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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.4章:悪魔の落とし子
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過去:名付け親



■title:

■from:


 ボクは自分の名前が大嫌いだった。今でも大嫌いだ。


 銀兄さんは立派な名前をもらっているのに、ボクはありふれた植物の名前。


 久常竹。


 竹なんて、カッコ良くない。


 こんな名前をつけたのが、よりにもよって銀兄さんだから……余計に嫌だった。銀兄さんは強くてカッコいいけど、名付けのセンスは皆無なんだ。


 ボクもカッコイイ名前が良かった。例えば、白銀(しろがね)とか……。


『こんな名前、嫌だ。大嫌いだ』


 小さな頃、兄さん相手にそう愚痴った事があった。


 兄さんは困り顔を浮かべつつ、「カッコイイと思うけどなぁ」と言った。


『俺は、竹の生き様はカッコイイと思うけどなぁ~……』


『銀の方がカッコいい! キラキラしてるもんっ』


『だが、銀の輝きは黒ずみやすい。そして……脆い。大したものじゃない』


 兄さんは笑って、「だが、竹は違うぞ?」と言った。


『竹は銀よりずっと強いぞ。そう簡単には死なん。強風を受け流し、折れても折れても地中から生えてくる不屈の植物だ!』


 俺はお前に、竹のように強い人間になってほしい。


 そういう願いを込めてつけたんだ――と兄さんは言った。


『強くなれたら、兄さんと……同じ戦場に立てるの?』


『ああ、もちろん』


 兄さんはボクを肯定してくれた。


 あの時は、肯定してくれた。


『俺より強く、俺より賢く……そして、俺より不屈になれ。竹』


『…………』


『俺より偉くなって、俺を指揮してみせろ! 俺は前線で戦う方が向いているから、指揮は優秀で信頼できる奴に任せたい』


『ボクが、兄さんを指揮……』


『がんばれ、竹。期待しているからな!』


『……うんっ!』


 期待しているって言った。


 同じ戦場に立てるって言った。


 でも、全部、ウソだった。


『竹。軍人なんて辞めて、小説家になれ』


 なんでそんなこと言うの?


『お前の天職は、小説家なんだ! わかってくれ……!』


 それはボクのやりたいことじゃない。


 兄さんの理想を、ボクに押しつけないでよ!!


 兄さんの理想は、ボクの理想じゃない!


『…………。戦場は、お前には危険すぎる』


 兄さんはそう言った。


 哀れむような目つきで、そう言っていた。


 期待しているって言ったのに。


 うそつきうそつきうそつき。


 信じてたのに。


 信じてたのにっ!


 信じてたのに……!!


 ボクは弱くない。ボクは強いんだ。


 ボクを見下すな。


 ボクを、ボクを……! ちゃんと、見てよ。


 信じてよ…………。


 兄さんまでボクを信じなくなったら、誰も、ボクを…………。




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