TIPS:試作型統制機関
【TIPS:試作型統制機関】
■概要
<叡智神>としてネウロン人に信仰されていた真白の魔神が作成した術式及びそれに関わる制御装置の総称。
術式細機で侵した知的生命体の神経伝達物質を制御し、言動や思想に軽度の干渉を行う事が出来る。一種の洗脳術式。
真白の魔神が使徒達を縛っている統制戒言は対個人用なのに対し、統制機関は対集団用。ただ、試作型統制機関は統制戒言ほどの干渉能力はない。ほんの少し民衆を操りやすくなるだけとなっている。
世界の法則を塗り替える丘崎獅真の神器から着想を得た真白の魔神は、統制機関の開発をスタート。ネウロンでの運用も元々予定しており、「民衆の脳に干渉し、彼らが日々を幸福に過ごしやすいように手助けする『杖』にする」と語っていたが、使徒の誰もその言葉を信じていない。
真白の魔神の熱烈な支持者であった使徒・スミレですら、統制機関の運用には消極的だった。一種の洗脳術式であり、同時に単なる洗脳術式ではないゆえに。
■ネウロン人に対して使われた統制機関
巫術師の蜂起をきっかけに、ネウロンを去る事を決めた真白の魔神は、事後処理のために試作型の統制機関をネウロンで使用する事を決定。
元々広めていた術式細機によって統制機関のネットワークを構築し、彼らの思想誘導を行った。そうする事でネウロン人を争いから遠ざけ、巫術師と非巫術師の確執も強引に取り除いていった。
また、ネウロンの統制機関は巫術師の枷としても機能した。死を感じ取ると頭痛がする仕組みを付与するためにも利用された。
真白の魔神の代行者としてネウロンに残り、ネウロン人の監視・思想誘導・紛争調停を任された使徒・エーディンの活躍もあり、ネウロンに長きにわたる平和が強制的にもたらされた。
ネウロン人の牙はすっかり抜け落ちた。
忘れ去られた世界だったネウロンに来る者は殆どおらず、外敵不在によってネウロン人は「温厚で弱い種族」になっていった。その影響もあり、ネウロンはあっさりと交国に支配されてしまった。
また、ネウロンの統制機関が構築したネットワークに対し、何者かが干渉術式を叩き込んだ事により、多数のネウロン人を材料としてタルタリカが発生する「ネウロン魔物事件」が発生。
平和のために使用された統制機関が、完全に平和を終わらせた。
現在、ネウロンの統制機関は壊れてしまっている。ネウロンの統制機関は経年劣化によって元々弱まっていた事もあり、そこに干渉術式の衝撃も加わってトドメを刺されてしまった。
それでもバフォメットが壊れた統制機関経由でタルタリカに干渉し、彼らを従わせる程度の力は何とか残っている。
巫術師達の「死を感じ取ると頭痛がする」という枷は、統制機関を利用して刻まれた枷だが、あくまで個々人に刻まれたものなのでまだ一応残っている。
■統制機関・開発こぼれ話
統制機関の仕組み自体は、真白の魔神が丘崎獅真の神器に着想を得たものである。最初は「対プレーローマ用」の兵器として考えられていた。
真白の魔神達はプレーローマと戦ってきたが、プレーローマ側が使ってくる「とある権能」に苦しめられていた。
その権能とは「死者蘇生権能」だった。プレーローマの<癒司天>が使うそれによって、多くの天使が殺しても殺しても蘇ってきた。
それに辟易していた真白の魔神は、ある日、使徒の1人と将棋を指していた。「プレーローマの天使も、将棋の駒みたいに倒したら寝返ってくれたらサイコーじゃない?」という話になり、「じゃあ実際に天使を寝返らせる兵器を造ろう。造れたら味方に優しい」と開発を始めた。それが最初の統制機関だった。
敵対している天使の頭を開き、術式細機を埋め込み、統制機関で操ることで強制的にプレーローマを裏切らせる。それを繰り返すことで、強力な蘇生権能のあるプレーローマの戦力を削りつつ、自分達の戦力を強化出来ると目論んでいた。
何とか試作型統制機関の開発に成功したが、当初期待された性能にはならなかった。当時の統制機関は天使を操る事が出来ず、普通の人間に対しても「多少、思想を誘導する程度」の効果しかなかった。
使徒の1人が「兵器として使えずとも、多数の人間をこれで制御して味方に引き込んでいけばいいのでは」と提案した。
真白の魔神はその提案を一度却下したが、「人々を幸福に導くため」と言い訳しつつ、ネウロンでも運用実験を行おうとしていた。巫術師が蜂起した事で、予定していた用途での使用とはならなかった。
□音声記録 発言者:宗像灰
真白の魔神の遺産……統制機関か。
そんな便利なものがあれば、交国の問題の多くが解決する。
オーク達どころか、それ以外の民衆の意志統一も可能になる。
全交国人が、一丸となってプレーローマに――。
……回路、何を笑っている?
私は、そこまでおかしなことを言ったか?




