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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.5章:バッドカンパニー【新暦1225年】
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過去:成り上がりの結末



■title:<泥縄商事>本社艦隊にて

■from:<エデン>総長・ニュクス


本社艦隊(ここ)に来たのはエデンだけ?」


 今のところはエデン(ウチ)だけですよ。


 でも、もう直ぐ人類連盟の軍隊もやってくる。


 人類連盟は泥縄商事の人事部長経由で、泥縄商事の情報を掴んだ。その情報の中には本社艦隊や幹部連中の位置情報も含まれる。


 人事部長は対策会議の名目で幹部達を集め、自分自身は脱出。幹部達が異変に気づいた時にはもう手遅れ。各地で泥縄商事の施設への一斉襲撃が始まっている。


 こちら(エデン)も人類連盟から貰った情報を参考に、一斉襲撃決行日に本社艦隊に踏み込ませてもらった。


 虫の息の第2営業部長が「エデンと人類連盟が手を組むはずがない……」とこぼしたけど、「実際に組んでいるでしょう?」と返答してあげる。


 人類連盟はエデンの敵だ。


 彼らは強権を振りかざし、弱者を虐げている。


 ただ、泥縄商事は泥縄商事で各地で紛争を煽り、火に油を注いでいる。


 看過していい存在じゃない。


 人類連盟側から共同作戦の申し出があったので、「敵の敵は味方」という事で止むなく人類連盟の作戦に乗っているだけだ。


 エデンは人類連盟が手を出しづらい場所――例えば大国の緩衝地帯の泥縄商事施設破壊を担当してきた。


 今回の本社艦隊襲撃に関しては、勝手にやらせてもらったけどね。


「何故……」


 本社艦隊(ここ)には多数の子供達が拉致監禁されている。


 少年兵として養成されているようだから、その奪還に来たの。


 本社艦隊襲撃を行う人類連盟の部隊は、交国軍だった。


 しかもかなり汚れ仕事慣れしている部隊のようだったから……彼らに任せていると子供達も殺しそうだったから、先んじて襲撃させてもらったの。


 交国も人類連盟も怒るだろうけど、彼らとは前々から敵対している。


 非道な手段を使う彼らに、全ては任せておけない。


 子供達は既に救出済み。子供達が監禁されていた場所は、エデンの構成員が――ズワルトピートが単身で潜入し、割り出してくれた。


 彼は潜入に長けた神器使いで、泥縄商事本社艦隊の情報をキッチリ調べ上げてくれた。泥縄商事の社長の抹殺方法も調べてもらっていたけど……そちらに関しては「不可能」という結論が出た。


 ともかく、子供達の救出は成功。


 あぁ、交国軍も踏み入ってきたみたいだね……。泥縄商事の社員達が蹴散らされ始めた。キミ達はもう逃げられない。


「あ……あの子達は英雄候補生よ……! 私の子供達よっ! それを無断で連れ出すなんて、いったい何の権利があって……!!」


 まだしぶとく生きている第二営業部長を殺害する。


 これで私の話を聞いているのは、社長と人事部長の2人だけ。


『……エデンは人連に都合良く使われただけかと思いましたが、本社艦隊の位置まで掴んでいたのですね。あなた達への評価を改める必要があるようです』


 利用されていたのは確かだね。


 ただ、私達も「泥縄商事に壊滅的な打撃を与える」という目的は達成できるから、今は人類連盟の手のひらの上で踊るよ。


『子供達を連れ出す目的も達成できたのでしょう? あなたがここに来なくても、泥縄商事の幹部は全員、人類連盟が始末していましたよ』


 …………。


『わざわざここに来たのは、勝ち誇るためですか?』


 違うよ。


 用件は2つ。


 1つ目は質問。


 社長、エデンが奪還した子供達はあなたと契約済み(・・・・)


「おっ、そこまで把握してるんだ? エデンの諜報員は意外と優秀だねぇ」


 質問の答えは?


「ガキとは契約してないよ。性能的な問題があるからね」


 それは良かった。


 私達が「契約」について話していると、人事部長は画面の向こうで訝しげな表情を浮かべた。何の話か理解できていないらしい。


『契約とは、何の話ですか?』


 あなた、契約(それ)を理解していないのにクーデターを起こしたの?


 じゃあ、ひょっとして未契約社員――。


「人事部長も契約社員だよ。ずっと昔からね」


 じゃあ…………クーデターそのものが無意味(・・・)じゃない。


 人事部長に対して呆れていると、笑顔で頬杖をついている社長が「無駄じゃないよ」と擁護してきた。


「少なくとも、あたしは楽しめてる!」


 あなたの会社が、今まさに大打撃を受けているのに?


「刺激的で楽しいよ~?」


 そう……。まあ、どうでもいいけど……。


 ドーラ社長。もう1つ質問していい?


「どぞ~」


 更生してエデンに入るつもりはない?


 ダメ元で誘ってみる。


 勧誘(これ)は私の独断。多くのエデン構成員が反対するだろう。


 けど、泥縄商事の社長がエデンの一員になってくれれば、エデンの大きな力になる。……私達には強大な組織力(ちから)が必要だ。


 ずっと昔から泥縄商事という大組織を率い、存続させてきたドーラ社長の手腕と異能は……エデンでも活かせるはず。


 問題は本当に更生してくれるかだけど、この人がエデン側についてくれるだけで、エデンはもっと多くの人を救える――。


「エデンかぁ。キミ以外のエデン構成員が納得するかな?」


 総長(わたし)が説得する。


 無尽機(あなた)の力を貸してほしい。


「面白い提案だけど、あたしが『更生しました』って言ったら信じてくれるの?」


 正直、信用できない。


 だから監視や術式で縛らせてもらう。無尽機であるあなたは戦力だけではなく、組織力の価値が高い。交国の玉帝も、あなたを欲しがっているでしょう?


「お金くれたらエデンのために働くよ。ただ、無尽機(あたしたち)は高いよ~?」


 エデンは貧乏組織だから、あなた達を雇うお金なんて捻出できない。


 支払えるのはこれだけ――と言いつつ、社長の脳天に弾丸を撃ち込む。


 泥縄商事の社長・パンドラは笑みを浮かべながら死亡した。けど、この女は明日には蘇っているだろう。無尽機は殺せるけど、滅ぼす事ができない。


 だから勧誘しようと思ったんだけど、失敗に終わった。


『礼を言っておきましょう。エデン総長』


 …………。


『あなた達のおかげもあって、泥縄商事は壊滅します。僕は泥縄商事という商売敵のいない世界で大いに稼がせてもらいます』


 …………。


『つきましては、今後もビジネスパートナーとして――』


 あなたは前提を間違えている。


 無尽機は殺せるけど、滅ぼすことが出来ない。


 つまり(・・・)、泥縄商事も滅ぼせない。


 企業という形を取っている以上、今回の一件で大打撃を負うだろうけど……いずれ復活するはずだ。だって、泥縄商事そのものが不滅なのだから。




■title:とある先進世界にあるセーフハウスにて

■from:泥縄商事・人事部長


 前提を間違えている。


 どういう意味だ?


 問いかけようにも、エデンの総長は泥縄商事の会議室を去って行った。


 画面の向こうには死体が転がっているだけ。


 ただ、音は聞こえる。泥縄商事の社員達が交国軍に蹂躙されている音だ。おそらく、交国軍だけではなくエデンも戦闘しているのでしょうが――。


 まあ、これで終わりだ。


 社長は不死身だが、今回の一件で泥縄商事は壊滅的な打撃を受けた。泥縄商事の中核を担う幹部達はほぼ殺害してやった。


 泥縄商事の残党は世界各地に残るだろうが、それは僕の新会社で吸収させてもらう。どいつもこいつもクズのような人材だが、ド新人よりはマシだ。


 泥縄商事という商売敵のいない世界で、僕は泥縄商事を超える企業を作ってやる。人類連盟と上手く付き合いつつ、闇社会を支配してやろう。


 社長が<夜行(ナイトシフト)>を動かし、僕に対して報復してくる可能性があるけど……それへの対策は用意してある。


 既にこのセーフハウスは僕の雇った腕利きの傭兵達に守らせている。いくら夜行でも傭兵達全員を倒すのは不可能だ。


 祝杯をあげよう。


 そう思いつつ、ワインを開け――――




■title:とある先進世界にあるセーフハウスにて

■from:恵手・ズワルトピート


「――――」


 背後から心臓を一突きし、殺害した人事部長の遺体をそっと寝かせる。


 彼が開けたワインを代わりに飲みつつ、人事部長の遺体を使って指紋照合を突破。人事部長が人類連盟から得ていた資金を横取りさせてもらう。


 これで、今回の仕事も無事完了。


 ニュクス総長。聞こえる? こっちは終わったよ。


 それと、人事部長が人連から得た金も可能な限りいただいた。


 例の口座に移しておいたから、洗浄が終わったらエデンで使ってくれ。


『ありがとう、ピート。これでタダ働きにならずに済んだ』


 ただ、全て奪うのは無理だった。


 勝利の美酒で酔おうとしていたけど、用心深い男みたいだ。人連から得た資金も元々持っていた財産も分散していたようだから、全ては手に入らなかった。


『それは仕方ない。……キミの方で着服してないよね?』


 してるけど、そんな大した額じゃないよ――と嘘をつく。


 泥縄の人事部長から強奪できた資金の8割は、僕の秘密口座に移した。


 エデンには残りの2割を移しておいた。今回、僕の負担が大きな作戦だったんだから……これぐらいいいだろう?


 エデンの活動は金にならない。


 それどころか損ばかりし続けている。


 ……僕らはいつまで、こんなことをしなきゃいけないんだろうね?


 総長は僕が相当な額を着服したことを見透かしている様子だったけど、黙認してくれたようだった。戦闘馬鹿のカトーやファイアスターターと違い、こういう工作活動も出来る僕のことを評価してくれているのだろう。


 ただ、評価しているだけだ。


 働きに見合った対価を貰えたことなど、一度もない。


 腐れ縁だから、仕方なくエデンの活動にも付き合ってあげてるけど……。


 まあ……後片付けを済ませたら帰るよ。合流地点で会おう。


『うん。気をつけてね』


 人事部長の遺体を置き去りにし、密かにセーフハウスを後にする。


 護衛として雇われた傭兵達があくびをしている。キミ達はタダ働きになりそうだよ――と鼻で笑いつつ、さっさと退散する。


 今回の作戦で、泥縄商事に大打撃を与えた。


 普通の企業なら、これで潰れてしまうだろう。


 だが、泥縄商事は「普通の企業」ではない。「普通の犯罪組織」でもない。


 不死身なのは、泥縄商事の社長だけではない。馬鹿な人事部長はそれを理解せず、事を起こしたようだ。……どいつもこいつも馬鹿野郎だ。


 全て無駄なんだ。


 お前らがやった事も……エデンの活動も、何もかも徒労に終わる運命なんだ。




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