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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
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荒事担当者



■title:交国領<ネウロン>にて

■from:ヴァイオレットの助手兼護衛のタマ


「今頃、決起集会が始まってる頃合いですかね~」


「何事もなく終わればいいんだけど……」


 時計をチラリと見つつ、集会に行っているアル君達の事を考える。


 総長やラフマ隊長達はともかく、アル君とレンズまで行っちゃったもんだからヴィオラ様がず~~~~っと浮かない顔です。


 護衛兼助手としては、ヴィオラ様が胡散臭い集会に参加するのが最悪の事態だから、それ回避できただけでも上等ですけど…………ヴィオラ様がずっと不安げにしているのも困っちゃうんですよねぇ~……。


 部屋の隅でウロウロしているヴィオラ様に何とか元気になってほしいので、知恵を巡らせているものの……良い案は思い浮かばない。


 ソファに寝転がって携帯端末をイジっているバレットを突き、「宴会芸でもしなさい」「ムチャ言うな」なんて話をしていると――。


 部屋の扉がノックされた。


「タマが出ま~す」


 一応、タマの上司なのにせっせと働こうとするヴィオラ様を手で制しつつ、ツカツカと扉を開きに行く。


 扉をノックしたのは、屋敷の使用人と同じ格好をしている女だった。にこやかに笑って「お茶でも淹れましょうか」と言ってきた。


 ヴィオラ様が「ありがとうございます」と言いつつ、近寄ってくる。


「でも、お台所を貸していただければ自分達で――タマちゃんっ!?」


「――――」


 使用人の格好をした女を部屋の中に引きずり込み、手早く昏倒させる。


 ヴィオラ様が私の行動の唖然として騒ぐ中、相手の身体をまさぐる。


 すると拳銃が出てきた。なんで使用人が拳銃持ってんですかねぇ!?


「タマちゃんっ! こらっ! ダメでしょ!?」


「お説教は後で。この人、屋敷の使用人じゃないので……!」


 屋敷の使用人の顔なら、既に全員把握している。コイツは初めて見た。


 使用人と雑談したり、こっそり調べたりして屋敷に勤めている奴は全員把握している。周辺の人間も把握している。


 新人が来るって話も聞いてない。コイツはまったく知らない顔ですし、拳銃まで持っていたので悪意を持って来たって事でいいでしょう!


 ヤバイ事態なのを察してくれたらしいアラシア隊長が鞄を開き、そこから出した小銃を投げて寄越してくれたので受け取り――発砲する。


 銃器を持ってこっちに詰め寄ってこようとしていた使用人っぽい格好をしている謎の男共を撃って止める。


敵襲(・・)!」


 1人、2人で暗殺しに来たんじゃない。これは襲撃!


 それも訓練された奴らが、こっちを皆殺しにする気で仕掛けてきている。


 その証拠に、さらに後続の兵士がやってきた。味方に盾を構えて貰いつつ、その陰から榴弾(グレネード)を撃ってきた。


 その弾道(コース)は、ギリギリこっちの部屋に入るヤツっ……!


榴弾(グレネード)!!」


 扉を閉め、まだポカンとしているヴィオラ様とバレットに飛びつき、ソファの裏に押し倒す。爆発が起き、部屋の扉が吹っ飛んだものの私達は何とか無事!


 アラシア隊の人達が爆発をやり過ごした後、部屋の入り口に回って応戦し始めた。家具を動かし、窓からの攻撃も防ぎ始めた。


 けど、ここに立てこもり続けるのはさすがに不可能――。


「バレット! 流体甲冑を出して! 早く!!」


「おっ、おうっ……! 直ぐに反撃してや――」


「バレット。流体甲冑展開後は、まず敵の位置をマップに描画(プロット)しろ。この銃撃戦で右往左往せず、こっちに向かってくる奴が敵だ。ヴァイオレットも手伝え」


 アラシア隊長に促され、バレットが流体甲冑を展開しつつ、巫術の眼を使った周辺索敵も開始する。ヴィオラ様も情報支援の手伝いに入る。


 バレット曰く、直ぐ近くにいる敵はあと4人。


 そのうち2人は私が撃って止めた連中なので、そう遠くないうちに死ぬでしょう。けど、さらに応援も来るはず――。


「敵か味方かわからん微妙な動きしてる奴がいる。あと、屋敷の前に集団が一気に近寄ってきた。そりゃあ多分、車に乗って一気に詰め寄ってきた奴らだと思う」


「機兵は? 魂が観える位置が妙に高いとこにあったらわかるでしょ」


「今のところいないっぽいが、港の方にいたらわからねえ」


「早いところズラかるぞ! 三番の逃走経路を使う! 雪の眼! アンタらも巻き込まれたかもしれねえから、ついてくるか!?」


「いいですとも!」


 端末を見て、バレットがプロットした敵位置情報を閲覧していたアラシア隊長が指示を飛ばす。その判断で間違いないと思うので、私も動く。


 流体甲冑を纏ったバレットに前衛を任せ、その陰から発砲して援護する。敵は今のところ対物狙撃銃までは持ち出していない様子なので、屋敷内ならバレットだけで突破できるはず。


「――――」


 目立つ流体甲冑(バレット)を囮にしつつ、屋敷の外を狙撃する。


 屋敷を狙える位置に狙撃手の姿があった。バレットが事前に「怪しいかも」と警告してくれていたから、早めに対応できた。


 一撃で殺すことは出来なかったものの、アラシア隊の人達と一緒に攻撃して敵の動きを止めているうちに狙撃を受けそうな場所を突破する。


 逃走用に確保していた車両のところまで辿り着いたものの、先行して車両を調べていたバレットが「来るな!」と叫んだ。


「爆弾が仕掛けられている。60秒くれ、解体と改造(・・)を済ませる!」


「了解。しかし連中、ガチで殺しに来てますねぇ……!?」


「装備的に、交国軍だな。オレ達(エデン)の情報がどこかから漏れたのか?」


 ヴィオラ様を心配させたくないので、口には出さないものの、「決起集会の方もヤバいことになってそ~……!」と予想する。


 向こうと連絡取っている暇もないですが、賭けてもいいです。アラシア隊長の言う通り、どこかからエデンの情報が漏れていたんでしょう。


 情報の出所はどこだろう?


 まさか、解放軍の馬鹿(スペーサー)がエデンの情報を売ったとか?


 いやいや、こっちには混沌機関の製造技術を持っているヴィオラ様がいるんだから殺しにかかるはずが――――いや、アイツらには「ヴィオラ様=混沌機関作れる人」って言ってなかったですね。


 バレットが巫術で爆弾解体を済ませた後、流体甲冑で車を補強していく。


 機兵の流体装甲ほどじゃないですが、それなりの硬さを追加できた。……敵が機兵部隊を出してこなければ、これで突破できるはずですけど――。


「……アラシア隊長。先に行ってください。タマは敵の足止めしてきます」


「馬鹿言うな。それならオレが――」


「アンタが残ったら誰が指揮するんですか。絶対生きて合流するんで、先行ってください……! 誰かが敵を攪乱しないとマズいですから……!」


「お前が残ったら、ヴァイオレットが――」


「隊長達が無理矢理連れていってくださいっ……!」


 ヴィオラ様を車内に投げ込み、アラシア隊長達に任せる。


 別経路から屋敷を脱出し、夜の町を駆ける。


 敵の位置は、バレットが概ね割り出してくれた。


 計画的な襲撃が行われている以上、どこかに機兵も待機させているはず。


 ヴィオラ様達が町中から離脱するまでに機兵乗りを見つけて始末しないと……!


「バレットの索敵圏外に出るまで、制限付き(・・・・)なのがキツいなぁ……!」


 まあ何とかしよう。何とかするしかない。


 いきなり榴弾をポ~イとしてきた部隊だから、殺っちゃって良し!!


 ほぼ最悪の状況ですけど――夜の闇は、私の味方です。





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