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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.3章:無冠の英雄【新暦1189-1239年】
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過去:溺れる貧者達



■title:新暦1213年

■from:エデンのカトー


「出来るだけ早く……退去してほしい」


「…………。あいよ」


 侵略者に追われていた雑魚国家を助けてやったら――エデンに礼を言いつつも――早く出て行ってほしい、と言ってきた。


 まあ、いつもの事だな。


 コイツらも人類連盟に配慮しているわけだ。


 エデンはテロリストだから、付き合っちゃいけませんよ~ってわけだ。……助けてくれるエデンより、助けてくれない人連の方が大好きってわけだ。


「まったく……。助けてやったのにさぁ」


「カトー」


「あぁ、わかってるよ……」


 注意してきた姉貴に対し、「助けてやった(・・・)って思うのは良くないんだったな」と返す。そういう思考をするから疲れるんだったな。はいはい。


「でも、今回はマシな方だよ。退去してほしいと言った首相さんの申し訳なさそうな顔、貴方だって見たでしょ?」


「申し訳なさそうにするのなんて、タダで出来るからな」


「頼んだわけでもないのに、色々と物資もくれたよ」


「発信器が混ざってないか、よく探さなきゃなぁ。人連に売り渡すつもりかも?」


 半分冗談、半分本気で言うと、姉貴は腕組みしながらオレを見つめてきた。


 その視線に負けて、「物資には感謝するよ」と言う。感謝するだけならタダだ。


 でもさぁ、物資をくれたって言っても……手切れ金代わりだろ。テロリストに借りを作りたくないってだけの話だろ。


「私達はあくまで『テロリスト』なんだ。こういう扱いになるのは仕方ない」


「人連の所為で肩身が狭いねぇ」


「……何とかしたいんだけどね」


 オレも何とかしてほしい。


 何か方法がないのかよ――と姉貴に聞いたが、良い答えは返ってこなかった。


 私も考えているけど、未だに解決策はわからないという言葉が返ってきた。


「だから、貴方にも考えてほしい。……私だけじゃ無理」


「姉貴にわからねえ話が、バカのオレにわかるもんかよ」


 オレは戦闘担当だ。頭脳労働担当じゃない。


 オレに出来るのは壊す事と殺す事だけ。


 所詮……小学校中退の戦闘バカなんだ。


 プレーローマに人生ブッ壊されてなきゃ、もう少しまともな頭になれていたかもしれないけどなぁ。


「学歴は関係ない。……お願い、皆を救うために力を貸して」


「武力ならいくらでも貸すさ。でも、無いものは貸せねえよ」


 姉貴の頼みでも、無理なもんは無理だ。


 オレは戦うことしかできない。


 ……どうすればいいのかなんて、わかんねえよ。




■title:新暦1215年

■from:エデンのカトー


「…………」


 オレ達は、何のために戦っているんだろうか。


 最初はわかっていたはずの答えが、いつの間にかわからなくなった。


 それでも、戦い続けている。


 戦う以外のやり方なんて、わからねえ。


 助けた奴らにバケモノ呼ばわりされても、次の弱者を救いに行く。


 助けても助けても傷が増えていくだけでも、次の弱者を救いに行く。


 助けた奴らに裏切られても、助けるために戦い続ける。


 仲間にすら「狂犬」「ニュクス総長の犬」「殺し屋」と言われても、それでも姉貴が戦い続ける以上……戦うしかない。ついていくしかない。


 戦う理由なんて、姉貴が考えてくれるさ。


 だから今は……姉貴のために戦っている、と言うべきなのかな?


 姉貴はオレを労ってくれる。頑張ったら褒めてくれる。


 オレに対して、物言いたげにしている時もあるが……命令してくれるなら何でも従う。従えば褒めてもらえる。オレは、ちゃんと……報われている。


 姉貴が褒めてくれるだけマシなんだ。家族がいるだけ恵まれているんだ。


 家族はもう、姉貴しかいない。


 家族のためなら……何でもできる。


 他の道は知らない。


 小学校(がっこう)で教わらなかった。


 誰も、教えてくれなかった。


「カトーのオッサンなら……教えてくれたのかな」


 そんな言葉がコロリと出てきた。


 けど、あまりにもバカバカしい言葉過ぎて、笑っちまった。


 その救世主(オッサン)を殺したのは、オレだろ。


 オレの所為だろ。


 …………。


 この戦いは、いつまで続くんだ?


 戦い続けた先に、何が待っているんだ?


 わからない。


 いや、理解したくないんだ。


 自分達の向かう未来に、真っ黒の大穴が待ち受けている事を。


 それに落ちたくなければ、何もかも捨てて逃げるべきって事もわかる。


 わかるけど、今更…………。




■title:新暦1216年

■from:エデンのカトー


「姉貴。人類連盟加盟国の方舟(ふね)を襲うしかねえよ」


 姉貴が悩んでいる。


 物資不足で悩んでいる。


 エデンは弱者のために戦っている。助けた弱者を保護している。


 弱い奴らを食わせてやるのも、なかなか大変だ。


 姉貴は……総長は、ず~っと物資不足で悩んでいる。


 だから、「悪い奴の方舟を襲おう」と提案したんだが――。


「人連加盟国だからって、無差別に方舟を襲っていたら……ただの海賊だよ」


「オレ達はもう海賊でもあるんだよ。人類連盟サマが言ってるだろ? エデンは海賊行為も行っている犯罪組織だってさ」


 オレ達は――いや、姉貴はずっと、標的を選んでいる。


 オレ達が襲っているのはプレーローマの方舟か、悪い事をしようとしている人連加盟国の軍艦だけだ。それなのに人連はあることないこと言いふらしている。


 オレ達は……一般人は襲ってないのに……。


「だからもう、いいじゃねえか……。ガマンしなくても……」


「人連に何を言われようと、どんなレッテルを貼られようと……超えちゃいけない一線があるんだよ。愚弟」


「…………」


「人連と敵対しているからって、人連加盟国の方舟を好き勝手に襲っていたら……私達を糾弾する根拠(エサ)を与えてしまう」


「何やっても、奴らはオレ達は悪党呼ばわりだ」


「わかってくれている人は、わかってくれているよ。けど、一線を越えてしまったらそういう人達の理解も得られなくなる」


 姉貴は人連加盟国内にも「まともな人」はいる――と言う。


 そういう奴らを失望させないためにも、越えてはいけない一線がある。


 姉貴はそう言い張っている。確かに、まともな奴もいるかもだが――。


「そのまともな奴らは、どうせ大した力はない。オレ達が真面目に頑張っても、オレ達を助けてくれない奴らじゃないか」


「彼らも、今の人連では声をあげにくいんだよ」


「姉貴。大事なのは保護している奴らを餓えさせない事だ」


 助けてくれない奴らに媚びて、ガキ共を餓えさせたら本末転倒だ。


 アイツらは何も悪い事をしていないのに、苦しい生活をさせてしまっている。メシも娯楽も満足に与えられていないのが現状だ。


 アイツらが「流民」ってだけで疎まれて……どこにも受け入れられていない現状が……苦しい。アイツらを、苦しめたくない。助けたい。


 助けるためには――。


「オレ達の手は、もう汚れきっている」


「…………」


「ガキ共のためにも、汚れることを恐れてられないだろ」


「……ダメだよ」


「総長判断で決めたくないなら、オレの独断で勝手に――」


「ダメって言ってるでしょ!」


 総長は止めてきた。


 方法を探すから待ってほしい、と言ってきた。


 ……総長はずっと考えてきた。探してきた。皆を救う方法を。


 それでも見つかっていない以上は……。


「…………」


 姉貴の目を盗んで抜け出そうとしていると、奴が待ち受けていた。


「どこに行く」


 ファイアスターターが止めてきたから、「狩りだよ」と返す。


「総長が海賊行為を容認しない以上……狩りぐらいしかねえだろうが」


 本当に、純粋な狩りだ。


 適当な後進世界に行って、狩りとか漁をやるしかない。


 根本的な解決にならなくても、やるしか……。


「戦闘馬鹿が。殺した獣の処理はどうする。殺したら精肉がポロリと落ちるわけではないのだぞ?」


「んなこたぁ、わかってるよ!! けど、何とかしねえとダメだろ……!?」


「その意見には同意する。だから……我らも共に行く」


 ファイアスターターは他の構成員も連れて行こう、と言いだした。


 オレとファイアスターターが狩りを担当し、他の構成員には殺した獣の処理を頼むという話になった。


「少しは頭を冷やせ。皆を頼れ。食うものに困って、未開の地に獣を狩りに行くのは初めての事じゃない。皆、ある程度は経験がある」


「あぁ、そうだな……。そうだったな……」


 端末を使い、他の奴らを集めているファイアスターターの隣に座り込む。


「……ガキの頃、お前がイノシシの解体中にしくじった事があったな。腸を割いちまって、肉をウンコまみれにしちまった事があったなぁ」


「うるさい。キサマは獣の膀胱で遊んでいて、その中身を皆にぶちまけてしまった事があるだろうが」


「お互い、バカだったなぁ」


「ふん……。今もバカだよ、お互いに……」


 狩りに行こう。ガキ共をたらふく食わせてやるために。


 けど、これじゃ根本的な問題は解決しない。


 弱者を助け、保護していると……そいつらのメシの世話で手一杯になる。いつまでも狩猟や漁で物資を誤魔化し続ける事は出来ない。


 メシの世話で手一杯になっていたら、プレーローマや人類連盟と戦えなくなる。……弱い奴らを守れなくなる。


 それはマズい。何とかしなきゃならない。


 けど、どうすりゃいいんだよ?


 こういう時どうすればいいかなんて、誰も――。




■title:新暦1216年

■from:エデンのカトー


「竜国ねぇ……。期待するだけ損だと思うが……」


 姉貴達と小国に――竜国リンドルムという国にやってきた。


 協力してもらうために、頭を下げにやってきた。


 たった1つの世界しか支配していない国なんて、多次元世界では小国だ。竜国には、複数の世界を股にかけて支配しているような国ほどの力はない。


 ただ、エデンと協力してくれそうなところなんて、そうそうない。テロリストとして追われている以上、選り好みできない状況なのはわかる。


 姉貴は「竜国のレンオアム王は話がわかる御方だよ」なんて言っていたが、交渉は難航しているみたいだった。


「裏でこっそり協力関係を結ぶつもりとはいえ、竜国も人連に睨まれそうな事をやるだけの気概はないわな」


 テロリストを匿って人連からハブられたら長生きできない。


 ショボい文明の小国だから一層、人連サマの顔色を窺うわけだ。


 それに、そもそも――。


「竜国の王はトカゲ野郎だ。人類のことなんざ、どうでもいいと思ってる」


「カトー隊長。口を慎みなさい。トカゲじゃなくて、混沌竜よ」


 客室でくつろぎつつボヤいていると、姉貴がチクリと注意してきた。


 今日の話し合いも上手くいかなかった。……竜国の官僚共の品定めする目つきや発言を思い出すと、ムカムカとしてくる。


「アイツら、話し合いを長引かせてオレ達を足止めして……人連に突きだそうとしてんじゃねえの? やっぱ怪しいって」


「それはないよ。レンオアム王は、かなり前向きに話を聞いてくれている」


「…………」


 確かに、あのトカゲ王はこっちの話をキチンと聞いてきた。


 けど、チクチクと耳に痛い事も言ってきた。こっちの事、よく調べてんな……って感じの鋭い意見も言ってきた。


 だからこそ気に入らない事もある。あの野郎、エデンのやり方にアレコレと口出ししたがっているような素振りがあった。


「レンオアム王は私達を対等な交渉相手として見てくれている。側近や官僚が難色を示しているから、説得には時間がかかりそうだけどね」


 姉貴が……あのトカゲ王を信頼してるのも、正直気に入らない。


 さすがに今回も無理だろう。……どこかの国家と密かに協力関係を結んで、密かに支援してもらうなんて……どっちにとっても難しい話だ。


 エデンに支援者が必要って話は、わかる。


 オレ達は神器使い。一騎当千の猛者達だ。戦うのは大得意。けど……保護している奴らを養うのは苦手だ。皆のための物資をかき集めているだけで、身動き取りづらくなっちまっているのが現状だ。


 ひぃひぃ言いながら頑張ってやっと養えている。それだけじゃダメなのに。もっと悪党共を倒して、もっと多くの人を助けないといけないのに……。


 ただ戦うだけじゃ多くは救えない現状がマズいから、誰かに支援してもらう必要があるってのは……わかるんだけど……。やっぱ国家の後ろ盾を得るのは無理だろ。どうせ……また裏切られるさ。


 諦めようぜ、と姉貴に言ったが……姉貴は聞いてくれなかった。


 まだまだ交渉を進めたいようだ。


「ハァ…………。ちと、ガキ共と遊んでくるわ」


「うん」


 保護している流民のガキ共のところに向かう。


 アイツらを構ってやろうと思ったんだが――。


「おいおい……。ウソだろ……!?」


 ガキ共が姿を消していた。




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