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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.4章:悪魔の落とし子
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過去:清水を穢す



■title:ネウロン・シオン教総本山<新宿(ニイヤド)>にて

■from:人類の味方()・メフィストフェレス


「ほい、これで最後かなっ……?」


 ニイヤドの地下に隠されていた施設の最奥に辿り着いた。


 複数の術式防壁が行く手を阻んできたけど、全て突破した。


 これぐらい楽勝よ! なんせ私は真白の魔神の天敵(メフィスト)だからね~! 奴の術式の癖は完璧に把握しているし、魂魄認証も合わせて押し切る事が出来た。


 私対策も用意されていたから、ちょっぴり脳を焼かれかけたけど……マアマアマア1000年の昔の骨董品に負ける私じゃないのだ!


 最奥に辿り着いた以上、ここにある真白の遺産(もの)をいただいてゲームクリア~ってなるはずだったんだけど――。


「ここまで厳重だったくせに、何もないんかいっ!! 時間無駄にしたぁ~!!」


 最奥の部屋はいくら調べても何も無かった。


 覚え書きの1つすらない!! さらに奥の部屋があるわけでもない! 次元の裏側に隠しているってわけでもない! 厳重な術式防壁があっただけ!!


 何もないという事がわかりました。いかがでしたかぁ~~~~!?


 まあ、何も無いって事がわかっただけでも収穫はあったさ……。これは半ば強がりだけどね~。くそっ、先客のいた宝探しほど萎えるものはないネ!


「ほんの数年前に、誰かが来たみたいだねぇ~~~~? 許せねぇ~~~~」


 もぬけの殻の室内を調べていく。


 微かにだけど、痕跡が残っている。……痕跡を消そうとした痕跡も残っている。結構頑張って消しているけど、私の目を欺くのは難しいよぉ~ん?


 その先客が真白の遺産――もとい、叡智神の遺産を持ち出したんだろう。


「ここにあった遺産が須臾学習(バックアップ)媒体だったとしたら、欲しがる奴は沢山いただろうしねん」


 私にとっては文献程度の役にしか立たないけど、それでも閲覧したら色々な着想を得られただろう。


 他の人々にとっては「真白の魔神の完全複製体」を作る材料になる。当時の真白の魔神を――叡智神の完全なコピーを作ることも不可能じゃなくなる。


 再現できるのは記憶だけじゃない。


 魂どころか、真白の魔神の(・・・・・・)異能(・・)すら再現可能のはずだ。


 魂はともかく、「異能の再現」が厄介なんだよね。異能といってもクソみたいなデメリットのある転生の方じゃなくて、もう1つの異能(ほう)が厄介なんだ。


 ただ、完全複製体を作るなら、須臾学習媒体だけじゃ足りない。


 アレはあくまで種だ。


 真白の魔神という作物を作るための種だ。


 種を発芽させるためには、専用の植木鉢が必要になる。


 その植木鉢(うつわ)の作成は容易ではない。叡智神の場合、神器使い(シオン)の遺体を材料にしたみたいだけど……神器使いの遺体があれば必ず作れるものでもない。


 神器使いの身体でも、私に馴染むか否かの問題があるからねん。


「完璧な器がなければ、完璧な複製体を作れないはずだ」


 バックアップデータを手に入れたところで、器が完璧でなければ「完全複製体」は作れない。ちゃんとした器がないのに無理矢理作ろうとしても、不完全な複製体しか作れないだろう。


 真白の魔神を「真白の魔神」たらしめるのは、あの異能だ。


 それを再現できていない複製体なんて、ただの失敗作(ゴミ)


 なぁ~~~~んの価値もない! なぁ~~~~んの意味もない!


「しかし、誰が持ち出したんだろうねぇ~……?」


 厳重な防壁をキチンと残したまま突破できる存在は限られる。


 第一候補は叡智神本人。


 ただ、これは有り得ない。ここに誰かが来たのはほんの数年前の事だ。数百年前に死んだ叡智神が最近まで生きていたなんて有り得ない。


 それは絶対に(・・・)有り得ない(・・・・・)と言い切れる。


「叡智神本人じゃないなら、その使徒かな?」


 けど、叡智神は相当疑り深い性格だったはず。


 使徒達にもバックアップデータはそう易々と渡さないはず。使徒は彼女の部下だが、彼女も部下達に疑念を抱いていたはずだ。殆ど信用していなかったはずだ。


 ただ、「預けても大丈夫」と考えていた使徒もいたかもしれない。


 おそらく丘崎獅真辺りは、ここにもズカズカと踏み込めたんじゃないかなぁ。あとはデータを絶対に悪用しないと確信できる相手とか――。


「【占星術師】君の可能性は……さすがにないか」


 彼は真白の魔神の使徒じゃないし、彼が持ち出していたらわざわざここを探らせないだろう。


「まあ……いっか。とりあえず地上に戻りますか~」


 バックアップ手に入ったら便利かもな~と思ったけど、無いなら仕方ない。


 そろそろ玉帝の息がかかった部隊が来る。さっさと逃げないとマズい。


 目くらましと腹いせをかねて、やることをやっちゃおう。


 かび臭い地下から地上に戻り、明智光の助手君に声をかける。例の準備を早く進めて頂戴ね――とせかしておく。


 助手君は「急ぎます!」と言ったけど、直ぐに自信なさげな顔で「そもそも、本当にこんなことをしていいんですか……?」と聞いてきた。


「我々の任務は調査ですよね?」


「そうね」


「別のことをやっていたら、玉帝がお怒りになるのでは――」


「私はネウロン(ここ)の全権を委任されています。もちろん、主上の許可も得ています。あなたがそんなことを心配しなくていいの。さっさと準備して」


「は、はいっ……!」


 少し威圧すると、助手君はあたふたと走っていった。


 【占星術師】君にはマーレハイト亡命政府と合流して逃げるよう言われているけど~……ちょっとぐらい、寄り道してもいいよね?


 彼と私は協力関係を結んでいるけど、主従関係ではない。


 彼の機嫌はほどほどに取ってあげるけど、全て言いなりになる必要はない。


「交国軍から逃げつつ、ゲットーを目指しますかぁ~……」


 その前に、ちょっとネウロンで悪い事しよ。


 ホントにちょっと、ちょっとだけだよ?


 多次元世界全体から見たら、ちっぽけな被害が出るだけだよ。良かったねぇ。






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