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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第3.0章:この願いが呪いになっても
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無駄な抵抗



■title:<目黒基地>地下港にて

■from:甘えんぼうのグローニャ


『みんな! 逃げてっ!!』


 レンズちゃんの機兵から、自分の身体に一度戻って方舟に憑依する。


 地下港で悪い人達が暴れてる。


 やっつけなきゃ……。やっつけなきゃ……!


『みんなをイジメないでっ!』


 方舟の大砲をポンポン撃って、敵の機兵を倒す。


 いっぱい撃ったら何とか1体倒せたけど――。


『わっ、わっ……!』


 1体倒している間に、残り2つの敵機兵(レギンレイヴ)が飛び回り始めた。


 いま撃ったら、周りの皆が……星屑隊の皆が危ない。


 方舟で体当たりして、憑依して……。いや、でも、それすると方舟の中にいる副長ちゃん達がケガしちゃうかも――。


『あっ!!』


 迷っているうちに、敵機兵が誰かを掴んだ。


 大きくて、けむくじゃらの星屑隊隊員を掴んで、こっちに見せつけてきた。


 盾にするみたいに――。


『きゃ、キャスターおじちゃんっ……!?』


 グローニャ達にこっそり飴をくれたり、いっぱい優しくしてくれたおじちゃん。


 こわい技術少尉に見つからないよう、こっそり医務室にかくまってくれたおじちゃん。毛むくじゃらで顔がよく見えないけど、優しいおじちゃん。


 キャスターおじちゃんが、敵に捕まっちゃった。


 どうしよ、どうしよっ……!?


『ひ、ひきょう者っ! おじちゃんを離してっ!』


 大砲を向けたけど、撃てない……!


 おじちゃんは「撃て」「わたしごと撃て」って叫んでる。


 今まで一度も聞いたことない大声で叫んでる。


『だ、だめっ……! 撃てない……。やだ――』


 キャスターおじちゃんを掴んだ敵機兵が来る。


 方舟(こっち)に走ってくる。


 走ってきて、おじちゃんを投げつけてきた(・・・・・・・)


『おじちゃ――』


 おじちゃんの身体が、方舟に叩きつけられる。


 急いで流体装甲を柔らかくして、おじちゃんを受け止めて――。




■title:交国軍艦艇<星喰>にて

■from:寝鳥満那の部下


「相討ちになる。尻拭いを頼む」


「了解。処理(カバー)する」


 レギンレイヴを遠隔操作し、地下にいる敵の方舟に斬りかかる。


 その直前、脱走兵(キャスター)を投げつけ、流体装甲で受け止めさせる。


 巫術師は流体装甲に素早く干渉し、望む形に加工できる。


 それによって装甲を柔らかくし、獣人の脱走兵を受け止めた。


 弱点を作ってくれた。


「――――」


 やわらかくなった装甲に向け、流体装甲の剣を振り下ろす。


 脱走兵ごと、叩き切ってやった。




■title:<目黒基地>地下港にて

■from:歩く死体・ヴァイオレット


「先生っ……!」


 敵機兵の振るう剣が、キャスター先生ごと方舟を切り裂いた。


 先生の身体も、方舟の装甲もバターのように――。


「だめ……!」


 方舟にはまだ、子供達が――。


「だめぇっ!!」




■title:<目黒基地>にて

■from:防人・ラート


「邪魔すんじゃねえ! 退けぇッ!!」


 敵機兵から逃げつつ、地下港に通じる縦穴に飛び込もうとしたが防がれた。


 敵巫術師の操るレギンレイヴが体当たりと、憑依強奪を仕掛けてきた。


 アルに貰った巫術(ちから)で憑依を弾きつつ、敵機兵に肘鉄をお見舞いする。しつこい。これだけじゃ離してくれな――。


『そのまま押さえておけよぉっ!!』


「…………!!」


 上から、巨大な機兵の拳が降ってくる。


 腕部に車輪を生成し、それを動かして逃げる。敵に組み付かれたまま走行する。


 降ってきた拳が、俺に組み付いていた敵機兵の下半身を潰した。俺の方は間一髪で回避に成功し、敵レギンレイヴの拘束から何とか逃れる。


 拳を振るってきた巨大機兵から舌打ちが聞こえる。「役立たずがッ!」という罵声が聞こえてきたが、あの声はやっぱり――。


「なんでアンタが……神器を使えるんだよ! 久常中佐!!」


『くじょう? だれだァ、それはぁ~~~~!?』


 巨大機兵の周囲をレギンレイヴが飛んでいる。


 死体に群がる猛禽類のように、空からこちらの隙をうかがっている。


『オレはカトー特佐だァ! 玉帝サマの忠実なシモベ! カトー様だぞっ!』


「何を言って――」


『悪の脱走兵はぁ~~~~っ! つぶぅ~~~~すッ!!』


 巨大な機兵が飛び上がった。


 地下通路を通り、急ぎ後退する。


 降ってきた巨大機兵が地下施設の天井をぶち抜き、先程まで俺がいた区画を豪快に踏み潰した。地下港までは、踏みつけられていないが無茶しやがる……!


「っ…………!」


 巨大機兵の脚部に発砲する。


 別方向からレンズの機兵も発砲している。


 だが、こっちの射撃は一切通らなかった。


 虚しい金属音だけ響かせ、弾かれていく。


 攻撃が通じない。倒せない。


 いや、最悪、コイツはどうでもいい。


 それより、地下港にいる皆が……!





【TIPS:人造英雄(ルキウス)

■概要

 交国が開発した「偽物の神器使い」で神器を使用する方法の名称。及び偽物の神器使いとして加工された部品(にんげん)の名称。


 本物の神器使いではないため、神器本来の性能は引き出せないものの、「神器使い不要で神器を使える」というのが1つの利点になっている。


 偽物の神器使い――人造英雄(ルキウス)を<揺籃機構(クレイドル)>に繋ぎ、「自分は神器使い」と思い込ませる。さらに神器本体も揺籃機構に繋ぎ、「人造英雄は神器使い」と誤認識させる。


 そうする事で限定的ながらも神器の力を使う。それが人造英雄技術である。


 人造英雄に加工された部品は「本物の神器使い」ではないため、神器の因子に蝕まれて最終的に死亡する。ただ、ある程度は力を振るえるため、一時的に神器使いの代わりを務めることが出来る。


 人造英雄に使える部品は誰でもいいわけではない。<玉帝の子>こと<森王式人造人間>は部品としての適正もあるため、人造英雄として利用できる。


 ただ、森王式人造人間は非常に高価な人造人間のため、「さすがに人造英雄として使い潰すのは勿体ない」と言われている。ただし、<玉帝の子>の立場でありながら大した実績を上げていない者や、玉帝の子のなり損ないである「失敗作の失敗作」として廃人化していた者達は積極的に人造英雄加工が検討されている。


 交国本土でカトーを巡り、<エデン>残党と交国軍が激突した戦いにも人造英雄が使用された。カトーから奪った神器<アイオーン>を使用するために1体の人造英雄が使用され、戦闘後に死亡している。



■人造英雄の利点

 人造英雄は「本物の神器使い」に匹敵する力を振るう事は出来ないが、「神器使いに頼らない神器使用が出来る」という利点がある。


 また、「神器本体を戦場に投入する必要がない」という利点もある。


 神器起動の媒体となる人造英雄さえ戦場にいれば、神器そのものは交国本土にあっても利用できる。敵に神器を奪われる危険がなくなるうえに、秘匿性の高い戦略兵器的に運用できるというのも1つの利点になっている。


 ただ、本物の神器使い並みの性能が引き出せないのは明確な欠点のため、玉帝も全ての神器使いから神器を取り上げ、人造英雄にするつもりはない。


 少なくとも、今のところは。



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