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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
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繊十三号の戦い



■title:交国領<ネウロン>にて

■from:交国軍事委員会の憲兵


『中尉! 敵がこちらの包囲網を突破しました!』


「かぁ~っ……!! 見失うなよ!? 出来れば町中で仕留めろ! 防壁あるから出られる場所も限られるし、簡単だろ?」


『は、はいっ……。何とかしてみます!』


「一応、機兵部隊も出す! だが、あくまでそれは保険だからな?」


 繊十三号に潜んでいるテロリストを倒すだけの楽な仕事のはずが、差し向けた部隊が蹴散らされたらしい。


 敵はセーフハウスに使っていた屋敷から脱出し、車を使って逃走中。車は敵が逃走に使う可能性が高いから爆弾も仕掛けておいたのに、解除されたらしい。


 屋敷から飛び出した車両は、妙に防弾性能が高いらしく包囲網を突破された。一応、こうなる可能性も考慮して機兵部隊を待機させておいたが……さすがに町中でホイホイと機兵は動かせん。


 機兵をブツけるのは、敵が町中から脱出した後。


 出来れば、その前に始末したいが――。


「絶対に取り逃すな! 取り逃したら、犬塚特佐に『テロリストと通じている疑いがある』なんて在らぬ疑いをかけられるぞ……!」


 あの人は変わっちまった。


 味方の交国軍人すら疑い、拷問にかけてくる狂人になっちまった。


 まるで何かに取り憑かれたように、別人のようになっちまった。


 ネウロンでの捕り物に失敗したら、犬塚特佐が特佐権限を使って委員会(ウチ)の仕事にすら口出ししてくる可能性がある。絶対に敵を倒さないと……。


 出来れば生け捕り。だが最悪皆殺しでいい。特佐に疑われるよりマシだ……!


『ちゅっ、中尉っ! 敵が防壁を突破しそうです!』


「どうやって!? お前らが封鎖しているはずじゃ――」


『それが、敵の車が流体装甲のようなものを吐いて、防壁に道を建設しながら飛び越えていこうとしていますっ!』


「そんなバカな芸当、できるはずが――――」


 防壁の一角に視線を向ける。


 すると、部下が言っている通りの光景が見えた。


 テロリスト共が乗った車が、防壁に道路を作りながら飛び越えていき、町の外に下りていくための道路を作って下りていく。完全に突破されてる……!


 こうなったら機兵を動かすしかない! 敵が町の外に出たなら、機兵でも遠慮なく暴れられる。そのはずだったんだが――。


「機兵部隊はまだか!? 出撃、遅いぞっ!」


『報告です! 機兵乗りが全員、やられています』


「なっ……何だと?」


『何者かに首を掻ききられて――』


 通信が途絶える。


 こちらに報告していた部下の声が聞こえなくなる。


 敵は全員、町の外に逃げたものと思っていたが……まだ町中に敵が潜んでいるのか? 敵の別働隊でもいるのか?


 敵の車両は防壁を完全に突破し、町の外を爆走して逃げて行く。追跡中の偵察用ドローンも撃ち落とされた。……このままだと取り逃しかねない。


「おいっ、誰か…………」


 気づけば、周りに人がいなくなっている。


 全員、怖じ気づいて逃げた? ……そんな馬鹿な話があるか。


 ……闇の中に何かが潜んでいる?


「勘弁してくれっ……!」


 寒気に押され、装甲車に乗り込む。


 直ぐに発進し、まだ無事な部下を探そうとしていると――。


「――――」


 トン、と音を鳴らし、誰かが車両前部に飛び降りてきた。


 小柄な人影。


 逆光で顔が見えない。


 影が、俺の身体を黒く染めて――。




■title:交国領<ネウロン>にて

■from:


権能起動(・・・・)


 走行中の車両の助手席にスルリと入り込み、運転手さんに拳銃を突きつけ、「はい止まってください。路肩でいいんでゆっくりと」とお願いする。


 声を震わせている運転手さんにいくつか質問し、所属と目的を明らかにさせる。……この人達は私達の正体も重要性もろくに知らないようだ。


 ため息つきつつ発砲して射殺し、通信機を渡してもらう。変声機を使い、運転手さんの声を真似、運転手さんの部下達に「体勢を立て直す。総員、方舟まで一時撤退」と命じておく。


 車から下り、トコトコ走って脱出用に二輪車に向かう。


「ハァ~……! マジで無意味な戦いっ……!」


 こういう無駄な荒事は勘弁してほしい……!


 これならまだ、ガキ共の子守りの方がマシですよ……!!


 しかし時間かけすぎた。早くあの人のとこに戻らないと――。


 あの人、す~~~~ぐ他人のこと心配し始めるんですからぁ……!


 隊長さん達に噛みついて、町に戻れ~とか言い出しかねません。


 さっさと合流して、安心させてあげましょ。……手のかかる護衛対象だこと!


「あっ……。あぁ~っ…………」


 窓ガラスに映った自分の姿を見て、呻く。


 服に血がついている。返り血だけではなく、私自身もちょっと怪我している。


 制限付きで戦っていたから――って言ったら言い訳か。くそぅ……なんかちょっと痛いな、って気はしてたんですよっ……!


「さいあく……。ヴィオラ様に貰った服、汚しちゃったじゃないですかっ……!」




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