表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
546/875

TIPS:マーレハイト共和国とピースメーカーについて



【TIPS:マーレハイト共和国とピースメーカーについて】

■概要

 マーレハイト共和国は「強国」と言える力は持っていなかったが、自国で混沌機関を製造できるだけの技術を持っていた。性能は交国等と比べると「粗悪」と言われるものだったが、混沌機関製造技術を持つのは大きなアドバンテージだった。


 マーレハイト共和国は――他の多くの人類文明と同じく――異世界侵略に前向きだった。彼らは富と力を欲していた。プレーローマ等の脅威に抗うためにも、自国の力を強くする必要性を感じていた。


 だが、マーレハイトの異世界侵略は早々に頓挫した。


 頓挫の理由は人類連盟にあった。人類連盟を牛耳っている強国は「異世界侵略は人類秩序を乱す野蛮な行為」とし、異世界侵略を禁ずるルール作りをしていた。


 そんなルールを作りつつ、「現地の紛争を終わらせるため」「プレーローマから守るため」と言い訳しつつ、実質的な異世界侵略を繰り返しているのが人連の強国である。


 彼らは自分達の領土を広げるため、マーレハイトを含む後進の人類国家が勢力拡大するのを良しとせず、自分達以外の異世界侵略は基本的に禁じていた。


 混沌機関製造技術を持っているとはいえ、交国などの巨大軍事国家と比べると弱小だったマーレハイトは、表だった異世界侵略を諦めざるを得なくなった。


 ただ、別の手段で力をつけようとした。



■特務機関<ピースメーカー>の誕生

 人連に睨まれたことで一度は異世界侵略を諦めたマーレハイト政府だったが、プレーローマを筆頭とした異世界の脅威に抗うために特務機関<ピースメーカー>を設立した。


 このピースメーカーが「表だった異世界侵略」以外の様々な方法に手を染めていく事になる。


 ピースメーカーは異世界の情報を収集し、その情報を利用して異世界の国家との外交関係を深めていった。他国との関係強化だけではなく、他国の市場に介入し、異世界で資産を増やしていった。


 武力による異世界侵略は行わずとも、経済的手段や裏工作で異世界への影響力を強め、国力強化を図った。それによって人連内での発言権を強め、人連の強国に――常任理事国になることを目指していた。


 ピースメーカーはそれなりの成果を上げたが、ピースメーカーがやっていることは、人連の強国は当たり前にやっているものだった。立場が弱く、ルールに縛られがちなマーレハイトより、人連の強国はもっと好き勝手にやっていた。


 足掻いても足掻いても強国との差が縮まらないどころか、強国はマーレハイトの行動を「人類秩序を乱す行動」と牽制する事もあった。真っ向から立ち向かえないマーレハイトにとって、強国の妨害ははね除けづらいものだった。


 マーレハイト政府及びピースメーカーは状況を何とかするため、非合法な手段に手を染め始めた。非合法(それ)によって一発逆転を狙った。


 それ以外にも自分達の素性を隠し、後進の異世界国家への内政干渉を始めた。



■暗躍と失敗

 マーレハイト政府は自分達の息がかかった企業を異世界に送り込み、後進文明が作成できない製品を販売して市場を支配しようとした。それによって間接的に国力増強を図ろうとした。


 この手の行動は人類連盟で基本的には禁じられている非合法な手段だが、マーレハイトは何とか人連の監視の目をかいくぐり、自分達の支配圏を密かに広げていった。


 これらの活動によってマーレハイトはある程度の力を身につけたが、それでもプレーローマや人連の強国に肩を並べる力は持てないでいた。


 焦ったマーレハイト政府はピースメーカーを通じ、それまで以上に異世界への干渉を行おうとした。前々からマーレハイトを注視していた人連の調査官はマーレハイトの不正行為の尻尾を掴み、人連はマーレハイトを厳しく糾弾した。


 交国等がこの機会に武力によってマーレハイトを罰しようとする動きも見せたため、マーレハイト政府は慌てて「ピースメーカーが勝手にやった」とし、トカゲの尻尾切りを行った。


 責任を全て被せられたピースメーカー構成員の多くが異世界に逃れた。これはあくまで人連の追及を躱すためにやった事で、ピースメーカーとマーレハイトはその後も繋がっていた。


 ピースメーカー内にも自分達を――表向きは――切り捨てたマーレハイト政府の人間に悪感情を持つ者も現れたが、彼らは母国の利益を優先した。


 人連側もマーレハイトとピースメーカーの繋がりが断ち切れていない事を察していたため、どちらも厳しく監視される事になった。結果、マーレハイトもピースメーカーも必死に手に入れた力を失っていく事となった。


 それでも何とか存続していたが、さらなる事件が発生した事でマーレハイト共和国は実質的にトドメを刺される事となった。


 その事件を起こしたのが、プレーローマである。



■マーレハイト共和国の終焉

 プレーローマにとって、人類連盟だろうが、人連の枠組みの中で藻掻いているマーレハイト共和国だろうが敵である。


 プレーローマ内でも様々な思惑があるとはいえ、対人類に動いているのは概ね共通しているため、プレーローマはマーレハイト共和国にもその魔手を伸ばした。


 彼らはマーレハイト共和国の中枢をあっさり掌握した。だがしかし、それを直ぐに大っぴらにはしなかった。


 そうとは知らないマーレハイトの人々は、「プレーローマがマーレハイト共和国に大軍を送ってくる恐れがある」という情報に突き動かされ、人類連盟加盟国に防衛協力を要請した。


 しかし、多くの国家がマーレハイトの要請を冷たくあしらった。


 マーレハイト共和国の今までの行動は人連の強国にとって面白いものではなく――人類文明の一角が削られる結果になろうが――鬱陶しい共和国がこの機に潰れるのはむしろ好都合な話だった。


 マーレハイトが主権を諦め、強国の支配下に入ることを望めばまだ「救援」を送ってもらえる可能性はあったが、マーレハイトは主権放棄を良しとしなかった。


 窮したマーレハイトは人類連盟に刃向かう結果になるのを覚悟で、<エデン>に防衛協力を要請した。


 政府内でも意見が分かれたものの、主権を維持して早急に防衛能力を強化するにはエデンのような「テロ組織」だろうと頼らざるを得ない状況だった。


 正確には、頼らされた。


 マーレハイト共和国の中枢を掌握していたプレーローマは、前々から目障りだったエデンを壊滅させるため、マーレハイト共和国を罠に使うことを決めていた。


 そのため、掌握している者経由でマーレハイトのエデンへの防衛協力要請を行わせ、エデンをマーレハイトに誘き寄せた。


 エデン側にもマーレハイトの要請を怪しんでいる者はいたが、多くの非戦闘員を抱えた状態を解決するためにも要請に応える事を決めた。


 マーレハイトはエデンに協力の見返りとして陸の土地を与えたが、それは直ぐにプレーローマが起こした戦火に飲まれる事となった。


 マーレハイト共和国で行われたプレーローマの「エデン殲滅作戦」により、エデンは壊滅的な打撃を受けた。神器使いはカトーとファイアスターター以外は死亡したと言われている。


 神器使い以外の戦闘員も多くがマーレハイトで散っていった。


 異世界で活動していたピースメーカーは、自分達の主であるマーレハイト政府の行動を怪しみ、密かに調査していた。そして、自国の中枢がプレーローマに侵食されていることを知り、動き始めた。


 動いたところで手遅れだったが、ピースメーカーの手引きもあった事で、一部のマーレハイト人とエデンの生き残り達は何とかマーレハイト外への脱出に成功。


 ピースメーカーはエデンと組んで生き残っていく事も考えたが、手を取るより剣を取る事を選んだ。具体的には助けたエデンから神器を強奪しようとした。


 ファイアスターター達は何とかピースメーカーの襲撃を凌いだが、両陣営の関係はここで一度、決裂する事になった。


 マーレハイトから逃げ出した者達はお互いに傷つけ合い、プレーローマの1人勝ちの結果に終わった。


 この事件でエデンは一度解散したが、逃げ延びたマーレハイト人は――ピースメーカーが今まで築いてきたコネクションを使い――マーレハイト亡命政府を樹立した。


 マーレハイト亡命政府は「全ての責任はプレーローマにある」と訴え、人類連盟への復帰を希望したが、人類連盟側はそれを拒否。人連はマーレハイト亡命政府を「亡命政府」としてすら認めず、マーレハイトの難民の受け入れも拒否した。


 かくして何とか逃げ延びたマーレハイト人の多くも、殆どが流民として暮らしていく事を余儀なくされていった。


 苦しい生活の中、彼らはさらに手を汚し始めた。




■マーレハイト亡命政府とピースメーカーの犯罪組織化の加速

 ほんの一部の国家はマーレハイト亡命政府を認めてくれたが、大っぴらに認めることは少なかった。仮に認めても、立場の弱いマーレハイト亡命政府の足下を見ることが常だった。


 亡命政府はピースメーカーが築いた異世界の資産を切り崩しながら何とか存続し、自国領獲得を目指した。


 マーレハイトはプレーローマの侵攻によって混沌機関製造技術と始めとした高度技術の大半を失い、後進国家の市場を荒らす事すら難しくなりつつあった。


 また、人類連盟がピースメーカーどころかマーレハイト亡命政府も犯罪組織として取り締まり始めたため、彼らはますます日の下を歩きづらくなった。


 窮したマーレハイト人は「麻薬の製造・取引」に手を染め始めた。


 マーレハイト亡命政府のトップは麻薬取引には難色を示したが、側近やピースメーカーはトップの制止も聞かずに暴走。


 今まで行ってきた異世界市場介入ノウハウと、協力者(・・・)の存在もあって、麻薬取引はマーレハイト亡命政府に大きな富をもたらした。


 対価として、国際社会の信用をさらに失う事になったが、裏社会へのパイプはどんどん太くなっていった。


 犯罪組織として力を持ち始めたマーレハイト亡命政府だったが、彼らは国家の復興を諦めたわけではない。麻薬取引によって築いた財によって異世界侵略も何度か行っている。しかし、その全てが失敗に終わっている。


 マーレハイト亡命政府は――密かに工作員を派遣しておいたネウロンで確保した――「メラ・メリヤス」を使い、ネウロンでマーレハイトを復活させようと企んでいる。


 そのやり口は真っ当な国家とは言いがたいが、彼らにしてみれば「人連の強国がやっている事と大差がない」ものらしい。


 彼らはもう止まらない。


 そそのかされた自覚もなく、転がり落ち続けている。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ