も飛んできた。


『ッ…………!!』


 飛んでくる無数の弾丸に流体甲冑が削られる。


 胴体の装甲だけ強化し、強引に突破する。


 けど、何発も貰い続けていたら耐えられない。


 早めに機兵を見つけて、奪わないと……!!


『――あった!!』


 少し離れたところで、隠れていた機兵が立ち上がる。


 流体装甲で作り出した槍を手に、ラフマ隊の皆さんが乗った方舟に向かおうとしている。一般人もいる港で機兵用の銃器を使う気はないようだけど、あの槍が方舟に投げられただけで大変な事になる……!


『待て兄弟! 最短距離を走り過ぎだ。遮蔽物を利用しろ!』


『――――』


 機兵に向かう。


 エレインの助言はもっともだけど、急いで機兵を止めないと!


 じゃないと、ラフマ隊長達がやられ――――。




■title:運送会社の輸送船にて

■from:エデン実働部隊<ラフマ隊>副長のヨモギ


「――――」


 俺達なんかのために船外に飛び出したアルが、敵機兵に向かって行く。


 敵の装甲車を蹴飛ばして最短経路を突っ走っていった。


 だが、読まれていた。


 アルが突っ走っていく進路を読まれていた。


 隠れていた交国軍の狙撃兵が一斉射撃を行った。


 いくつかの弾丸が流体甲冑ごとスアルタウを抉り、致命傷を――――。


権能起動(・・・・)ッ!!」


 瞬間。


 視界が赤く染まった。




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