交国軍襲来
■title:解放軍鹵獲船<曙>にて
■from:星屑隊隊長
「ん? おい、お前だれ――――」
方舟の艦橋を制圧する。
これを使って逃げたいところだが、私とヴァイオレットだけで動かせるものではない。巫術師達の到着を待っていると敵が殺到してくる。
ただ、これはこれで活用方法がある。
制圧済みの艦橋で必要な操作を行った後、脱出を再開する。
「行くぞ」
ヴァイオレットに呼びかけつつ、手持ちの携帯端末の操作も行う。
仕掛けておいた爆弾の一部を起爆すると、基地の一角で爆発が発生した。方舟すらビリビリと揺るがす大爆発が発生した。
「ちょっ……! 隊長さん、何をしたんですか!?」
「事前に仕掛けておいた爆弾で、弾薬庫を爆破しただけだ。急ぐぞ」
必要な仕込みは済ませた。
弾薬庫の大爆発で浮き足立った解放軍に、アレは突き刺さるだろう。
■title:解放軍支配下の<繊一号>にて
■from:解放軍の兵士
「爆発……!?」
脱走兵がいると聞き、それを止めるために動いていると爆発音が聞こえてきた。
基地の方からだ。
それも一度や二度ではなく、何度も爆発音が聞こえてくる。
「おい、これってまさか……交国軍の襲撃――」
「い、いやっ、違うはずだ……!」
状況を確認するため、通信を繋ぐ。
誰も状況がわかっていないらしい。脱走兵の射殺を指揮していたドライバ少将とも連絡が取れず、町中でどうするか迷っていると――。
『全ての兵士に告ぐ! 現在、繊一号は交国軍の襲撃を受けている!』
交国軍から奪った方舟から――<曙>からの通信が聞こえてきた。
「えっ、ウソだろ? 襲撃……?」
『これは訓練ではない! 繰り返す。これは訓練ではない! ドライバ少将が裏切った! 我々を交国軍に売り、奴らをネウロンに招き入れた!』
「ハァ……!?」
さすがにウソだろう、と思いたい。
けど、最近の解放軍はヤバかったし――。
「どっ、どうする……!? マジで少将が裏切ったのか!?」
「わ、わかんねえよっ……!」
「おいっ! あれ! 脱走兵じゃ――――」
ギュリギュリギュリ、と凄まじい音を響かせて曲がり角を曲がってきた車両が、こっちに突っ込んでくる。
手配されていた脱走兵が乗っている車。
運転席に誰も乗ってねえが、勝手に動いて――――いや! いる! 運転席に金髪幼女が乗ってる!! チビ過ぎて見えなかっ――――。
「誓殺ターーーーックル!」
「「「ギャアアアアッ!!」」」
「誓って殺しはしておりません! 私は転がる小石!」
脱走兵用に築こうとしていたバリケードと、右往左往していた仲間が跳ね飛ばされた。轢き逃げ脱走犯はあっという間に去っていった。
ワケのわからない事を叫びながら――。
「おおおおおいッ! あっ、アイツら……! 追わないと!!」
「追ってる場合か! オレ達も逃げるんだよぉっ!!」
爆発音が響き続けている。
交国軍が攻めてきたってことは、こっちもヤバい!
「クソ少将が……! よくも裏切ったなぁッ!!」
■title:解放軍鹵獲船<曙>にて
■from:崖っぷちのドライバ少将
「裏切り者ぉーーーーッ!!」
「信じてたんだぞぉーーーーッ!!」
「好きって言ったくせにーーーーーッ!!」
「ちょっ! ハッ!? なぁにぃッ!? なんなのォッ!?」
交国の憲兵に気絶させられて、起きたらヴァイオレット君がいなくなっていた。あのクソ憲兵に連れて行かれた……!
<曙>の艦橋に向かいつつ、脱走兵を射殺しろと命令を出そうとしていると――艦内で出くわした奴らが急に僕達を撃ってきた。
意味がわからないがとりあえず制圧し、手短に話を聞くと――。
「ぼっ、僕が解放軍を裏切ったぁ!?」
「そうだッ!! 裏切り者!!」
「交国軍をネウロンに招き入れたんだな……!?」
「浮気してたのね……!?」
意味がわからない。意味がわからない。
交国軍云々はともかく、僕はまだ解放軍を裏切ってない!
そりゃあ、現状がヤバいから兵士達に陽動作戦を行わせ、その隙にネウロンから脱出する計画も立ててたけど……! まだ実行してない! まだ裏切ってないっ!
交国が、解放軍幹部を許すはずがない!
「アンタが裏切ったって、放送で言ってるぞ!?」
「それは敵の流した偽情報だよっ! そんなものに騙されるな!!」
「じゃあ浮気してないの……!?」
「して…………ないっ!!」
艦橋に向かいつつ、どこから偽情報を聞いたのか聞く。
それはちょうど、僕らが向かっている艦橋から聞こえてきたらしく――。
「あッ!! あ、あのクソ憲兵ぃ~~~~ッ!!」
『繰り返す! これは訓練ではない! 交国軍の襲撃だ! 全員逃げろ!!』
<曙>艦橋の兵士が制圧されている! 全員、艦橋で無様に気絶している!
それどころか、<曙>の通信を使って偽情報が流されている!!
あのクソ憲兵の――サイラス・ネジの仕業だ!!
オマケに――。
「サイラス・ネジはどこだ!! どこに行った!?」
「少将! この通信、録音です! 艦橋制圧後、録音を流し始めたようです!」
「基地や町で爆発が……! 兵士達が混乱していますっ!」
「少将! 牢屋に入れていた二課の憲兵が脱走してますっ!」
「脱走は知ってるよォ!! 報告が遅いぃぃぃっ!!」
「ただ、牢屋の中に肉の塊が転がってました! タルタリカで作られた肉の塊です! ヤツはそれと入れ替わって、いつの間にか脱走してたようで――」
「それは知らないよォ……!?」
なんで、そんなことになってんの!?
タルタリカを改造して、あの憲兵のフリをさせてたってこと?
タルタリカという事は――。
「ば、バフォメット……! 貴様かァ!! 裏切ったなぁ!?」
どこに向けて言えばいいのかわからない罵声を叫ぶ。
バフォメットは水際作戦に失敗し、行方不明。いまどこにいるかわからない。
だが、アイツ、あの憲兵と通じてたのか……!? そういえば面会記録が――。
「少将、どうすれば――」
「決まってる! 脱走兵に対処しろ! あっ、ヴァイオレット君は生かせ!」
「しかし、交国軍の攻撃が……!」
「アレは脱走兵が起こしてる爆発だよ! 多分、サイラス・ネジの仕業だ!!」
あの憲兵、ヴァイオレット君を逃がすどころか、各所に爆弾を仕掛けたのか。
基地の弾薬庫が派手に爆発し、凄まじい爆音が響いている。
偽情報と爆発で、兵士達が混乱している……逃げ惑っている。
憲兵の手際じゃない!
サイラス・ネジって、憲兵だろ!? お前のような憲兵がいてたまるか!!
こ、これじゃあ、解放軍の指揮系統がメチャクチャ――――。
「っ~~~~!! 機兵を出せ!! 敵をなんとかしろぉッ!!」
サイラス・ネジは、まだ近くにいるはずだ!
探せ! 機兵で潰せ!!
「他の脱走兵はどうなっている!?」
脱走兵には、機兵も差し向けた。
敵もボロい<逆鱗>を持っているから見せしめにしてやるつもりだった。
敵機兵を派手にブッ壊してやるつもりだった。
そっちはどうなってる?
■title:解放軍支配下の<繊一号>にて
■from:解放軍の巫術師
『交国軍が来たってホント?』
『ホントかも……! なんか、スゴい爆発が起こってるもんっ!』
『偽情報だ! アレは脱走兵がやったものだ! 踊らされるな!』
星屑隊って奴らの格納庫を取り囲んでいると、基地や町中で爆発が起こった。
交国軍が来たとか、少将が裏切ったとか変な通信も聞こえる。現場で指揮していた大人は「偽情報」とか言ってる。
どうすれば……。何が正しいの……?
早く動いて、交国軍を倒しに行かなくてもいいの?
『グロリア2! そっちになんか来るぞ!?』
『――――!』
仲間の声を聞き、ハッとする。
見ると、皆で取り囲んでいた格納庫から何か飛び出してきた。
『機兵……!!』
交国軍の機兵。<逆鱗>が1機、飛び出してきた。
こっちのキレイな機兵――レギンレイヴと違って、薄汚れている。
黒光りする昆虫みたいな機兵が、こっちに突進してくる!
『死んじゃえっ!!』
持っていた銃をバンバンと撃つ。
撃ったけど、弾は「カァンッ! カァァァンッ!」とけたたましい音を響かせ、弾かれてしまった。敵を殺せなかった。
敵は大楯と槍を持っている。
機兵がスッポリ隠れるほど大きな大楯を構え、こっちに突進してくる! このまま撃ってても大楯に攻撃を防がれるから、こういう時は――。
『グロリア2! 空に逃げろっ!』
『わかってるっ!!』
飛ぶ。
レギンレイヴは逆鱗みたいなショボい機兵と違って、空を飛べる。
速度が出れば鳥みたいに飛べる。飛び始めはタンポポの綿毛が飛んでいくみたいに、「ふんわり」とした速度だけど、何とか間に合う。
『バカ軍人っ! 空も飛べないショボい機兵で、私達に勝てるはずが――』
敵が飛んだ。
いや、敵じゃない。
飛んできたのは大楯。
円盤みたいに投げられた大楯が、回転しながらレギンレイヴに激突してきた。
『おわっ!?』
空中で大楯と激突する。
機兵に体当たりされたような衝撃が走る。
『あ――ヤバ――落ち――――』
激突の衝撃で体勢が崩れてしまう。
飛行状態を維持しきれず、バタバタと藻掻きながら落ちる。
『痛っ……くは、ないけどぉっ……!!』
格納庫近くにあった市街地に落ち、建物を潰してしまった。
人は潰してない。脱走兵が機兵を持って格納庫にいるって話をして、近くの人達には逃げてもらった。大丈夫なはず――。
『――――』
レギンレイヴの上に、影が落ちてきた。
敵機兵の影。
今度こそ、敵機兵が飛んだ。
こっちの「飛行」と違って、虫が跳ねたみたいな不格好な跳躍。
槍を振りかぶった敵が、落下しながらそれを投げてきた。
『うッ……!?』
『グロリア2!!』
『バカ……! 足ひっぱんなっ!』
『うっ、うっさい!!』
スゴい勢いで飛んできた槍が、装甲に突き刺さった。
けど、混沌機関は無事。
巫術で診断すると、レギンレイヴも「まだやれる」と言いたげに駆動音を鳴らしている。軽いダメージじゃないけど、これぐらいならまだやれる。
『こっちで相手する! お前は何とか立て直せ!』
『うんっ!』
味方のレギンレイヴの援護射撃で、敵が逃げていく。
昆虫みたいなブサイク機兵のくせに、よくもっ……!
槍をさっさと抜いて、仕返ししてやらなきゃ。
今の機兵にも、交国軍にも復讐を――――。
■title:解放軍支配下の<繊一号>にて
■from:防人・ラート
「――――」
背後で爆音が響く。
槍で地面に縫い止めたレギンレイヴが爆発した。
正確には、槍が爆発した。
流体製の槍型爆弾。
突き刺さった状態で爆破したから、かなり良いダメージが入ったはずだ。
巫術師なら流体を巫術でこね、強引に復帰してくるかもしれないが――。
「とりあえず、目の前の2機……!」
無傷のレギンレイヴがまだ2機いる。
混乱に乗じて速攻で倒して、さっさと逃げねえと……敵の増援が来る!




