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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
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交国の人身売買



■title:エデン本隊旗艦<ジウスドラ>にて

■from:歩く死体・ヴァイオレット


「……総長、あの人を頼ってみませんか?」


 総長の疑問に答えず、提案する。


 この提案は、何度も退けられたものだけど――。


「誰に頼るって?」


「黒水守です。7年前、あの人は私達への協力を約束してくれました」


 ラートさんが黒水守と交渉し、協力を取り付けてくれた。


 子供達を逃がすために手を貸してくれるって、約束してくれた。


「黒水守は交国の人ですが……まだ話のわかる人だった……はずです」


 黒水には「立場の弱い人」が多く暮らしているようだった。


 交国の外から来た黒水守は、流民や難民の窮状を理解し、彼らのための居場所を作ろうとしていた。


 黒水守はあくまで「交国の領主の1人」だけど、交国のあり方に疑問を抱き、改革を考えている人のようだった。


「ラートさんは、黒水守を『信用していい』と判断していて――」


「黒水守は、交国で最も信用できない輩だ」


 総長は表情を歪め、そう言った。


「奴は大量虐殺犯だ。単に多くの人を殺しただけではなく、世界すら滅ぼした」


「…………」


「奴は、玉帝に媚びるクズでもある。お前達を逃がすと約束したのも……結局は、お前達を利用しようと考えていただけなんだよ」


 総長は「実際、黒水守は助けてくれなかっただろ」と言った。


 確かに助けてくれなかったけど、そこには事情がある。


 黒水守は私達を逃がす約束をしてくれたけど、私達が急遽、ネウロンに呼び戻されたから……黒水守側の準備が間に合わなかっただけだ。


 約束を破ったわけじゃないですよ――と言ったものの、総長は「それ以前の問題なんだよ」と吐き捨てた。


「総長が黒水守を嫌う理由は、わかります」


 総長にとって、黒水守は親の仇らしい。


 総長が住んでいた世界は、黒水守が「加藤睦月」と名乗っていた時代に滅ぼされた。その際、親まで殺されたと聞いている。


 ただ、それが全てだとは思えない。


 黒水守と話だけでもさせてください――とお願いする。仮に黒水守が総長の仰る通りの人物でも、話をしたら何かしらの情報が掴めるかもしれない。


 ひょっとしたら、ラートさん達の現状を……黒水守が知っているかもしれない。そんな希望を抱きつつ、総長の助力を求めたけど――。


「こんな大事な時期に、奴と接触している暇はない。対交国作戦の情報が漏れて、失敗する可能性すらある」


「総長……」


「黒水守は、単なるクズだよ。玉帝に取り入って交国の領主の地位を手に入れた。表向きは流民達を保護しているように見えても、実態は違う。絶対違う」


 総長曰く、交国本土で人身売買が行われている。


 その黒幕は黒水守だ、と総長は断言した。


「証拠もある。交国本土で人身売買が行われているのは、確かな話だ」


 交国では人身売買が禁止されているけど、需要がないわけじゃない。そんな闇のビジネスを行うのに、黒水という土地は適している――と総長は言った。


「総長ですら証拠が掴めるなら、何で交国政府は取り締まっていないんですか?」


「そんなこと、オレが知るかよ。大方、交国政府もガッツリ絡んでんだろ」


「絡んでいるって……黙認どころか、協力してるってことですか?」


「とにかく黒水守の事は忘れて……今は、エデンの活動に集中しろ。話は以上だ」


 総長はそう言い切り、部屋から出て行った。


 話を聞いてくれるよう求めたものの、「疲れているんだ」「休ませてくれ」と言い、私室へと戻っていった。





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