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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.5章:バッドカンパニー【新暦1225年】
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過去:馬鹿でも扱える兵器



■title:<泥縄商事>本社艦隊にて

■from:泥縄商事社長のドーラ


「社長! 退院おめでとうございますっ!」


 霊安室直行した翌日、霊安室から出てきたのは退院でいいのかな?


「どうでもいいんじゃないですかねっ!」


 そっかぁ~……。


「そういえば、商品企画部長が社長のこと探してましたよっ!」


 あらそう。嫌な予感。


 あの子にもお小言言われるのかなぁ~? 


 回収の見込みがない相手と取引するなって。


 でも安定した取引なんてつまんないよ~……! 会社の金で博打を打ちてえ~!


「社長のそれは博打じゃなくて、金をドブに捨ててるだけですよっ!」


 うるさ~い! 私は社長だぞ!! 私に従うのが嫌なら他所に転職すると良いさ! 私を縛り、従わせることができる奴なんて真白か雪より白オロロロ……!


「あら~、社長。何故、廊下で嘔吐を~?」


 しょ、商品企画部長……。ちょ、ちょっとね……。


 昔、ちょっと丸呑みにされた記憶がよぎって……気分悪くなっただけ。


「不死身の社長でも、怖いことはあるんですねぇ~」


 不死身じゃないから、それなりに怖いことはあるよ。


 てか、さっき商品企画部長(キミ)が探してたって聞いたんだけど説教?


「いえ、今日は新商品を見ていただこうと思って~」


 ほう、新商品?


「社長が『バカでも扱えるように使いやすさ(ユーザビリティ)を高めろ』ってウルサイから~。そこに配慮した新商品をいくつか試作してみたのですよ」


 そんなこと言ったっけ?


「言いましたよ! ほんの1週間前の話ですよ?」


 あぁ~。覚えてねぇ~。同期に失敗してんのかも。


「泥縄商事が取引先に用意する傭兵って、ちゃんとした教育を受けていない後進世界の子が多いでしょう?」


 それはそう。


 そういう奴らの方が、調達しやすいからね。


 テキトーな後進世界で人さらい(リクルート)したら調達できるし。でも、そういう人材って銃火器すらまともに扱えない子もいるんだよねぇ。


「ええ。だから、そこを解決できる商品を考えてみました。2つ試作して、両方とも実験室に置いてあるので一緒に見に行きましょう」


 わぁい。我、新商品大好き侍なり。


 てか、今回は2つも試作してくれたのね。


「一応ね~。でも社長の『バカでも使える兵器』って要望は難しいですよ」


 でも、兵士はバカが一番調達しやすいんだよ。


 正確にはバカではなく、環境的に知識格差がある人々だね。遅れている後進世界では「教育」は贅沢なものだから、地頭優秀な子でも育ちづらいんだよね。


「人事部長が言ってましたよ。もっと人材育成に投資してください、と」


 現状でも、そこそこしてるでしょ~?


 事業規模に追いついてないうえに、人類連盟とかが邪魔してくるから……ウチが管理している|テロリスト養成キャンプ《がっこう》が足りないだけだよ。


「だから増やせって言ってんでしょ~?」


 いや、そう簡単には増やせないんだって。キミの故郷と違ってさ。


 それに、キミ的にはそれでもいいの? 技術者なら技術で解決してよ。「人材育成して解決」よりも「バカでも使える兵器で解決」しちゃってよ。


「簡単に言ってくれますね~……。強力な兵器を運用するには、相応の専門知識が必要なんですよ~? 機兵とか強力だけど慣熟訓練が必要でしょ? そして『機兵』と『機兵乗り』以外にも必要なものがある」


 整備士のこと?


「そう! 機兵乗りが整備士を兼任する事もありますが、1人で2人分以上の仕事を担当するのは大変ですよ~? 流体装甲は機兵の整備性を向上させていますが、交国みたいに流体装甲製の機兵をホイホイ用意するのは下等生物共には難しいはなしでしょ~?」


 別に機兵じゃなくていいんだよ。


 極端な話、棍棒でいいんだよ。


 叩けば死ぬ。整備の必要性もほぼ無し。使用方法もわかりやすい。


 そして、機兵並みに強い! そういう兵器が欲しい!


 それがあったら、バカでも戦力になるでしょ?


「無茶を言いますね~……」


 まあ、棍棒はあくまで比喩だよ。それぐらい扱いやすい兵器を作って!


 つーか、昔の泥縄商事は棍棒も売ってたよ? 社長室にも飾ってるでしょ? あの手作り感あふれるイカつい棍棒が……!


 懐かしいなぁ、黄金に脳を焼かれた冒険者(バカ)共相手に売ってたんだよ。


「手作り感あふれるじゃなくて、手作りでしょう? 社長の」


 あの頃は零細企業だったからねぇ~。


 今は今で人連にイジめられるし、部下達がグチグチ文句を言うから面倒だけど。


「文句を言われない振る舞いをしてくださいな~」


 まあ、とにかくユーザビリティ高めておくれよ! 『バカでも機兵並みに強くなれる兵器』を自社開発出来たらバカ売れ待ったなしだよ!?


 兵器にもユーザビリティ大事! 争い絶えない多次元世界(せかい)では特にね! 兵士も取引先もバカが多いんだから、バカ向け兵器は需要あるよ!!


「けど、バカばかり相手にしていたら大変よ~? 営業部長が『顧客の質が悪くて、アホみたいなクレームが来て大変』って言ってる事もあったけど……」


 困ってるのは営業部の人間っしょ? 私は困らない!!!


「ひどい経営者ねぇ……。それはともかく、実験室に到着っと……」


 新商品どこ~? どれぐらいユーザビリティに配慮してるぅ?


社長(バカ)でも使えるぐらい簡単で、それでいて百人力の兵器よ~。自信作!」


 あれ? この新商品……機兵じゃん。


「機兵は機兵でも完全自立型よ~。無人機だから名前は<無人君>ね」


 ふむふむ……。無人化によって操縦席を廃し、そのスペースに野菜栽培装置を設置してスペースの有効活用しているのかぁ~……。


「兵站に優しいでしょ?」


 確かにね――って言うと思ったかアホ!! あたしが作れって言ったのは『バカでも扱える兵器』であって、バカ機能をつけろとは言ってないでしょ!?


 そもそも、この程度のスペースで育てられるのはプチトマトぐらいじゃい! いや、これはもうモヤシぐらいしかムリでしょ……!?


「そんな……バランスの取れた食生活は大事よ!?」


 客の食生活とか知るか~! 飢え苦しんだところで知ったこっちゃないの! 飢え苦しんでくれた方が食料を高く売りつける好機でしょ!!!!


 野菜栽培装置は撤去して兵装追加……あるいは機兵本体の小型化をしてもいいかな。そう考えれば省スペース化が図れるのは悪くないかな……。


 こいつ、機兵としてはどの程度、役に立つの?


「先進国が使っている有人機兵の10%程度のパフォーマンスかしら~?」


 う~~~~ん…………びみょう!!


「でも、後進世界を荒らすなら、その程度の性能で十分でしょ?」


 それはそうだけど、人類連盟加盟国が本職の機兵乗りを派遣してくる可能性もあるしさぁ。バカ用だとしても、弱すぎてもなぁ……。


「作成にかかった費用は先進国の有人機兵の10倍ね」


 弱かろう、高かろうって最悪だねコイツ!!


 ハァ。まあ、せっかくだから使ってみるか……。どうやって指示を出すの?


「音声認識。対応しているのは和語だけ」


 ふむ。


 右手上げて~。左手上げて~。宙返りして~……って、ああ、スッ転んだ。


 やっぱ微妙だな……。


「でも、この間の無人機より進化してると思わない?」


 確かに。


 この間の無人機なんて、私が声を発した瞬間に機関砲を撃ってきたし。


「実は、搭載する人工知能を大幅に改良したの~」


 へー、やるじゃん。


 AI後進世界出身なのに頑張ったねぇ!


「うっさい。そこはパワハラ上司が怒るからよ。仕方ないでしょ」


 まあ、出生的にね。


「ちなみに、この子は自分で自分の整備できるのよ? 整備兵いらず!」


 ふーむ…………。まあ、そこまで完全自立なら、使い方次第かな……?


 弱くて高くても、バカでも使えるって用件はクリアして――。


『……シテ……。コロ…………テ……』


 無人君が勝手に喋ってるけど?


「無言だと怖いでしょ?」


 いや、むしろ勝手に喋った方が怖いよ。


 ところでさぁ……。最近、本社艦隊の機兵整備士の大量失踪事件が起きているんだけど、何か知らない? 知ってるよね?


「さあ……? 下等生物如きが何人死んでも別にいいでしょう? そんな事より性能面で色々と不満があるようだけど、これはあくまで試作機なので今後のバージョンアップに期待してね~。実は既に強化案も考えているんですよ~」


 次は整備士と機兵乗りがセットでいなくなりそ~!


 てか、これってプレーローマがよく使ってる生体部品技術のパクリじゃん。いや、パクれてすらいない、劣化コピー……。


「専門外だから仕方ないでしょ!? 無人君はお遊びで作ったものなのっ! 本命は次の商品ですよ~!」


 あんまり期待しないでおこ――――痛っ! いま、あたしに注射打った?


「社長に注射したのは<みなぎるくんα>ですよ~! 生物に使うことで対象の身体機能を爆発的に向上させます! 打つだけ簡単超人化!」


 はぁ、えぇ? なんか、身体がアツいんですけどっ……!!


「社長の身体を超強化中ですからねぇ!!!」


 超人化って、具体的に……どれぐらい強くなるの?


「個人差はありますけど、最低でも筋力が10倍になります。肌も硬質化し、拳銃弾ぐらいは弾けるようになりまぁす。そしてそして、自然治癒能力も大幅に向上! 多少撃たれたところで再生するんですよ~!」


 あっ、あっ、あっ……! 脳が……! 脳が肥大化していく感触がっ……!


「脳以外も肥大化していきますよ! 社長の華奢な身体を強くするにはそれぐらいしないと! バカ用の兵器を作るのではなく、バカを最強の兵器にする! 発想の逆転ってやつですよ~!」


 スゲエ!!!! ユーザビリティ配慮を脳で感じるぅッ!!!!!


「人の形を保てないうえに寿命も縮まり、獣以下の知性になっちゃいますが、捕虜にポンポン打って敵地に投入するって使い方は出来ますよ。生身でも高い殺傷能力を持つ超人の出来上がり! 相手がただの人間なら殴れば死にます!」


 プイプイプイプイ~~~~!!


「ああっ、さっそく社長の知性が溶解しましたね……! さあ、社長、新たに手に入れた力で戦ってくださいな! 無人君っ、相手をしてあげて! 勝った方が正式採用よ! みなぎるくんはみなぎるくんでコスト面に大きな問題があるけど――」


『シテ……モド……テ……シテ……。シテ……シテ……シネ……!!』


 プイプイプイ~~~~!!


「えっ? ちょっ……! なんで私を襲ってくるの! 来ないで! 来ないでっ! こらっ!! 言う事を聞きなさギャアアアアアッ!!!」


 プイーーーーッ!! ブイブイブイ~~~~ッ!!


『ァ! ア、ァ……! ァ、り……ガ、と…………』






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