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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.3章:無冠の英雄【新暦1189-1239年】
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過去:報い



■title:新暦1239年

■from:エデンのカトー


「カトー! カトー!! 竜国から連絡が来たぞ!!」


「竜国から……?」


 交国への身売りの件をファイアに相談しようとしていると、竜国から連絡が来たと言われた。……竜国がオレ達を心配して、連絡してきた。


 竜国でエデンの人間を受け入れる事は出来ないが、物資を融通してくれるらしい。向こうも交国とやり合って苦しい状況だろうに……。


 物資があれば、もうしばらくやっていける。……その間に、交国に身売りする以外の方法が見つかる可能性も――。


「久方ぶりに、懐かしい顔を見られるそうだ」


「懐かしい顔?」


「エデンが保護した子を、竜国に預けただろう!? 彼らは成長して、今は竜国の国軍で働いているらしい。彼らが物資と届けてくれるそうだっ!」


 ファイアが嬉しそうにそう言うと、ナルジスもほころんで「私のお兄さん、お姉さんみたいな感じだね」と言った。


「ナルジスに紹介するのが楽しみだよ。といっても、オレ達も会うの久々だが」


「成長した姿では、誰が誰かわからないかもな」


「大丈夫。わかるさ。背が伸びて顔つき変わっても、中身は同じなんだからな」


 希望が残っていた。


 オレ達が守った希望が、残っていた。


「竜国との合流地点に向かうぞ!」


 オレ達がやってきた事も、少しは意味があったんだ。




■title:新暦1239年

■from:エデンのカトー


 何で、竜国の部隊が襲ってきた。


 何で、見知った顔が襲ってきた。


 何で、そんな目でオレ達を見るんだ。


 何で、なんで。


 オレ達を、助けに来てくれたんじゃ…………。




■title:新暦1239年

■from:エデンのカトー


「なぜ……何故! 吾輩達を襲ってきた!? お前達は、竜国の人間として、我々に救援物資を届けに来たのでは……!?」


「俺達は、お前達の神器を奪いに来たんだ」


「意味がわからん」


 見知った顔が、よくわからん事を喋っている。


 お前、ハチロータだろ? それにお前はミク……。ミキスギもいるじゃないか。


 竜国の学校でいっぱい学んで、大きくなったんだな。成長したんだな。


 お前らが誰か、オレはわかるぞ。


「オレ達がわからないのか? オレだよ、カトー兄ちゃんだよ」


「……知ってます。だから(・・・)、襲ったんだ」


「……なんで」


「だから……! アンタらの神器を手に入れて、竜国に持ち帰るためだよっ! 神器を持ち帰れば、交国との戦争も少しは優位に進められるかもしれないだろ!?」


「レンオアムか」


 アイツが、お前達をけしかけてきたのか?


 救援物資を持って来たフリをして、オレ達を襲うよう命じたのか?


「違うっ! 竜王様がそんなこと、命じるわけないだろっ!?」


「竜国が人類連盟とやり合うことになって、ヒドい状態になって……。そんな時、何もしてくれなかった(・・・・・・・・・・)エデンなんかに手を差し伸べる慈悲深い御方だぞ!? 竜王様は……!」


オレ達(エデン)が、何もしなかった?」


「事実だろ!? アンタらは竜王様の厚意に甘えてばかりで、借りを何も返してくれなかったじゃないか!!」


「竜国が危うい状態なのに、助けに来てくれなかったでしょ!? 恩知らず!」


「…………、…………」


「エデンの所為で……アンタ達みたいなテロリストと関わった所為で、流民(おれたち)も竜国もヒドい目にあってるんだ!」


「だから、アンタ達を殺して神器を奪うしかねえだろ!?」


「誰の命令だ」


 レンオアム王の命令じゃないなら、誰に命じられた。


 そう聞くと、「俺達の独断だ」という答えが返って来た。


「俺達、竜国流民同胞団は……竜王様への忠誠を示すために、竜王様の命令に背いて……お前達の神器を回収しにきたんだ!」


 レンオアム王は、オレ達に救援物資を送るつもりだった。


 実際に送った。


 だが、物資輸送を担当した部隊が……コイツらが、勝手に仕掛けてきた。


 そういう事らしい。


 かつて助けたはずの奴らが――竜国のために――オレ達を殺そうとしたらしい。


「だが、作戦は失敗した。俺達の負けだ」


「負けたが、テロリストに屈するつもりはない……!」


「何を――――やめろ!!」




■title:新暦1239年

■from:エデンのカトー


「はっ……。ハハッ……」


 兵士の遺体が転がっている。


 竜国の兵士達が――オレ達を睨みながら――自決していった。


 誰も助けられなかった。


 オレ達が助けたはずの子供達(いのち)が、オレ達の所為で死んでしまった。


「ハハハハハッ!!」


 希望が残っていた?


 どこに?


 オレ達は、結局、何も出来なかったってことじゃないか。


 それどころか、皆を不幸にした。




■title:新暦1239年

■from:エデンのカトー


「…………」


 過去のニュースを見る。


 竜国国内にある元流民達が住んでいる町で、大きな暴動があったらしい。


 そこには、エデンが竜国に預けた奴らが大勢いた。


 大暴動のきっかけは、竜国とエデンの関係が発覚したこと。


 竜国が人類連盟から抜けざるを得ない状態になった時のこと。


 竜国の国民は「エデンというテロ組織が竜国に災いをもたらした」と言い、「エデンの関係者を殺せ」と言いだしたらしい。


 そして、竜国の国民が元流民達が住んでいた町に押しかけ……元流民達を襲ったらしい。軍が止めに入ったものの、その時には大火事も起きており、元流民側に多数の死傷者が出たらしい。


 その後も、竜国で元流民達は難しい立場に置かれた。


 オレ達(エデン)なんかと関わっていた事で、アイツらが責められた。


 真に受け入れてもらえたわけじゃなかったんだ。


 余所者である流民に対し、悪感情を持つ奴らがいたんだ。それが竜国の人連脱退をきっかけに爆発し、元流民への排斥運動に繋がった。


 だから……輸送部隊のフリをして、オレ達のところにきたアイツらは……オレ達を襲った。オレ達を殺して神器を手に入れ、エデンと元流民の手が切れている事を証明しようとした。


 レンオアムが望んだわけではないが、竜国国民の信を得るために……厳しい状況にある元流民の同胞達のために、自分達の手を汚す決断をした。


 知らなかった。


 竜国は孤立していたし、内部の情報は殆ど伝わってこなかった。


 知らなかったんだ。そんな事になっていたなんて。


 でも、全部、オレ達が悪いのか?


 じゃあ、どうすれば良かったんだ。


 誰か、教えてくれよ。




■title:新暦1239年

■from:エデンのカトー


 レンオアムから通信が来た。


 話したくない。


 アンタらは、もう一切オレ達に関わるな。




■title:新暦1239年

■from:エデンのカトー


「竜国には頼らない。……頼れない」


 オレがそう言うと、失望の声があがった。




■title:新暦1239年

■from:エデンのカトー


「ニュクス総長が生きていれば……こんな事には……」


 そうだな。


 オレも、そう思うよ。


 何で、オレなんかが生き残っちゃったんだろうなぁ。




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