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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.5章:バッドカンパニー【新暦1225年】
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TIPS:無尽機



【TIPS:無尽機】

■概要

 人類連盟を作ったメフィストフェレスの失敗作(いさん)の1つ。


 正式名称を「無尽蘇生歩兵兵器」と言う。龍脈(レイライン)内に存在するサーバーに魂魄・肉体・記憶データを保存し、登録者が死ぬとデータから蘇生することで「無限に復活し続ける歩兵」を作ろうとした。


 無尽機の失敗作たる所以は「蘇生に失敗した」という点にある。


 無尽機は登録者と全く同じ容姿、ほぼ同じ記憶と知識を持つ者の出力に成功しているが、最初の登録者と出力された者は同一人物ではない。


 混沌を材料に流体を練って肉体を作り、サーバーに保存されている記憶データを焼き付けて「本人そっくりの別人」を作っただけで、蘇生したわけではない。


 実験失敗を悟ったメフィストフェレスはため息をつきつつ、出力された別人を「スワンプマン」と称した。


 無尽機の親機に当たる泥縄商事社長・パンドラすら、本人ではない。本人(オリジナル)はとうの昔に死亡している。死ぬたびに新しいスワンプマンが出力されているため、酷い時は毎日のように別のスワンプマンが生まれている。


 社長本人は特に気にしていない。当初のスワンプマンは気にして発狂していたが、メフィストフェレスがサーバーに保存されたデータを書き換え、発狂しないデータに修正を行った。



■無尽機の親機・子機

 無尽機作成実験の成功例は泥縄商事社長のパンドラしかいない。


 ただ、「親機」であるパンドラは契約によって「子機」を増やし、従える事が出来る。親機は子機に対して強力な命令権限を持っており、相手の意志に反する事だろうと子機相手なら必ず従わせる事が出来る。


 パンドラは「雇用契約」と称し、泥縄商事社員の大半と契約を結び、サーバーに子機達の情報を保存している。


 この雇用契約は合意さえあれば誰とでも結べるものではない。サーバー側にも登録限界があり、神器や権能等を所持している者達はサーバー登録に必要な容量が大きいため基本的には登録できない。


 登録者を絞れば特異な存在でも登録可能だが、パンドラは「社員が大量に欲しい」「戦いは数だよ!」という意向から、凡人との契約を優先している。



■スワンプマンの成長

 無尽機が製造するスワンプマン達は成長している。


 彼らの記憶は1分に1度サーバーに保存されるため、死んでもほぼ最新の記憶を持った状態で製造される。無尽機に取り込まれてしまった後も、記憶・知識は成長し続ける事も不可能ではない。


 ただ、龍脈内に存在するサーバーとの接続は非常に不安定で、接続障害が頻発している。最悪、記憶喪失の状態で製造される事もある。その際はスワンプマンを一度殺害し、再製造させる事が望ましい。


 身体機能はサーバー登録時のもので固定生産される。トレーニングで鍛える事は可能だが、死亡して再製造されると「登録時のデータ」で再構成されてしまう。そのため雇用契約は既に一定の身体作りが終わっている状態が望ましい。


 スワンプマン達は一応、老化する。その老化すらも再構成時にリセットされてしまうため、登録は青年期後期付近が好ましいとされている。


 泥縄商事の社長が子供との雇用契約に否定的なのは、上記のリセット問題と泣きわめく子供が嫌いなため。能力が劣っている人間を登録してしまうとサーバーの容量を無駄に圧迫するから避けているだけで、人道的な理由ではない。



■スワンプマンへの認識操作

 無尽機開発初期にスワンプマン達が「自分達は混沌(どろ)で練られたスワンプマンである」という事実に耐えきれず、発狂するケースが多数発生した。


 メフィストフェレスは無尽機を「蘇生技術としては失敗作」と言いつつも、対プレーローマの役に立つと判断していたため、スワンプマン達の精神保護のための認識操作術式を仕掛けた。


 これにより、スワンプマン達は「前の自分」が死んだ時の記憶が曖昧になりやすくなった。これはある程度の効果を上げたが完璧ではなかった。後付けの術式のため完全に機能しなかった。


 サーバーにアクセスして記録されているデータをイジり、発狂しづらい人格データに修正する手もあった。だがメフィストフェレスは「他にやることが沢山ある」と言い、その方法を使うのを出来るだけ避けた。



■スワンプマンの製造

 スワンプマンは誰もいない密室1つにつき1人製造される。親機以外は親機の半径10キロメートル圏内の密室に製造される。ロッカー程度の広さの箱でも「密室」として成立する。


 スワンプマン達は死亡すると、24時間以内に再製造される。


 正確にはサーバーのタイマーが午前6時になると再製造が始まる。泥縄商事社長直属部隊<夜行>はこれを利用し、午前6時前に作戦行動を開始し、作戦中に死亡しても即時復帰する戦法を使う事がある。


 たまにシステムの不具合で同じスワンプマンが2人以上製造される事もあるが、その際は1人になるまで殺処分する事が望ましい。そうしないとサーバーの記憶データの上書きに不具合が生じたり、重大な自我崩壊が発生する場合がある。


 また、親機であるパンドラは製造の差し止めと、任意のタイミングで再製造を行う事が出来る。パンドラはこの力を利用し、交国本土で行われた<カトー奪還作戦>で製造待機中だった夜行の再製造命令を行った。夜行達は交国の軍事施設内や方舟内の密室で製造され、奇襲を成功させた。



■死体型混沌機関

 スワンプマンが製造される際、まず最初に製造されるのが心臓部(コア)である<死体型混沌機関>だ。これが無いと流体で構築された身体を維持出来ない。


 死体型混沌機関は製造された密室にあった物質を分解・再構築する事で作成されるもので、その姿は小人の木乃伊(ミイラ)に見えるものが多い。スワンプマン達はこれを破壊されると形を維持出来なくなるが、体内のどこにこれがあるかは製造ごとに異なる。


 プレーローマで無尽機の解剖実験が行われた際、「死体型混沌機関だけ取り出して転用できないか」と検討されたが、出力も素材も脆いため転用は極めて困難という結論が出た。



■スワンプマンの装備

 スワンプマン達の身体は基本的に登録時のもので製造されるが、衣服や装備は合計100キロ範囲で製造ごとにカスタマイズも可能となっている。


 製造可能な装備は銃火器も含むが、それらは持ち主のスワンプマンの手を離れると数時間で溶け、混沌に戻ってしまう。


 溶けるまでは本物と同じ機能を持つため、泥縄商事のパンドラはこれで銃火器を作って詐欺行為を働き、小遣い稼ぎをする事がある。


 衣服や装備として与えられるのは泥縄商事の社長が製造方法を理解しているものに限る。また、混沌で代用できない特別な材料が必要なものは作れない。


 技術水準の低い国の貨幣程度なら偽造できるため、パンドラはたまにそれを使っている。ただしデザインは基本的に同一のため、よく観察すると明らかに偽造されたものだとわかる。


 一応、金塊モドキも偽造可能だが、「そういう偽造をやりすぎると会社の信用がなくなるからやっちゃダメ」とパンドラは語っている。そのくせ金に困ると「バレなきゃいいんだよ!!」とのたまい、先のない犯罪組織相手の支払いに金塊モドキを使うことがある。



■無尽機に対する開発者の見解

 メフィストフェレスは「真の死者蘇生技術開発」を1つの目標にしており、無尽機はその目標に至る手段の1つとして期待されていた。


 しかし、無尽機では「蘇生」ではなく「製造」しか出来なかったため、メフィストフェレスは無尽機に「失敗作」の烙印を押した。


 ただ、失敗作でも「ほぼ無尽蔵に歩兵を生産できる」という点が対プレーローマ作戦に有効なため、メフィストフェレスは無尽機を有用と考えていた。


 メフィストフェレスが死亡し、親機(パンドラ)が人類連盟から脱走したため、無尽機が人類軍兵士として本格的な実戦投入される事はなかった。だが泥縄商事によって悪用され続けている。



夜行(ナイトシフト)

 泥縄商事社長直属部隊の名前。スワンプマンで構成された私兵部隊。


 泥縄商事の普段の業務にはあまり関わらず、基本的に社長案件で動く。社内では「存在しない都市伝説部隊」と言われる事もあるが、確かに存在している。


 夜行だけが持つ特殊な能力はないが、部隊員は全員スワンプマンである自分を受け入れ、無尽機の仕組みを最大限利用している。作戦遂行のためには「自分」の死すら厭わない死兵。


 実力は人類連盟強国の精鋭歩兵部隊並みだが、投入される作戦が過酷なため、大抵は敵地の真っ只中で殲滅されている。しかし、新しい自分を製造してもらう事で何度も作戦に参加し続ける不死身(デスマーチ)部隊。


 社長案件は社長が欲しがっている限定品の買い出しも含まれるため、限定品販売の列に夜行隊員が混ざっている事もある。彼らは自分達の死を厭わず、限定品を確保してくる恐ろしい買い出し部隊でもある。列の順番はちゃんと守り、横入りしようとするものは社長であろうが容赦なく殺害する。



■夜行の構成

 夜行はいくつかの班に分かれており、班ごとに別行動している事が多い。作戦内容次第では複数の班が合同で動く事もある。


 一般辺り十数人で構成されているが、第1班には隊員が1人しかいない。


 正確には第1班にも複数の隊員がいるのだが、全員が同一人物のデータから作成されたスワンプマンである。不具合で同一人物データのスワンプマンが出来た結果、不具合で出来た者もサーバーに登録するという荒技を繰り返し、「優秀な1人」を「優秀な複数人」に増やしていったのが夜行・第1班である。


 そのため第1班の名簿には「1人」しか記載されていない。本人達の自我崩壊はまだ発生しておらず、現在も作戦行動や訓練の合間に死んで、自分達を量産しようとしている。


 


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