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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
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繊三号の戦い



■title:交国領<ネウロン>の繊三号基地にて

■from:解放軍のスペーサー


『繊三号基地にいる総員に告ぐ。くだらん火遊びはやめて、ただちに降伏しろ』


「なっ、なんで犬塚特佐がここにっ……!?」


「おいスペーサー! 繊三号内にオレらの把握してない交国軍人(やつら)が続々乗り込んできてるみたいだ! マジで包囲されるぞ!?」


 決起集会を行うことがバレたのか?


 このままだと一網打尽だ。今日ここにはネウロンの王族どころか、解放軍上層部がほぼ全員揃っている。他組織からネウロンに派遣されてきた代表者達もいる。


 これが一斉検挙されたら、交国からの独立が……ネウロン解放が大きく遠ざかる。しかも、犬塚特佐が直接来るなんて……!


 何とか抵抗手段を探したものの、警備役として配置していた解放軍兵士との連絡が、殆ど取れない。既に交国軍と交戦を開始している奴もいる。


 どうやら、主要な施設は犬塚特佐達が即座に押さえたらしい。海門と方舟どころか、機兵格納庫まで押さえられているようだ。


 せめて、機兵を使えれば――。


「そこのお前ら! 止まれ! 両手を上げて、そこに跪け!」


「う…………」


 何とか機兵格納庫を奪還できないかと機を見計らっていたら、装甲車に乗った交国軍兵士達がやってきた。


 敵に言われるがままに両手を上げ、跪いている間も犬塚銀の声が基地のスピーカー越しに聞こえてくる。


『抵抗せず、大人しく降伏したものは丁重に扱ってやる。反政府組織の主要人物を生け捕りにしてくれたら、今までの罪も不問にしてやろう』


「っ……」


『貴様らが余計なことをしなくても、ネウロン(ここ)は交国から独立する。丹国として独立していく。無駄で無意味な抵抗はやめろ』


「だが、それじゃあ交国の飼い犬のままだろうがっ……! グッ?!」


 思わず反論すると、兵士に銃床で殴りつけられた。


 何が丁重に扱ってやる、だ。今の扱いのどこが丁重なんだよ……!


 犬塚銀が傍にいたら、死ぬのを覚悟で挑みかかってやるところだが……直ぐ傍にはいない。繊三号付近にいるはずだが、奴の居場所はわからない。


 何とかこの状況をひっくり返さないと破滅する。


 犬塚銀は大嘘つきだ。奴はオークの味方じゃない。玉帝の犬だ。それに……我らの親友(とも)、カペルをだまし討ちで毒殺した卑劣な男だ。


「……犬塚特佐からは可能な限り生け捕りにしろと言われているが……お前ら、ちょっと抵抗したって事にしてくれねえか?」


「はっ? はぁっ!?」


「めんどうくせえんだよ……。こんな後進世界にトバされて、クソみてえな仕事やってたらストレスが溜まるんだよっ……!」


 ドワーフの交国軍人が歯噛みしつつ、こちらに銃口を向けてきた。


 そいつに倣い、他の奴らも銃口を向けてきた。


 ほらやっぱり嘘つきじゃないか! 今のところ抵抗していないのに、殺す気満々の奴らを送り込んで来やがって……!


 相討ち覚悟で飛びつこうとしたが、その前に相手の身体が横に倒れた。


 横合いから脳天に弾丸を食らい、勢いよく倒れていった。ドワーフの交国軍人だけではなく、他の奴らも次々と倒れていった。


「ハァイ、スペーサー君。怪我はない?」


「お前は確か、カトーの部下の……!」


「ラフマよ。さっきぶり」


 交国軍人共を射殺し、助けてくれたのはカトーの部下の女隊長だった。


 部下を引き連れている女隊長(ラフマ)は交国軍人を手早く射殺し、「私達が援護するから機兵を奪取しましょ」と提案してきた。


「ここで犬塚銀に抵抗しないと、あなた達は殺される。生き残って自由を謳歌するためには戦うしかないの」


「だ、だが……相手は決起集会があることを知っていた様子だから、こちらが機兵を奪ったところで……何らかの対策を用意されている可能性も……」


「何を弱気なことを言ってるの。さあ、格納庫に行きましょう」


 女隊長に先導され、格納庫に向かう。


 格納庫の方ではもう戦闘が起きていた。他の解放軍兵士が動いてくれたのかと思ったが、違った。女隊長の部下達が格納庫で戦闘していた。


 戦闘していた、といっても俺が辿り着いた時にはもう、銃撃戦は終わっていた。女隊長の部下達は随分と手慣れた様子で交国軍人を射殺し、格納庫を奪い返して機兵の起動準備まで進めてくれていた。


「機兵に乗れる子はさっさと乗って。私達は機兵乗りじゃないから、機兵で暴れるのはそっちに任せる」


「犬塚銀をどう倒せば良いと思う? 奴が来ているとしたら、<白瑛(びゃくえい)>を持って来ている可能性が高いから――」


「大丈夫。これは好機なのよ? 犬塚銀がこんなところにノコノコやってきたという事は、奴を殺す最大の好機なの。向こうは自分の襲撃計画が上手く進んでいると驕っている。油断している。ここで仕掛けるべきよ」


「いや、だから犬塚銀をどうやって……」


「スペーサー君、機兵乗りの皆の邪魔だから下がって」


 女隊長に軽く突き飛ばされているうちに、解放軍の機兵乗りが機兵に乗り込んでいく。女隊長に促され、慌てて出撃していく。


「犬塚銀は、あなた達の親友……カペルを毒殺した卑怯者よ! 仇を取りなさい! 全力で殺しにかかりなさい! 交国軍を殺せ!」


「あっ、あぁっ……」


 機兵が出て行くと、直ぐに機兵が戦闘する音が聞こえてきた。


 敵もしっかり機兵を用意しているようだ。けど、もう戦闘が始まった。今更逃げることは出来ない。……逃げ道を敵に押さえられている以上、戦うしかない!


「くそぉ……! そうだ、戦うしかないんだ! 我らが親友、カペルの仇を取ろう! 皆、行け! 犬塚銀を殺せ!!」


 通信機に叫び、仲間を鼓舞する。


 すると、女隊長が満足げに笑いつつ、「その意気よ」と言って背を叩いてきた。馴れ馴れしいが許してやる。お前は一応、命の恩人だからな!




■title:交国領<ネウロン>の繊三号基地にて

■from:エデン実働部隊<ラフマ隊>隊長のラフマ


「同志諸君、反攻の時が来た! 立ち上がれっ! 行けーーーーっ!!」


 通信機に向け、興奮気味に叫んでいるスペーサー君を見つつ、さらに解放軍の機兵乗りを送り出していく。


 とりあえず、こんなもんかな?


「総員、フェーズ2に移行」


『了解』


「おい、エデンの! 一応、海門と方舟も奪還しておいた方が――」


 銃口をスペーサー君に向け、発砲する。


 示し合わせていた通り、ウチの部下達も発砲を開始。格納庫に残っていた解放軍兵士を射殺しておく。機兵乗りを暴れに行かせたから、コイツらはもういらない。


 解放軍の機兵乗りに用意したのは片道切符。彼らが犬塚銀に勝つのなんて不可能だから、とりあえず暴れてもらうだけで良い。


「犬塚銀の部隊は解放軍の機兵乗り(バカ)共がテキトーにやりあってくれる。私達はやることやったら撤収ね」


「了解でさぁ、隊長。A班は予定通り退路確保完了しました」


「それは重畳」


「白瑛は何とかしなくていいんですかい?」


「アレは無理。今回は諦めましょ」


 天使・アザゼルの権能はとても強力なものだ。


 防御用の権能とはいえ、その防御性能があまりにも高すぎる。それを何とかする準備までは整えていない。白瑛まで何とかするのはさすがに諦める。


「優先準備を間違えないように。はい、走った走った」


 部下共に行動を促す。さらに班を分け、基地内を走る。


 やることやって、さっさと逃げて、シャワーでも浴びてサッパリしましょう。




■title:交国領<ネウロン>の繊三号基地にて

■from:血塗れの英雄・犬塚

 

『特佐! 敵が繊三号内の機兵を奪取し、暴れています!』


 手駒からの通信に思わず舌打ちしてしまう。


 機兵を奪取させないために繊三号内の格納庫も押さえさせたというのに、コイツらはその程度の仕事も出来ないらしい。……犬塚隊(ウチ)の奴らならこんな手落ち、絶対に起こさない。


 取り押さえる予定だったクズ共が基地内で暴れ出している。敵は大人しく投降する気など、欠片もないらしい。


 方舟や海門の発生装置を奪還しようと動いているクズ共もいるようだが――。


『いたぞ!! 白瑛だ!!』


『死ねぇッ!! 犬塚銀!!』


「クズ共が…………」


 彼我の実力差もわからない馬鹿共がやってきた。機兵に乗ってやってきた。


 抜剣し、すれ違いざまに切り捨てる。


「お前らがやる気なら、この場で処刑してやる……!!」




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