昏い光
■title:<目黒基地>にて
■from:弟が大好きだったフェルグス
『露と滅せよ……!』
突然現れたバカデカい機兵。
師匠が呼び出した巨大機兵に似た奴。
『虹式煌剣!』
そいつに向け、全力で攻撃を放つ。
エレインに教えてもらった技を、全力で叩き込んで――。
『うわぁっ!?』
『やったか……!?』
敵の胴体に、流体の斬撃が確かに当たった。
確かな手応えがあった。
爆発の煙の奥から、胴体の装甲が一部吹き飛んだ巨大機兵も出てきた。
まだ倒せてない。でも、かなりの深手を負わせてやって――。
『正義は負けェェェェんッ!!』
『なっ……!?』
周囲の地面が吹き飛んだ。
機兵が持っていた大剣も、柄だけ残してゴッソリと消えていった。
それとほぼ同時に、巨大機兵の傷跡が瞬時に塞がった。
流体装甲で塞いだってレベルじゃねえ。一瞬で、完全に修理した……!?
『バァカめぇッ!! キサマのひ弱なこここうゲキぃ、なんてェ! キカン!』
『それなら……!!』
周囲を飛ぶレギンレイヴの攻撃を受けつつも、強引に走る。
巨大機兵は――身体を直したのを自慢するように――無防備になっている。
体当たりして、憑依を仕掛け――。
『っ…………!?』
憑依を――。
『ぐ、うッ……!!?』
『無駄だぁ~……。キサマらの小細工などォ! 通用するかぁッ!!』
『――――』
横から飛んできた巨大機兵の拳に殴られ、吹っ飛ぶ。
モロに食らった……! 今の攻撃で、機兵のフレームがバキッと折れた。
流体装甲で折れたフレームを強引に支える。まだ、何とか戦える。
けど、なんだアイツ……。虹式煌剣どころか、巫術の憑依もろくに効かないのか……!? 多分、巫術師じゃないはずだが――。
■title:<目黒基地>にて
■from:防人・ラート
「フェルグスっ……!!」
フェルグスが大剣を振るい、かなり重い一撃を飛ばした。
光線の如き斬撃が巨大機兵を抉ったが、ほぼ一瞬で再生された。
さらにフェルグスは憑依を仕掛けたようだが、それも失敗したらしい。
敵に殴り飛ばされ、レギンレイヴから集中砲火を受けている。
助けに行くのは間に合わない。幸い、フェルグスの機兵が倒されたところで、フェルグス本人は無事なんだが――。
「フェルグス! こっちより、地下にいる皆を助けに行ってくれ!」
『け、けどっ! ラート達だけじゃ、コイツらは止められな――』
「何とかする! 行ってくれ!!」
敵がフェルグスの機兵に集中しているうちに、後ろから撃つ。撃ち落とす。
レギンレイヴを一機撃ち落とし、投げ槍で仕留める。
敵はまだいる。地下にも侵入されている。
なんとか……なんとかしないと……!
「あと……あとちょっとだったのに……!!」
■title:<目黒基地>にて
■from:星屑隊隊長
「――――」
地下港の方から、機関砲の発砲音が聞こえた。
機兵対応班が敗れて、敵に突破された?
あるいは、まったく別の経路から敵が侵入してきた?
通信で呼びかけても、返事はない。まだ稼働中だった多脚戦車が動きを止めている。……操作していたオペレーターに何かあったに違いない。
急ぎ、戻りたいが――。
「隊長! 敵が一気に……!」
目前の敵部隊も、一気に攻勢をかけてきた。
死兵達を踏み越え、流体甲冑で作られた大狼が飛び込んでくる。
1体は対物狙撃銃で撃ち落とす。だがまだ来る。2発目が間に合わん。
「――――」
権能で大狼の攻撃を回避し、至近距離から2発目を撃つ。
流体甲冑といえど、至近距離から放たれた対物狙撃銃の弾丸は受けきれない。流体の鎧ごと、中にいる巫術師を殺害する。
とりあえず2体倒したが、敵がまだ殺到してくる。
地下港に戻る隙がない。いま、私が離脱したら戦線が崩壊して――。
「隊長、いま……なんかスゴい動きしませんでしたっ!?」
「説明は後だ! 一度、後退を――」
防衛線をさらに下げようとしたが、その前に敵が面倒な手を使ってきた。
死兵と化した敵が飛んでくる。
流体甲冑を使う巫術師が、死兵達を投擲してきている。
我々が退こうとしていた場所に向け、死兵を投入し――挟み撃ちにしてきた。
何とか突破しなければ、地下港にいる者達を助けに行く前に我々が死ぬ。
ここは――。
「ロッカ! ヴァイオレット達が襲われている! 機兵を放棄し、身体に戻れ! 方舟でもなんでもいい! 憑依して敵兵と戦え!」
『りょっ……了解っ……!』
巫術師のロッカなら、一瞬で地下港に戻れる。本体は向こうにある。
機兵を放棄してでも、ロッカを戻らせる。……ロッカが敵に勝てるとは限らないが、時間稼ぎは出来るかもしれない。
私も何とか地下港に戻らねば。
最悪、敵の手にヴァイオレットが渡る前に、私の手で――。
■title:<目黒基地>にて
■from:星屑隊隊員
「くそっ! せっかくの機兵が……!」
「仕方ねえだろ! それより、後方……突破するぞ! 体勢を立て直さないと!」
敵が一気に仕掛けてきた。無茶な方法で挟み撃ちしてきた。
少し離れたところで、ロッカの操っていた機兵が倒れ始めた。やってくる敵を巻き込んで倒れた。……倒れた機兵に、敵の流体甲冑が潰されたようだった。
数人の敵が潰され、さらに機兵が持っていた火炎放射器が爆発した。それによって辺りに炎が広がり、敵が炎に飲まれていく。
ある程度は打撃を与えたが……機兵の火力を手放しちまった。
アレがないと、こっちの防衛線は持たない。
俺達の希望が――。
「このままじゃ敵の巫術師に、機兵を使われるんじゃ……」
「んなこと考えてる場合か! 逃げろ! 逃げた後で、奪い返せばいいんだ!」
出来るのか?
こっちにも巫術師がいるとはいえ、ここから立て直せるのか?
俺達は、もう――。
■title:交国軍艦艇<星喰>にて
■from:寝鳥満那の部下
「――――」
地下にあった方舟を攻撃した味方機を、後ろから射撃して破壊する。
斬撃によって方舟に致命打を与えたとはいえ、あの方舟が巫術師に操作されていた場合……斬撃経由で機兵を乗っ取られた可能性もある。
味方機兵ごと方舟を攻撃し、さらにダメージを与えていく。
これでもう、敵の脱出手段は潰して――。
『やめろおおおおおおおっ!!』
「…………」
方舟の方から、「何か」が飛び出してきた。
速い。遠隔操作のレギンレイヴでは対応しきれない。
方舟から飛び出してきた「何か」が、体当たりを仕掛けてきた。
衝撃は大したものではない。だが、機兵が操作を受け付けなくなった。
敵の巫術だ。
おそらく、流体甲冑を纏った敵が体当たりを仕掛けてきたのだろう。
油断した……。
「すまない。こちらは仕損じた」
『十分だ。あとは第二次突入班で対処する』
■title:<目黒基地>地下港にて
■from:弟が大好きだったフェルグス
『くそっ……! ち、ちくしょうっ……!』
奪った敵機兵の流体装甲を操り、他の機兵ごと動かないように縛る。
縛った後、自分の身体に戻る。
オレが戻るのが遅かった。
身体に戻ってきたら、方舟が攻撃されていた。
船内まで破壊されたうえに、ロッカとグローニャが……。
地下港にいた星屑隊の魂も減っている。
敵のレギンレイヴに攻撃されて、何人もやられて……。
『ぅ…………』
地下の冷たい床に突っ伏して、動かなくなっている隊員が見えた。
その身体から血が広がり、血だまりが広がっていく。……もう魂が観えない。
オレが……あのデカい機兵に気を取られず、早く戻っていたら――。
『敵は……。港に入った敵は、もういないよなっ……!?』
地下港には3体のレギンレイヴが下りて来てた。どれも動かなくなった。
敵の魂も観えない。ここにいるのはオレの仲間だけ。
でも、まだ敵が迫ってきている。
どこの敵から対処したらいいかわからず、迷っていると――。
『あっ……?』
縦穴から何か下りて来た。
機兵じゃない。もっとずっと小さい。
鳥だ。
いや、機械の鳥……?
それが何羽も地下に下りて来た。
■title:<目黒基地>にて
■from:玉帝近衛兵隊<戈影衆>
「権能起動」
「権能起動」
「権能起動」
権能を使い、敵の本丸に――地下港に光速移動する。
標的確認。障害確認。
流体甲冑を纏った巫術師がいるが、問題ない。
「ペインキラー3、5、6。本丸制圧を開始する」




