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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.1章:嵐の始まり【新暦1230-1233年】
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過去:天使的取引



■title:<ロレンス>の戦闘艦にて

■from:影兵・アダム・ボルト


「睦月。大人しく寝ていろ」


 医務室のベッドから起き上がった加藤睦月を咎めると、彼は「いつまでも休んでられないよ」と言いながら医務室を出た。


 命に別状はないとはいえ、負傷している。


 <ロレンス>首領殺しの疑いにより、加藤睦月は<カヴン>で拘束されていた。拷問されて痛めつけられていた。近く、処刑が行われる予定だった。


 首領の娘であるジュリエッタ・ロレンスの手引きにより、何とかカヴンの手中から睦月を逃げ出す事は出来たが……厄介な追っ手に追われる事になった。


 私と巽だけでは負傷した睦月を逃がすのは危うい状況だったが、「別の助け」が来てくれた事もあり、何とか追っ手を撒く事には成功した。


 ただ、負傷していた睦月はしばし眠っていた。


 今も傷が癒えていないため、安静にしておくべきだが――。


「おやっさんの遺体と神器は――」


「無事だ。巽が影に入れて保護している」


 ロミオ・ロレンスが死んだとはいえ、その神器にはまだ利用価値がある。


 欲しがる勢力も多いだろう。だから、巽がしっかり守ってくれている。


 追っ手を撒いたとはいえ、厄介な輩が方舟に同乗している。奴らが牙を剥いてきて、神器と遺体を掻っ攫う危険性もある。まだまだ油断は出来ない。


 睦月はその輩共を気にしているらしく、「彼らは? 助けてくれたお礼をキチンと伝えていない」と言いだした。


 奴らと睦月を会わせるのは、あまり気乗りしない。だが、黙っていたところで直ぐにわかる話なので、「奴らは艦橋にいる」と伝えた。


「じゃ、ちょっとお礼を言ってくるよ」


「わかった。だが、気を許すなよ」


「…………。わかってる」


 睦月に付き添い、艦橋に向かう。


 そこにはロレンス構成員がいた。


 構成員といっても、睦月側についてくれた一部の構成員だけ。彼らは睦月が首領殺しの下手人と言われても「有り得ない」と言い、脱走を手伝ってくれた。


 彼らは信頼できる。


 あくまで、彼らは(・・・)だが――。


「…………」


 艦橋の一角に目を向けると、巽が「奴ら」と話をしていた。


 巽が話している人間――いや、人間ですらない者達は、正体をまったく隠していなかった。背中に光翼、頭上に光輪を晒している。


 プレーローマの天使。


 奴らは睦月の脱走を手伝ってくれた存在だが、人類の敵でもある。睦月は以前から知っている相手のようだが……天使は信用するべきじゃない。


 確かに、奴らが密かに手助けしてくれなければ、我々は危うかったが――。


 天使達に歩み寄った睦月は、天使達に頭を下げて救援の礼を言った。相手は「我らは主の命に従っただけです」と事務的な言葉を返してきた。


「それより、主が貴方と話したがっています。通信を繋いでも構いませんか?」


 天使の言葉に睦月が頷く。


 すると、天使は船の端末を操作し、龍脈通信で遠方との通信を繋いだ。


 通信先はどこかの執務室のようだ。おそらく、プレーローマ本土だろう。


『おう、ムツキ!! まだくたばってないみたいだな!?』


「お陰様で……。支援に感謝します。ミカエル様」


 睦月が頭を下げると、武司天・ミカエルは笑みを浮かべた。


 笑みを浮かべたまま、語りかけてきた。


『これは貸し(・・)だぞ。いつか必ず返してもらう』


「もちろんです。俺に返せる範囲の話になりますが――」


 2人はそんな会話を交わした後、今後の事を話し合い始めた。


 ロミオ・ロレンスは死んだ。殺害された。


 彼の死は、必ず大きな嵐を生むだろう。





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