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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
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幸福な降伏


■title:交国領<ネウロン>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


「…………」


 一度ベッドに入ったものの寝付けず、こっそり抜け出して屋敷の庭に出る。


 夜風と共に、潮の香りが届いてくる。ここは……繊十三号(ケナフ)は海沿いの町だから、星屑隊の皆といた時はよく嗅いでいた潮の香りが届いてくる。


 それに懐かしさを覚えるけど、それを楽しむ余裕はなかった。


 交国が来たことを契機に、ネウロンは大きく変わってしまった。


 魔物事件発生が交国の所為だったのかはともかく……ネウロンが大きく変わり、沢山の人が死んでしまった契機になったのは交国の存在だろう。


 交国に支配されたネウロンは、さらに変化しようとしている。ネウロンで<丹国>という新たなオーク国家が生まれようとしている。


 けど、総長は丹国は「交国の傀儡国家」と言い、丹国が出来たところで交国の支配は変わらないと言っている。実際、その通りなんだろう。


 交国の手からネウロンを取り戻すには、メラ王女を擁立してネウロンを解放するという手がある。出来るかどうかはともかく、それが1つの手なんだろう。


 でも――。


「……解放の先に待っているのは、本当に『ネウロン』なのかな……」


 魔物事件によって、多くのネウロン人が命を落とした。


 ネウロン人が殆どいなくなった世界の隙間を、異世界から来た人達で埋めたところで……それは本当に「ネウロンを救った」という事になるんだろうか?


 それはもう、ネウロンとは別物じゃないのか?


 そもそも……ラプラスさんの話だと、メラ王女を担ぎ出してきたマーレハイト亡命政府の目的は「ネウロンの解放」というより、「マーレハイトの領土を得る」という事なんだろう。陸の領土を得て、国家の体裁を取り戻したいんだろう。


 その先に待っているのは、ネウロンというより……ネウロンの皮を被ったマーレハイトや丹国になるんじゃないのか?


 困っているマーレハイトの人達や、丹国に参加しようとしているオークの皆にも救われて欲しいと思う。けど……でも、なんだか釈然としない気持ちもある。


 ネウロンが、まったくの別物に変質していく事が――。


「王女様も……本当に、それでいいんだろうか……」


 メリヤス王国の王女であるメラ王女は、確かにネウロン解放の大義名分になるんだろう。理屈のうえではなるはずだ。


 ただ、交国が所属する人類連盟が――今の人類文明最大の集団が、それを「大義名分」として認めるんだろうか?


 ネウロンを解放したところで、アレコレと難癖をつけてくるんじゃないだろうか? 例えば……メラ王女は偽者だ、とか……。


 王女様にネウロン解放の大義名分になってもらう場合、王女様に大きな責任を負わせる事になる。実際に戦うのは僕らだとしても、彼女は彼女で大きな責任を背負わざるを得ないはずだ。


 王族で一児の母…………とはいえ、僕らと大差無い年齢の彼女が、それに耐えられるんだろうか……?


「……アルやラートの意見を、聞いてみたいな……」


 悶々と考えつつ、とぼとぼと庭を歩く。


 すると、潮の香りに混じって煙草の香りが鼻腔をくすぐってきた。


 こっそりと臭いがする方向に行くと、総長(カトー)が隠れて煙草を吸っていた。僕が近づくと、慌てた様子で携帯灰皿に煙草を入れた。


「総長、自分の身体をイジめないでください」


「ははっ……。消したから許してくれよ……」


 総長は煙草の残り香を振りまきつつ、苦笑している。


 といっても、大した量は吸ってなかったんだろう。


「ヴァイオレットには秘密にしておいてくれ。アイツ、うるさいから」


「僕としても、総長には健康に気を遣って欲しいんですけど――」


「オレにも気分転換が必要なんだ。勘弁してくれ」


 それは……確かにその通りだ。


 総長の人生(じかん)は総長のものだ。……長生きしてほしいけど、ガマンばかりさせて延命させるのも……総長を苦しめるだけかもしれない。


 正直、1本も吸ってほしくないけど……気分転換の機会を奪うのも酷い話かもしれないと思い直し、「どうぞ吸ってください」と勧める事にした。


 けど、総長は微笑んで「後でな」と言った。


「いま火をつけたら、お前に受動喫煙させちまう」


「僕の肺がダメになったところで、新しい肺に交換してもらいますよ」


 脳と身体の一部以外、義体ですからね――と言って笑う。


 冗談のつもりだったけど、総長はちょっとだけ怒った表情を浮かべながら「そういうことを言うな」と叱ってきた。


「特に、ヴァイオレットの前ではな。オレの前だから許すが……」


「ご、ごめんなさい……」


「アル……お前は機械じゃない。1人の人間だ。機械の部品交換のノリで、自分の内臓を交換したらいいなんて言うもんじゃない」


「はい……」


「全身義体も考え物だな……。便利だが、常人の感覚からズレていく」


 総長はため息をつきながら僕の頭を撫でようとしたけど――煙草を持っていた手なのを気にしたのか――手を服で拭ってから撫でてきた。


「お前が……弟君(スアルタウ)から受け継いだ血は、今もお前の中に生きているんだ。それを大事にしろ」


「多分、汗や尿に混じって出て行ってます。出血もそこそこしましたし」


「気持ちの話だよ、気持ちの話っ……!」


 総長はヴィオラ姉さんに怒られている時のような表情を浮かべ、「ヴァイオレットみたいなこと言いやがって」とボヤいた。


「まあ……ともかく、全身が義体になったところで、お前はフェルグス・マクロイヒであり、『エデンのスアルタウ』なんだ。自分が人間って事を忘れるなよ」


「はいっ」


「……ところで、何か悩み事か? もしくはオレに文句を言いに来たのか?」


「文句?」


「そりゃあ…………お前、ネウロン解放の件、ネウロン人のお前らに対して相談せず……アレコレ勝手に決めているからな……」


「……総長に対して、文句なんてありませんよ」


 ただ、色々悩んでいるのは確かだ。


 総長が「エデンの総長」として抱えている悩みや問題に比べたら、僕の悩みなんて軽い悩みだと思います、と伝える。


「オレの悩みもお前の悩みも同じようなもんだ。どっちが重いとかねえよ」


 総長はそう言い、僕を軽く小突いて「悩みがあるなら言え」と言った。


 僕程度の悩みで総長を煩わせたくないけど、総長は苦笑いを浮かべながら「相談してほしいんだよ」と呟いた。


「最近、『師匠』らしいことは何も出来てないだろ? ……いや、昔から師匠らしいことなんざ、何も出来てないが……」


「そんなことないですよ。師匠が助けてくれたから、僕達は玉帝の手から逃れることが出来たんですから……」


 少し迷ったものの、僕が悩んでいることを話す。


 ネウロンを解放する事に、本当に意味があるのか――と。


「お前の懸念はわかる。解放したところで……昔のネウロンは絶対に戻ってこない。『ネウロン』と呼んでいいのかすら怪しい別物かもしれん」


「…………」


「だが、交国に支配されるよりマシだと思わないか?」


 それは確かに、思う。


 僕らは交国の横暴さに苦しめられてきた。僕らと同じような痛みを受けた人は、ネウロンに大勢いるだろう。いや、ネウロン以外にも大勢いるはずだ。


「血が入れ替わっていくように、世界の住民も入れ替わっていく。誰かが死んで、誰かが生まれる。世界の新陳代謝は止まらない」


「…………」


「だから、どっちにしろ『昔と同じネウロン』なんて存在しようがないんだ。それなら交国なんて邪悪な国に支配されるより……自由で独立した国家がネウロンに戻ってきた方が……いいと思わないか?」


「それでたくさんの人が救われるなら、それでいいと思います」


 ネウロンがネウロンじゃなくなるのは……正直、寂しい気持ちがある。


 けど、どう足掻いても『昔と同じネウロン』は戻ってこない。アル達は……死んでいった人達は戻ってこない。


 それなら、ネウロンを交国の手から取り戻して、困っている人達に譲った方が……いいのかもしれない。


 僕はエデンの活動を通じて、流民の苦しみも見てきた。陸で自由に暮らせず、暗い混沌の海で震えながら暮らすしかない人達の苦しみも見てきた。


 そういう人達のためにネウロンを使えるなら、それはそれで……良いことのはずだ。……何もかも良い方向に進んでいくわけではないとしても、皆でよく話し合って、協力していけば……いつか乗り越えられるはずだ。


「ただ……ネウロンを解放するためには、メラ王女に『王族』の立場を活用してもらう必要がある。それは彼女に不自由を強いる結果にならないんでしょうか?」


「彼女自身が選んだ道だ」


「本当に?」


「……ネウロン解放に殿下の立場を使うのは、マーレハイト亡命政府とピースメーカーが出した案だが……最終的には殿下自身が選んだ道だよ」


「…………」


「彼女の前には、自由な選択肢がたくさんあった。それでも自分自身で難しい道を選んだんだから、オレ達がとやかく言う問題じゃないのさ」


 本当に「自由な選択肢」があったんだろうか?


 ネウロンから脱出した事で、交国の手から逃れる事は出来た。


 けど、知らない世界、知らない人達に囲まれて暮らす日々は……本当に自由だったんだろうか? 『王族』という立場に縛られているんじゃないだろうか。


 王族だからこそ助けてもらえたのかもしれないけど……王族だからこそ、進む道を強いられてしまったんじゃないだろうか。


 政略結婚させられて、子供まで作らされて……。


「彼女自身、ネウロンを捨てた責任を感じているらしい。ネウロン解放は、彼女にとって逃げた罪を償う機会になる」


「罪、ですか……」


「彼女は王族だからな」


 メリヤス王国は、最終的に交国の支配を受け入れ、魔物事件で滅びた。


 総長は「メリヤスの王を含むネウロンの為政者達が、交国に抗う道を選んでいたら良かったんだ」と言った。


「ネウロンの大人達が交国に立ち向かわなかったツケを、子供のお前達が支払わされている。なんともヒドい話だ」


「立ち向かうって……戦争を起こしてでも抗った方が良かった、って事ですか?」


「それ以外ないだろ?」


 戦わなければ主権は守れない。


 主権を奪われてしまえば、いずれ命すら奪われる。


 総長はそう言い、さらに言葉を続けた。


「主権を手放したネウロンがどうなったかは、お前がよく知っているだろう? ネウロンの大人達が抗わなかった事や、交国の所為で大勢の人間が死んだんだ」


「魔物事件に関しては、ともかく……交国がネウロンにやってきた事で、ネウロンが大きく変わったのは事実ですね。……たくさんの人が死んだのも……」


「そうだろう? それは交国と、ネウロンの大人達の所為なんだよ」


「……本当にそうなんでしょうか?」


 チラリと、総長の顔色をうかがう。


 総長の表情は、いつも通り優しいものだ。


 少し首を傾げているけど、別に怒っている様子はない。


「ネウロンの大人達の所為とかは、ともかく……昔の僕も、『交国と戦わなかったからネウロンはメチャクチャになった』と思っていました」


「今は……違うのか?」


「それが……わからないんです」


 どれだけ考えても、「絶対に正しい」と言える答えは出せていない。


 何が正しくて、何が間違っているのか……胸を張って言えない。


「早期降伏によってネウロンは主権を失った。交国に好き放題されて……魔物事件まで起きて……たくさんのネウロン人が命を落としました」


「…………」


「交国は自分達がやった事を隠蔽したり、正当化したり……ろくでもない国です」


「その通り。だから――」


「でも、交国に抗ったところで、ネウロンは救われたんでしょうか?」


 ネウロンは平和な世界だった。平和過ぎて軍隊すらなかった。


 そんな世界が交国のような強国に立ち向かったところで、簡単に蹂躙されたはずだ。<星の涙>を使うまでもなく、簡単に蹂躙されたはずだ。


 仮に全てのネウロン人が武器を手に立ち上がったところで、勝敗はわかりきっている。……武器と呼べるほどのものすら、殆どなかったんだから……。


「バフォメットが力を貸してくれたら、ある程度は抗えたかもしれませんが……交国が本腰を入れてきたら、バフォメットも抗えないはずです」


 実際、バフォメットは交国軍に敗れたらしい。


 解放軍がネウロンにいた時に行われた水際作戦以降、行方不明のままだ。


「交国政府は、自分達に刃向かう者に容赦しません」


「…………」


「一般人が住む住宅街だろうと、平気で砲撃や爆撃を行わせる。そんなことされたら、どれだけのネウロン人が死んでいたか……」


「だが、降伏したところで虐殺は起きている」


「それは……」


 総長の言う通り、交国に抗わなかったからこそ奪われた命もある。


 魔物事件の混乱の所為もあったかもしれないけど……交国も、それなり以上のネウロン人の命を奪っている。


「けど、抗ったところで……どっちにしろ主権は奪われたのでは……? 当時のネウロンは、どの道を選んでも同じ結果が待っていたはずです」


「…………」


「抗ったところで、人類連盟も手を差し伸べてくれないんでしょう……? 交国の横暴を止めないどころか、強国同士の談合を行わせている人類連盟なんて、頼りにならないじゃないですか」


「それは、そうなんだが……」


「抗っていたら、別の結果が待っていた可能性もあるのかもしれません。けど、僕は……何が正しかったのか、わからないんです」


 少なくとも「ネウロンの大人」に全責任を押しつけられる話じゃない。


 大人も子供も、大した力は持っていなかったんだ。


 勇気を胸に立ち上がり、誉れを抱いて死んだところで……それは蛮勇に過ぎなかったかもしれない。それでも満足出来た人はいたかもしれないけど……それが良いことだとは思えない。


「弱いネウロンは、どっちにしろ詰んでいたんじゃないでしょうか……?」


「…………」


「降伏の道を選ばずとも、どっちにしろ――」


「迷うな。アル」


 総長は僕の肩をギュッと掴みつつ、そう語りかけてきた。


「お前が迷い、考え込んでしまうのもわかる」


「…………」


「わかるが、戦場で立ち止まって考える時間なんてない。お前の言いたい事もわかるが、最終的には抗わない限り、自由を勝ち取れないんだよ」


「…………」


「迷い、考えているうちに自分の命どころか、大事な仲間の命を失う事もある。そんなのはお前だって嫌だろう?」


「は、はい……。それは、もちろん……」


「今は迷わず戦え。敵を打ち砕き、勝利する事だけ考えろ」


「わ……わかりました……」


 納得出来たわけではないけど、「わかりました」と返す。


 総長は怒っているわけではないけど……有無を言わさない強い意志を感じた。


 ……総長は僕よりずっと厳しい戦場をくぐり抜けてきた人だ。そんな総長が言う事だから、きっと……正しいこと……なんだろうけど……。


「昔のネウロンは、確かに弱い世界だった。お前の言う通り……抵抗したところで大きな犠牲を支払い、さらには負けていたかもしれない」


「…………」


「だからこそ、()のネウロンは強い世界にしよう。交国どころかプレーローマすら滅ぼせるほどの強い世界を作ってやろう」


「…………」


「武力がないと、主権すら奪われるんだ」


 弱者の綺麗事は、強者の横暴には敵わない。


 そう話す総長の横顔は、強ばっているように見えた。


「強い国や世界を作るには、お前達のような若者が中心になる必要がある。オレも手を貸すから、『強いネウロン』を作り出そうぜ」


「……はい」


 交国が横暴を働いていたのは事実だ。


 交国がネウロンを支配したままだと……何が起こるかわからない。


 ラプラスさんは「交国が変化している」と語っていたけど……僕は……その変化を良い物だと信じられない。少なくとも、今は……無理だ。


 今はひとまず、交国と戦おう。


 迷わず戦い抜く覚悟は、まだ無いけど――。


「オレについてこい。オレは必ず、お前達を勝利に導いてやる」


 総長は不敵な笑みを浮かべ、僕を見つめてきた。


「交国も人類連盟もプレーローマも全て倒せば、もう誰もお前達の平和を脅かすことはできない。武力で平和を勝ち取ろうぜ」


 迷いながら頷くと、総長は僕の肩を軽く叩いてきた。


 あまり夜更かしするな。そろそろ寝ろ――と言ってきた。


「オレも皆も、お前を頼りにしているんだ。……頼むぜ、フェルグス」


「はいっ」




■title:交国領<ネウロン>にて

■from:エデン総長・カトー


 アルがいなくなった後、煙草を一本だけ吸う。


 吸い終わった後、自分の部屋に戻ろうとしていると――。


「オレに用事か?」


「…………」


 部屋の前で、ヴァイオレットが待ち構えていた。


「……ネウロン解放なんて馬鹿げた計画(・・・・・・)、今からでもやめませんか?」


「お前、まだ納得してなかったのか」


 オレがそう言うと、ヴァイオレットは睨み付けてきた。


 肩をすくめ、「冗談だ。お前が毎日のように送ってきている嘆願書にも、目を通しているよ」と返す。


「お前の計算だと、ネウロン解放は現実的ではない……だったか?」


「総長は対交国作戦を本格的に始めると宣言した時、『遊撃(ゲリラ)戦で交国を弱らせ、交渉のテーブルにつかせる』と言ってました。私達を丸め込むための嘘だったんでしょうけど……」


「嘘じゃないさ。それもしっかりやる」


 対交国作戦は、ネウロン解放後も続く。


 交国を弱らせるための遊撃戦もやる。別働隊にその手の作戦を命じ、交国軍の動きをコントロールしたりもしている。


「遊撃戦案も良い案とは思えませんが、ネウロン解放はそれより酷いです。相手の裏をかけるかもしれませんが……明らかに悪手です」


「…………」


「お願いですから、今からでもネウロンから撤退しましょう」


「無理だ。多くの人間が、ネウロン解放に向けて走り出している」


 もう後戻りは出来ない。


 オレ達が進んでいる道は、単なる道じゃない。


 坂だ。


 オレ達は坂を駆け下りているんだ。


 あとは転ばず走り抜ければ、オレ達は楽園(エデン)に辿り着ける。


 勝利を掴める。……勝てば、全ての問題を解決できる。


「ヴァイオレット。お前は、交国に苦しめられている弱者を見捨てるのか? スアルタウ達の故郷を……ネウロンを見捨てるつもりか?」


「それ以前に、物資問題(・・・・)が――」


 まだ食い下がってくるヴァイオレットを押しのけ、部屋に入る。


 そして鍵を閉めた。しばし、ヴァイオレットが扉を叩く音が聞こえてきたが、夜だから騒ぐのを控えてくれた。直ぐに立ち去ってくれた。


「もう……後戻りはできないんだよ」


 賽は投げられた、ってヤツだ。


 ただ、投げたのはオレじゃない。玉帝だ。


 この戦争は、アイツが始めたものだ。


 オレは玉帝という「悪」に抗い、弱者を救おうとしているだけだ。


 エデンは因果応報の代行者なんだ。人類連盟が強者にだけ微笑みを見せるなら、その顔面に刃を突き立て、殺すしかないんだ。


 今の人類文明を変えるには、武力による革命しかないんだ。




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