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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.0章:この願いが呪いになっても
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昏い光



■title:<目黒基地>にて

■from:弟が大好きだったフェルグス


『露と滅せよ……!』


 突然現れたバカデカい機兵。


 師匠(カトー)が呼び出した巨大機兵に似た奴。


虹式煌剣(カラドボルグ)!』


 そいつに向け、全力で攻撃を放つ。


 エレインに教えてもらった技を、全力で叩き込んで――。


『うわぁっ!?』


『やったか……!?』


 敵の胴体に、流体の斬撃が確かに当たった。


 確かな手応えがあった。


 爆発の煙の奥から、胴体の装甲が一部吹き飛んだ巨大機兵も出てきた。


 まだ倒せてない。でも、かなりの深手を負わせてやって――。


『正義は負けェェェェんッ!!』


『なっ……!?』


 周囲の地面が吹き飛んだ。


 機兵(オレ)が持っていた大剣も、柄だけ残してゴッソリと消えていった。


 それとほぼ同時に、巨大機兵の傷跡が瞬時に塞がった。


 流体装甲で塞いだってレベルじゃねえ。一瞬で、完全に修理した……!?


『バァカめぇッ!! キサマのひ弱なこここうゲキぃ、なんてェ! キカン!』


『それなら……!!』


 周囲を飛ぶレギンレイヴの攻撃を受けつつも、強引に走る。


 巨大機兵は――身体を直したのを自慢するように――無防備になっている。


 体当たりして、憑依を仕掛け――。


『っ…………!?』


 憑依を――。


『ぐ、うッ……!!?』


『無駄だぁ~……。キサマらの小細工などォ! 通用するかぁッ!!』


『――――』


 横から飛んできた巨大機兵の拳に殴られ、吹っ飛ぶ。


 モロに食らった……! 今の攻撃で、機兵のフレームがバキッと折れた。


 流体装甲で折れたフレームを強引に支える。まだ、何とか戦える。


 けど、なんだアイツ……。虹式煌剣(カラドボルグ)どころか、巫術の憑依もろくに効かないのか……!? 多分、巫術師じゃないはずだが――。




■title:<目黒基地>にて

■from:防人・ラート


「フェルグスっ……!!」


 フェルグスが大剣を振るい、かなり重い一撃を飛ばした。


 光線(ビーム)の如き斬撃が巨大機兵を抉ったが、ほぼ一瞬で再生された。


 さらにフェルグスは憑依を仕掛けたようだが、それも失敗したらしい。


 敵に殴り飛ばされ、レギンレイヴから集中砲火を受けている。


 助けに行くのは間に合わない。幸い、フェルグスの機兵が倒されたところで、フェルグス本人は無事なんだが――。


「フェルグス! こっちより、地下にいる皆を助けに行ってくれ!」


『け、けどっ! ラート達だけじゃ、コイツらは止められな――』


「何とかする! 行ってくれ!!」


 敵がフェルグスの機兵に集中しているうちに、後ろから撃つ。撃ち落とす。


 レギンレイヴを一機撃ち落とし、投げ槍で仕留める。


 敵はまだいる。地下にも侵入されている。


 なんとか……なんとかしないと……!


「あと……あとちょっとだったのに……!!」




■title:<目黒基地>にて

■from:星屑隊隊長


「――――」


 地下港の方から、機関砲の発砲音が聞こえた。


 機兵対応班が敗れて、敵に突破された?


 あるいは、まったく別の経路から敵が侵入してきた?


 通信で呼びかけても、返事はない。まだ稼働中だった多脚戦車が動きを止めている。……操作していたオペレーターに何かあったに違いない。


 急ぎ、戻りたいが――。


「隊長! 敵が一気に……!」


 目前の敵部隊も、一気に攻勢をかけてきた。


 死兵達を踏み越え、流体甲冑で作られた大狼が飛び込んでくる。


 1体は対物狙撃銃で撃ち落とす。だがまだ来る。2発目が間に合わん。


「――――」


 権能で大狼の攻撃を回避し、至近距離から2発目を撃つ。


 流体甲冑といえど、至近距離から放たれた対物狙撃銃の弾丸は受けきれない。流体の鎧ごと、中にいる巫術師を殺害する。


 とりあえず2体倒したが、敵がまだ殺到してくる。


 地下港に戻る隙がない。いま、私が離脱したら戦線が崩壊して――。


「隊長、いま……なんかスゴい動きしませんでしたっ!?」


「説明は後だ! 一度、後退を――」


 防衛線をさらに下げようとしたが、その前に敵が面倒な手を使ってきた。


 死兵と化した敵が飛んでくる(・・・・・)


 流体甲冑を使う巫術師が、死兵達を投擲してきている。


 我々が退こうとしていた場所に向け、死兵を投入し――挟み撃ちにしてきた。


 何とか突破しなければ、地下港にいる者達を助けに行く前に我々が死ぬ。


 ここは――。


「ロッカ! ヴァイオレット達が襲われている! 機兵を放棄し、身体に戻れ! 方舟でもなんでもいい! 憑依して敵兵と戦え!」


『りょっ……了解っ……!』


 巫術師のロッカなら、一瞬で地下港に戻れる。本体は向こうにある。


 機兵を放棄してでも、ロッカを戻らせる。……ロッカが敵に勝てるとは限らないが、時間稼ぎは出来るかもしれない。


 私も何とか地下港に戻らねば。


 最悪、敵の手にヴァイオレットが渡る前に、私の手で――。




■title:<目黒基地>にて

■from:星屑隊隊員


「くそっ! せっかくの機兵が……!」


「仕方ねえだろ! それより、後方……突破するぞ! 体勢を立て直さないと!」


 敵が一気に仕掛けてきた。無茶な方法で挟み撃ちしてきた。


 少し離れたところで、ロッカの操っていた機兵が倒れ始めた。やってくる敵を巻き込んで倒れた。……倒れた機兵に、敵の流体甲冑が潰されたようだった。


 数人の敵が潰され、さらに機兵が持っていた火炎放射器が爆発した。それによって辺りに炎が広がり、敵が炎に飲まれていく。


 ある程度は打撃を与えたが……機兵の火力を手放しちまった。


 アレがないと、こっちの防衛線は持たない。


 俺達の希望が――。


「このままじゃ敵の巫術師に、機兵を使われるんじゃ……」


「んなこと考えてる場合か! 逃げろ! 逃げた後で、奪い返せばいいんだ!」


 出来るのか?


 こっちにも巫術師がいるとはいえ、ここから立て直せるのか?


 俺達は、もう――。




■title:交国軍艦艇<星喰>にて

■from:寝鳥満那の部下


「――――」


 地下にあった方舟を攻撃した味方機を、後ろから射撃して破壊する。


 斬撃によって方舟に致命打を与えたとはいえ、あの方舟が巫術師に操作されていた場合……斬撃経由で機兵を乗っ取られた可能性もある。


 味方機兵ごと方舟を攻撃し、さらにダメージを与えていく。


 これでもう、敵の脱出手段は潰して――。


『やめろおおおおおおおっ!!』


「…………」


 方舟の方から、「何か」が飛び出してきた。


 速い。遠隔操作のレギンレイヴでは対応しきれない。


 方舟から飛び出してきた「何か」が、体当たりを仕掛けてきた。


 衝撃は大したものではない。だが、機兵が操作を受け付けなくなった。


 敵の巫術だ。


 おそらく、流体甲冑を纏った敵が体当たりを仕掛けてきたのだろう。


 油断した……。


「すまない。こちらは仕損じた」


『十分だ。あとは第二次突入班(こちら)で対処する』




■title:<目黒基地>地下港にて

■from:弟が大好きだったフェルグス


『くそっ……! ち、ちくしょうっ……!』


 奪った敵機兵の流体装甲を操り、他の機兵ごと動かないように縛る。


 縛った後、自分の身体に戻る。


 オレが戻るのが遅かった。


 身体に戻ってきたら、方舟が攻撃されていた。


 船内まで破壊されたうえに、ロッカ(・・・)グローニャ(・・・・・)が……。


 地下港にいた星屑隊(みんな)の魂も減っている。


 敵のレギンレイヴに攻撃されて、何人もやられて……。


『ぅ…………』


 地下の冷たい床に突っ伏して、動かなくなっている隊員が見えた。


 その身体から血が広がり、血だまりが広がっていく。……もう魂が観えない。


 オレが……あのデカい機兵に気を取られず、早く戻っていたら――。


『敵は……。港に入った敵は、もういないよなっ……!?』


 地下港には3体のレギンレイヴが下りて来てた。どれも動かなくなった。


 敵の魂も観えない。ここにいるのはオレの仲間だけ。


 でも、まだ敵が迫ってきている。


 どこの敵から対処したらいいかわからず、迷っていると――。


『あっ……?』


 縦穴から何か下りて来た。


 機兵じゃない。もっとずっと小さい。


 鳥だ(・・)


 いや、機械の鳥(ドローン)……?


 それが何羽も地下に下りて来た。




■title:<目黒基地>にて

■from:玉帝近衛兵隊<戈影(かえい)衆>


権能起動(エウクレイデス)


権能起動(エウクレイデス)


権能起動(エウクレイデス)


 権能を使い、敵の本丸に――地下港に光速移動する。


 標的確認。障害確認。


 流体甲冑を纏った巫術師がいるが、問題ない。


「ペインキラー3、5、6。本丸制圧を開始する」





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