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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
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TIPS:エデンの内情



【TIPS:エデンの内情】

■概要

 現在のエデンは、先代総長・ニュクスの弟であるカトーが務めている。


 カトーが総長代理を務めていた時、一度は解散したエデンだったが、カトーが交国から脱出した後に再結成する事となった。


 再結成当初はカトーとエデン第2実動部(ファイアスターター)隊の生き残りしかいなかったが、フェルグスやヴァイオレット達もエデンに加入し、少しずつ組織を立て直していっていた。


 5年前の「ベルベストの奇跡」以降、ベルベスト連合の生き残りを吸収する形で組織の規模を一気に拡大。現在は正式に所属している構成員だけでも10万人を超える規模の組織になっている。


 現エデンの構成員は大半がベルベスト連合の生き残りで、その中にはベルベストの正規軍に所属していた者達も少なくない。しかし彼らはカトーに救われた恩義から、カトーに付き従っている。


 ベルベスト連合の復興を望む声もあるが、そのためにも今はエデンとしての活動を行いつつ、交国や人類連盟などに対抗しようとしている。


 現エデンは概ね、総長であるカトーを中心にまとまっているが、組織内は「強硬派」と「穏健派」の2つの派閥が出来てしまっている。


 これでも先代総長時代よりはまとまっており、組織の懐事情も大きく改善されている。複数の神器使いが所属していた頃と比べると、どうしても実力は低下しているが、それでも現エデンの組織運営は概ね順調である。



■エデンの強硬派

 現エデン構成員の8割以上は「強硬派」に分類できる。


 強硬派の人々は「武力による解決」を良しとしており、弱者を救うためなら国家や組織への先制攻撃も厭わない。


 元々、エデンは古くから強硬派が強い組織である。平和的な交渉ではなく、武力による解決はエデンの常套手段だった。


 ただ、先代総長時代と比べると武力そのものは大幅に衰えている。昔のエデンは神器使いによる奇襲を得意としていたものの、現在はそれが出来なくなった。


 現総長であり、強硬派の中心人物であるカトーもそれは自覚しているため、暴走しがちな若手構成員達の手綱はしっかり握っている。かつては自分が無茶をする側だったが、今は若人達を窘めつつ、必要な時は武力行使の許可を与えている。


 現エデン構成員の多くはカトーに命を救われた者達のため、絶大な支持を集めているカトーに対して逆らう強硬派は殆どいない。



■エデンの穏健派

 エデンの主流は強硬派だが、穏健派の人間も数少ないながらも存在する。


 数が少ないながらも、穏健派の中心人物であるヴァイオレットは――スミレの知識を受け継いでいるため――その技術力の高さからそれなりの発言権を持っている。実質、ヴァイオレットがエデンのナンバー2と言っても過言ではない。


 ヴァイオレット達、穏健派は「武力ではなく、技術で立場を確立していこう」と主張している。


 具体的には「混沌機関の作成・修理」をエデンで請け負おうと主張している。


 つまり、「エデンを一種の企業にしてしまおう」という試みである。


 機兵や方舟は強力な兵器だが、それらを動かすために使われる混沌機関を製造できる国家・組織は限られる。完全な整備技術すら、持っている勢力が限られる。


 そのため混沌機関の製造・整備技術は外交カードの1つとなっている。自国で混沌機関を用意できない国家は、一部の国家に傅いてでも混沌機関を手に入れ、何とか勢力を保っている状態が続いている。


 そこに目をつけたヴァイオレットは、自身がスミレから受け継いだ混沌機関の製造・整備技術を使い、エデンを「テロ組織」ではなく「企業」に変えようと考えている。自分達の技術を多くの国に売り込もうとしている。


 自国で混沌機関を用意できない国家・組織は、用意できる勢力に足下を見られている。ヴァイオレットの考える「企業としてのエデン」は足下など見ず、真っ当な取引として混沌機関を用意しようと考えている。


 そうすることで足下を見られている国家・組織という「弱者」を救いつつ、エデンもキチンとした組織として地位を確立するべきだ――と主張しているのがヴァイオレット達、穏健派である。


 テロ組織ではなく、真っ当な企業のように認められていけば、いつまでも逃げ回る生活を送らずに済む。行き場のない流民達に仕事と居場所も用意できる。


 そのために必要な知識は――混沌機関の製造・整備技術は――ヴァイオレットが用意できる。彼女は既にエデン内で技術者育成を始めており、同時にエデン内で混沌機関の新造に成功している。


 カトー達、強硬派もヴァイオレットの技術力は一目置いており、「エデン製の混沌機関」に高い価値を見いだしている。しかし、穏健派の主張を完全には採用せず、あくまで強硬派の考えを通そうとしている。



■強硬派と穏健派の衝突

 強硬派は「エデン製の混沌機関」を高く評価しつつも、穏健派のやり方は「まどろっこしい」「時間がかかる」と批判している。


 また、多次元世界で一部の国家・組織だけが混沌機関の製造を独占している現状は、人類連盟が作り出したものである以上、「真っ当なやり方で混沌機関を作っていれば、必ず人類連盟に邪魔される」と指摘している。この指摘は実際正しい。


 穏健派も穏健派で強硬派のやり方を「将来を見据えていない短絡的なやり方」「暴力に頼る以上、暴力に叩きのめされる可能性もある」と批判している。


 エデンの実権は強硬派が握っているため、穏健派の意見は退けられがちである。


 ただ、ヴァイオレットの知識・技術は強硬派にとっても欠かせないもののため、ヴァイオレットに配慮して穏健派の意見が多少は採用されることもある。


 カトーもヴァイオレットの力を高く評価しており、「混沌機関をもっと大量に作って多方に売りさばき、エデンの活動資金を増やそう」と提案している。


 ただ、ヴァイオレットは無計画な販売には後ろ向きな姿勢を示している。


 混沌機関は立派な兵器であり、無計画に販売していると新しい戦争や紛争を生みかねないとし、販売先はよく吟味するべきだと主張している。


 だが、カトーはヴァイオレットの作成した「エデン製の混沌機関」を勝手に持ち出し、ヴァイオレットが受け渡しを反対していた犯罪組織等に混沌機関を渡して懐柔するという裏切り行為も行っている。


 このような事が年々増え続けているため、ヴァイオレットとカトーはたびたび口論している。


 両者の関係は険悪だが、カトーはヴァイオレットの技術を高く評価し、ヴァイオレットも混沌機関作成のための設備や資材を手に入れるためにはカトーのコネが必要なのを理解しているため、決裂には至っていない。


 決裂していないとはいえ、2人の仲は悪い。


 しかし2人がたびたび個室で会議をしているため、エデン内部では「カトー総長とヴァイオレットは付き合っている」という真実から遠い噂が流れている。


 ラート×ヴァイオレット過激派のスアルタウ――もとい、フェルグスはその噂にやきもきし、思い悩んでしばしば寝不足になっている。


 やきもきするあまり、グローニャに「あの2人、付き合ってるのかなぁ……」と不安げに相談している。そしてたびたび「それは絶対ない」と否定されている。


 フェルグスはその手の相談をグローニャによく行うため、最初は親身になって聞いてくれていたグローニャも呆れて片手間に聞くようになった。





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