表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.2章:雪に埋もれた真実【新暦1240-1243年】
591/875

手紙:楽園からの便り



■投函場所:ゲットー

 オジさんへ。ゲットーは今日も平和だよ。


 広々とした陸の上で、土と草の豊かな匂いに囲まれ、ノビノビと生活出来ています。オジさんが交国の人達と話し合ってくれたおかげです。


 皆も元気にしてるよ。全員同じ交国国営農場で働けているわけでないけど、同じ世界にいるし、連絡はいつでも取れるからそこまで寂しくない。


 けど、オジさんとは簡単に連絡取れない。傍にいないし、会いに行けないし、寂しいかな。オジさんもゲットーにいて欲しいなぁ、と思う毎日です。


 それがワガママってことは、わかってるつもりです。私達はオジさんのおかげで陸で胸を張って生きていけるようになった。コソコソ隠れたりする必要がなくなって、交国という立派な国の庇護下で暮らせています。


 毎日ちゃんと食事が出来て、部屋も大地も広々。方舟で暮らしていた時のように、皆がイライラしてケンカが絶えなかった日々はもうありません。


 私達がこれだけ幸せな生活を送れているのは、オジさんが交国の特佐として戦ってくれているおかげです。


 流民として爪弾きにされてきた私達が、交国領・ゲットーに定住できたのはオジさんが身を粉にして戦ってくれているおかげで。


 それはわかっている。


 わかっているからこそ、オジさんと一緒にいたい。


 お仕事忙しいだろうけど、たまには帰ってきてほしいです。出来ればそのままずっと一緒に暮らしたいです。


 子供っぽいワガママの自覚があるし、ムチャを言っているのはわかるけど、それでもどうしてもこの気持ちを伝えたかったので手紙を送ります。


 特佐としての仕事は危険だと聞くけど、無事でいてください。ちゃんと周りの人の言うことを聞いてね。オジさん、直ぐムチャするんだもん。


 それと、母さんの命日には帰ってこれそう?


 無理に帰ってこなくてもいいけど、休暇が取れそうだったら休暇ついでに帰ってきてほしいな。オジさんと話したいことが沢山あります。




■投函場所:不明

 一緒にゲットーで暮らそうって件だが、それはワガママでもなんでもないぞ!


 お前がそう言いたくなる気持ちはわかる。ナルジスはとても優しい子だから、オレがエデン時代のようにムチャしてないか不安なんだよな。


 でも、大丈夫。オレはそう簡単には死なない。元とはいえ、エデン最強の神器使いだったんだぞ? プレーローマの奴らなんかに負けるはずがない。


 交国政府と交渉して特佐の地位を手に入れたから、多少はワガママが言える。それだけオレは交国にも評価されているんだ。


 特佐の仕事が忙しいから一緒に暮らすのは難しいが、命日に戻るぐらいは出来るはずだ。とんぼ返りになるかもだが、必ず休暇を取るようにする。


 オレも正直寂しい。


 ナルジス達と会えないどころか、手紙でのやりとりしか出来ない日々は寂しいよ。でも、神器使いだから仕方ないんだ。敵軍に居場所を知られないよう、情報発信は可能な限り控えなきゃいけないんだ。


 この手紙も即日届かないだろう。せめて、電子手紙にしてオレがいまいる場所とは別の場所から発信した事にしてくれりゃいいんだが、交国はその辺の融通が利かないらしい。出来る限り早く届くことを祈る。


 そういえば、そっちで困っていることはないか? あったら何でも言ってくれ。オレの方から交国政府を叱りつける必要あったらキチンと動くからさ。


 あるいは、何かあったらオレの名前を使ってくれ。


 エデンのカトーならともかく、交国軍特佐のカトーなら色々と意見を言えるはずだ。寝床が狭いとか、食事が足りないとか、娯楽がないとかそういう不満があったらオレの名前を使って文句を言ってくれ。もしくはオレに言いなさい。


 農場の生活は慣れなくて大変かもしれないが、今はそこで耐えてくれ。交国政府と交渉して、もっと都市圏で暮らせるように交渉している。


 ゲットーは平和だろうが、一応、プレーローマとの前線に近いからな。ナルジスや子供達だけでもいいから、交国本土で暮らさせてくれと上と交渉している。


 宗像長官はそれなりに話がわかる人で、「活躍次第で検討する」と言ってくれている。お前達を、交国本土の学校に通わせることだって不可能じゃないはずだ! 


 オジさん頑張るから、応援しててくれ。期待しててくれ。


 そういえば今日の食事で野菜を食べたんだが、その中にゲットー産のモノがあったかもしれん。ナルジス達が頑張って育てたモノを食べたと思うと、元気がモリモリとわいてくる。


 ナルジス達が食料を作ってくれるおかげで、オレも他の交国軍兵士も飢えずに元気に戦えている。オレ達を支えてくれてありがとう!


 もっと元気になるために、ゲットーに行ってナルジスと一緒に食事をしたいと考えている。手紙なんかじゃなくて、直接会って話をしたい。


 命日に合わせて休暇を取るようにするから、その時、いっぱい話そう! ゲットーでのこと、色々教えてくれ。




■投函場所:ゲットー

 こっちは何も問題ないよ。陸でノビノビ生活出来ているだけで、とっても幸せ。オジさんのおかげで平和な毎日を送れています。


 私達もゲットーで暮らし始めてそんなに日が経ってないから、まだそこまで食料作れてないんだよね。でも、もう少ししたら私達が関わったゲットー産の食料も出てくるかもしれません。


 今日なんて、ジャガイモの生育を始めました。オジさんに美味しく食べてもらうためにも、真心込めて育てるから楽しみにしておいてね。


 ゲットーでの暮らしは確かに慣れないことも多いけど、毎日楽しいです。農作業は初めての事ばかりだけど、だからこそ新鮮で楽しいです。


 私達はゲットーの暮らしで十分幸せです。交国本土なんて行けなくてもいいから、オジさん無理しないでね。お願いだから自分の事を大切にしてください。


 話は変わるけど、交国にいるはずのムツキさんとは連絡取った? 会えた?


 2人は親友だったんでしょ?


 オジさんが困ってることあったら助けてくれるかもしれないから、「こっちも交国に移住してきたよ」って知らせた方がいいと思う。




■投函場所:不明

 アイツは親友でもなんでもない。アイツの名前は二度と出さないでくれ。


 誰にアイツのことを聞いた? まあ、大体察しはつく。お喋りのオオバコだろ? もしくは姉貴が生きている時に聞いたのか?


 アイツは本当に親友なんかじゃない。そうだった時もあるが、今は違う。


 アイツはオレにとって親の仇だ。それを隠して親友ヅラをしていた卑怯者だ。アイツはたくさんの一般人を殺した虐殺者なんだ。


 今は同じ国家に所属しているとはいえ、仲間意識なんて欠片もない。奴とは話したくないし、顔を見るだけで反吐が出そうになる。それどころか手が出るかもしれない。仇討ちしたくてたまらなくなる。


 だから、あの男の名前は絶対に、二度と出さないでくれ。


 頼む。




■投函場所:ゲットー

 ごめんなさい。あの人の事は二度と言わない。約束する。


 それと明日、別の農場に移る事になりました。新しい住所も書いておきます。ゲットーに戻ってきた時には、そっちにも来てほしいな。


 農場が壊れたとかじゃなくて、手が足りないところがあるらしいから、私だけ応援に行く事になったの。エデンの皆がたくさんいるところからちょっと離れちゃうけど、一時的な事らしいから安心してね。




■投函場所:不明

 ナルジスが別の農場に移った件、交国政府を通して抗議中だ。


 お前だってゲットーの生活にまだ慣れていないのに、子供1人だけで別の農場に応援に行くのはおかしい。間違っている。人手が必要ならオオバコかビクティ辺りを使えば良かったのに、なんでまだ幼いお前だけ送り込むんだ?


 変なところだったら直ぐに言え。オレの名前もドンドン使え。


 出来るだけ早く、お前を皆のところに戻す。約束する。


 不安にさせてすまん。絶対、何とかしてみせる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ