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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
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ラートの死



■title:交国領<ネウロン>の繊一号にて

■from:血塗れの英雄・犬塚


「黒水守が憎いか?」


『……………………』


「お前らは納得出来ないと思うが、黒水守は……単なる人殺しとは違う。神器使いとして、交国軍の仕事を(・・・)手伝っただけ(・・・・・・)だ」


 当時の玉帝はまだ黒水守を信用していなかったのか、お前達の追跡には使わなかった。だが、ネウロンに残った脱走兵の後処理には動員した。


 その結果、ラートは運悪く黒水守と出くわした。


 黒水守側も仕事だから、事務的にラートを殺したんだろう。脱走兵を見逃すような事があれば、黒水守も裁かれる事になるからな。


 俺は黒水守がラートを殺したと聞いて、さすがに思うところはあったが……「仕方がなかった」と納得している。


 ただ、コイツらは納得できないだろうな。


 流体甲冑に包まれたスアルタウの表情は見えない。


 だが、どんな顔をしているのかは想像が出来た。


「…………。俺のことも黒水守の事も、好きに恨めばいいさ」


『…………』


「だが、ラート達の事は誇ってやれ」


 アイツらは脱走兵だ。交国の敵だった。


 だが、人間としてはアイツらの方が――。


『…………』


 スアルタウは黙ってうなだれていた。


 その様子を黙って見守っていると、機兵がやってきた。


 さっきの奴らみたいに俺を殺しに来たのかと思ったが、どうやらスアルタウの仲間が俺を引き取りに来たらしい。


『アル、犬塚特佐はオレの方で移送しておく。お前は休め』


 どうやらエデン総長自ら俺を引き取りに来たらしい。


 移送名目で、本格的に尋問なり拷問が始まるのかもしれんな。


 エデン総長に休むよう促されたスアルタウは、うなだれながら去っていこうとしていた。その背に呼びかけ、少しだけ引き留める。


「お前、スアルタウって名乗ったが……それは偽名だな?」


『…………』


「ラート達が逃がした巫術師の中に、そんな名前の奴はいなかった。……ただ、第8巫術師実験部隊に『スアルタウ』という少年巫術師がいたという記録を見た。ひょっとして、お前はそいつの――」


『……兄です。僕は、弟の名前をコードネームとして使っているだけです』


「何故、弟の名前を使っている」


『それは…………』


 スアルタウが振り返り、こちらを見てきた。


 言葉を探すように黙っていたが、直ぐに返答してくれた。


『弟の名に……恥じない人間になりたいからです』


「……お前、テロリストなんか向いてねえよ」


 俺がそう言うと、機兵に乗ったエデン総長は「アンタがとやかく言う話じゃねえよ」と口を挟んできた。それを無視しつつ、スアルタウに話しかける。


「忠告しておいてやる。スアルタウ」


『なんですか……』


「テロリストの末路は、ろくなもんじゃない。お前みたいな奴には……向いてない。テロリストなんかやめて、逃げちまえ」


『逃げません。……まだ、助けなきゃいけない人が……残っているから』


 スアルタウはそう言い、屋上から飛び降りた。


 流体甲冑を着ているから問題はないんだろう。


 スアルタウが去ると、エデン総長が「前途有望な若者に、妙なことを吹き込んでんじゃねえよ」と言ってきた。


「あのガキに色々吹き込んだのはお前だろ。テロリスト」


『ふん……。とにかく、オレと来てもらうぞ』


 エデン総長は機兵の手で俺を掴み、持ち上げた。


 どこかに連れて行かれるようだ。


「……1つ、聞き忘れた事があったな」


 スアルタウにダメ元で聞いておけば良かった。


 7年前、お前らと一緒に逃げたヴァイオレットという嬢ちゃん。


 玉帝が確保しようとしていた特別行動兵。


 あの子が何者で、何であんな顔(・・・・)しているのか、スアルタウに聞いておけば良かった。次の機会に聞けばいい話だが……俺に「次」はあるんだろうか。


 テロリストの末路は、ろくなもんじゃない。


 テロリストに捕まった人間の末路も、ろくなもんじゃない。




■title:交国領<ネウロン>の繊一号にて

■from:エデン総長・カトー


「犬塚特佐。アンタには色々と聞きたい事がある。オークの真実の告発関係とか、7年前のオレの冤罪事件とか……<ゲットー>の事とかな」


『…………』


「すんなり話してくれるなら丁重に扱う。エデン総長として誓うよ」




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