その眼に映るもの
■title:エデン所有戦闘艦<メテオール>にて
■from:死にたがりのスアルタウ
『アル。総長達のところ、あとちょっと着くってよ』
「ああ、了解」
バレットからの連絡に応え、船室から出る。
大王国に誘拐された大斑の人達を故郷に送り届ける仕事は、一段落した。全員を故郷に送り届けられたわけじゃないけど……ひとまず総長のところに向かう。
エデンとしてはこの世界にエデンの隠し拠点を作ったり、この世界の人々と密かに協力関係を築きたい。……お互い、納得できる協力関係を築きたい。
ひとまず大王国の拠点を借りて活動しつつ……大斑の人達と交渉していく。
その過程で、故郷に帰せなかった人達を再度、故郷に戻す試みも行う。一度や二度断られただけで諦めるわけにはいかない。
戻る故郷がない人達はエデンで保護しつつ、行き場を探す。
大斑の人達との交渉が上手くいけば、エデンで保護した人達を保護して貰える場所も見つかるはずだ。その手の交渉は総長達にお願いする事になるので……僕らはそれが上手くいくよう祈りつつ、他の仕事をこなす事になる。
「総長達、元気かな……」
総長達が制圧した大王国の拠点には、僕らが保護した以上の大王国の被害者がいるらしい。大王国を倒した以上、この世界にはエデンに勝てる人々はいないはずだけど……戦闘以外の仕事も色々あるはずだ。
僕が手伝える仕事もあるはずだ。例えば、機兵を使って土木作業をしたり……念のため偵察をしたり、仕事はあるはずだ。
総長達のところに着いたら直ぐに仕事できるよう、機兵の動作確認をしておこう。そう思いながら方舟の格納庫に向かっていると――。
「…………」
違和感を抱いた。
妙なものが観えた。
自分だけじゃわからない事なので、別の視点からも確かめないと――。
「艦橋。方舟に憑依させてください」
『どうかしたのか?』
「ちょっと、船外のカメラを使いたくて……」
方舟の廊下に座り、壁に背を預けて憑依を開始する。
巫術の眼が「妙な魂」を見つけた。
方舟の船外カメラを借り、方舟視点で確かめる。
妙な魂が観えたのは北東方向。
北東の空に魂が1つ、ポツンと観えている。
その存在を艦橋の人達にも伝えつつ、聞く。
『位置的に、雲の中に魂が観えます。鳥って、あんなところ飛びますかね……?』
『いや、積乱雲の中だ。それはないだろう』
総長達の方で有人機でも飛ばしているんじゃないか――という話になった。
連絡を取って確かめてもらったけど、そうではないらしい。
ということは――。
『……敵がいます。気づかれないよう、こっそりと戦闘準備を――』
僕がそう言った瞬間、総長達との通信が乱れた。
周辺で強い電波障害が起こっている。
さらに、近くの海の海面が盛り上がり、海中から方舟が出てきた。
海から出てきたのは6隻の方舟。海にもいたのか! 気づくのが遅れた……!
『総員、戦闘配置!』
アラシア隊長が叫ぶのと同時に、新手の方舟が砲撃を開始した。
総長達のいる拠点に向け、敵の攻撃が始まった。
方舟による砲撃。そんなこと、この世界の人達には出来ないはずだ。
大王国の残党があんなにいるとは思えない。
ということは……まったく別の異世界勢力だ。




