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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.2章:正義の在処【新暦1238-1240年】
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過去:134の命



■title:紛争の絶えない後進世界<アーミング>にて

■from:アラシア・チェーン


「きょ、教導隊長がテロリストと通じていた……?」


「どういう事ですか!? あの人が、何故――」


 オレ達を拘束した憲兵は、教導隊長はテロリストに関与していたと言っていた。隊長はテロ組織の一員で、「教導隊長の立場を利用していた」と言っていた。


 第59教導隊の教導隊長の立場を利用し、アーミング人を訓練する。将来的には育成したアーミング人を使って、アーミングで武装蜂起を行うつもりだった。


 教導隊長は、そんな計画を裏で動かしていたらしい。


「要するに、第59教導隊はテロリスト養成キャンプになっていたわけだ」


「そんな、バカな……。オレ達は、そんな話は――」


「我々はキミ達の関与も疑っている。じっくりと話を聞かせてもらおう」


 第59教導隊はアーミング人を「交国軍兵士」として育成していた。


 だが、教導隊の長である隊長は職権を乱用し、「交国軍兵士」を「テロリスト」に仕立て上げるつもりだった。


 軍事委員会はそれに気づき、憲兵を派遣。隊長を拘束して強制捜査を行い、実際に武装蜂起が起こる前に止めたようだったが――。


「隊長! なんで……! 何でだよッ!!」


「…………」


「アンタは……! アーミングのガキ共を、救いたかったんじゃないのか!?」


 憲兵に連行されていく隊長は、ずっと俯いていた。


 オレの言葉を否定せず、黙っていた。……無言で容疑を認めている様子だった。


 教導隊長1人が突っ走っていたわけじゃない。


 あの人は、テロ組織の一員だった。交国の金を使ってガキ共を育成していた。何のためにそんな事をしていたのか……わからない。理解したくない。


 アイツらを守りたかったんじゃないのかよ。


 救いたかったんじゃ、なかったのかよ。


 隊長が……本当にアーミング人を救いたかったなら、武装蜂起によって交国を追い出すつもりだったのか? アーミングの紛争に交国が関わっているという陰謀論(はなし)を信じて……ガキ共を扇動して交国と戦うつもりだったのか?


 それが真の目的だったのか?


 もしくは、私利私欲で……何かをしようとしていたのか?


 何にせよ、教導隊長は大馬鹿野郎だ。


 アーミング人を扇動したところで、交国に勝てるわけねえだろ。アーミング以外も巻き込んだ大規模な蜂起(・・・・・・)ならともかく(・・・・・・)……。


 隊長が馬鹿なのはわかっていた。陰謀論を信じる危険思想持ちってことは、わかっていた。発言を録音していた! ヤバいのはわかっていた。


 ここまでヤバかったとは、わからなかっただけで――。


 結局、隊長が何を考えていたかはわからず終い。


 隊長とはあれきりで――。


「お前達も来なさい」


「ま、待ってください! イジーもオレも、テロ組織への関与なんて――」


「観念しろ。お前達の隊長は<ブロセリアンド解放軍(テロリスト)>の一員だったんだ。部下のお前達も、無関係ではいられない」


 オレもイジーも、他の皆も憲兵に拘束された。


 少しでも怪しい素振りを見せれば射殺する。そんな空気が漂っていた。


 教官達は、まだ比較的落ち着いていたが――。


「子供達を落ち着けるために、少し時間をください!」


「蜂起の時間が欲しいということか? 彼らを扇動し、我々に逆らうつもりか?」


「じゃあ、俺に銃を突きつけておいてください! 何か一言でもマズい事を言ったら、射殺してください! 好きに見せしめにしたらいい!」


 ガキ共は浮き足だっていた。


 いつもとは明らかに違う訓練所の空気。


 紛争のような空気を感じ取り、脱走を考える奴もいた。


 そんな中、イジーは憲兵と交渉してガキ共を止めに走った。滅多なことをしないよう、説得して回った。


 イジーのおかげで、何とか……ガキ共は射殺されずに済んだ。


 ただ、皆が拘束されて尋問された。


 第59教導隊の全員が、教導隊長(テロリスト)に加担していたのではないか――と疑われることになった。……オレとイジーは特に疑われた。


 最近は特に、教導隊長と話をしていたから……疑われた。教導隊の先輩達も「アイツらは怪しい」とオレ達を売ったようだった。


 オレ達は、隊長がテロ組織と通じていたなんて……本当に知らなかったのに!


 隊長は、単に……陰謀論を信じているだけだと――。


「信じてください! オレ達は、テロリストの一味なんかじゃ……!」


「…………」


「証拠……証拠もあります! 教導隊長が、怪しげな陰謀論を信じていた証拠もあります! 訓練所の倉庫に隠しているんで、それを確認してください!」


「証拠を掴んでいたのなら、何故、軍事委員会に報告しなかった」


「それはっ……! ……まだ、隊長の尻尾を掴み切れてなかったから……」


 オレは事前に集めていた「証拠」を提出した。


 自分とイジーの身の潔白を証明するために……隊長を、売った。


 多分、イジーは隊長のことも庇っただろう。


 けど、オレは売った。……教導隊長の巻き添えなんて御免だった。


 一応、オレ達への疑いは晴れたようだった。相当尋問されたが、こまめに隊長との会話を録音していた甲斐があった。


 …………。


 本当に疑いが晴れたかは……正直、自信がない。


 だって、オレ達は――。


「第59教導隊は解散とする」


 教導隊長がテロリストと通じていた大事件により、第59教導隊は解散。


 教官もガキも他の職員も、全員が施設から退去することになった。


 退去して、新しい任地に向かうことになった。


「訓練所で指導していた子供達は――」


「彼らも教導隊長に加担していた疑いがある。交国軍の監督下に置く」


 それも<特別行動兵>として監督下に置く。


 故郷に送り返すのではなく、戦場に派遣する。


 正規の兵士ではなく、ワケ有りの兵士として監督下に置く。


 ガキ共のテロ関与疑いは、まだ完全に晴れたわけではない。


「キミ達にも、彼らの一部の監督任務を請け負ってもらう」


「「…………」」


 オレとイジーは、特別行動兵(ガキ)で構成された部隊を率いることになった。


 ガキの殆どが、十分な訓練を終えていない奴らだった。……兵士としてまともに戦える人材じゃない。そんな奴らを率いて戦うことになった。


「今日から、キミ達は<アーミング第4特別行動隊>だ」


 オレ達に、134人の(ガキ)が押しつけられた。


 監督役って事だが……多分、それだけじゃない。


 オレ達のテロ関与疑いも、完全に晴れたわけじゃないんだ。


 一種の懲罰人事として、オレ達は……戦場に送り込まれる事になった。





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