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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
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突然の再会



■title:エデン所有戦闘艦<メテオール>にて

■from:肉嫌いのチェーン


「大王軍の残党じゃねえな……!」


 総長達がいる制圧済み拠点の近海に6隻の方舟が現れた。


 海中に潜みながら近づいてきていたらしい。


 いずれも軍艦。大王国の方舟は全て押さえたはずだが――。


「交国の艦艇です! 大王国の残党ではなく、交国軍(・・・)かと!」


「砲撃中の方舟から機兵部隊出撃を確認! 総長達のところへ向かっています!」


 数十の機兵が、海上をホバー移動で総長達のところに向かっていく。


 ガンギカナ大王国の残党って規模じゃない。交国軍で間違いない。


 さっきアルが見つけた不審な魂は、雲に隠れて飛行していた有人偵察機だったってことか? 交国軍の奴ら、オレ達(エデン)を追ってきてたのか?


 ……いや、違う。


 おそらく、交国軍が追っていたのはオレ達じゃない。


 大王国は交国の脱走兵だ。交国が対処する理由は十分にある。


 最近は交国国内がごたついているから、他所に軍を派遣する余裕はないと思ってたが……大斑に派遣してきたって事だろう。大王国を処すために。


 大王国は既にオレ達が制圧しているから、奴らの仕事はもうない――と言いたいところだが、交国にとってはエデンも大王国も大差ねえ。


 こっちの素性がわかったところで、全力で潰しにくるはずだ……!


「隊長……! 界外で待機している無人機が時化に巻き込まれているようです」


 交国の標的が何であれ、奴らはオレ達の退路を塞ごうとしている。


 どうやら大斑の界外で爆弾を起動させ、<海門(ゲート)>を使って安易に界外へ逃げられないようにしているらしい。


 もう少し界内を移動したら海門を開いて逃げられそうだが……総長達の方はオレ達以上に移動する必要がある。


 オレ達は接敵前にギリギリ離脱できそうだが――。


「総長達との連絡は――」


「敵部隊に妨害されています……!」


 敵は攻撃開始と同時に通信妨害を始めたらしい。


 可視光通信に切り替えて呼びかけさせたが、攻撃を受けている拠点の方は混乱しているらしく、上手く連絡が取れない。


 エデンは頻繁に戦闘しているが、全体の練度は先進国の正規軍に劣る。突発的な状況に対応できるほどの人材は限られている。


 向こうでまともに戦えるのは総長(カトー)ぐらいだろう。……神器のない今の総長が、非戦闘員を守りつつ交国軍の襲撃を凌ぎきるのは不可能のはずだ。


「<ウィッカーマン>、3機共出せるな!?」


『いつでも出せる! 隊長、出撃許可を!』


 アラシア隊の整備も担当している機兵乗り(バレット)がそう応えた。


 バレットだけではなく、スアルタウとレンズも格納庫に到着したらしい。


「ヤドリギ起動! 総長達の撤退を援護する! スアルタウ、レンズは<ウィッカーマン>を遠隔操作して総長達の援護に回れ!」


 こっちの機兵乗りはオレを含めれば4人。


 だが、交国軍から直ぐ逃げないといけない状況じゃ、オレが出たところで大した役には立てん。だが、アル達が遠隔操作する機兵なら話は別だ。


「バレットは<メテオール(このフネ)>の直掩(ちょくえん)に回ってくれ」


『隊長、遠隔操作ではなく直接操縦で出ます!』


「駄目だ。危険だ」


 総長達を助けるためとはいえ、スアルタウ達を直接出すのは危ない。


 仮にウチの機兵(ウィッカーマン)がやられたとしても、遠隔操作ならまだ取り返しがつく。だが、アル達は直接操縦で出ると言って聞かなかった。


『確かに遠隔操作の方が安全ですが、最初から全力を出さないとこっちも危うくなります。隊長、許可してください』


『最初にドーンと行って、途中から総長達の方舟に移って遠隔操作に切り替えるからさ~! 信じて任せてっ! 相手の方舟に対処するなら直接の方がいいよ!』


 議論している暇はない。


 相手は交国軍。確認出来る範囲で6隻の方舟と、数十の機兵を出してきている。おそらく界外にも別働隊が控えているだろう。


 全力で挑まないと危ういのは確かだ。


 ここは――。




■title:エデン所有戦闘艦<メテオール>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


『直接操縦での出撃を許可する。だが、無理するなよ!?』


『『「了解!」』』


 操縦席で出撃準備を整えつつ、アラシア隊長の声に応える。


 エデン開発機兵<ウィッカーマン>の流体装甲を展開。


 ただし、僕とレンズの機兵(ウィッカーマン)は「人型」ではなく、「鳥型」の流体装甲を纏う。総長達のところに駆けつけるために、翼が必要だ。


レールタ1(スアルタウ)、出ます!」


レールタ2(レンズ)。続いて出るよ~』


 航行中の方舟から機兵を投下(・・)してもらう。


 落下しながら飛行翼を展開し、風を掴んで飛翔する。


 <ウィッカーマン>はただの機兵じゃない。


 交国軍主力機兵<逆鱗>と違い、単独飛行可能なエデン製の機兵だ。


 プレーローマの<レギンレイヴ>のような空中戦は出来ないけど、長距離飛行して救援に向かう事は出来る。飛行出来れば離脱時にも役立つ。


 総長達のところへ急行して、敵を蹴散らした後に離脱するとなると飛行可能なウィッカーマンで行く方が確実だ。


 逆鱗も良い機兵だったけど、ヴィオラ姉さん達が作ってくれたエデン開発機兵(ウィッカーマン)だって負けていない。


 相手が数で勝る交国軍でも、今の僕達なら対処できるはずだ……!




■title:エデン所有戦闘艦<メテオール>にて

■from:整備士兼機兵乗りのバレット


レールタ3(バレット)方舟(メテオール)への憑依開始します」


『了解。火器管制をレールタ3に委譲します』


 自分の<ウィッカーマン>に搭乗しつつ、機兵と方舟を接続する。


 方舟の砲塔を借り、敵機が来たら特性の弾丸を――強奪(ダグラス)弾を放って止められるように備える。備えつつ、索敵支援も行う。


 巫術の観測結果をシステムに送り、皆に共有する。艦橋にいる観測員にも手伝ってもらい、敵の配置を丸裸にしていく。


 アルとレンズと一緒に総長達の救援に向かいたいところだが……オレは2人ほど機兵を上手く動かせない。行けば足手まといになる可能性が高い。


 けど、アイツらが帰る方舟(ばしょ)ぐらいは守り切ってみせる。


『レールタ3。オレ達は必要に応じて砲撃支援しつつ、撤退用の<海門>を開く準備を行う。近づいてきた敵は強奪弾で行動不能に追い込んでくれ!』


『了解』




■title:人類連盟認定後進世界<大斑>にて

■from:交国軍・第32艦隊所属・第1遊撃隊長


「想定より敵機兵が少ないな……?」


 この後進世界に<ガンギカナ大王国>と名乗る交国軍脱走兵共がいるという情報を掴み、制圧しに来たんだが……想定していた数より機兵が少ない。


 敵拠点から出てきた機兵は、たったの7機。


 それも、どれも型落ちの機兵ばかりだ。例の脱走兵共(ガンギカナ)は<逆鱗>を奪って逃走し、犯罪活動に使っていると聞いていたが……伏兵がいるのか?


「中佐。北辰隊から再度連絡がありました。『即刻砲撃を中止せよ。貴官が砲撃を行っている地点には、一般人がいる可能性が高い』とのことです」


「交国臣民でもない奴らに配慮していられるか。これだから素人部隊は……」


 我々は人質救出作戦に来たわけじゃない。


 交国軍の汚点……脱走兵共の処分に来たんだ。


 奴らに誘拐された後進世界住民に配慮した作戦行動を行っていれば、脱走兵共を取り逃す危険がある。犠牲を支払ってでも脱走兵共は処分せねばならん。


 一般人だとしても、敵拠点にいる時点で怪しい。


 敵の協力者と思え――と部下に告げる。


 もし仮に何の罪のない一般人がいたとしても、それはガンギカナ大王国の奴らが殺した――という事にすればいい話だ。


「ここでガンギカナの脱走兵共を仕留めれば、この世界の住民も納得するさ。わざわざ後進世界を救いに来てやった我々に感謝するだろう」


 脱走兵共を1人でも取り逃せば、交国軍の評判がさらに下がってしまう。


 脱走兵はもう交国軍人ではないが、奴らが起こした事件は交国の責任になる危険もある。後進世界で多少の一般人を殺すぐらいなら、どうとでも処理できるさ。


「北辰隊のザイデル中尉は、適当にあしらっておけ」


「そのザイデル中尉が『北辰隊の出撃を許可してほしい』とも言っているのですが……どうしましょうか……?」


「許可しない。中尉のくせに中佐(こちら)の指揮下に入らない部隊を好きにさせてたまるか。機兵格納庫に閉じ込めておけ。絶対に隔壁を開くなよ!?」


「し、しかし……ザイデル中尉の北辰隊は炎寂(えんじゃく)特佐麾下部隊です。特佐の命令で今回の作戦に参加しているので、蔑ろにすると――」


「貴様は誰の部下だ! 私だろう!?」


 北辰隊は面倒な奴らだ。


 アレを率いているのは「中尉」だが、特佐麾下部隊のため、交国軍の正規の指揮系統の外にいる。私の指示を聞かない面倒な奴らだ!


「炎寂特佐本人は、ここにはいないんだ。どうとでも誤魔化せる」


「しかし……相手は炎寂家の特佐ですよ……? 炎寂家を通して玉帝にアレコレと告げ口されてしまったら……」


「格納庫の障壁が故障している、とでも言っておけ!」


 どうせ、直ぐに片が付く。


 炎寂特佐麾下機兵(・・)部隊<北辰隊>の出番はない。


 奴らは栄えある交国軍人ではない。コネで成り上がった素人部隊だ。


 脱走兵(こしぬけ)程度、我々だけで直ぐに蹴散らしてやる。


「砲撃を続けろ! 奴らの拠点を、磨り潰せッ!!」




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