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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第4.0章:その大義に、正義はあるのか
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命を背負って



■title:人類連盟認定後進世界<大斑(おおまだら)>にて

■from:肉嫌いのチェーン


「お~ま~~え~~~らぁ~~~~っ……! 待機だって言っただろうが!」


 ガンギカナ大王国が襲撃していた町に方舟で到着した後。先行していた部下(ガキ)共を叱る。まあ、大人しく待機している奴らじゃないと思ってたが!


「ごめぇん、アラシア隊長ぅ~」


 レンズは「キャピ♪」という擬音でも舞ってそうなわざとらしいぶりっこ姿勢をしつつ、カッコだけの謝罪をしてきやがった。


「スンマセン。アラシア隊長。反省してます」


 バレットは真面目な顔でオレを見て謝ってきたが、手は別の生き物のように動かしてやがる。カッコだけの謝罪しつつ、大王国から没収した武器の分析に熱中してやがる……!


「すみません。アラシア隊長」


 スアルタウだけだよ! 妙な事はせず、直立不動で真面目に謝罪してんの!


 ただ、待機命令を最初に破ったのはコイツなんだろうなぁ~……。


 3人共、ネウロン時代より身体は大きくなった。精神も昔より大人になった。けど、まだまだガキだ。……ガキの部分はあんま無くさないで欲しいけどな。


 ただ、さすがに叱る。


 待機命令を出したのは、先行していた3人だけで仕掛けるのは危険と判断したからだ。頼りになるからこそ、止むなく先行してもらったんだが……オレ達が来るまで仕掛けるのは待って欲しかった。


 その辺を改めて説明すると、さすがのレンズもバツが悪そうな顔を浮かべ、さすがのバレットも作業の手を止めてくれた。


「でも隊長~! あたし達が動かなきゃ、もっと被害が出てたよ?」


「まあ、実際その通りだったんだろうが……」


「レンズ。命令違反は命令違反だ」


 キッチリした態度で謝意を示していたスアルタウはそう言い、再び「すみませんでした。隊長」と頭を下げてきた。


「けど、同じ状況になったら、また隊長を怒らせる事になります」


「あたしも同意見~」


「オレも」


「お前らなぁ……」


 やっぱ反省してないガキ共を前に、わざとらしくため息をついてみせる。


 コイツら3人を先行させた時点で、こうなる事は予想しておくべきだった。


 結果的に上手くいったけど……オレの判断ミスだな。


 努めて怒った顔をしつつ、「何があったか詳しく言い訳(ほうこく)してくれ」と言うと、レンズが明るい口調で教えてくれた。


 どうやらガンギカナ大王国の奴らが守備隊どころか、住民も殺そうとしていたらしい。待機を続けていたら、少なくとも子供が1人死んでいた――という事でスアルタウが動き、レンズとバレットも同調したそうだ。


「命令違反の懲罰なら、3人で仲良く受けま~す」


「懲罰なんてしねえし、させねえよ」


 オレ達はもう交国軍じゃねえんだ、と付け加える。


「けどまあ、反省文ぐらい書いてもらうかな」


「わかりました。でも、同じ状況になったら同じ行動をすると思います。そのため、真の意味での反省にはほど遠く――」


「あぁっ、もうっ! わかったわかった! カッコだけでいいから反省文を書けってことだよっ!」


 クソ真面目にバカ発言するスアルタウの頭をペチペチ叩き、黙らせておく。


 コイツ……ネウロンにいた時はもっとクソガキだったのに、あの頃から考えられないぐらいクソ真面目になりやがって……。


 これを「成長した」と言うべきなのか、「変わっちまった」と言うべきなのか迷うところだ。どちらも正解だとは思うが……純粋には喜べん。


 コイツがこうなっちまったのは、ネウロンでの出来事が大きく影響している所為だ。……前向きな成長とは言い切れねえ。


「ある意味、昔のお前の方が素直だったよ、フェルグス」


 昔が懐かしくて、ついそう言っちまった。


 直立不動で謝罪していたフェルグスは、「僕はスアルタウです」と返してきた。


「お前はフェルグスだよ。スアルタウじゃねえ」


「コードネームは『スアルタウ』ですよ。副長……もとい、隊長」


「今は作戦行動中じゃねえんだから、本名で呼んでもいいだろ?」


「エデンの人間である以上、常在戦場の心構えでいるよう師匠に教わりました」


 クソ真面目にそう返してきたフェルグス――もとい、スアルタウにため息を返す。お前は本当に変わっちまったよ。


 お前が悪いわけじゃないけどな……。


「アラシア隊長ぅ~! とにかく許してぇ~♪」


「あのなぁ、レンズ……それは許しを請う人間の態度じゃねえだろ。スアルタウを見習えとまでは言わねえが、もうちょっと真面目にやれ」


「はーい」


 まあ、いい。もう終わった事だ。


 オレ達は……<エデン>は軍隊じゃねえ。


 最低限の規律はあるが、交国軍時代ほど厳しくやる必要はない。オレはもう交国軍人じゃないし、コイツらも特別行動兵じゃない。


 便宜上、オレの方が「隊長」となっているが……戦闘で頼りになるのはガキ共の方だ。もう昔のような隙もなくなって、随分と頼りになるようになった。


 けど、まだまだ危なっかしいんだよなぁ。


 薄情なオレと違って、真面目な奴らだから……。


 ガキ共に格好だけの説教をしていると、別行動中の部隊から通信が届いた。


 オレ達(エデン)はこの世界で作戦行動中だった。


 標的は<ガンギカナ大王国>という自称国家。交国軍の脱走兵で構成された愚連隊が後進世界で暴れていると聞き、<エデン>として止めに来た。


 エデンのアラシア隊(おれたち)だけではなく、別部隊も同時刻に動いていたんだが、その別部隊も仕事を終えたらしい。


「カトー総長達が、ガンギカナ大王国の本隊を制圧したとよ」


「総長達は無事なんですか?」


「ああ、怪我人ゼロ。大王国に囚われていた人達も巻き込まず、すんなりと制圧できたみたいだ」


 そう言うと、スアルタウはホッと胸を撫で下ろした。


 さっきまでクソ真面目に直立不動だったが、向こうが片付いた知らせを聞き、ようやく肩の力を抜いてくれたらしい。


「これで、この世界にいた『侵略者』は全員制圧出来た、って事ですよね?」


「数人、取り逃した可能性はあるけどな」


 事前の調べだと、ガンギカナ大王国は部隊を2つにわけて動いていた。


 1つはカトー総長達が鎮圧した本隊。


 もう1つはスアルタウ達が鎮圧した別働隊だ。別働隊の方に大王国の大王(リーダー)がいたのは予想外だったが……敵は粗方倒せたはずだ。


「少なくとも方舟と機兵は全て押さえた。残党が数人、この世界に潜伏したところで……持っているのは銃火器程度だ」


 あとはこの世界の住民だけで対応できるだろう。


 機兵や方舟に抗うのは大変だが、通常の銃火器ならそう遠からず弾切れを起こす。この世界の住人より優れた武器を持っていたとしても、弾切れを起こした銃火器で出来ることは限られている。


 スアルタウは「でも、残党を残すと被害が出るかも……」と心配しているので、「投降するよう説得する」と告げる。


 残党がいたとしても、全員馬鹿とは限らん。機兵も方舟も無しで後進世界に取り残されたどうなるかは、丁寧に説明するまでもなく理解するだろう。


 一応、捕まえた大王国兵士を尋問して、残党がいるとしたらどこにいるか吐かせるけどな。兵士共に銃を突きつけてでも居場所を吐かせてやる。


 そういう仕事はガキ共ではなく、オレの担当だ。


 こいつらにそういう仕事はやらせたくない。


「とりあえず、こっちも後始末をしよう」


「わかりました。じゃあ、僕達も瓦礫の撤去や、鹵獲機兵の移動を――」


「その手の雑用はこっちでやる。お前達は休んでろ」


「しかし……」


「お前達に『客』もいるようだし、応対してろ」


 ここに来た時、懐かしい顔に出くわした。


 そのうち、コイツらにも会いに来るだろう。


 この待機命令は破るなよ~、と告げてガキ共から離れる。


 すると、他の部隊員が話しかけてきた。


「アラシア隊長。ここの代表者が会談を望んでいます」


「話し合いじゃなくて、会談か」


「どうも、ここって単なる町ではなく……王都だったようです」


「あぁ~……」


 この辺一帯を統べる王も住んでいたらしい。


 その王様はガンギカナ大王国にサクッと殺されたそうだが、大臣達がエデンとの会談を望んでいるようだ。


 少し面倒だが、いきなり矢が飛んでこないだけマシか。……今後のためにも大斑の住人とコネを作っておきたいし……話をしてこよう。


 それに、あの話も結論を出しておかないと――。


「あと……先方は『捕虜』の引き渡しを求めています」


「まあ、そうなるよな」


 話をつけてこよう。


 お互いに納得する答えを出せるかわからないが……まずは話し合いだ。




■title:人類連盟認定後進世界<大斑>にて

■from:死にたがりのスアルタウ


「アラシア隊長も、隊長っぽくなったねぇ」


 去って行くアラシア隊長の背を見ていると、レンズがしみじみと言った様子でそう語った。どういう目線かはともかく……言ってる事は確かかもしれない。


 頼りになるのは星屑隊の副長時代から変わらない。


 ブロセリアンド解放軍時代は、まあ色々あったけど……結局は僕らを心配してくれていたようだった。そして今は頼りになるエデンの仲間だ。


 戦闘経験がまだまだ乏しい僕らにとって、元軍人のアラシア隊長はとても頼りになる。僕らがよく振り回しているので、苦労かけっぱなしだけど――。


「けど正直、アラシア隊長は『副長』って意識が強いかな。個人的には」


「ああ、わかるわかる。今のアラシア隊長がダメって話じゃないけど、もっと印象的な隊長がいたから~……しっくり来ない感はあるよね」


「お前ら、本人には言うなよ」


 機械イジリしつつ、呆れ顔を浮かべているバレットに対し、レンズが「でも、アラシア隊長本人も同じようなこと言ってたよ」と言って笑った。


 アラシア隊長は、ネウロンを脱出した時……重傷を負っていた。今は機兵に乗れるぐらい回復して、「アラシア隊の隊長」として僕らを率いてくれている。


 元軍人らしい視点で僕らを導いてくれている。副長時代のイメージも強いけど、それでも今は「頼りになるアラシア隊長」になってくれている。


 そのアラシア隊長は、僕らと同じアラシア隊の人と何か話しつつ、町の中心部に向かっていった。エデンの仕事なら手伝いたいけど、待機命令を破ったばかりでまた命令を破っていたらマズいよな……。


 仕事したいな……と思いつつボンヤリしていると――。


「どうもどうも、お久しぶりです」


 見知った金髪幼女が揉み手しながら近づいてきた。


「大きくなりましたね。フェルグス様」


 金髪幼女は僕を見ながらそう言い――。


「ロッカ様」


 バレットを見ながらそう言い――。


「グローニャ様」


 レンズを見ながらそう言った。


「お久しぶりです。ラプラスさん。貴女は……昔のままですね」


 一体何歳なんですか――と聞くと、レンズに後ろから引っぱたかれた。


 さらに耳を引っ張られ、「女の子に歳を聞かないのっ!」と説教された。


 確かに失礼だったかもしれない。謝罪すると、ラプラスさんは笑って許してくれた。……けど、この人ってホントに外見が変わらないな。


 元々、「幼女」って形容が似合う小柄な方だったけど、背丈はともかく肌つやも昔のままに見える。……ひょっとして不老不死なんだろうか?


 そんな疑問を抱いていると、ラプラスさんは「小耳に挟んだのですが、今は偽名を使っているようですね」と語りかけてきた。


「エデン構成員としてのコードネームですか」


「はい。師匠達にそうした方がいい、と言われたので」


 エデンは強者に虐げられる弱者を救う組織だ。


 正義の組織と言っていい存在だと思う。けど、公に認められた正義じゃない。人類連盟からは「テロリスト」「犯罪者」と呼ばれる武装集団だ。


 人類連盟に限らず、色んな国家・組織に睨まれているから、「エデン構成員として動く時はコードネームを使いなさい」と言われている。


 バレットが「アラシア隊長は本名のままだけどな」と言って肩をすくめると、ラプラスさんは「偽名を使った方がいいと思いますけどねぇ」とこぼした。


「ちなみに、どのようなコードネームを?」


「私は『レンズ』だよ~」


「オレは『バレット』」


「……僕は『スアルタウ』です」


 改めてコードネームで名乗ると、ラプラスさんは「ふむふむ」と言いながら頷いた。彼女は少し思案する様子を見せた後、再び口を開いた。


「星屑隊の隊員さんの名前と、弟さんの名前ですか」


「はい」


「その名を選んだ理由、お聞きしても構いませんか?」


「この名に恥じない人間になりたいからです」


 僕が胸を張ってそう言うと、レンズが言葉を継いでくれた。


「あたし達がいまこうして生きているのは、ネウロンで出会った皆のおかげだから。大事な人の名前を借りて、皆に恥ずかしくない働きをしたいって思ったの」


「僕らは、人類連盟加盟国にとってはテロリストです。……時に暴力を手段として選ぶ事もあるので、『正しさ』を忘れないようにしたいんです」


「正しさ、ですか」


「暴力が必要な事もありますが……暴力そのものは『正しくないもの』ですから」


 強者の理不尽を止めるためには、時には暴力に頼らざるを得ない時もある。


 けど……それを手段の1つとして選んでしまった時点で、僕らはもう「普通」には戻れない。最悪、暴力を振るう事に何の抵抗を覚えなくなるかもしれない。


 そうなったら交国政府(・・・・)と同じになってしまう。


「理不尽に抗うために暴力が必要でも、それに慣れたくないんです」


「誰かを救うという大義名分があっても、暴力に慣れたくないのですね」


「はい。大義名分という鎮痛剤を常用していたら……暴力を振るうことに何の躊躇いもなくなる日が来るかもしれません」


 僕達自身が、交国政府のようになるかもしれない。


 それはダメだ。


 それは……スアルタウ達は許してくれないはずだ。


「自分達を律するための指針として、大事な人の名前をコードネームにしたんです。……僕達だけだと、征くべき道を見失う可能性がありますから……」


「良いコードネームでしょ~?」


 レンズが得意げな顔でそう言うと、ラプラスさんも肯定してくれた。


 バレットは――思うところがあるのか――少し気まずげにしているけど、バレットのコードネームはバレット自身が選んだものだ。


 気まずく思う理由があっても、バレット自身が「このコードネームを使いたい」と決めたものだ。……きっと後悔していないだろう。


 コードネームの由来を教えると、ラプラスさんは「カトー様と同じ理由でつけたのですねぇ」と呟いた。


「ところで……ラプラスさんは何故、この世界に? いつもの調査ですか?」


「それもありますが、主目的は貴方達(エデン)と会うためです」


「参ったな……。僕らの動きが外部にバレているんですね」


 そう心配すると、ラプラスさんは「雪の眼の調査能力あってのことですよ」と言ってくれた。別の組織にはバレていないようだ。多分。おそらく。


 僕らはガンギカナ大王国の侵略行為から、この世界の人々を……<大斑>の人々を守るためにやってきた。


 エデンの活動方針である「弱者救済」に従ってやってきた。ガンギカナ大王国は比較的小規模の武装組織だけど、機兵や方舟を持っている。この世界の人達にとっては大きな脅威になるから僕らが対応しにきた。


 ただ、僕らが大斑に来た理由は弱者救済(それ)だけじゃない。


 下心(・・)もあってこの世界に来たから、他所の組織にエデンの存在がバレるのはマズいんだよな……。雪の眼以外にはバレていないと祈ろう。


「しかし、先程の戦闘は鮮やかなものでしたねぇ。貴方達3人だけで敵を全員生け捕りにするどころか、住民にも死傷者を出さないとは……」


「死傷者は出てます」


「それは、貴方達が到着する前の被害でしょう?」


「ですが、僕ら(エデン)の落ち度です。もう少し……早く辿り着いていれば」


 せめて、敵が町を襲う前に駆けつけたかった。


 さっきの戦闘がすんなり行ったのは、ガンギカナ大王国は町を制圧して油断していた影響も大きい。彼らが町を襲う前に戦った場合、さっきほどすんなりはいかなかったはずだ。それでも勝算はあった。


 ……守るべき人々に被害が出た時点で、僕らは負けたようなものだ。


「アルがまた鬱屈としてる~」


「あぁ、ごめん……。けど、勝利とは言いがたい結果だと思う」


「真面目ですねぇ」


 ラプラスさんは「ヤンチャ小僧だったフェルグス様が、一番変わってしまったようですね」と言った。笑みを浮かべたまま、今の僕をそう評した。


「ところで、ヴァイオレット様とスパナ様は? あの2人も生きて交国から逃げ切ったはずでしょう? チェーン様は先程会ったのですが」


「ヴィオラ姉さん達も……元気……ですよ。ええ、一応」


 整備長はともかく、ヴィオラ姉さんの話は……いま、やや気まずい。


 レンズもバレットも困り顔を浮かべている。


 多分、僕と同じく心配しているんだろう。……次会った時、絶対に怒られるんだろうなぁ……と考え、少し憂鬱になっているんだろう。


「あ、そういえばそちらは? エノクさんはどこに……」


「エノクは所用で別行動しているのです」


 ラプラスさんはそう言い、傍にいた女性を「代理です」と紹介してくれた。


 代理の護衛の女性は――ラプラスさんを嫌そうな顔で見つつ――自己紹介した後、ラプラスさんに向けてため息をついてみせた。


「エノクさんとはこの世界で合流して、ラプラス様を押しつける予定だったんです。エノクさんが一向に来ないうちに大王国が来て……。いやはや困りましたよ」


「大変でしたねぇ」


「いや、大抵のトラブルはラプラス様の所為ですからね!? 大王国が来た時点で、さっさと逃げましょうって提案したのに~……!」


 ラプラスさんは性格も相変わらずのようだ。


 相変わらず、護衛の人を振り回しているようだ。


 雪の眼の2人の口論を聞きつつ、「大変そうだな……」と思っていると、通信機が鳴った。2人に断って応答する。


『アラシアだ。傍に雪の眼の史書官がいないか?』


「いまちょうど目の前に」


『伝言、頼むわ。さっき総長達から連絡が来たんだが、総長達が制圧した場所に史書官の護衛の…………えの……エノ……なんだっけ?』


「エノクさん?」


『そう、そいつだ! そいつがいたってよ』


 総長達がいるの、この惑星(ほし)の反対側だったような……。


 方舟があれば行ける距離だけど、エノクさんは待ち合わせ場所を随分と間違ったようだ。もしくは、ラプラスさん達が間違えたのか?


 ラプラスさんにエノクさんの件を伝えると、珍しく困り顔を浮かべた。


「おやおや……。エノク、やらかしましたね」


「僕らは最終的に総長達と合流します。ラプラスさん達もついてきていただければ、エノクさんと合流できるはずですよ」


「ありがとうございます。それはいいとして、エノクがカトー様と出くわしてトラブルになってないかなぁ~と心配していたのです」


「…………?」


 ラプラスさんはよくわからない懸念を抱いているようだ。


 どういう事か聞く前に、ラプラスさんは「まあ、多分バレないでしょう」と呟き、「そちらの方舟に便乗させてください」と言ってきた。


 頷いて、エノクさんのところまで連れて行くと約束する。


「ただ、僕らはもう少しこの場所に滞在します。後処理が色々あるので……エノクさんと合流できるのは……下手したら1週間後ですが、構いませんか?」


「ええ、適当に時間を潰しておきます」


 旅の仲間が増えた。


 いずれ別れる事になるだろうけど、ネウロンで一度別れてこうして再会できたように……別れたところでいつかまた再会出来るだろう。


 お互い、歩き続けていれば――。





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