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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.3章:過去は影なり【新暦190-242年】
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過去:別れと出会いの日



■title:

■from:使徒・バフォメット


 かつて、私は一振りの(つるぎ)に過ぎなかった。


 自我もなく、ただ剣として在った時代。私には担い手がいた。


 自我はなくとも、当時のことは覚えている。


 我が担い手は、ただの女子高生だった。しかし、プレーローマの魔手が彼女の故郷に伸びてきたことで、平穏な日々は終わりを告げた。


 神器(わたし)の担い手として覚醒した彼女は、私を振るって必死に戦った。故郷を焼くプレーローマの軍勢と戦った。


 彼女はよくやったが、プレーローマは強大だった。彼女の故郷どころか、故郷が存在する世界ごとプレーローマに滅ぼされ……我々は逃げるしかなかった。


 彼女の親も、愛犬(シロ)も、学友達も次々とプレーローマに殺された。中には彼女と同じ<神器使い《メサイア》>もいたが、彼らもろくな目に遭わなかった。


 我が担い手は命からがら逃げ延びたが、戦いからは逃げなかった。


 異世界に逃れた後もプレーローマと戦って、戦って……最後は敗れた。


 致命傷を負って、戦えなくなった彼女を見て、ようやく私は動いた。動かねばならない。守らなければならないという「自我」が芽生えた。


 私は彼女を守るために戦った。より正確に言えば暴走した。


 結果、何とか敵を退けることに成功したが……出来たのはそれだけ。私は殺戮の道具に過ぎず、彼女を助けることは出来なかった。


 この子を死なせてはならないと思っていたが、守ることが出来なかった。


 私は戦場跡で途方に暮れていた。その時、「彼女」と出会った。


『危険を冒して来た甲斐があった……かな?』


 白衣を纏った「彼女」を敵と考えた私は襲いかかった。しかし、「彼女」は私を止めて、「私はキミ達の敵じゃない」と語りかけてきた。


『一応、助けに来たんだ。勧誘も兼ねてね。神器使い本人とは会えず、自我に目覚めた神器と出会うとは……ちょっと予想外だったけど』


『貴様は……いや、貴様らは何者だ?』


『私達はエデン。プレーローマに抗う者だよ。……キミ達と同じくね』


 それが、私と真白の魔神(マスター)の出会いだった。


 真白の魔神は私達を助けてくれた。表向きは(・・・・)助けてくれた。


 だが、おそらく……我が担い手が死んでいた時点で、マスターは……彼女の遺体を利用するつもりだったのだろう。私を騙して、利用するつもりだったのだろう。


 それでも私は彼女に縋った。


 この子を助けてやってくれ、と縋った。




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