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7年前、僕らは名誉オークだった  作者: ▲■▲
第2.1章:異なる世界
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夢:傍観者



□title:府月・遺都<サングリア>8丁目

□from:いにしえの魔王


 そして2人は海を目指した。


 小さな胸に、無邪気な希望を抱いて。


 友達に会いに行くため、元気いっぱいに駆けだした。


 混沌の海に漕ぎ出し、異世界を目指すのはとても大変なこと。


 小さな子供達だけで、達成できることじゃない。


 けど、彼らは2人の真白の魔神の使徒と出会った。


 その助力を得て、生まれ育った世界から飛び出していった。


 外の世界に胸を躍らせながら、自分達の意志で広い海に漕ぎ出していった。


 多次元世界(せかい)は少年達が思っていた以上に広く、厳しいものだった。


 泣くこともあった。


 ケンカすることもあった。


 けど、笑うこともあった。


 2人は荒波に揉まれながら、少しずつ成長していった。


 ちっぽけな2人が冒険を始めたことで、大きく運命が変わることもあった。


 海に漕ぎ出した2人は、やがて友達と再会した。


 友達のいた部隊は窮地に追い込まれ、壊滅しようとしていた。


 そんな状況の只中に、少年達は飛び込んでいった。


 小さな2人は大冒険を経て、ちょっぴり強くなっていた。


 かつて救われた彼らが、友達を救う日がやってきた。


 救われた友達は恥ずかしそうに笑いつつ、「こっちのピンチを救ってもらっちゃったな」と言った。少年達は優しい人々に囲まれ、再会を喜んだ。


 それで、めでたしめでたし……となった世界(エンディング)もあった。


 もちろんそれで終わりじゃない。


 その後も面白おかしく大冒険を続けていくんだけど……それはまた別のお話。


 別の多次元世界(せかい)の物語。



 今回はそうならなかった。


 マクロイヒ兄弟は、小さな身体で現実の荒波に立ち向かった。


 立ち向かわざるを得なかった。


 彼らに、他の選択肢はなかった。


 邪悪な実験動物(プレイヤー)が、彼らから可能性を奪った。


 小さな兄弟が乗っていた船は荒波に砕かれ、皆死んでしまうはずだった。


 けど、彼は足掻いた。


 荒れ狂う海の中、必死に足掻いた。


 溺れ死ぬ運命の2人を水面に押し上げ、自分だけ沈んでいった。


 彼の物語は終わった。



 けど、まだ生きている。


 フェルグス君()、まだ生きている。


 荒波の中で、まだ息をしている。


 ……嵐はまだ続いている。





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